2016年11月7日月曜日

行政と美辞麗句

 政治・行政と美辞麗句は切っても切れない関係にあります。「所得倍増」とか「日本列島改造」、「改革なくして成長なし」といったスローガンが代表的なものですし、「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」を「シルバープラン」と、「子育て支援のための総合計画」を「エンゼルプラン」と呼び変える、政策の「愛称」などもそうでしょう。
 しかし、こういったスローガンとか愛称は、実際には必ずしもその目標が達成されなかったり、事態が改善しなかったりと、いわば「看板倒れ」になるケースも少なくないので、これらを聞かされる国民のほうは何か目新しい美辞麗句を聞いても、「ああ、またか」とか「この前も同じような話を聞いたな」みたいな印象しかないケースが多いような気がします。
 これは、美辞麗句とは反対ですが、非常事態宣言とか、緊急事態宣言、のようなマイナスのスローガンも同様で、多くの国民はそもそも無関心ですし、行政も宣言を出し危機感をあおったこと、そのこと自体で仕事は終わってしまった気になって、その非常事態を絶対に何が何でも解消したり改善したりする決意とか気合いが伴っていないケースが大変に多いのではないでしょうか。
 ところで、三重県が11月4日に 交通死亡事故多発に伴う非常事態宣言 を出したこと、皆さんはご存知ですか?


 三重県ウエブサイトによると「交通死亡事故多発に伴う非常事態宣言」は
・平成28年は県内で交通死亡事故が多発しており、10月31日に鈴鹿市で発生した交通死亡事故によって死者は90人となり、対前年同期比で20人の増加となっている。
・すでに昨年の年間死者数87人も超えており、年末に向けて増加傾向が続くと予想されることから関係機関と団体が連携し、各種交通事故防止対策を推進し、県民の総力をあげて交通死亡事故の抑止を図る。
 という趣旨で、三重県交通対策協議会会長である三重県知事の名前で宣せられたもの。
三重県警察HP「交通死亡事故発生状況」《平成28年9月末》より
具体的に実施する対策は
1)出動式
 11月7日(月)午前8時30分から、警察、市、交通安全協会等などが参加して、非常事態宣言に対する決意表明等の後、白バイ等取締部隊、市広報車、関係団体車の啓発部隊が出動する「出動式」を実施。
2)県下一斉交通街頭監視・指導の実施
 市、警察、関係団体等が連携し、11月7日(月)午後4時から一斉に街頭監視・指導を行い、ドライバー等の交通安全意識の高揚を図る。
3)高齢者宅訪問、地域パトロールによる啓発
 高齢者死者の多い津市、松阪市において、交通安全シルバーリーダー、市町、警察等が、高齢者宅訪問、地域パトロール等を通じ、交通安全意識の高揚と高齢者事故防止を図る。
4)その他(従来の継続)
・新聞、テレビ等を通じて宣言発令を周知し県民へ注意喚起
・歩行者、自転車乗用者に対する街頭指導等や安全教育を実施
・事故の発生が多い地域(四日市市、津市)、路線(高速道路)に対して重点的に啓発
・県・市町庁舎に懸垂幕、横断幕、のぼり旗等の掲出や道路情報板に宣言発令を表示し啓発
・交通指導取締り、制服警察官の街頭監視・指導の強化(県警)等
 ということです。(リンクはこちら

 わしだけかもしれませんが、「非常事態宣言」という言葉の重みに比べて、何だかパッとしない気がします。(この非常事態宣言そのものが対前比が要件を超えると機械的に発令される仕組みのためでしょうか。)
 どこかの国の品のない大統領みたいなことは言いませんが、県内のいたる場所で見かける、スピード違反、信号無視、一旦停止無視、など根絶する。そのためには容疑者はどんどん検挙してでも、絶対に交通弱者を守り抜く、という強い決意が読み取れないのです。

 たとえばJAFは今年9月、歩行者が渡ろうとしている「信号機のない横断歩道」において、9割以上のクルマは一時停止しないという調査結果を公表しています。(リンクはこちら
 この、横断歩道での一時停止違反だけ、それだけを、重点期間中に主要交差点で摘発するという方針を掲げるだけでも、おそらく事故は激減するでしょう。
 JAFの調査では、回答者の45.1%が交通マナーを「とても意識している」と答えています。それが実際には9割は止まらないのですから、非常事態宣言でドライバーの「安全意識の高揚」をいくら図ったとしてもほとんど意味がないことは自明です。

 三重県は今年6月にも「交通死亡事故多発警報」を発報したにもかかわらず、下半期、事態はさらに悪化したのですから、美辞麗句に酔うのではなく、実態を伴った対応措置を取らないと当局は交通弱者から見放されてしまうのではないでしょうか?

 まあ、運転する側、歩行する側とも交通安全には十分気を付けましょう。
 

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