2017年1月14日土曜日

水産庁がクロマグロの違反操業実態調査へ

 朝日新聞によると、絶滅の恐れのある太平洋クロマグロを保護するための漁獲規制をすり抜けて、マグロを水揚げする例が相次いで発覚していることから、水産庁は全国の実態調査に乗り出すこととなったそうです。
 日本はクロマグロの消費大国として世界から批判を浴びていることから資源管理にも熱心に取り組んでいるようですが、こうした違反操業が増えれば国際社会の信頼を失いかねないことが理由とのことです。
 この実態調査のきっかけは、昨年12月末に全国的なニュースとなった、水産庁が長崎県(庁)と三重県(庁)に漁獲規制の徹底と監視体制の強化を求める行政指導を行ったことであるのは間違いないでしょう。
 わしも年末にニュースを読んだときは重要性が今一つピンと来なかったのですが、国際社会から信頼を失うことになれば、日本の食文化のすばらしさ、食材の安全性を世界の消費やにアピールしており、4年後には東京オリンピックも開かれる日本にとって、まさに国恥ともいえる事態です。水産庁から指導を受けた両県庁も、違反した漁業者も、責任は重大です。
 日経電子版の関連記事(クロマグロ違反操業、初の行政指導 長崎・三重両県に  平成28年12月24日)などを参考に整理してメモしておきます。



 国際機関である「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」は、体重30kg未満のマグロ小型魚を未成魚とみなし、その漁獲量を基準年の半分に減らす合意を平成27年から実施しています。
 この未成魚は「ヨコワ」などと呼ばれるもので、日本の漁獲上限は4007トンとされ、沖合のまき網漁船が2000トン、沿岸漁業などが2007トンに割り振られています。
 
 長崎県はクロマグロの国内最大級の漁場であり、県としては最大の約632トンもの配分を受けています。このうち対馬には334トンの枠があり、これは長崎県の全割当量の半分以上に当たります。
 漁期(規制年度)は例年7月にスタートしますが、平成28年は豊漁で、9月下旬には早くも上限の8割近くを消化してしまっていました。9月28日には長崎県と地元対馬の漁協が対策会議を開催しましたが、その前後から漁業者の間では「マグロ漁に必要な承認を得ないでクロマグロを獲っている漁船がある」といううわさが広まっていました。しかし対策会議の席上では「出席した県職員に調査の必要性の認識が薄く、調査には至らなかった」(県漁業振興課)という不可解な理由により事態は放置されます。
 結局、県が調査を始めたのは違反操業の情報を入手した水産庁から指示を受けた11月下旬になってからでした。その結果、漁船16隻が未承認で3カ月にわたって計約12トンを水揚げした事例や、承認は受けているものの約30トン分の漁獲量を報告していなかった事例などが発覚。これらを加味すると対馬の枠を超えていることは明白であったため、来年6月まで漁期を残して事実上マグロ漁は中止されることとなりました。
 違反漁船が集中していたのは上対馬漁協で、今年7月からの次の漁期には全組合員がヨコワ漁を自粛する方針としているそうです。
 
 また、三重県は漁獲枠は約23トンですが、9月15日にはすでにその枠に達したことが明らかとなりました。県では漁業者に操業自粛を呼びかけたものの、その後も漁獲は増加。特に南伊勢町に本所を置く三重県外湾漁協に所属するカツオ一本釣り漁船6隻は、静岡県内で合わせて約53トンも水揚げしていながら、国や県に報告していませんでした。同漁協は事務所間の連絡の不備で報告が放置されていたと釈明していますが、自粛要請中にもかかわらず漁獲した漁船にクロマグロ操業の承認返上を求める方向で調整中とのことです。
 
 なお、三重県外湾漁協の違反について三重県の鈴木知事は定例記者会見で「違反した漁業者に対するペナルティとして、クロマグロの稚魚の目的操業に必要な承認証を返上してもらうように求め、これについては漁業者も受け入れているというような状況」と話し、県としても今後こういう事態が起こらないように反省し、厳正に対応していきたいと述べました。
  
 一方で、日経の記事によると、クロマグロの漁獲量というものがかなりややこしい、根の深い問題であることが垣間見えます。今回問題となったのは沿岸漁業者向けの漁獲枠についてですが、大型船によるまき網漁はこれとは別枠であり、過少申告の可能性について関係者の間では前々から懸念が指摘されています。
 特に、クロマグロ養殖(蓄養)目的で、生きたまま捕獲する種苗用のヨコワは、重量をどうやって計測するかの方法が確立されていません。
 これは漁業者にとっても不利益なことなので、信頼できる計測方法を確立は急務のようです。

 この話をそもそも論に遡っていくと、WCPFCの設定した漁獲枠が正当なものか、つまりクロマグロの資源量の現状と見通しはどうなのか、という議論に行きつきます。
 この点については水産学者である勝川俊雄さんのブログ「
」に詳しい解説があります。これによると冒頭のように、マグロに関しては日本政府の現状分析には各国があまり信を置いておらず、日本側も有効な提案ができない状態らしく、昨年12月に開催されたWCPFCでも日本は「フルボッコ」状態だったということです。
 
 国際的な要請であるクロマグロの資源管理を日本がリードするためにも、漁業者は軽挙妄動を慎むべきでしょうし、水産庁や県庁などの行政も適切な指導監督を行っていく必要があります。

■勝川俊雄公式サイト  クロマグロ Archive

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