2016年8月17日水曜日

高野尾花街道「朝津味」に行ってみた

 今年7月2日に、津市高野尾町にオープンした、三重県内最大級の農産物直売所 朝津味(あさつみ) に行ってみました。
 この種の農産物直売所というのはビジネスモデルとしては完全に成熟化しており、今や全国各地にこのような施設はあるので、他の類似施設 ~津市では今年4月にも、ほぼ同じコンセプトの施設である 道の駅 津かわげ がオープンしています~ と差別化すること、ましてやビジネスとして大きな収益を上げることは相当難しいことと言わなければなりません。
 一方で、農業が疲弊している地方においては、農業×商工業×サービス業という「第6次産業」が地域産業の救世主として期待されており、農水省、県、市といった行政も積極的に創業の後押しをしています。
 売り場面積が県内でも最大級の650㎡(はんわし注:650㎡は食品スーパーなら中規模店並みなので、あくまでも農産物直売所として県内最大級という意味らしい)で、津の食材を使ったメニューが食べられるフードコートや、イベント広場などもあるという朝津味、果たしてどれくらいにぎわっているのか、見に行ってみることにしました。


 朝津味があるのは津市の北東部にあたり、県道津関線(10号線)沿い、高速道路なら芸濃ICが最寄りのインターチェンジになります。県道からアクセス道路に入ると、田んぼの中を走って、やや山手になった小高い場所に、広大な駐車場と、きれいに植栽された花々、そして風にはためく無数のノボリに囲まれた朝津味の建物が目に入ってきます。(グーグルマップはこちら

 施設の概要は、以下のパンフレットの通りです。


 直売所(ファーマーズマーケット)、フードコート、イベント広場、交流館、園芸売場、加工工房の6つのゾーンがあります。この日は特にイベントなどはなく、子供用のプールが設えられており、何人かの親子が水遊びをしていました。

 フードコートの入口はこんな感じ。ガラス張りで明るい感じの建物です。


 メニューは定食や麺類などがありましたが、地元の野菜がトッピングされているという朝津味カレーとサラダを注文してみました。学食形式で、お盆をとったお客が料理を注文し、それを受け取ったら代金を支払い、好きな席に座って食べる、というセルフサービスです。



 これで900円くらいでした。なかなか美味しかったです。
 内装やテーブル、イスは木がふんだんに使われているほか、柱には生花が立体植栽されていて、まるで植物園のような雰囲気です。せっかくだから写真を撮りたかったのですが、残念ながら店内は撮影禁止だとのこと。

 食事のあとは、ファーマーズマーケットに行ってみました。
 残念ながらここも撮影禁止です。しかしまあ、道の駅とかの一般的な直売所と大差はありません。
 地元の高野尾町をはじめとして、市内の農家が作った野菜、果物、乳製品、醸造品、加工食品、お菓子、パンなどが豊富に並べられていました。道の駅津かわげの時も感じましたが、平成の大合併後の津市は伊勢湾から青山高原の麓まで超広い市域を持っているので、産品も田畑、海、山、さらに畜産物と非常に豊富です。このアイテムの多さはあらためて再認識しました。
 今のシーズンは、久居や香良洲(からす)地区の梨が出回り始めらしく、見たらかなりお値打ちだったのでわしも買ってしまいました。
 
 ついでに園芸売場ものぞいてみたら、一つ100円200円の花の苗ももちろんあるのですが、家庭で育てられる熱帯スイレンとか、アグラネオマだの、ネオレゲリアだのといった、高級そうな植物が扱われていて、こういうタイプの園芸店はまだ三重県でも珍しいのではないかと思います。このように充実しているのは、朝津味を運営する(株)フューチャー・ファーム・コミュニティ三重の社長を、園芸植物大手の(株)赤塚植物園の会長である赤塚充良さんが務めている関係かもしれません。

 一方で、腑に落ちないこともありました。店内には「朝津味のフェイスブック始めました」というポップが随所に貼ってあります。SNSを奨励するのなら、お客が売り場や気に入った商品をどんどん拡散できるように店内は撮影OKにすべきではないでしょうか。方針がチグハグです。
 また、売り場の店員さんの対応も正直いまひとつで、わしがいろいろ買ったときに買い物バッグを持っていなかったのですが、レジでは「袋は一枚いくらいくらですが、お付けしましょうか?」のような一言はありませんでした。
 ほかにも、車いす用と思われる店の入り口のインターホンの真ん前にカートが並べられていたりして、やはりこの手の「6次産業」のお店に特有な詰めの甘さが気になります。
 ただし、スタッフの方は元気ではきはきした気持ちのいい対応をしてくださる方がほとんどです。もう少し慣れればオペレーションもうまくいくことでしょう。


 これも良いのか悪いのかわかりませんが、朝津味の施設のかなり目立つところに、農水省の交付金を使って建てられたことを示す銘板があります。レストランのテーブルやイスにもすべて、「平成28年度農産漁村振興交付金」というテプラが貼られています。
 津市のホームページを見ると、いわゆる地方創生の農業版の事業として、朝津味には約4億3700万円もの国費(交付金)が投入されていることが分かります。
 先ほどわしは6次産業を行政は積極支援していると書きましたが、朝津味は津市の観光交流人口を2割増加させるという非常に壮大な構想の一環であり、単なる直売所や食堂ではなく、三重産大豆で豆腐を、県産米で和菓子や惣菜を作る「工房」や、心と健康、食と文化、環境と歴史などをテーマとした交流の場とする「研修室やキッチンスタジオ」も備えている総合的な施設だったのです。
 しかし、このような施設の総合化、複合化がビジネスとしての6次産業の経営を見えにくくする気がします。

 そもそも、産直とレストラン、農業体験などを複合した6次産業ビジネスは、三重県伊賀市のモクモク手づくりファームや、福岡県の「ぶどうの樹」(グラノ24K)などが嚆矢です。これら成功事例を横展開、つまり皆で真似しようと農水省などがいろいろと補助制度を作り始めたわけですが、一説ではこれら補助事業でスタートした6次産業ビジネスは投資が過大ゆえに経営が苦しいところも少なくないそうで、実際に南アルプス市の「完熟農園」のような例さえ生まれています。

 縁起でもないと怒られそうですが、何かもうひとひねり、ふたひねりの工夫やインパクトがないと、朝津味も厳しい産地間競争の中では優位性は保てないのではないか、という気はします。
 もっとも、朝津味では伊勢湾のとれたて魚の販売や、木工教室、コンサート、などなどのイベントを多彩に展開していくようです。こうした部分で魅力がより拡散すれば、朝津味のスケールメリットを最大限活用することができるのでしょう。期待したいと思います。
 
■朝津味ホームページ(高野尾花街道)  http://takanoo-hanakaido.jp/


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