2016年10月10日月曜日

○○-ビズはすべて成功しているのか?

 先週の日経新聞の中部版に、岐阜県関市が今年7月に開所した セキビズ (関市ビジネスサポートセンター)の相談件数が9月末までの2か月間で270件にも達したという記事が出ていました。
 このセキビズは、岐阜県内で中小企業の数が2番目に多いという関市で、それらの中小企業が抱える、販路拡大、商品開発、新分野進出、資金調達などといった経営課題を、無料相談を通じて現状把握から課題解決の提案・実行までをワンストップで継続サポートする施設であり、起業や創業についてもサポートしています。
 このセキビズの大きな反響は関市の当初想定を大きく上回っており、全国展開を目指す刃物メーカーの商品開発の支援やサービス業の開業など具体的な成果も現れており、セキビズでは現在2名の相談員をもう一人増員することになったとのことです。(記事名「ビジネス支援センター 予想以上の相談件数)
 セキビズをはじめ、○○ビズ(Biz)と呼ばれる施設が全国で徐々に広がっています。これは法律で必置とされている機関というわけではなく、もちろんフランチャイズでもなく、静岡県の富士市産業支援センターf-Biz(エフビズ)のセンター長で、中小企業支援業界のカリスマである小出宗昭氏の薫陶を受けて、市町村が自ら設立しているものです。

 小出さんの中小企業支援の哲学については、以前講演を聞きに行ったことのことをこのブログでも取り上げたことがあります。(はんわしの評論家気取り 成功事例から学ぶ!中小企業のイノベーション(2015年11月13日)
 詳しくはこちらをお読みいただきたいのですが、小出さん(エフビズ)の基本的な考え方は
・中小企業、特に家族経営のような小規模企業は、様々な経営課題はあっても、その最大公約数は「売り上げ」であり、売り上げをアップさえすれば一定は改善することができる
・商工会議所など既存の産業支援機関でも相談には応じているが、中小企業が求めているのはすぐに取り組めて、かつ、すぐに効果が出る対策であり、そのようなニーズには応えられていない
・このため、エフビズでは何度でも経営者と面談を繰り返し、何が課題かを特定し、その対策を共に考え、実行する、というプロセスを企業と伴走しながらサポートする
 というものになるかと思います。

 セキビスにせよ、オカビズ(愛知県岡崎市)、アマビズ(熊本県天草市)、シマビズ(長崎県新上五島町)など富士市のエフビズと共鳴しているビズセンターは、支援のターゲットを「売り上げアップ」に絞り込み、支援方法も「伴走」に徹していることが共通しているようです。
 また、これらのビズセンターのセンター長は、全国から公募された能力本位の人物が就任しているのも共通しています。高給ではありますが、結果を出さないと地位は安泰でない厳しい側面があります。

 今、国(経済産業省)の肝いりで、エフビズをモデルにして制度設計されたという「よろず支援拠点」という支援機関が47都道府県に設置されていますが、これは一つの県をまるごとカバーする建前であるため、きめ細かい「伴走」は現実的に不可能です。また、全国の多くのよろず支援拠点は、各都道府県の中小企業支援センターといった公益法人(いわゆる天下り団体)が業務を請け負っており、組織の硬直化や、業務の融通性のなさ、相談件数や補助金採択数のノルマに対する疑問の声も少なくありません。

 安倍政権による地方創生政策が開始から数年経過し、多くの地方自治体は、住民の定住確保やUターン・Iターンの促進のためには、働き口の確保、すなわち地域の中小企業が活発に事業活動を行っていることが必須の条件なことをあらためて再認識しています。
 そのためには小回りが利く、伴走型の中小企業支援が重要なこともコンセンサスになっており、市町村レベルでこういった中小企業支援機関を独自に持とうというところも増えてきています。セキビズのように成果が広く知られるようになれば、この動きはますます広がっていくでしょう。

 一方で、ビズセンターに関して、わし個人としては大変素晴らしい取り組みだと確信しているものの、疑問な面(というか、よくわからない面)も多々あります。

 一つは、地域の中小企業支援機関としてすでに商工会議所や商工会がある中で、外観上は、ビズセンターの業務と重複しているように見えることです。商工会議所や商工会は法定の必置機関であり、人件費の一定額は県から補助されているといった準公共敵機関の側面があるため、逆に言えば、本来の企業支援や産業政策提言といったほかに、税務署やハローワークなどとも関連する幅広い業務を行っており、まさしく「ワンストップ」なのですが、それゆえに業務が幅広すぎて収拾がつかなくなっている面があります。これを整理改革し、本来の企業支援業務に特化できる体制変革も考えなくてはならないでしょう。

 もう一つは、ビズセンターの成果の捉え方です。
 先ほど書いた以前のこのブログでも触れましたが、ビズセンターは、仮に提案の内容を実行してうまくいかなかった場合は、さっさと次の方法を試せばよい、というスピード重視の考え方です。
 しかしながら行政機関というのは、成果と同じくらい「検証」が重要で、うまくいかないときはなぜそれがうまくいかなかったのかを解明しなくてはなりません。この検証の事務作業は膨大で、行政機関はそういったところにマンパワーを割いているので、これがいいか悪いかという議論はありますが、なにしろ「これがダメだったらあれへ」という敏捷性は行政では必ずしも受け入れられません。
 ビズセンターも、ブームが一服し、相談件数が落ち着いてきたころから、オーナーである市町村役場(議会も含め)から必ずこのことへの説明責任が求められるようになるはずです。これはアジェンダ設定の問題なので、今のうちに明確に双方で合意しておく必要があるでしょう。 

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

実態を確認されることをお勧めします。地元信金が無理な動員を掛けており、事業者は辟易としていたりしますので。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 物事は何にせよ多面性があるので、ビジネスサポートセンターの「実態」も多様でしょう。
 わしは一市民であって、情報はマスコミ報道やネットから自分が得られる範囲で把握しているにすぎません。信金が無理を強いていることが大きな問題であれば、おのずと社会に伝わってくるのではないでしょうか。