2016年8月23日火曜日

あなたのそばに、補助金企業

 政府が、中小企業のうち従業員の賃上げに取り組むものに対して、新たな支援を行う方針を決定したと読売新聞などが報じています。(賃上げ中小企業、補助を倍額…事業の拡大支援 8月23日付け
 具体的には、 従業員数が製造業なら20人以下、商業・サービス業では5人以下の、いわゆる「小規模企業」を対象とした補助制度である「小規模事業者持続化補助金」を改正して、賃上げを行った企業には、販路開拓や事業の海外展開にかかる費用などに対して、1事業あたり現行は補助上限額が50万円であるところ、2倍の100万円に引き上げるということです。
 小規模企業の経営基盤の強化と、従業員の賃上げを同時に後押しする一石二鳥(?)の補助金として経済産業省は平成28年度第2次補正予算案に関連費用を盛り込む方針だそうです。
 これら小規模企業を含む中小企業全体の賃上げの見通しは、
・商工中金によれば、「中小企業の約72%が平成28年に賃上げ(定期昇給/ベースアップ・賞与などの引き上げ)を予定している。定例給与の引き上げ幅は、約72%の中小企業が3%未満と小幅にとどまる。」(2016年4月7日「中小企業の賃金動向に関する調査」)
としているのに対し、
・帝国データバンクは「正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と回答した中小企業は47.3%。」(2016年2月15日「2016年度の賃金動向に関する企業の意識調査」)
 となり、支給実態を見てもかなりのバラつきがあるようです。



 安倍内閣のインフレ年率2%という目標は、達成時期が「平成29年中」に先延ばしされています。多くの経済学者は、アベノミクスについて少なくともインフレ目標の達成は今後も不可能であると見ているようですが、帝国データバンクも書くように政府としては賃金上昇がアベノミクスの成否を決定する重要なファクターであるため、8月2日に閣議決定された新しい経済対策「未来への投資を実現する経済対策」でも最低賃金の引き上げを実行するとしています。
 今回の「小規模事業者持続化補助金」の運用改正についても、業績回復の遅れなどで特に賃金アップが浸透しない小規模企業をテコ入れするものでしょう。

 ただ、数人から十数人の従業員とはいえ、一時金にせよ、ベアにせよ、賃上げに踏み切るには将来に向けての明るい業績見通しと手持ちの現金がなければ実行することができないのは当然です。
 常識的に考えて、補助金の上限を2倍にしたところで ~それも50万円が100万円になるだけ~ 経営者が賃上げを決断することは極めてまれなのではないかと思わざるを得ません。

 さて、ここで「小規模事業者持続化補助金」について簡単に説明しておきます。
 この補助金平成25年度に創設された制度で、経産省が商工会議所の全国組織である日本商工会議所(日商)と、同じく商工会の全国組織の全国商工会連合会(全国連)を通じて実施しています。小規模企業が商工会議所や商工会の経営指導や助言に基づいて経営計画を策定した場合、この経営計画に基づいて新たに行う販路開拓等の取り組みに対して補助金を交付するというものです。
(平成25年度の第1回目の公募の際も、雇用を増加させる経営計画に基づく取り組みには最大100万円まで補助する仕組みとなっていました。なので今回が初めてというわけではありません。)

 では、実際にどれくらいの小規模企業が、どのような「経営計画」を作って採択されているでしょうか。
 平成25年度補正(平成26年5月2日)採択   3,147件
 平成25年度補正(平成26年7月1日 二次受け付け分)採択  10,180件
 平成26年度補正(平成27年4月30日 第1次締切分)  非公表
 平成26年度補正(平成27年7月3日 第2次締切分)  非公表
 平成26年度補正(平成27年9月11日 追加公募締切分)  非公表
 後半のほうは採択合計数が公表されていないのですが、おそらく日商、全国連で毎回数千件から1万件くらいは採択していると思うので、たくさんの類似の中小企業向けの補助金でもこの持続化補助金はバラ撒きに近い空前のスケールの補助金ということができます。
 もっとも、日本全国には300万以上の小規模企業、個人事業主がいるので、その1%以下に過ぎないのですが。

 補助事業の内容のほうですが、例えば直近の平成27年9月11日の例を見ると、SNSを使った顧客開拓とか、商品のラベルやパッケージのリニューアル、自社商品のブランド化、小口宅配の開始、などなど、小さなビジネスが並びます。補助金の受給者(企業名、屋号)は公開されているので三重県の採択例を見たら、きっとあなたがよく知っている近所のお店もたくさん採択されているのがわかるはずです。あなたの隣にも補助金採択企業はいるのです。(別にそれが悪いわけではありませんが。)

 このような無数の採択例を見ていると、小規模企業にとっては、こんなささやかな取り組みでも大きなチャレンジへの第一歩となるのだというエールを送りたくなる一方、しかし、本当に補助金がもらえなければ取り組めなかったことなのだろうか?という印象は持ちます。
 多くの小規模企業にとって、事業は拡大を目指すというより「生業」なので、やはり商工会議所のサポートや補助金が強い動機付けになるということなのでしょうか。 

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