2016年11月25日金曜日

地方議会は「ある種の」茶番である

  26.94%
 これは、政務活動費を不正請求していた議員の辞職が続出し、各方面から批判を受け、呆れられもした富山市議会の、今年11月に行われたいわゆる出直し選挙の投票率です。
 あれほど注目された選挙にもかかわらず拍子抜けするほどの低投票率だったのは、もちろん富山市の有権者の民度が低いとかでは決してなく、所詮は市議会など市民にとってはその程度のもので、期待もしていないし、やり直しと言われても関心が湧かなかったということなのでしょう。
 なぜか。
 それは市議会が「ある種の」茶番であり ~田舎プロレスとは言いますまい~、 市の行政など市長や市役所に任せておいて何らの不都合もないにもかかわらず、議員が存在感を示すためだけに意味のない議論をし、どうでもいいことを決めたり決めなかったりしているからです。これは全国の都道府県議会、市町村区議会でもほぼ同じだと思います。
 その証拠に、ほとんどの地方自治体では議員選挙は低投票率で、そもそも無投票となる選挙も非常に多いのです。もしこれが「茶番」であるためではないとしたら、なぜこれほど投票率が低く、議員の成り手すら不足しているのかが合理的に説明できません。


 一般的に、地方議会が茶番だと思われているのは、議員の質問があらかじめ首長や執行部(役所の部長とか課長とかの偉い人)とかに通告されていて、執行部は前日までに答弁を作っておき、質問の当日は、議員は通告どおりの質問を原稿を読みながら行い、首長の答弁も同じく下僚が作文したとおりに原稿を読んで行う、という、お約束の構図がわかりやすい茶番劇、猿芝居だからだと説明されます。

 しかし、わしはこれは間違っていると思います。

 このように原稿通りのやり取りをするのが「本会議」と呼ばれる、議事堂に全議員と全執行部が勢揃いして行われる、代表質問とか一般質問とか呼ばれるものなのですが、これは質問も答弁も、すべて議事録がとられており、全部の発言が本になって永久保存され、ネットで公開されます。
 あの時、市長はこう答弁した、というのは言質となり公約となって、後々の行政に大きな影響を与えます。一般の人が日常生活をしている場面では、このように緊張する会話の場面はまったくないのですが、本会議のように一字一句が後世に残るケースにおいては、要領を得ない質問や的を外した答弁、かみ合わない議論では意味が全くないので、事前にシナリオを作っておく必要があるのです。
 なので、本質は「言質」であり「公約」である本会議において、議論がお約束の台本通りになるのは仕方がないことです。

 その一方で、地方議会には本会議とは別に「委員会」という、教育とか、予算とか、建設とか、農業とか、福祉とかの部会ごとに議員が少人数のグループで執行部と議論する場があり、こちらは限りなくガチンコです。
 ケーブルテレビとかネットで中継している自治体も多いのでご覧になればわかりますが、執行部の説明に対して議員は激しく突っ込みますし、議論が白熱したり、反対に執行部の答弁が立ち往生してしまうこともよくあります。
 議論を建設的に行うには、議員も執行部からの議案や資料をよく読んで理解しておかないといけないし、疑問には答える義務がある執行部も内容には精通しておかなくてはならないのは当然です。

 ただ、わしが不安を感じるのは、実はこのように一見真剣に議論が繰り広げられている「委員会」こそが本質的な茶番なのではないか、と思えることです。

 委員会の議論は、先に書いたように執行部が提出する資料を基にして行われます。その資料を作る執行部の側は、自分たちが不利になるようなデータを隠そうと思えばどれだけでも隠せますし、都合よく書き換えることも十分可能です。人間の心理として、自分のやったことをあれこれとあげつらわれるのはいい気がしませんから、下僚たちはなるべく自分たちの業務についての質問をかわそうとしますし、どうしても隠し切れないマイナスがあれば、それを小さく見せようとします。
 このように、議員はあらかじめ執行部の下僚が準備した土俵の上で戦わされるので、よほど執行部の詰めが甘いか、計算ミスとか変換ミスのような明白に間違っているようなケース以外は、データや資料の間に隠された問題の本質を見抜くことはできません。議員は体一つですが、執行部は蟻のように集団で仕事をしているので、何十人もの公務員が何十時間も残業して、四重五重のチェックを経て資料を作り込んでいます。不都合な事実はうまくまぶされてしまっており、これを議員が見抜くのは至難の業です。ほとんど不可能でしょう。

 形の上ではガチンコ議論に見える委員会も、実態はこのようなワンサイドゲームです。議員はバイアスのかかった資料を基に、上っ面をなでる質問をするだけであり、執行部にとっては蛙の面に水なのです。
 議員が対等に、フェアに執行部と議論するためには、議員側のスタッフを質量ともに充実させ、会計士や弁護士、医師などの専門職の知見も借りて、執行部が提案していることが事実なのか、執行部が提出している資料は正確か、公正か、操作されていないか、客観的な裏付けがあるか、をまず吟味する体制を整えなくてはいけません。
 それが難しいとしても、政務活動費というのは本来その足しにするためにあるはずです。

 しかし、現状はまったくそうなっていませんし、改善する兆しすらありません。このまま全国の地方議会で本質的な茶番が続けば、地方はますます住民の無関心で覆われ、ついに地方自治は崩壊するでしょう。

■はんわしの評論家気取り  なぜ地方議員はあんなふうなのか(2016年4月4日)

0 件のコメント: