2016年12月2日金曜日

ビッグマックというイノベーション

 マイケル・デリガッティ氏が亡くなりました。
 98歳。大往生というべきでしょう。

 ただ、ありていに言って、わしは昨日までこの人物のことを全く知りませんでした。マクドナルドのビッグマックは学生のころから ~年に1~2回にしか過ぎませんが~ もう何十年も食べ続けてきているわけですが、ビッグマックを考案した人がマイケル・デリガッティその人であったことは、彼が死去したというニュースが世界を駆け回ったことでわしも初めて知ったわけなのです。
 そもそも「ビッグマック」を考えたのが誰かどころか、考え出した人がいたという当たり前のことにすら、思いを馳せたことはありませんでした。
 ペンシルバニア州でマクドナルドのフランチャイズ店を経営していたデリガッティ氏が、より大きく、インパクトがある商品を開発しようと、ビーフパティ(ハンバーグ)2枚を、バンズ(パン)3枚でサンドしたビッグマックを考案したのは1965年のこと。実際に販売を始めたのはその2年後でしたが、瞬く間に全米で大ヒット商品になりました。
 それまでマクドナルドのメニューは、ハンバーガー、ポテト、ドリンクだけの非常にシンプルなものでしたが、ビッグマックの成功によって商品の多様化戦略が進むことになりました。


 また、ビッグマックは全世界でほぼ同じ品質のものが販売されているため、各国の物価や人件費などを勘案した総合的な購買力の比較の目安に使われることになりました。これがビッグマック指数といわれるもので、イギリスの経済誌「エコノミスト」がこのビッグマック指数を発表した時は、大きなニュースになったことをわしはよく記憶しています。

 そう考えると、ハンバーグを2枚はさんだだけのハンバーガーに過ぎないビッグマックは、イノベーションだったことが理解できます。

 よく誤解されますが、イノベーションとは技術革新を指すのではありません。発明のことでもありません。ハンバーグを2枚にすることが高度な技術的思想の創作とは呼びえないでしょう。そもそもハンバーグ2枚はデリガッティ氏が最初に考え付いたのでなく、ライバル店が同様のものをすでに発案していたとも言われます。
 ソースの酸味を強めるとか、チーズやピクルス、玉ネギをはさむとか、バンズにゴマを振るとか、そんな細かい工夫と、何よりもハンバーガーの既成概念をぶち壊すような派手で大胆な商品として売り出したことが、新しさを作り出し、ひいては新しい顧客、新しい市場を生み出したのです。まさにイノベーションの本質である「創新」です。

 興味深いのは、こうしたイノベーションは人為的に、計画的に創り出せるとは限らないことです。産業の活性化や高度化に不可欠なイノベーションの創出をお題目に、世界中の企業や大学、それに行政が毎年毎年、巨額の研究投資を行っています。しかし、その成果のほとんどは、「使えるかもしれないけど今は使い道が見つからない技術」であり、投資の99%は結果的に社会の役には立たない死に金になっています。
 むしろ、陽気なアメリカンが、でっかいハンバーガー作ったろやないかい!みたいなノリで取り組んだバカバカしいアイデアが、時代を変え歴史に名を残すようなイノベーションを起こしているのです。(もちろん、こうしたバカバカしいアイデアも99.99999%は失敗しているはずですが。)

 つまり、経験則から考えると、とにかく人がやっていないことを考え、実際にやってみるという以外にイノベーションを起こす有効な方法はないと言えます。
 そうすると、写真を見る限り、いかにも人の好さそうなアメリカの田舎のオジサン然としたデリガッティ氏は、周りから反対されてもやり遂げた、そのガッツが見事だったというべきなのでしょう。
 さようなら、マイケルさん。

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