2016年11月10日木曜日

伊勢おもてなしヘルパー研修で考えた

 先日、伊勢神宮・内宮で、「伊勢おもてなしヘルパー」の実地研修会に参加してきました。
 伊勢市や伊勢市観光協会などが事務局を立ち上げて来年からスタートする、車いす利用者の内宮参拝をサポートする有償ボランティア(伊勢おもてなしヘルパー)を養成するための研修会です。
 近年、伊勢神宮では車いす利用による参拝者も急増しているそうで、そのための無料の電動車いすも備えられています。(ちなみにスズキ製でした。)
 これを使えば参道の砂利道はかなり楽に進めますが、やはりどうしても階段は登れないため、25段の階段がある正宮(正殿)の前までは行くことはできません。下から遥拝する形になります。
 しかし遠方からの方にはせっかくの機会なので、なるべく上って参拝してもらうため、電動から普通の車いすに乗り換えてもらい、ボランティアスタッフがその車いすを吊り上げてのぼる、ということが、おもてなしヘルパーの業務のいわば目玉になります。
 具体的な担ぐ方法については、コツをつかめばわりと簡単にできるそうで、講師をつとめた伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの経験豊富なスタッフから指導を受け、ヘルパー研修生が交代しながら車いすを持ち上げ、あるいは実際に自分が乗ってみて、階段をのぼる時の傾斜とか衝撃も体験しました。


 しかしこういったテクニカルな話はともかく、わしが面白かったのは、センターのスタッフからアドバイスがあった、「車いすによる参道の進み方」の心構えについてです。
 平成25年の式年遷宮や近年の癒しブームなどで急増し、ごった返している内宮の参道を、車いすはどう進むべきか。

 幾多のアテンド経験から、あるいは伊勢神宮側の意向や車いす利用者側からの意見も踏まえて導き出されたであろうアドバイスは、きわめて日本的な、~たぶん外国人とか、日本人でも若い人にはなかなか理解できないであろうような~ 落としどころだったのです。
(お断りしておきますが、わしはそれを非難しているのではありませんので誤解なきよう。)

 それは、
健常者(ここでは車いすを利用せず歩く人と定義します)と車いす利用者は神様の前では平等である。
 ということでした。

 これを大前提として、実際の車いすアテンドの行動規範は
・車いすだからと行って、じゃまじゃま、通してください、みたいな態度は取るべきでない。
・しかし、恐縮して参道の端ばかりを進む必要もない。(これは参道の端は傾斜があるので、車いすは危ないためもある)
・お互いが平等だという認識で、譲り合って気持ちよく参拝できるよう心掛けること。
 というものです。

 一般的な日本人には極めて妥当と思われる内容でしょうが、あらためて2つの点からわしには興味深く思われます。

 1つは、伊勢神宮による「禁忌」に対する考え方の変化です。
 古来、死や血などの「穢れ」を嫌う伊勢神宮は、たとえば生理中の女性などは参拝できませんでしたし、僧侶や道者のような法体の者も参拝できませんでした。(かの西行も遥拝しかできず、剃髪していた芭蕉は頭巾をかぶって参拝したと聞きます。)参詣者の心身の障がいがどこまで忌避されたかは不明ですが、小栗判官で有名な熊野詣でのような寛容さはなかったと思われます。
 しかし昔の話はともかく、平成28年の現時点では伊勢神宮も車いすの参拝は認めているわけです。時代とともに伊勢神宮側の許容範囲も変動するのでしょう。

 もう1つは、かと言って神宮サイドは神域内をバリアフリーにする気もないように見えることです。
 実際には正宮前の階段は今は平らに削られていますが、わしが子供のころは完全な自然石でデコボコしており、草履や下駄の人が難儀していたのを覚えています。その意味では地味なバリアフリー化は徐々に進んでいるのでしょうが、京都や奈良の大寺院のように、参道を舗装したり、手すりを作ったり、点字ブロックを敷いたりしてまでの便宜は図る気がなく、自力か、少なくとも他の「人力」を借りて参拝できるところをギリギリの限界点としているように見えることです。

 しかし、たとえばわしら研修を受けたおもてないヘルパーが今後も増え、それを利用してくれる車いす参拝者も増加すれば、トレンドどして国民の高齢化がますます進む日本において、足腰が弱い高齢者が全参拝客のかなりの割合を占めるようになるはずです。
 参道の一部に高齢者用のレーン(石畳と手すり)ができ、バリアフリーのトイレが増設され、宇治橋にはスリップ止めが貼られ、手すりも新設されるのは時間の問題 ~おそらく10年以内~ ではないでしょうか。そうでないと危なすぎて伊勢神宮のほうが管理責任を問われかねません。

 参詣者でごった返す参道で車いすを押しながら、そんなことを考えたのでした。

■はんわしの評論家気取り

 伊勢神宮本を読む(その2)犬の伊勢参り(2013年4月17日)
 
 伊勢神宮「参拝支援ボランティア」養成講座(2016年7月28日)

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