2016年12月29日木曜日

(-。- )ふゥーなお話

 鳥羽市に平成27年から地域おこし協力隊員として赴任していた女性が、12月いっぱいをもって退任することを各紙が報じていました。
 この隊員は東京都出身。十代のころから海女を目指していたそうで、鳥羽市でも海女が多い地区である石鏡(いじか)町に移住し、海女見習いとして地元の先輩海女から指導を受けながらアワビ漁などに参加していました。
 12月26日に鳥羽市役所で行われた退任式では、「海女はとても楽しかった。海女の経験を通してさらに海が好きになった。」などと感想を語り、木田市長は「東京に帰ってもぜひ鳥羽のPRをしてほしい。」と約1年間の活動を労いました。
 この隊員が短い期間ながら観光PRで大いに活躍したとか、田舎町に住み込むことで地域が「明るくなった」などの成果があったことは事実でしょう。しかし、率直に言って、わしにとっては非常な既視感に襲われるニュースでした。
 この手の話で、この手の結末を聞くのはもう何回目だろう? C= (-。- )
 実は、地元ではこの隊員の赴任早々から「(潜水漁である)海女は重労働で、中途から始めた人が技術を会得するのは難しい」とか、「海の汚染で漁獲量は激減しており、海女の収入だけで生計は立てていけない」という心配の声が上がっていました。

 さらに、よそから来た人には地元の漁業権がないので、仮に地域おこし協力隊の在任期間を務めあげても漁業権を得ることができず、この扱いをどうすべきかが関係者で懸念となっていることも早くから報じられていました。
 現実問題として、生産性が低い ~批判しているわけではなく、身一つで海深く潜って貝やナマコなどを手捕りする漁法という意味での~ 海女漁の専業で生活していくのは非常に困難で、観光業と一体化した事業で従業員として働くのが新規就業者の場合には現実的なのだと思います。

 先ほど「既視感」と書いたのは、農業、林業、水産業の分野で、もう過去何十年にもわたって都会から新規に就農(就林、就漁)者を集め、地元でインターン体験させ、実際に就業と定住に結びつける施策が繰り返し繰り返し行われているためです。
 それにもかかわらず、この例のように若い移住者の夢は断念せざるを得なくなり、熱烈歓迎して盛り上がった地元は一気に冷め帰り、行政機関は知らぬ顔を決め込んでいる、というパターンが、これまた全国至るところで数え切れぬほど繰り返されているからです。

 国(総務省)が平成21年度から開始し、地方創生ブームに乗ってさらに隊員数を拡大している「地域おこし協力隊」も、最終目標であるその地域への定住は6割の隊員が実現させているものの、4割は何らかの事情にしろその土地を離れているし、そもそも1年以上3年以下とされている任期期間中に中途退任する人も少なくないようです。
 地域おこし協力隊という政策はアイデアとして決して悪くないと思いますが、1970年代の高度経済成長期後半から50年近くにわたって徐々に衰退してきた農林水産業や、過疎化高齢化が進んできた中山間地域などは非常に問題の根が深く、一朝一夕で解決するほど簡単ではありません。いや、もはや多くの地域ではそもそも解決など不可能なのかもしれず、「村じまい」といった別次元での解決方法しか残っていないのかもしれません。

 話を戻して、ではなぜ新規就農にしろ地域おこし協力隊にしろ、うまくいかないことが多いのでしょうか?
 これは端的に言って、隊員を受け入れる地域の側が変わらないからです。変わろうとしないからです。
 そういった頑なと言うか、変化への順応能力が失われているからこそ、その地域からは若者がどんどん出て行ってしまい、活力が低下し、今の惨状に至っているのです。

 よそ者はこの土地のルールに従うべきだ。
 仕事は先輩を見て盗んで覚えるものだ。
 上が決めたことや皆で決めたことは不平があっても守るべきだ。
 若いのだからお前が一番汗をかかないといけない。
 漁師は魚を獲って一人前だ。学歴や理屈は関係ない。

 地域がこうした姿勢である以上、そしてその姿勢を変えない、変えられない以上、協力隊員の側で並外れた適応努力をしなければ、地域に溶け込むことはできません。
 マスコミ報道では活性化の起爆剤などと散々持ち上げられ、行政の観光PRにも動員され、挙句の果てに「農地が買いたいなら農家から嫁をもらえ」などと言われたら、今の普通の若者なら心が折れてしまうでしょう。

 このような膠着状態で重要になるのは、隊員と地元を取り持つ、コーディネーター役、双方へのコーチ役なのでしょうか、これまたやはりほとんどの地域には、そのような価値観やスキルを持つ人はいません。
 市役所や役場の職員は淡々と事務仕事をするだけで、このような役割は地元に押し付けっぱなしです。
 このような実情を地元のマスコミは絶対に報道しません。
 
 その結果、また同じ話が繰り返されるのです。

 わしの予想ですが、地域おこし協力隊の制度が続く限り、鳥羽市はまた新たな海女見習いを募集し続けるでしょう。
 そして海女に憧れた都会からやってきた隊員は、うまく成功して本物の海女になれるかもしれませんし、なれないかもしれません。
 地元がまず変わり、次にコーディネート役を交えての三者連携モデルにならない限り、おそらく後者の割合がはるかに多いであろうとわしは思います。

■はんわしの「評論家気取り」
     なんちゃって地域おこし(2016年6月21日)

     地域づくりフォーラムのワクワクとモヤモヤ2015年3月20日)

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