2017年1月21日土曜日

またゲームのルールが変えられる

 アメリカのトランプ大統領が就任しました。アメリカ第一主義を掲げ、アメリカの産業競争力を低下させているのは自由貿易、アメリカの治安を悪くしているのは移民やイスラム教徒、といった明確かつハチャメチャな公約を実現しようとしています。

 ここまで社会や経済のグローバル化が進んでいる以上、人、モノ、カネ、情報が国境を越えてますます盛んに行き来するようになるのは止められないと思うし、その恩恵をもっとも受けてきたのはほかならぬアメリカ合衆国だと思います ~グローバルスタンダードとはアメリカスタンダードのことである、とはよく保守的な人々から指摘されたことです~ が、まあとにかく、現実がこうなってしまったのだから、しばらく様子を見るしかないし、変化に素早く適応していくしかないでしょう。
 こんなことは、わしが言うまでもなくとっくに誰かが指摘しているでしょうが、自分が敗けそうになってくると「ゲームのルールを変える」のはアメリカの常套手段です。今回のアメリカファースト、保護貿易主義もルールチェンジ、もしくはゲームそのもののチェンジだと理解すればいいのではないでしょうか?


 80年代初頭、オイルショックの危機を乗り越えた日本は、優れた性能を持ち、故障せず、しかも大変に安価な自動車やテレビをアメリカにどんどん輸出して稼ぐようになります。アメリカが主導した自由貿易体制の恩恵を享受して経済はどんどん拡大しました。
 しかし、ここでアメリカはルールチェンジ。「貿易不均衡」を唱えるようになります。
 日本の自動車メーカーや家電メーカーは米国議会からめちゃくちゃに叩かれ、不公正な貿易相手国には懲罰的な関税をかけると脅かされ、日本企業は北米での現地生産が進み、日本も内需拡大が迫られました。いわゆる日米貿易摩擦です。
 
 何やかんやで日本はこの危機もうまく乗り切りましたが、今度はアメリカ主導のプラザ合意なる為替操作の陰謀(?)により、日本の資金は半ば無理やり国内に投資されるよう誘導され、土地や株が異常に急騰します。いわゆるバブル経済です。
 この間、日本経済は自動車やビデオデッキ、コンピュータなどの製造業が絶好調を迎えますが、対する米国の産業、特に製造業は不振を極め、主力企業は続々と海外に出ていくようになります。
 米国凋落の原因は、為替レートに頼って効率化を怠った結果、競争力が失われたためと分析され、日本がアメリカを抜いて世界最大の経済大国になることも夢物語ではないと信じられるようになりました。わしが社会人になりたての頃で、雑誌やテレビは連日このように報道していました。

 しかしここで再びアメリカのルールチェンジ。
 コンピュータがパソコンの時代になると、競争力の源泉はOSとなり、パソコンそのものはそれを動かすハコに過ぎなくなります。ベンチャー企業だったマイクロソフト社がウインドウズで一気に世界のシェアを奪ってしまいます。
 パソコンの心臓部のCPUもインテルがほぼ独占し、これらウインテル連合に対して日本のパソコンメーカーはなすすべがなく、コアになる部分はアメリカに握られたまま、台湾のパソコンメーカーなどとの価格競争に陥ってしまうようになります。

 技術開発の手法も、もともとはアメリカの大企業 ~ゼロックスとか~ が構築したシステムであった中央研究所を、日本の企業も追随するようになって華々しい成果を上げだしたら、またまたルールチェンジ。
 研究や開発は企業が企業内部の垂直統合型で行うのではなく、大学とたくさんの企業がアライアンスした「産学連携」というオープンイノベーションで進められるようになります。そこで研ぎだされた技術を商品化し、ビジネス化するのはベンチャー企業であり、ベンチャー経営者に資金を提供する投資ファンドです。
 アップルやグーグルなんかが典型例で、アイフォンとかリスティング広告とか、そういった今まで全く世の中になかったもの(と言うかサービス)が世界経済を牽引するようになります。
 ここでは日本企業は単なる部品屋さんに過ぎず、新興国の企業と熾烈な価格競争に追いやられるようになります。

 ところがところが日本も粘り腰。
 もともと強い分野だった環境技術とか、素材技術、電池技術などを、オープンイノベーションを取り入れてどんどん進化させ、スマートホンとかジェット旅客機とか、製品としてはアメリカの発明品だけれど、中核となる部分は日本が急所を握っているという分野をしっかりと作り上げるようになります。
 こういうところ、日本は本当にすごくて、勝てそうな分野ではどんどん海外の生産拠点に設備投資し、経済力で日本を圧倒するようになった中国やアジア諸国に対抗しよう、と考えていた矢先。

 トラちゃんの登場。
 そしてまたまたのルールチェンジ。
 今まで日本企業がやってきた努力を水泡に帰すようなアメリカファースト=自由貿易体制の否定です。
 繰り返しますが、これはアメリカの常套手段で、ざっと振り返ってみても既視感があるような光景なのです。

 恐ろしいことは、アメリカのルールチェンジは、その都度その都度、「アメリカは身勝手すぎる」とか、「陰謀だ」とか、「ダブルスタンダードそのもので卑劣だ」とか非難され、反発されてきたのに、結果的にアメリカの言うとおりに世界は変わってしまったことです。
 経済理論から考えて、アメリカのルールチェンジは間違っている、合理的ではない、リスクが高すぎる、と言われても、結局、日本は円高に追い込まれたし、オープンイノベーションが主流になったし、ベンチャーが一定の存在感を示すようになりました。アメリカに追随せざるを得ないのです。

 トラちゃんも、最初はみんな「バカだねぇ~」と軽く見ているし、失敗は必然だと思われていますが、過去は実際に、アメリカやイギリスは全世界を主導してきました。このことは無視できないと思うのです。

 
 

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