2016年8月13日土曜日

チャイナフリーという戦略

 夏の恒例である鳥羽駅の駅ボラ(NPO法人 伊勢志摩バリアフリーツアーセンター主催)に参加してきました。
 この駅ボラは鳥羽駅周辺の観光客を定点観測できる意味で、わしにとって大変有用な機会です。
 話を聞けた観光関係者の多くは「今年の人出は例年並み。しかしお盆期間中のホテル・旅館の予約は好調。」という見立てを異口同音に仰っており、わしも近鉄の乗降客数や国道の混雑状況を見る限り、今年の鳥羽の観光客は特に多くも少なくもなく、猛暑がどう影響するかだ、という印象を持ちました。
 ただ、例年と違う点は、外国人(外見でわかる欧米人)の数が明らかに増えていたことです。もちろん、東京や京都、奈良のような観光地とは比べるべくもありませんが、バックパッカーのほかに家族連れもちらほら見かけましたので、これは日本を訪れる外国人観光客が急増して、昨年は約1974万人にも達するほどになっており、今年も上半期で過去最高を更新するペースであることを反映しているのでしょう。
 一方で、非常に興味深かったのは「鳥羽にはマナーの悪い外国人観光客が少ないので落ち着く」という声を何人かの関係者、さらに実際の観光客からも少なからず聞いたことです。


 わしは先月、たまたま京都市や奈良市、大阪市などに行く機会が何度かあったのですが、かつての「爆買い」現象は急速に縮小しているとは言え、京都駅、奈良公園、黒門市場や難波駅などの周辺はほぼ外国人、それも中国、台湾、韓国、さらに(おそらく)タイやベトナムなどのアジア系観光客であふれかえっており、歩道は座り込みで占拠され、乗り場も売り場も大混雑しており、これは大変な状況になっているなと改めて驚かされました。
 
日本政府観光局の資料より はんわし作成
 中でもアジアの某大国の一部の観光客のマナーの悪さは桁外れで、混雑の中でもスマホの自撮り棒を使う、順路に逆行する、窓口の行列に割り込む、店の前に座り込んでスーツケースを開く、歩行喫煙する、吸い殻やごみをポイ捨てする、なども目の当たりにしました。

 もちろん、これはかつての日本も同じ歴史を歩んできたことです。
 高度経済成長した日本人は1970年代からジャルパックなどのツアーで盛んにアメリカやヨーロッパに観光旅行に出かけるように、処かまわず立ち入って写真を撮り、ホテルの備品を勝手に持ち帰り、高級ブランド品を買い漁り、レストランではマナーを守らず、「エコノミックアニマル」と陰口を叩かれていました。

 このアジアの大国も同様で、人口が多いだけに教育レベルや公徳心が低い人々も多く日本に押し寄せてきているようです。実際には日本の習慣やルールを知らないだけで、一度知ってしまえばマナーは向上するとは思いますが。

 まあしかし、彼らを笑いものにしたり、愚痴を言うだけならいいのですが、本質的な問題なのは、そういった民度の低い観光客が押し寄せてくる日本の観光地は、観光地としてのブランドが棄損してしまうことです。
 つまり、マナーやルールを守らない外国人観光客で溢れかえっているような名所旧跡や景勝地、テーマパークに日本人の多くは行きたいと思うか、仲間でたむろして大声で騒ぐ外国人観光客がほとんどを占めているようなホテルに日本人の多くは泊まりたいと思うのか、ということです。

 正直なところ、わしは奈良公園や黒門市場は当分行かなくてもいいと思いましたし、決して人種偏見ではないのですが、できれば静かでリラックスできる施設で食事したり宿泊したいとも思います。

 観光産業は間違いなくこれからの日本を牽引していく重要な産業です。特に地方では、その土地ならではの観光資源や食材・料理メニューを活用できる意味でも重要で、その戦略の一つに外国人観光客の誘致を位置づけることは、今までは間違いではありませんでした。
 しかし、ミクロで見ると、個別の観光地や観光施設にとって、アジアの大国の観光客はもはや決してありがたいものではなく、彼らがたくさんやってくれば来るほど、ほかの大切なお客が逃げ出している ~そして二度と寄り付かなくなる~ 可能性も検討しなくてはなりません。
 長い目で見て、それはむしろマイナスにつながるかもしれないのです。

 3年ほど前、三重県伊勢市で地元財界の重鎮である、ある超有名和菓子メーカーの取締役が「外人は来てほしくない。いたらおかしいでしょ。来ないでくれとは言えないが、英語の表記をするような気遣いはしない」と公の場で発言して波紋を呼んだことがありました。
 彼がその当時、現在のこの事態を正確に予測していたとは考えられないので、単なる放言だとは思いますが、結果的に「うちにはマナーの悪いアジアの大国の観光客はいません」とPRすることが、観光地にとって日本人や他の外国人へのアピール要因になることは、ひょっとするともうすぐそこまで迫っているのかもしれません。

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