2017年1月15日日曜日

梶賀の「網元ノ家」に行ってみた

 尾鷲市梶賀町(かじかちょう)の特産品である「あぶり」については、たびたびこのブログでも取り上げています。小アジや小サバなどを下ごしらえし、長い竹串にオイルサーディン状に並べて差し、カシやサクラを燃やした煙でいぶしたものです。
 おそらく冷蔵庫もない時代の保存食だったのでしょうが、魚のうまみが燻した風味により一層引き立ってたいへんに美味であり、ビジュアルも含めて全国的にも非常に珍しい食べ方(と言うか、ご当地食材)なので、近年の特産品ブームに乗って食通の方々から高く評価されている食品でもあります。
 今日は、その「あぶり」を実際に作る作業が公開され、希望者は体験もできるとのことだったので、会場である梶賀町の「網元ノ家」に行ってみました。
 梶賀町は、道路が整備された今でこそ、尾鷲市街地から30分ほどで行くことができますが、複雑に入り組んだリアス式海岸の中、谷に沿って家々が立ち並んでいる漁村であり、漁には絶好のロケーションである反面、かつての陸上交通は困難を極めたことと思います。(GoogleMapはこちら


 網元ノ家の「あぶり」については以前このブログでも取り上げました。(東海食サミットで梶賀のあぶりを発見(2016年6月19日)
 串に刺した伝統的な形でなく、現代の食生活に応じて魚身が一口大にカットされ、洗練されたデザインのパッケージに真空包装された新しいタイプのあぶりを製造・販売しています。

 わしも実際に行くのは初めてなので場所がわかるか不安だったのですが、いきなり煙がモクモク立ち上っている家を発見。石段の手前に「網元ノ家 あぶり体験」の看板が出ており、すぐわかりました。


 石段を上がると、堂々とした立派な木造の建物が姿を現します。20年前まで実際に網元の一族が生活していた家を借り上げて利用しているとのこと。


 庭先ではすでにあぶり作りが始まっていました。鉄板でできた窯に薪がくべられ、燃え上がっています。


 蓋を開けてもらうと、こんな感じ。
 真冬は小アジなど獲れないので、このシーズンはブリの切り身を原料に製造しているとのこと。


 薪が燃え出してから完成するまで1~2時間かかるそうです。火加減は微妙に調整しなくてはならず、この間、まったく目が離せず付きっ切りの作業となるとのことです。
 わしは、正直言って自分で絶対に体験したいわけでもなかったのと、出来上がったあぶりはすぐに食べさせてもらえるとのことだったので完成を待つことにし、網元ノ家の中に入ってみました。


 玄関前に網元ノ家ブランドのあぶりが販売されています。週末には喫茶店としても営業しているそうです。


 見た感じ昭和初期くらいの建築でしょうか、一見して立派な造作であることがわかります。
 柱や梁はヒノキ。立派な床柱の床の間もあり、障子などの建具には幾何学模様の組子が施されています。職人が減った現代では、これと同じ家を再び建てることは技術的に不可能かもしれません。

 8畳間が3つ繋がる大広間は石油ストーブを焚いても寒さを感じます。この日は尾鷲には珍しく小雪がちらつく寒さでした。
 雑談しながら待つこと30分ほど。出来立てのあぶりと、ご飯、みそ汁の食事をいただきました。特別メニューで、800円でした。
 あぶりの身を一口食べてみたら・・・
 

 めちゃめちゃウマい!
 わしは網元ノ家の真空パックのブリのあぶりは何度か食べていますが、それとも違う香ばしさとパリッとした食感があります。


 スタッフの方に聞いてなるほどと思いましたが、あぶりは焼き魚ではもちろんありませんが、燻製とも違う、ちょどその中間に位置する調理法とのことです。
 燻製は食材に塩をして、表面を乾かしたうえで低温でチップを燻すものです。しかし、あぶりは生の状態で、下から薪(カシやサクラ)の火で炙るもので、この独特の風味と食感は文字ではうまく表現できませんが、食べてみればまったく違うことがすぐわかると思います。
 梶賀町の地元の人々は、こんなに美味い出来立てのあぶりをたべていたのですねえ。


 ところでこの網元ノ家は「地域おこし協力隊」の隊員2名によって運営されています。梶賀町も全国の漁村の例にもれず過疎化高齢化が進んでおり、いかに活性化していくかが大きな課題です。
 あぶりを含め、梶賀ならではの産品をより魅力的な商品にブラッシュアップし、都市部などに流通展開していくことがミッションとなっているそうです。


 同時に、あぶりを作れる人は高齢化しており、技術の伝承も必要です。地域おこし協力隊のメリットとして、隊員は梶賀地区の総意として受け入れているので、地元住民が非常に協力的なことがあるそうです。あぶり作りには技術やノウハウが必要ですが、丁寧に教えてくれるそうです。
 逆に言えば、地域おこし協力隊のように行政が絡んだものでなく、まったくその土地にゆかりのない一個人が地域で消えつつある技術や技能を継承したいと希望しても、地元でそれに応えられる職人が ~たとえば教え方がわからないとか、教材もないとか~ 果たして実際にどれくらいあるかという問題があるそうです。示唆に富むお話でした。

 しかしまあ、何はともあれ、あぶり作りがまじかに見られ、出来立てが食べられたのは貴重な体験でした。関係者の皆さまに感謝いたします。

■梶賀 網元ノ家  https://www.facebook.com/amimotonoie/

■網元ノ家(梶賀のあぶり)ネットショップ   https://spike.cc/shop/kajika_amimoto_no_ie

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