2016年8月9日火曜日

ハッピーニュースの罠

 先日このブログで、三重県の財政状況が極めて厳しい ~歳出が膨らみすぎて税や地方交付税などの一般財源で賄うことができない~ 状況であることを書きました。(はんわしの評論家気取り
「三重県財政の現状と課題認識」 2016年7月30日
 これは詳細な資料がネットで公開されており、だれでも見ることができますし、わかりやすいので理解も容易です。これを読む限り、社会保障費や公債費(今までの借金の返済)は減らせないので、人件費などの固定費削減と一般事業費のいっそうの削減は避けられないでしょう。
 ただ、これは昨日今日始まった話ではありません。ここ数年で三重県の財政は急速に悪化しており、政策意思決定の形成過程で、過度な歳出を抑制することはきっと可能だったはずです。
 しかし残念ながら、一般県民の県財政に関する関心は高いとは言えません。と言うか、ほとんどは無関心だと思います。
 県が不名誉なこの現状 ~失政とは言いますまい~ を自ら進んで積極的にPRするはずがありません。こういった事態を明るみにさらすのがジャーナリズムの役割だと思いますが、わしが見る範囲、この財政危機をまともに取り上げて報道している新聞社もテレビ局も知りません。このような課題を県庁内で話し合う「三重県行財政改革推進本部本部員会議が開催された」という事実は客観報道されますが、本質を深く掘り下げはしないのです。
 財政悪化が、このようにマスコミから無視されるのはなぜなのでしょうか?



 先のブログに寄せられたコメントにもあったように、「マスコミが報道しないのは、資料の内容が理解できないからです」というのはその通りだと思います。県庁番の記者はさまざまなバックボーンの方たちで経験は豊富ですが、地方財政や地方税制に詳しい人はほとんどいません。県税が増えると地方交付税が減ってしまうことも知識としては知っているでしょうが、ネタ自体が地味なうえに、それを誰にでもわかるように簡潔に記事や番組にするのはかなりの力量が必要です。ましてや彼らは転勤族で、三重県政のことがやっとわかった頃に新任地に栄転してしまうので、バブル経済崩壊以降繰り返されてきた景気対策事業などの過去の経緯も知らず、粘り強い取材もできないのでしょう。

 さらに、記者も人員が減らされています。大きな支局でも記者は2~3名くらいですし、中には三重県全域を一人の記者がカバーしているところさえあります。日々、多くの事件や事故、判決、行事、資料提供、会見があるので、一つの問題をいちいち深く掘り下げておられない事情もあるでしょう。これは同情すべき点です。

 しかし、わしが何とかならないかと思うのは、県民自体が、財政のようなややこしい、出口のない、長いスパンの問題の重要性がわかっていないことです。県が財政破たんしても自分たちには影響がないとなんとなく思っていますし、結局最後は国が何とか助けてくれると思っているのです。問題が大きすぎ、漠然としすぎていて、アタマの中で破局がイメージできない典型的な例です。

 むしろみんなが求めているのはハッピーニュースのようです。
 毎日毎日、悲惨な交通事故や陰惨な事件が起こっています。企業は悪いことばかりしているし、公務員は遊んでばかり、政治家は利権あさりばかりしています。中国や北朝鮮は日本を侵略しようと狙っています。新聞やニュース番組を見ると暗い気持ちになって救いがないので、そんな報道は全国版や全国ネットに任せて、見聞きして幸せになるハッピーニュースこそが、地域から吸い上げられるべきニュースである、ということでしょう。

 これも以前の話ですが、ある街で役所が絡む不正事件が起こったことがありました。ケーブルテレビの関係者に、なぜこのことを報道しないのですか、とわしが聞いたら
「それは大手テレビ局や大新聞がやることで、私たちは地域住民から支持されるニュースを伝えるのが本務です」
 とはっきり言われたことがあります。
 ケーブルテレビの番組はあくまで商品で、ジャーナリズムとは別次元なのです。
 地域のミニコミ誌とかローカルニュースサイトもそうで、やはり何かのはずみでそんな話になったとき、
「うちはハッピーニュースしか取り上げません」
 と教えてもらいました。
(わしがハッピーニュースという言葉を初めて聞いたのもその時です。)

 しかし、そんなことを気にしながら新聞の三重地域版とか、テレビの県内ニュースを見ていると、こういったケーブルテレビレベル(失礼!)の報道が意外に多いことに気づきます。NHKなんか、三重のローカルニュース番組の中で県内各地のケーブルテレビのハッピーニュースをわざわざ再放送していたりします。
 どこかのお寺でなんじゃもんじゃやが満開だとか、絵手紙のグループが10周年の発表会をやったとか、何とか高校の学生が駅前で募金を集めたとか、そんなハッピーニュースがてんこ盛りなのです。

 しかし、です。
 これが本当に報道なのでしょうか、ジャーナリズムなのでしょうか。

 議論を吹っ掛ける気は毛頭ないのだけれど、地方分権が大事、地方創生が重要命題だというのなら、これを監視し、建設的に批判する、そんな地方ジャーナリズムがもう少し健全に機能すべきなのではないでしょうか。 

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