2017年2月19日日曜日

地方自治体「競争」の一側面

 高市総務大臣が先般の記者会見で、ふるさと納税の返礼品をめぐる課題を整理して、今春をめどに改善策をまとめる方針を明らかにしました。 
 「ふるさと納税」の寄付者に対して地域特産品の返礼する制度は、法令で定められているわけではなく、地方自治体があくまでも任意のお礼として行っているものです。返礼が特産品のPRになったり、自治体が取り組む創意工夫の発揮手段として評価する声がある一方で、自治体間の競争は過熱しており、地方を応援するという趣旨を離れて、高級肉や高級魚、コメや野菜などを格安で購入できる一種の「通販」としての認知が急速に広まっています。
 総務省は平成28年にも各自治体にふるさと納税の趣旨に反する返礼品を行わないよう要請しましたが、千葉県勝浦市のようにそれに従わず、高額商品券を返礼し続けてそれがネットに転売され、間接的に「税金を使った金儲け」に手を貸しているお粗末な ~亡国的ともいうべき~ 自治体も後を絶ちません。

<29年2月26日追記>
 勝浦市役所は2月28日までの寄附の申込み受付分をもって高額商品券の返礼は終了すると発表しました。(市ホームページでの告知はこちら

 自由主義社会は世の中の進歩は人々が切磋琢磨しあい、競争することで成り立っています。これを否定すると、社会から創意も工夫も努力もなくなり、停滞し腐敗してしまうことは社会主義国の失敗で明らかです。
 地方自治体は役所であるので、競争に適さない分野や、競争が成り立たない分野を担当するのが本来であり、そのために職員(公務員)の地位の安定など制度的な保証もされているわけですが、こうした分野とは別に、自治体が競争することで皆が豊かになる部分はあるし、住民・国民もそういった競争は歓迎するはずです。
 
 しかし気を付けないといけないのは競争が過熱することです。
 大小1900もある全国の自治体は、規模も能力もさまざまですし、トップ(首長)の考え方も様々です。地方公務員的な観点がら見ると、自治体のヒエラルヒーも様々で、首長のトップダウン型、議会ドンによる支配型、企業城下町型、多元型、地区分裂型などいろいろな権力構造を持っています。
 中にはルールギリギリの線で攻めてくる自治体もあり、逸脱する自治体すら出てきます。
 いずれにせよこうした自治体の過熱競争のタチが悪いのは、選挙の審判を受ける首長や議員はともかく、職員(公務員)は競争に敗れても、ルールを破っても、責任を負う必要はないことです。身分保障され、やりっぱなしで済む ~もちろん閑職に飛ばされる程度のことはありますが、クビにはなりません~ ということです。
 
 返礼品の例でも、よく考えてみればわかりますが、これは寄付金で地域産品を買い上げ正規価格(適正価格)よりも安く売っているのと同じです。ふるさと納税者は納税制度によって割り引かれた「安い価格」を基準判断に置くようになるので、仮にふるさと納税制度が無くなって、地元業者が同じ産品を正規価格で販売しようとしても、買う側は割高感を強く感じるために再び購入してくれるかどうかはわかりません。(化粧品でも何でも、1回目は割安なお試し価格で買い、その次に、正規価格で新たに購入する人は3割もいないのではないでしょうか?)

 ましてや、地域産品は全国各地で似たり寄ったりです。お茶、お米、シイタケ、ノリ、干物など、高品質なものは全国どこでも生産しているので、その地域のその銘柄でないと買わないという消費者は皆無に近いでしょう。
 自治体職員や生産者が並々ならぬ努力をしているのはよくわかりますが、返礼品の実態は木下斉氏が言うように、自治体による地域産品買い上げという「公共事業」です。
 いつかは終わりが来るので、その時のために商品力を高めておかないと、結末は悲劇的なものになります。
 多くの自治体はそのことに気付いており、特産品のブランド力や品質の向上、地域企業や生産者の生産性向上に取り組んでいます。本来の競争軸はここにあるべきなのです。

 同じように不毛な競争は、中日新聞が連載しているような小学校、中学校での「全国学力テスト」でも見られます。
 学力テストの点数を上げるための補習の実施はまだ理解できるとして、事前の試験テクニック対策の実施や、学校別の成績発表、低成績校へのペナルティなどは趣旨を逸脱していると思わざるを得ません。
 多くの教育学者は、全国学力テストの成績向上と、その学校における基礎学力の水準とは相関関係が低く ~相関度は保護者の教育への関心度や児童生徒の生活習慣のほうがはるかに高い~ 、したがって学力テスト向けの対策には効果がないことを指摘しています。(例えば、教育学者 中室牧子さんの見解はこちら
 
 しかし、学力テスト対策について、首長のトップダウンや、議会、保護者からの強い要請によって自治体競争は過熱の一途をたどっています。
 小中学生の自殺のニュースを見るたび、ただでさえ多忙な学校現場を学テ対策といった意味のない業務に追い込んで、ますます事態は悪化していくのではないかと心配になってしまいます。 

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