2017年1月4日水曜日

英虞湾でAIを使った真珠養殖が

 今日の朝日新聞朝刊に、三重県南部の英虞湾(あごわん)や的矢湾で、昨秋から人工知能(AI)を使った真珠養殖の実験が行われていることが報じられています。(1月4日付け)
 名古屋工業大学の大塚孝信特任助教と化学品メーカーの日油技研工業(埼玉県)が取り組んでいるもので、真珠養殖の筏の上から温度センサーを水中に下ろして設置し、測定した水温を、風の向きや強さ、気温、気圧、潮の流れといったデータとともにコンピュータに読み込ませると、AIの学習機能によって数日先の水温が予測できるようになるそうです。
 真珠の母貝であるアコヤ貝は15℃~25℃の水温が生育に最適とされています。水温が急激に変化すると、真珠の表面に光沢が無くなったり、稚貝が死んでしまいますが、今まで養殖漁家は経験や勘で水温変化を予測するしかありませんでした。
 今後AIによる水温変化予測が実用化すれば、養殖筏を事前に温暖な海域に移動させるなど被害を未然に防ぐことができます。地元では真珠の安定供給にも役立つものと期待が高まっているとのことです。


 AIやVR(仮想現実)といった電脳情報技術の進化は目覚ましいものがあります。しかし、わしのようにゲームもせず、ごく普通に昔ながらの暮らしを送っている人種にとっては、AIがどれほどの生活の変化をもたらすものなのかは正直言ってピンと来ない面があります。

 この真珠養殖への応用などはたいへんわかりやすい具体例であって、技術の習得に長年かかり、しかもそもそも後継者難で、三重県を代表する特産品でありながら産業としての存続すら危ぶまれている業界にとっては、負担軽減と生産性の向上の両面で、たいへん意義の深い取り組みであると感じます。ぜひこの実験が首尾よく実用化することを期待したいと思います。

 しかし、こうした新しい技術が本当に現場に普及するかどうかは、言うまでもなくコストの問題が大きな要素となります。量産されるようになればコストは下げられるかもしれませんが、養殖漁家そのものの数は決して多くはないので、量産効果が生まれるほどこの装置が生産されるかどうかはわかりません。
 AIを使ったセンシング技術は今後ますます農林業、畜産業、水産業に普及してくるでしょうし、これらの産業は政府から厚く保護されているので、導入にあたっては補助金のような制度も設けられるかもしれません。
 しかしやはり、基本的には漁家自身が強い経営体力を持ち、自らの判断と資金で設備投資を行うことが最も望ましいし、使いこなせる能力も磨かねばなりません。
 近い将来、AI化は漁家には一つの大きなハードルになるかもしれませんが、意欲と能力が高い若い新規参入者が増えるきっかけになるかもしれません。ICTを使いこなす漁家が生まれ、漁業に対する古いイメージが払拭されれば、真珠養殖業を含めた第一次産業が成長産業になる可能性はぐっと強まるはずです。

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