2016年10月9日日曜日

縮小社会に向けた議論の難しさ(マニアック)

 幸いなことにと言うか、このはんわしブログには大学のアカウントからのアクセスも結構あり、時間帯から見て学生と思われるので、地方自治や地域経済に関心が高い若い人が見てくれているのかもしれません。
 その教材となればいいと思い、(地方自治体としての)三重県で、今まさに始まっている来年度(平成29年度)の当初予算議論に関する三重県議会でのやり取りの記事を紹介しましょう。
 三重県(地域としての)の地方紙である伊勢新聞が9月5日付け朝刊の一面で、県議会全員協議会(全協)の様子を伝えたものです。(記事名「県、政策的経費55%以下に 来年度当初予算の調製方針」)
 人口減少と高齢化、それに伴う経済の成熟、ひいては地方財政の縮小均衡は近い将来確実に現実になるわけですが、それは客観的なデータによってアタマでは理解できることでも、実際に自分たちの生活に関わってくる「予算支出額の減少」という事態に直面すると、現場ではこのような類の議論が展開されるということを、具体的に知られる好例です。
(はんわし注:学生向けを前提としているので、専門用語もそのまま引用します。)

 以下、記事の概要を紹介します。

1.三重県知事は9月4日の全協で平成29年度当初予算の調製方針と、県政の方向性を示す経営方針案を示した。
2.来年度予算の歳入見込みは、平成28年度の予算編成で実施した企業会計からの一般会計への借り入れをしないことや、財政調整基金の残高が100億円減少したため、今年度より260億円少ない5342億円となる。
3.一方、歳出見込みは平成34年度に償還ピークとなる公債費や、増加を続ける社会保障関連経費で今年度より60~70億円の大幅増加となる。
4.これらのことから「歳入と歳出の両面で、より深刻な財政状況にある」とした。
5.そのうえで、来年度の経営方針案として、5月に県内で開催されたG7主要国首脳会議で向上した知名度を生かした観光客の呼び込みや、社会経済情勢の変化への対応として共生の地域社会づくりなどを重点的事業することを挙げた。

 この説明を受けて、県議会議員との以下のようなやり取りも報じられています。

5.A議員は政策的経費の大幅な削減を「異常な状況」と指摘し、「もっと柔軟な編成でよいのでは」と質問。これに対し知事は、「柔軟にする必要はあるが、財政状況が厳しいのは事実で、抑制が必要」と回答した。
6.B議員は予算方針に対し「もう少しやる気がにじみ出る予算にすべき」「明るい部分も見えるようにしなければ、これでは情けない」などと述べた。知事は「おっしゃるとおり必要な投資はやらなければならないので、そのための知恵を出したい。しかし公債費の償還ピークがあるの現実」と歳出削減に理解を求めた。
7.C議員は経営方針案について「違和感というか物足りなさを感じる。福祉向上の姿が見えない」と指摘した。県戦略企画部長は「経営方針案は重点策を示したもので、全事業を網羅的に示したものではない」との趣旨を回答。
8.D議員も経営方針案について「力強さを感じない。厳しい財政状況を踏まえてブレーキをかけて絞り込んだのか、G7が終わって一段落してしまったのか」と県の方針を質問。知事は「気合は十分入っている」としながらも、「庁内の議論で具体的な取り組みが完成していない部分があるので迫力に欠けるのだと思う」と評論し、「最終案に向けて具体的な取り組みがよくわかる表現にしたい」と述べた。

 繰り返しますが、これは伊勢新聞を参考にした引用で文責ははんわしにあります。
 議事録ではないので、本当に一字一句このようだったのか、ニュアンスはどうだったのかはもちろんわからないわけですが、この記事を読む限り、日本の組織の意思決定に特有といわれる「現状の分析はするが、原因の分析はしない」いう特徴が非常によく表れている気がします。
 議員たちは執行部に対し、やる気がない、物足りない、力強さがない、といった感想や印象を述べるにとどまり、事ここに至ったそもそもの県政の原因は何なのかの究明と、その原因を踏まえて経営方針を具体的にどうブラッシュアップしていくか、県民への説明と合意をどう形成していくのか、といったこれから議論すべき方向性すら、この日の話題に出たようには読み取れないからです。
 今後、県議会での議論が深まっていくことを期待したいと思います。

■参考資料 (三重県議会のホームページより)

1)平成29年度三重県経営方針(案)について  

2)平成29年度当初予算調製方針


7 件のコメント:

県庁職員ではない公務員 さんのコメント...

県庁発表資料(HP)と報道による情報では、財政が急にここまで厳しくなった理由はわかりませんね。そこを明らかにせず、さらに無い袖を振らそうとする議員さんばかりでは、それこそ公務員天国ですね。

匿名 さんのコメント...

知事の国政出馬向けパフォーマンスによる三重県財政食い潰しのせいですか?😄

匿名 さんのコメント...

その場の空気で進んでしまうだめな論議の典型

匿名 さんのコメント...

議員と首長が馬鹿で破綻待ったなしなのに、なんでそれが公務員天国になるんだか…

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 皆さまコメントありがとうございます。
 このイタい全協のやり取りを擁護する点があるとすれば、提出資料の「三重県経営方針案」はまだ多くが見出ししか決まっておらず本文がスカスカなので、見せられた議員たちは印象とか感想くらいしか意見のしようがなかったということかもしれません。(すると、なぜこんな不完全な状態で議題にしたのかという疑問は残りますが。)
 「公務員天国」というのは、議員も首長も「特別公務員」なので、広義で捉えると公務員だという意味ではないでしょうか。ただ、わしらのような普通公務員から見れば、よく世間一般が特別職も含めて公務員を十把ひとからげにしているのはやや理不尽な気もしますが。

県庁職員ではない公務員 さんのコメント...

え~と、「公務員天国」の意味を補足いたしますと、「チェック機能が破綻した状態で仕事をする公務員」ということで、今回の場合は、狭義では県の財政担当部局を、広義では普通公務員全員を指したつもりでした。
ただ、匿名コメント様達が県庁公務員だとすると、意識の高い方が多いということで、ここでは狭い範囲でとさせていただきます。実情を知らずに失礼いたしました。
もっとも、首長の暴走をなんとか緩める(止めるわけではありません)のも普通公務員(と議員)の仕事ですけどね。辛口でスミマセン。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

なるほど。ありがとうございます。