2016年12月19日月曜日

これは凄い「訪問販売登録条例」

 今朝の日経新聞を読むまで知りませんでしたが、滋賀県野洲市が訪問販売業者に市への事前登録を義務付け、登録をしないと訪問販売ができなくなるという全国初の条例を制定したそうです。高齢者を狙った悪質商法などの被害やトラブルは全国で後を絶たないことから、この条例が実際にどの程度トラブル防止に役立つのか、各界の注目が集まっているとのこと。(12月19日付け 列島追跡)
 この訪問販売登録条例は、正式には「野洲市くらし支えあい条例」という名称で、今年6月に制定され、10月から施行されたものです。
 全部で28条から成りますが、制定の目的は「安全かつ安心で市民が支えあうくらしの実現に寄与すること」と定義されています。実際には市民(消費者)と事業者との間には、持っている情報量や交渉力に格差があることから、
1)市民の消費生活の安定や向上、消費者安全の確保の必要な措置を講じるとともに、
2)消費者被害や、市民のくらしに関わる様々な問題の発生の背景には経済的困窮とか地域社会からの孤立などの諸課題があることから、その解決及び生活再建を図る
という2つについて規制や対策を行う内容となっています。


 特に注目を集めているのは1の具現化としての訪問販売業者の登録制です。
 野洲市内で訪問販売を行おうとする業者は、市に業者名や事業者の所在地、連絡先、代表者名などを登録しなくてはなりません。経過期間が終了する来年10月以降は、未登録業者は、市内で訪問販売をすることができなくなるのです。
 この条例でいう訪問販売とは、特定商取引法による訪問販売の定義(販売業者または役務提供事業者が、営業所等以外の場所で契約して行う商品、権利の販売または役務の提供等)に加えて、金融機関や保険会社などが自宅に出向いて行う商談も含まれるものとされており、高齢者などにとってはありがたい定義かもしれません。
 登録された業者は市のホームページで公開されているので、もし消費者とトラブルになってもどの業者かがすぐに明確となり、行政も対処がしやすくなります。もしトラブルを繰り返す業者がいれば、市が指導したり公表したりすることもできるため、業者に対して一定の抑止力が働くと期待されます。

 さらに市は、「訪問販売お断りステッカー」なるものも独自に作成しています。
 このステッカーを玄関に貼っている家には訪問販売ができません。「お断り」を無視して勧誘をした業者については市が公表することができるので、このステッカーもやはり、強引なセールスに悩まされている家庭には朗報になりそうです。

 悪質な訪問販売業者を排除する一方、この条例では優良な業者は後押ししようとする規定も盛り込まれています。訪販事業者には配達の時にお客さんの健康状態を見守るサービスなどを行っているところもあります。このように市民に役立つサービスを行う事業者に対しては、市が協定を結んだり、自治会などを通じて地域に情報を伝えたりすることも行います。
 アメと鞭ではありませんが、硬軟両面なのがこの条例のユニークなところのようです。

 そしてこの条例のもう一つのポイントは、2の消費者被害の根本原因につながる貧困や孤立といった問題を、有識者や専門家の知見も交えて地域ぐるみで解決しようとしているところです。
 経済的困窮者に対しては野洲市支援調整会議を、社会的孤立者への見守り活動に関しては見守りネットワークや野洲市消費者安全確保地域協議会を立ち上げ、それぞれ対策を行うと規定されています。

 一見して、非常に意欲的で、市にある人的・組織的な資源(ソーシャルキャピタル)を活用した良い仕組みのように感じます。
 このように地域の課題を、法的な思考で解決していこうとするのが政策法務の考え方であって、全国の多くの自治体で独自の条例が制定されています。
 しかしながら、本来は法律で認められている営業の自由に規制をかけるような条例は、事業者への影響力が大きいことや訴訟リスクも負うため、特に市町村による自主条例は単なる「かけ声」にしか過ぎない「残念レベル」の条例も散見されます。
 その意味で、野洲市は先進的だと思いますし、ぜひ実効性を高めて、全国の訪販で困っている高齢者などに横展開できるように期待したいと思います。

 なお、訪問販売業者などからは規制が強すぎるといった懸念の声が出ているようです。日経新聞の記事では、野洲市の山仲市長は「(訪問販売お断り)ステッカーについては、一律訪問販売がダメというのはどうなのか、今後事業者を議論してもよい」と含みを持たせているとのことです。

■野洲市ホームページ  野洲市くらし支えあい条例について

0 件のコメント: