2017年2月25日土曜日

強運が衰亡するとき

 三重県は15日、三重県議会に平成29年度の当初予算案を上程しました。
 一般会計は約7011億万円で、対前年度比5%の減となり、G7主要国首脳会議(いわゆる伊勢志摩サミット)の開催などで増加傾向であった財政規模は5年ぶりにマイナスとなりました。
 新年度の「目玉事業」は、サミット効果を持続させるための国際会議誘致や伊勢志摩国立公園の整備といった「ポストサミット」なる事業群のほか、平成33年の三重国体に向けたスポーツ施設の建設、高・中・小生の留学や英語キャンプなどグローカル人材の育成、多様な人材の活用を目指す「ダイバーシティ」推進などの事業のようです。
 しかしポストサミット事業など、もうとっくに終わったイベントにしがみつく後ろ向きな話でしかありません。「ミラノ万博」が翌年すぐに忘れられたように、サミット開催実績など何の話題にもならないでしょう。
 同時に、わしは何人かの県民から異口同音に「知事サンも強運が無くなってきたなぁ」という言葉を聞きました。これは興味深いことです。

 彼ら彼女らは、昨年秋にかなりの信憑性をもって報道されていた衆議院解散に知事が出馬すると確信しており、サミットを三重県に誘致し、開催を「成功」させたことを花道に県政から転身すると見立てていました。
 しかし参院選は圧勝したものの、EU離脱やアメリカのトランプ政権の誕生など海外情勢が激変し、しかも安倍首相の政権運営は安定しているなか、年末にかけて解散風は急に止んでしまいます。これによって思わぬとばっちりを受けたのが、必勝ムードの中で転身体制を整えつつあった知事だというわけです。

 心ならずも県政を担い続けなくてはならなくなった中で、大きな課題は悪化する一方の県財政に回復の兆しがなく、回復の道筋すら不明であることです。
 サミットによる観光産業の活性化などで県税収入は好転するはずでしたが、実際は減少見込みで、国からの地方交付税も微減の見通し。一方で、義務的な経費である人件費や公債費、社会保障関係経費は支出の6割以上を占めており、ほぼ横ばいです。
 このため、予算編成真っただ中の昨年12月の時点で、各部局からの要求額と歳入見込みの差額は219億円にものぼり、やむを得ず県職員の給与削減、別会計である「環境保全基金」からの繰り入れ、「財政調整基金」からの取り崩しなどの非常手段を総動員してやっと辻褄を合わせました。

 しかし、人件費の削減はもともと職員定数を減らす計画であるための自然減があって、生身の給与削減は、一般職員のボーナスを3年間0・085カ月分削減(!)することと、管理職の月給を2.7%削減するだけです。
 もともと三重県の職員給与は県内の民間企業に比べて高く、仮に1割削減したとしても、それによって県職員を辞めて民間企業に転職する人材などいるはずがないので、大胆なカットは十分可能だったはずです。県職労と県教組の政治力と知事など県執行部のそれとは圧倒的な差があり、結果的に大幅な人件費削減は不可能でした。(これから先も大幅削減はできないでしょう。)
 仕方がないので、県は庁舎の修繕費の計上先送りや県債管理基金の積立額の減額、退職手当の計上を一部見送ることなどで、やっと冒頭の7011億円規模に収まったのです。

 まあ数字合わせはともかく、一般県民の生活に直結する行政サービスの量や質の低下が果たしてどれくらいの影響になるのかはまだよく見えてきません。これから徐々に副作用は現れるでしょう。
 そうした中で重要なのは、
1)では、これからどのように行政改革を進めるのか
2)県が多くの行政事務を担えなくなる中で、県と、企業や県民とがどう分担していくのか
 の2点です。
 
 この点について知事の考えは明確ではありません。わしが知る中でも、県幹部OBが多く天下っている外郭団体(財団法人など)の廃止や縮小などはまったく議論の俎上にも上りませんし、かつては盛んだった行政経営品質向上活動も今の県政からはすっかり姿を消しました。(なので今の三重県政にはPDCAサイクルが存在しません)
 官民の役割分担議論もそうで、良くも悪くも前知事の時に盛んに議論された「新しい公」といった遠大なテーマも県政からは全く聞こえなくなりました。
 こうしたことを考えると、県民の多くが「サミット花道説」を信じていたとしても無理はないとさえ思えます。

 官僚出身とはいえ何ら政治実績がなく、三重県ともまったく縁がなかった落下傘候補だった現知事が知事選に当選したのは、当時の民主党の候補一本化の失敗によるものでした。非常な強運です。
 しかも、当選直後に報じられた暴力団と関係があるとみられた企業からの報酬受け取りや、三重県知事として何十年ぶりかで復活した政治資金パーティーなどへの批判も多くありながら、持ち前のバイタリティで乗り切れたことも強運を感じさせました。
 サミット誘致成功はそれが極まった印象を与えました。立候補が最後発だった三重県が会場に決定したのは安倍首相の英断と共に現知事の「強運」だとよく言われたものです。
 しかし今、たしかにその運は使い果たされつつあるように見えます。これから数年間、綱渡りの苦しい財政運営が続き、サミットに続く目玉が打ち出せない。行政改革への大きな理念も感じられない。
 表現は悪いですが、こうしたジリ貧がドカ貧になってしまわないでしょうか。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

職員ですが給与削減はもっと切り込むべきだったと思います。組合も反対するばかりでなく、政策評価や業務削減の提案(テレワークやシステム導入)を組合費を使ってやれば良いのにと思いますが、難しいでしょうか。数の暴力は威力はあれどスマートではないですよね…

匿名 さんのコメント...

給料に見合った仕事ができない高齢職員の首を切ることはできないのか?
うちの課でも一番仕事ができない人が圧倒的に給料が高い。士気低下甚だしい。
ある種の生活保護みたいなものですね。

匿名 さんのコメント...

運ともう一つは攻撃は最大の防御と言わんばかりの拡張主義政策で保たれていたのでは?こうした政策の多くは成果が実感できないので知事が守りに入ったときは案外脆いかも知れないと思います。