2017年2月1日水曜日

焼け石に水か、それとも

 たとえばあなたが、何かにチャレンジしていたとします。必ず成功させたいと思っています。
 しかし何回トライしても、どうしてもうまくいかない。そんな時、あなたがとる方法は次の二つでしょう。
その1 あきらめて別の方法を試してみる
その2 成功するまで同じ方法で挑戦し続ける
 これはどちらがいいか、一概に言えません。世の中の成功者にその秘訣を聞くと「絶対にあきらめたりせず、やり続けたことがよかった」と答える例は非常に多いからです。
 多くの人が今のやり方をあきらめるのは、やり続ける根気がなくなることもあるでしょうが、やり続けるための費用が底をついてしまうせいもあるでしょう。
 その時、さらに2つの条件が追加されたらどうでしょうか。
条件1 あなたのチャレンジは他人との競争であって、しかもチャレンジ期間は4年間と決まっている。
条件2 チャレンジに掛かる費用はすべて他人が提供してくれる
 これなら、最初の問いへの「その2」の答えを選択するハードルはずっと低くなると思います。
 別の新しい方法を考えなくてよく、懐も痛まない。
 全国各地の自治体で今繰り広げられている「人口獲得競争」がまさにこの構図なのです。

 こんなことを考えたのは、総務省がこのたび公表した平成28年の全国の人口移動状況のニュースを見たからです。
 住民基本台帳、いわゆる住民票をベースにした転入者数と転出者数を集計したもので、これによると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)で転入者が転出者を上回る「転入超過」が21年連続で継続しており、超過の数は昨年から1500人ほど少なくはなりましたが、それでも11万7868人もの人口が東京圏に転入しました。
 全国の都道府県別で見ると、転入超過なのは、東京、千葉、埼玉、神奈川、愛知、福岡、大阪の7都府県。残りの40道府県は転出超過となっています。
 総務省は、日本は少子化が進んでおり、就職や進学などで引っ越しをすることが多い若年層が減少しているため、全国的な移動規模(転入・転出の総数)は小さくなっているものの、東京圏に人口が流入する傾向は今後も続く可能性が高いと分析しています。

 政府は、地方への景気効果の波及、ローカルアベノミクスの実現のために地方創生政策を推し進めています。全国の各地方自治体では国からの支援(交付金など)を受けるために「まち・ひと・しごと創生戦略」という計画を策定していますが、そのほとんどは東京圏への人口一極集中は由々しきことだとの前提で、人口、特に若者人口を地域に定着させ、あるいはIターンやUターンを促進する内容となっています。
 具体的には、若者が住み続けられるような「仕事」を作ること。結婚し、子供が設けられるように男女の出会い支援や出産・子育て支援を行うこと。安い家賃の住宅を提供すること。などが国の交付金や地方自治体の税金を使って推し進められているのです。
 それだけではありません。地域の魅力を発信する動画の製作だの、利便性を増す道路の改良だの、安全安心のための防災工事だの、仕事を作るための特産品開発だの、「あやかり」としか思えないような因果関係の薄い施策にまで予算はブチ込まれています。

 こうした地方創生策が始まって、約2年。
 人口の減少はもちろん、東京圏をはじめとする三大都市圏、北九州圏への人口集中に歯止めをかけることにも成功していません。

 わずか2年では結果など出ないのかもしれません。
 しかし、立ち止まって考えることも必要でしょう。
 本当に今のこのやり方がいいのかどうか、正しいのかどうか。
 地方への人口定住や、都会からのI・Uターンの促進は、何も2年までの地方創生政策(まち・ひと・しごと創生政策)から始まったわけではありません。今までにも、過疎地域振興、辺地振興、離島振興、中山間振興、中心市街地活性化、などには莫大な予算が投じられてきました。
 このことを踏まえずに、まるで地方創生が今になっていきなり始まったごとく、過去からの取り組みの評価もせず、失敗点にパッチワークしていくように、つぎはぎの上塗りを重ねていっても、将来の成功は難しいのではないか、と合理的に考えてみることです。

 ところで、一番笑ったのは、というかオカバだったのは、某経済新聞の「有識者」のコメントです。その地方の個性を魅力発信して、人々から選ばれる地域にならなければいけない、などと言うのですが、地方に住んでいる人は地域の個性などどうでもいいのです。むしろ全国にスタンダードである「コンビニ」とか「レンタル店」がおらが街にないことを不便に思い、恥ずかしく感じているのです。
 地方の活性化が難しいのはまさにこの点です。住民の気持ちさえ忖度できない有識者がいくら地方自治体をコンサルティングしても、活性化策は空回りするだけでしょう。現実にそうなりつつあります。

■はんわしの評論家気取り
  無理に人口を増やすことなどできない(2016年6月27日)

  社会主義がいつまで通用するか(2016年11月26日)

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