2016年9月1日木曜日

ステレオタイプで捉える危険

 三重県商工会議所連合会が半年ごとに実施している、小規模企業を対象にした本年上半期(1~6月)分の県内景況調査結果が一部の新聞で報じられています。(伊勢新聞「小規模企業の景況感悪化」 2016年8月31日付け)
 これによると、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた現状DIは、昨年の下半期に比べ5.9ポイント悪化のマイナス27.7でした。
 「現状DI」とは、平成27年7~12月の経営状況は前年の同期に比べてどうだったか、という質問に回答した企業のうち、「増加した」「好転した」とするプラスの回答数から、「減少した」「悪化した」とするマイナスの回答数を差し引いた値です。つまり、景況に対する経営者の主観、印象を表しています。
 もちろん、経営者は通常のサラリーマンに比べてアンテナの感度が高い人が圧倒的に多いので、風を読む感覚は正確なことが多く、尊重すべきものがあります。
 しかし、三重県商工会議所連合会のホームページで、この調査の結果を過去から経年的に見てみると、平成9年以来、一貫してDIはマイナスで、0.0以上のプラスになったことは一度もないのに気づきます。
 つまり、この調査に回答している三重県内の小規模企業の経営者は、調査時点によって多少のアップダウンはあるものの、基調としては常に景況に対してネガティブな情勢判断を持ち続けていたことになります。
 こんなことってあるのでしょうか。


三重の景況   №67 (平成27年7 月~12月期) 三重県商工会議所連合会
この表には最新の平成28年1~6月期は記載されていません

 残念ながら正式な調査結果報告がホームページなどにはまだ掲載されていないため、正確な理由はわかりませんが、報道によるとこの調査は県内の小規模企業9689社を対象に実施されていますが、回答率は31%に過ぎません。業種も多様であり、地域性も大きい小規模企業を一括りにした ~しかも回答率も決して高くない中で~ 景況判断には限界があるということかもしれません。

 実際に、わしが話を聞く機会が多い小規模企業経営者の皆さんも、景況が厳しいという声は多数あるものの、新製品・新サービスの開発や、新市場への展開などによって事業を拡大させたり、しっかり安定させたりしているケースは非常に多いのです。
 そして、実はこのようにしっかりと稼いでいる経営者からよく寄せられる不満が、「多様な中小企業を、弱者として一括りにしている」という、中小企業弱者論ともいうべき社会の不用意な決めつけです。
 中小企業は常に大企業やナショナルチェーンに虐げられている。中小企業は賃金が低く、労働条件も悪い。ワンマン社長で組織内の風通しが悪い。といった思い込みが蔓延しているというのです。

 言葉は悪いかもしれませんが、今回のこのような調査も、そういった中小企業への悪いイメージを増幅させている面はあるのかもしれません。

 これは根の深い問題で、国や地方自治体がこの20年間、営々と巨額の税金を「中小企業振興」に投入してきたにもかかわらず、誰が見ても納得できるような目覚ましい成果が上がっていないのは、こういったミソもクソも経済弱者として一緒くたにされた「中小企業」というターゲットがもはやフィクションだからです。
 中小企業施策こそ細かいセグメントが必要であり、そのためには正確で詳細な現状分析と統計が必要なのですが、多くが指摘するように、日本の産業統計は製造業にシフトしており、今や主力産業となっているサービス業に関しては統計データが圧倒的に不十分です。

 わしが感じるような、と言うより頑張っている多くの中小企業経営者が感じるような、この種のアンケートと実態のかい離への違和感は、こうした産業統計の正常化、適正化のためのエネルギーに向けられるべきかもしれません。

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