2016年11月26日土曜日

社会主義がいつまで通用するか

 何か月か前、自治体職員の業界ネットである時事通信社の「官庁速報」に、過疎化に悩むある町(岡山県和気町)が、町内のスーパーマーケットや商店がまったくない地区に新規出店するコンビニなどに対して補助金を交付する制度を創設したという記事が載っていました。その補助金を受けて、あらたにローソンとカフェが出店することになった、というものです。
 事前に町民にアンケートを行ったところ、コンビニのほか、喫茶店、新刊の書店、レンタルショップに対する要望が多かったということで、これらを新たに出店する経営者に対しては、最大で2000万円を5年間にわたって補助するということです。
 都市部に限らず、と言うよりも、商業集積が少ない農村地域でこそ、ワンストップで買い物や様々な用事が足せるコンビニは生活インフラになっていると言えます。この和気町という町も、地方創生ブームの中で地域活性化に積極的に取り組んでいるところらしく、コンビニに対しても、役場の担当者は補助金によるイニシャルコストにとどまらず長期的に経営支援を行っていくとコメントしており、町民からも「便利になった」等の喜びの声が聞かれるとのことです。
 しかし同時に、町によるとコンビニは以前にも同じ場所で出店計画があったものの採算面から断念された経緯があるそうです。このように経済原理では成り立たないものを行政が補助金で成り立たせる「社会主義政策」が、果たしてどれほど将来にわたる持続性を持つものなのか、わしは正直、疑問なしとはしません。


 そう思っていたら、先日の中部経済新聞に、今度は補助金でなく市役所が書店を直接経営するというニュースが載っていました。(文化投資か赤字垂れ流しか 11月25日付け)

 文化行政に熱心で、「本のまち」を標榜しているという青森県八戸市が12月にオープンさせるもので、通常の民間経営の書店と差別化するために雑誌や一般書籍は扱わず、「売れ筋ではないが、良質な本」だけを販売し、仮に「売れないはずの本が売れ行き好調となってしまった場合」は取り扱いをやめ、民間に販売をゆだねることも検討するとのことです。

 これは一瞬もっともらしく聞こえますが、よく考えてみると、ある本が売れ筋か売れ筋でないかはだれがどんな基準で決めるのかがよくわかりません。そんなことが ~売れないに決まっているものだけを売る、などということが~ 本当に可能なのでしょうか。
 売れないはずの本が売れたら民間にゆだねる、というのも言葉の遊びで、どれだけ売れたら民間にゆだねるのかの客観的な基準はどうするのかも不明です。
 
 中部経済新聞によると、この市営書店は内装工事などの初期費用に1億1千万円かかっており、人件費や運営費も年間約6千万円必要となります。その一方で売り上げ目標は2千万円。つまり、毎年4千万円の赤字が出ることはあらかじめわかっており、しかも売れ筋になってきた本があれば、それは民間にゆだねていくというのですから、今後黒字になる見込みは原理的にあり得ません。これからこの書店が営業を続ける限り、未来永劫、市は年間約4千万円の赤字を補てんしなくてはいけないのです。

 これはもう社会主義そのものです。書店という形をとっていますが、実現を目指すのは地域課題の解決ではなく八戸市の文化政策なので、コミュニティビジネスでもありません。政策そのものであり、図書館と同列ということになるのでしょう。

 地方創生政策が結果的に国の予算バラ撒きになっており、「ふるさと納税」に至っては地域の特産品や農産品を税金を使って安売りしている、やはり社会主義政策そのものであることはたびたびこのブログでも書いていますが、この傾向はますます各地で進んでおり、事業(ビジネス)と地域課題がコミュニティビジネスのような形で融合するのでなく、行政が境目を溶解させているようにも見えます。

 住民が望んでいれば、それを行政が実現させたいと考えるのはもっともなのですが、それが社会主義によって実現することが本当の解決になるのでしょうか。

 八戸の書店はともかく、和気町のコンビニやカフェのほうは、町内外の人脈や商工団体、金融機関との連携を生かして町が経営をサポートしていくとのことなので、どれくらい有効なフォーメーションが組めるか、そして実際に経営がうまくいくのかを、わしも関心をもって見ていきたいと思います。 

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