2016年9月20日火曜日

ふるさと納税は国営「特産品通販」

 京都新聞(9月19日付け)の表層深層に掲載された ふるさと納税 国にしわ寄せ という記事が波紋を広げているようです。
 自分が応援したい自治体にお金を寄付をすると、自己負担額(2千円)を差し引いた差額が国税である所得税と、地方税である住民税から減額される制度であり、地域活性化を目的に平成20年度から始まったものの、当初は期待されたほど浸透しませんでした。それが徐々に浸透してきたのは、一部の自治体が酒類や牛肉などの高級特産品や地域内の工場で生産されたパソコンや家電製品などを返礼品とする、いわゆる高額返礼品競争が始まった3年ほど前からではないかと思います。
 平成27年度からは減税対象となる寄付額の上限引き上げや、年間5自治体までなら確定申告不要の「ワンストップ特例制度」も開始され、ますます競争は苛烈になっています。書店には「ふるさと納税制度でお得に買い物しよう」というノウハウ本がずらり並んでおり、新聞記事でもどこどこ市が返礼品を高額化した途端、寄付額が前年度の何倍になった、といったことが誇らしげに報道されています。
 しかし、当初から有識者が指摘していたように、これは国の税金で寄付者に割引で買い物をさせる国営通販ともいうべき社会主義的な制度であり、タコが自分の足を食べているのとなんら変わりません。

 京都新聞のこの記事の内容は以下のようなものです。
京都新聞(9月18日付け朝刊) より
・長崎市では昨年度(平成27年度)のふるさと納税の赤字が約9千万円となった。具体的には、長崎市への寄付受入額が7200万円。これに対する返礼品が4000万円だった。一方で、他の自治体に長崎市民が寄付した分の住民税軽減額は1億1600万円にものぼったため。
・このような「赤字」は税収の豊かな大都市圏ばかりでなく、地方都市でも生じるようになってきている。
・総務省によると、昨年ふるさと納税を利用した人は130万人で前年の3倍。寄付額は1470億円となったが、それを反映した今年度の住民税の軽減額は999億円となった。これは自治体にとって税収を失ったことを意味する。
・ただし、地方税が減収した分は国がその75%を地方交付税によって補てんする仕組みがある。その意味で、減収した地方のダメージはまだ少ない。
・その一方で国(政府)の財政にとっては、所得税の軽減分はそのまま減収となる(はんわし注:国は補てんしてくれる地方自治体と違って、国は助けてくれる人がいない)。この所得税の減収分と、地方自治体への地方交付税の上積み額の合計(=国の赤字)は数百億円とも言われている。
・自治体の収支から見ても返礼品の購入費は大きな割合を占める。昨年度は寄付額1653億円
に対して返礼品の費用は633億円。事務費と送料を含むと全体の経費は793億円、全体の48%にも達する。
・今年7月の全国知事会議において愛知県の大村秀章知事は、返礼品は寄付金額の1割程度とすべきと発言し、「返礼品として地元産品を買い取ることは形を変えた公共事業だ」と現在のふるさと納税の在り方を批判した。
・自治体からは、(返礼品に使われることで)生産者の意欲が高まり、産業振興の流れが生まれている、という声もあるが、制度が当初の目的から外れていけば、「金持ち優遇」、「趣旨に反する」という批判も強まりかねない。

 繰り返しますが、住民税が減収となった地方自治体に補てんされる地方交付税の財源は国民の税金(もしくは将来の国民へのツケ)です。
 一自治体というミクロで見れば、高額返礼品で寄付を集め、それを原資に地域内の産品を仕入れ、事実上、寄付者に対して販売することでもうけが出ればハッピーですが、マクロに見て自分が自治体の住民であると同時に日本国の国民であることを再認識すれば、この制度は持続可能性のない、きわめて場当たり的な制度であることが理解できるでしょう。

 国の借金は1100兆円を超えています。財政破たんを少しでも遅らせるには国(政府)の無駄遣いをやめるしかありません。
 地方もまた疲弊しているところが多くあるのは事実であり、それを応援したいという寄付者の力を借りることも重要ですが、現在の返礼品競争はゆがみ切ってしまっています。国(総務省)は指導力を発揮して正常化するべきと思います。

 わしはよく、地方自治体の地域活性化担当者から、ふるさと納税はありがたい。返礼品の需要が増えて地域内に特需が生まれている。地域のファンも増えるし、そこから意見を直接聞くマーケティングの機会にもなり、企業や生産者の足腰が強くなる。という声もよく聞きます。
 しかし、地域産品を地域外に売り込むのは経済行為、商行為そのものであって、企業がやればよいことです。公共が関与にはデメリットも副作用もあることは理解しなくてはいけません。国や自治体が管理する社会主義市場に健全な発展拡大は絶対にないのです。

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