2017年1月3日火曜日

2016年(平成28年)の読感総集編

 昨年読んだ本で、このブログに読書感想を書いたものからベスト10を選んでおきます。よそ様にお勧めするのももちろんですが、順不同であり、わし自身のメモ用です。

1)地方創生大全 木下斉著 (東洋経済新報社)
 様々な地域活性化の取り組みは、それが持続できなくては意味がありません。このためには自主的に稼ぐことが必要であり、ビジネスモデルをしっかり作って、初期投資を最小に事業を始めるためのスキル、ノウハウが必須になります。政府主導の「地方創生」のブームに乗るのでなく、どうすれば自主自立した地域おこしや地域活性化に取り組めるのかを豊富な実例でもって実証的に解説した本です。
 まっとうな地方創生のために(その1)(2016年11月21日)
 まっとうな地方創生のために(その2・完)(2016年11月22日)

2)ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか 熊谷徹著 (青春新書)
 電通社員自殺事件の影響で、今年は「長時間労働対策」がブームとなりそうです。今まで官庁でも企業でも様々な対策は取り組まれてきましたが、社会が変わらないままで帰宅を強制してもサービス残業などのひずみが大きくなるだけです。ドイツ社会は消費者と労働者は対等で、「お客様は神様です」的な甘えがありません。この社会の成熟は見習うべきです。
 ドイツ人は1年に150日休んでも仕事が回る(2016年1月26日)

3)人口減が地方を強くする 藤波 匠著 (日経プレミアシリーズ)
  地方創生政策の根拠は「東京一極集中」ですが、実は「一極」と呼べるようなデータはなく、むしろ今の日本は「郡部から市部へ」、「小都市から中枢都市へ」という人の流れが出来つつあります。国民の世帯構成や産業構造が大きく変化しつつある現在、人口減少を人為的、政策的に止めることはできないので、人口減少は所与のものとして、足腰の強い地域産業づくりや人材育成を地道に行うことこそが必要と説きます。
 無理に人口を増やすことなどできない(2016年6月27日)

4)経済学者 日本の再貧困地域に挑む あいりん改革3年8カ月の全記録 鈴木 亘著(東洋経済新報社)
 経済学者である著者が大阪市の特別顧問として西成区・あいりん地区の再生に取り組んだ体験的ルポ。情緒を排した客観的で簡潔な記述で、長年膠着していた事態をステークホルダーを粘り強く説得し、巻き込んで計画を作り、さらにその計画を着実に実現するという流れをつづったもので非常に参考になります。また、現場で起こるネゴの数々を経済学から見て分析しており、現場の人間から見ると新鮮かつ奥深い考察になっています。
 やり遂げることこそが難しい(2016年12月26日)

5)地方議員の逆襲 佐々木信夫著 (講談社現代新書)
 昨年も地方議員の不祥事が続きましたが、全国的にみると地方自治体の議会選挙は立候補者が減少しており、投票率そのものの低下もあって、議員が有権者の代表とはとても言えない深刻なな状態です。また、現実の地方自治制度は首長の権限が大きすぎ、議会は要望や要求をすること以外にやることがありません。著者は議会が真の住民代表となるには、道州制を導入して、住民が自分の住む自治体の経営へ責任を持つこと以外にないと説きます。
 なぜ地方議員はあんなふうなのか(2016年4月4日)

6)ルポ ニッポン絶望工場 出井康弘著 (講談社+α新書)
 人口減による労働力不足が予想されるため、経済界の一部では日本でも移民を受け入れろ的な議論がありますが、著者によると日本で暮らす外国人223万人の半数以上は実習生や留学生という名の労働移民です。日本の過酷な労働現場は彼らが支えており、もはや外国人労働者なしで日本経済は成り立ちません。しかし法(建前)と現実のあまりの乖離のため、今の制度は早晩破綻が懸念されます。アジア諸国の若者は自分たちをモノ扱いする日本を見捨てつつあります。
 アジアに見捨てられつつあるニッポン(2016年12月6日)

7)物流ビジネス最前線 ネット通販、宅配便、ラストマイルの攻防 齊藤実著(光文社新書)
 日本のネット通販業界は楽天とアマゾンが拮抗していましたが、ここへきてアマゾンの独走が顕著です。「フルフィルメントセンター」と呼ばれる物流センターはICTのカタマリで、さらに生鮮食品の宅配やドローン活用も現実となっています。一方でこうしたイノベーションを支える宅配業界は熾烈な消耗戦になっており、配達効率化のための様々な試みも生まれています。激変する物流業界のわかりやすい入門書です。
 イノベーションは物流ビジネスで起こる(2016年9月12日)

8)シルバー民主主義 高齢者優遇をどう克服するか 八代尚宏著 (中公新書)
 政治家が当面の選挙に勝つために、増える一方の高齢者の既得権を守ろうとすることがシルバー民主主義です。少子化や終身雇用の崩壊などで、現行の社会保障制度が行き詰るのは必然なのに、国民は改革に消極的で、政治家も近視眼的な政策に終始します。この改善には「同一労働・同一賃金」を究極の目標として、多様な働き方を実現することしかありません。
 日本を蝕む「長寿のパラドックス」(2016年8月22日)

9)「強すぎる自民党」の病理 老人支配と日本型ポピュリズム 池田信夫著 (PHP新書)
 7月の参院選でも圧勝し、安倍一強といわれる安倍政権ですが、「アベノミクス」は行き詰まっています。重要政策が成功していると言えない安倍政権が、国民から支持される理由は著者によると、財政悪化や社会保障制度改革など有権者が嫌がる問題をあえて争点にせず先送りしているからです。しかし、このような「無責任体制」が続くはずもありません。この原因の一つは、日本人の「過剰に合意を求める」心理なのですが、これは非常に根が深い問題です。
 強すぎる自民党がいいか悪いか(2016年9月5日)

10)地域再生の失敗学 飯田泰之ほか著 (光文社新書)
 安倍内閣が主導している「地方創生」ですが、実は60年代から農村、過疎地、離島などの地域振興策や中小企業活性化策は営々と続けられてきました。その多くは失敗したので現状に至っているわけですが、その失敗の理由を識者の対談形式で検証しているのが本書の内容です。1】でも述べたように地域活性化は持続が必要で、それには自ら稼ぐことが必須です。この立場で見ると、地方税制度のひずみなど、様々な課題が浮き彫りになります。
 地域再生はなぜ失敗の連続なのか(その1)(2016年5月9日)
 地域再生はなぜ失敗の連続なのか(その2)(2016年5月10日)

番外)「神國日本は敗けました。」名張國民学校五年は組作文集 永六輔 (日経大阪PR)
 玉音放送を聞いて少女たちは何を考えたか(その1)(2016年8月14日)
 玉音放送を聞いて少女たちは何を考えたか(その2・了)(2016年8月16日) 
 

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