2016年12月25日日曜日

ギャンブル産業は付加価値を生まないのか

 先の国会で、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律が成立しました。通称、IR(Integrated Resort)法とも呼ばれますが、新聞やテレビなどのマスコミは、この法律が推進する「統合型リゾート」なるものの目玉がカジノであることから、カジノ解禁法と報道し、そのほうが人口に膾炙している気もします。
 カジノのようなギャンブル産業はそもそも政府が成長戦略として進めるべきものではない、とか、すでにパチンコや競輪競馬など国内にはギャンブル産業が林立していて依存症患者や犯罪が増える、とか、外国人観光客が増加しているのは事実で、彼らに国内でもっとお金を落としてもらうのにカジノは必要とか、いやそうではなく、おそらく規制でがんじがらめになることが明らかな日本のつまらないカジノで遊ぶような外国人はいるはずがない、とか、実にさまざまな議論が百出しています。
 しかし実際に法律を読むと、全部で23か条しかないシンプルなもので、主な内容はIRは観光、地域経済振興、財政の改善の3つを目的にしていること、そしてカジノについてはいろいろな問題があることから、公正性の確保(!)とか、換金の制限、暴力団排除などを明確にしてこれから詳細を検討していこうね、という中身です。本質的な議論は先送りされた形であり、今後、世の中がこの問題にどれだけ関心を持ち続けるかが大事な要素になってきます。


 ところで、今月初めに国会の党首討論があり、IR法の有効性を主張する安倍首相に対して、民進党の蓮舫代表は「首相は“成長戦略の目玉になる”と発言したが、カジノは付加価値を生み出さない」といった趣旨の発言をしました。(スポニチより)
 ギャンブルが、モノを作ることによって付加価値をモノに表象する製造業とは全然種類の違う産業なのは明らかで、蓮舫さんの言いたいこともなんとなくわかるのですが、しかし、これは違うのではないでしょうか。
 モノが充足し、物質的な満足度はほぼ満たされている現代、人々が認める価値はモノではなく、コトやモノガタリです。形のないサービスや、心の満足といったものにこそ喜んでお金を払うのであって、このように経済がサービス化していること、すなわち、付加価値を生み出す産業の比重がサービス業に移ってきていることは紛れもない事実と思います。

 ギャンブルはそうした「コト消費」の極限に位置しています。
 消費者が得る効用は「夢中になっている間は嫌なことが忘れられる」、「予想や攻略にけっこう頭を使う」、「当たるとスカッとする」といった極めて主観的、属人的なものです。
 しかし見方を変えると、高額な美容室に行ってヘアスタイルをバッチリ決めるとか(髪形など丸坊主でも何ともない)、超高級レストランでディナーを楽しむとか(コメだけ食っていれば死なない)、クルマをコテコテにカスタマイズするとか(んなもん、走りさえすればいい)なども、関係ない人には無意味だし、価値などありません。だとしたら、美容業、レストラン業、自動車改造業なども付加価値は生まないのでしょうか。

 そうではありません。カジノがどんな内容のものになり、ギャンブル依存症に陥らないようにどういった配慮をするべきかはギャンブル産業が生む付加価値とは別次元の話であって、これはこれで十分議論を尽くさないといけません。
 以前もこのブログに書いたように、我が国にはすでに国民的カジノとしての「パチンコ」が全国いたるところにあり、一大産業となっています。
 パチンコも不正や依存症の問題は深刻ですが、その一方で大きな雇用を抱え、利益を上げています。パチンコ企業も多くの社会貢献をしており、それは税制や何やで現行制度にいろいろな不備や不全があるためとしても、実際に政府からも高く評価されているのです。
 まずこれらの既存ギャンブル、既存ギャンブル業界との整合性を考えないと、IRだけがダメだ、ギャンブルは付加価値を生まないといくら攻撃しても、それは筋が違うし議論にならないのではないかと思います。

 ただ、わしは個人的にはカジノの実現は難しい ~というか、日本では不可能である~ とも考えます。
 よく言われるように、パチンコは警察庁、競馬は農林省、競艇は国交省、競輪は経産省、のように公営ギャンブルは所轄官庁があって、合法的にかなり巨額のショバ代を天引きしています。このように財政に貢献するからこれあは「合法ギャンブル」なのであり、官僚が多く関係団体や企業に天下っている現状を見ると、カジノも当然に各省庁入り乱れての利権獲得争いになるでしょう。
 一方で、依存症対策をはじめ、現場で発生する問題を解決しなくてはならない地方自治体、特に市町村は大変です。ショバ代のいくらかはおこぼれにあずかるでしょうが、その代償はまったく安くないことも容易に想像できます。
 原発や基地と同様、住民から強硬な反対の声が出て大揉めに揉め、結局は結論が先送りされ続ける、日本的な落としどころに着地するのではないでしょうか。 

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