2016年10月24日月曜日

職場で重要なのは「心理的安全性」

 ビジネスにしろ社会システムにしろ、進歩のために重要なのがイノベーション(革新、創新)であることはもはやコンセンサスになっていると思います。イノベーションにつながるようなアイデアを、どうすれば職場や仕事場で生み出すことができるのかについては大学などでさまざまな研究が行われていますし、企業でもいろいろな試行錯誤が続けられています。
 そんな中で、GIGAZINEで紹介されていた、エイミー・エドモンドソンさんによる「仕事場において重要なのは個人の資質ではなく、心理的安全性である」という説が興味深かったのメモしておきます。(職場を崩壊させないために必要な「心理的安全性」を作り出す方法 2016年10月20日
 わしは全然知らなかったのですが、エイミー・エドモンドソンさんはハーバードビジネススクール教授であり、平成25年にはThinkers50「世界で最も影響力のあるビジネス思想家50人」に選ばれている世界的経営学者とのこと。
 エドモンドソン教授はまず、夜勤の看護師が、ある患者への投薬量が多いことに気づき、担当医に電話で確認しようかと一瞬迷いましたが、以前同じように電話した時にけなされたことを思い出して、電話することをやめてしまったエピソード、また、軍の若いパイロットが上官が重大なミスをしているかもしれないことに気づいたものの、上官に対して発言することを思いとどまったエピソードを披露します。どこの職場でも起こりそうなこと ~と言うか、実際に頻繁に起こっているであろうこと~ だと思いますが、そもそもこうしたことはなぜ起こってしまうのでしょうか?

 教授によると、「人が発言することをやめること」の原因は非常に単純です。誰であっても、自分が無知で無能で押しつけがましくてネガティブな人だと思われたくないからです。この具現化が、無知だと思われないためには「質問をしない」、無能だと思われないためには「間違いや弱点を認めない」、押しつけがましいと思われないためには「アイデアを出さない」、ネガティブだと思われないためには「現状を批判しない」というような行動です。

 その一方で、世の中には、社員が仕事上で対人関係のリスクをとったり、物事を学ぶことに前向きな職場もあります。これらの職場を教授は「心理的な安全性(Psychological safety)のある職場」と命名します。そして、「懸念・疑問・アイデア・ミスなどを声に出しても大丈夫だ」という社内関係は、その職場にこの心理的な安全性があるかどうかによって決まるというのです。

 これを実証するために、高度専門病院で複数の医療チームを対象に医療過誤の報告数と、そのチームの特徴の相関関係を調べたところ、医師や看護師などのメンバー間が「開かれた雰囲気」であるチームは医療過誤の報告数が多いことが分かりました。これは、よいチームであるほどメンバーの間でダブルチェックが行われ、ミスを減らすために常に話しあい、新しい方法を見つけているため」であり、「ミスの報告が多いほど心理的安全性が高い」と結論付けられるそうです。

 このように心理的安全性が高い職場を作るためには、仕事においては自分たちがこれまで経験したことのない「不確実なこと」や「人々が頼り合って行うこと」が山ほどあるということを明確にしたうえで、
1)職場の全員の考えや声が必要であるという前提を形作ること
2)「人はミスを犯す」と認め、「ミスをしました」という言葉を素直に聞ける雰囲気を作ること
3)チーム内の「声」を生み出すため、チームのメンバーにたくさん質問すること
 を3原則とすることだそうです。

 しかしまあ、偉大な経営学者に疑義を挟むものではないですが、わし的には、この3原則あたりは、ある種の常識的な示唆だと思います。特段目からウロコの話ではありません。
 エドモンドソン教授の凄いのはここからです。
 つまり、この3原則を自分の職場に当てはめたとき、当然ながら「ミスを報告しやすくなるとメンバーの責任感が希薄になり、結果的に仕事の質が落ちるのではないか」という疑問がわきますが、これに対する教授の説明が明快なのです。

 グラフの縦軸を「心理的安全性」、横軸を「モチベーションと責任」と設定すると、
A:無関心ゾーン(Apathy Zone)
 仕事における責任が少なく、また心理的安全性も低い
B:心地よいゾーン(Comfort Zone)
 責任が少なく心理的安全性が高い
C:不安ゾーン(Anxiety Zone)
 責任感やモチベーションが高いのに心理的安全性が低い

の3つに分化されます。チームの管理者が最も危惧すべきなのは、「よい仕事をするための責任」を重視しすぎて、互いに話し合うことを怠り、その結果、メンバーがCの不安ゾーンに入ってしまうことなのです。
 イノベーションを起こせるような「高パフォーマンスゾーン」(はんわし注:グラフの右上の空白の部分)に移行するにはモチベーション・責任感はと心理的安全性とが共に高まった状態にすることを目指せばいいことになります。

 もちろん、実際の職場は人間環境や社会環境が複雑で輻輳していますが、マネジメントの方向性のヒントにはなるような気がしました。

0 件のコメント: