2017年2月5日日曜日

五輪塔を比較してみる その2(マニアック)

(承前)五輪塔を比較してみる その1(マニアック)

 伊勢市にある 大五輪(おおごり)の五輪塔 と高い共通性があるという奈良・西大寺の叡尊(えいそん)上人の五輪塔を見に行ってみました。
 東大寺といえば大仏が全世界的に有名で、奈良ばかりでなく日本を代表するお寺ですが、それに対して西大寺は、正直なところ知名度では全然比較にならないほどパッとしません。
 しかし西大寺は8世紀の奈良時代後期、称徳天皇によって建立された歴史の古いお寺で、最盛期には東西二つの五重塔をはじめ壮大な伽藍を有していたそうです。
 その後、平安時代に入ると寺勢は衰退してしまいますが、鎌倉時代の1235年(文暦2年)に叡尊が入住すると、「仏教を盛んにし、民衆を救済する」を表す「興法利生」を唱えて、真言律の振興や救貧施療に従事し、各界から支持と崇敬を集めて、西大寺は根本道場として再び繁栄を迎えたのです。
 わしはまず、近鉄西大寺駅の南口から徒歩で数分の西大寺をお参りした後、その境内から600mほど離れた奥之院(体性院)に向かうことにしました。ここ体性院に、例のその、叡尊上人の五輪塔があるはずです。
 西大寺境内の周辺は住宅と店舗やビルが建ち並ぶ完全な市街地ですが、体性院に向かう道はかつての農道かあぜ道がそのまま道路になったものらしく、めちゃくちゃ道幅が狭いのです。


 道すがら、明らかに茅葺を瓦葺に改築したと思われる立派な母屋と、長屋門、納屋、倉がある大きな農家が何軒かあったりして、都市化する前はこのあたり一帯、田畑が広がるのどかな場所だったのだろうと思いました。
 ぶらぶら歩くこと10分。体性院に着きました。


 門の奥に五輪塔が見えます。こうやって写真を撮ると大きな門があって塀がぐるりと囲んでいるように思えますが、実際には門だけがポツンと建っていて、ほぼオープンなスペースに五輪塔が鎮座しています。

 これが叡尊五輪塔(重要文化財)です。花崗岩製で総高3m42cm。立派な基壇があって、その上に設けられているので、全体の高さは5メートル以上あります。 


 もうこれは「大五輪の五輪塔」とそっくりと言ってよく、偶然の一致とかいうレベルではありません。
 写真もコピーもない時代ですからまったく瓜二つの複製品を作ることは不可能とはいえ、ここまで大きさもデザインも風合いも類似しているのは、明らかに同じ目的、同じ意図で、同じ石工(石工集団)が関わったとしか考えられません。

 同じような角度から撮った写真を並べました。左が叡尊上人の五輪塔、右が大五輪の五輪塔です。大五輪の五輪塔のほうが水輪(真ん中の丸い玉の部分)がずんぐりしていますが、ほぼ同じです。今から700年近くも昔の14世紀に、弟子や信者がこのように立派な塔を建てて偲んだ興正菩薩 叡尊上人は本当に偉大な方だったのでしょう。


 その叡尊上人も崇敬した伊勢神宮のすごさを改めて実感するとともに、神仏への信仰を通じて当時なりの宇宙の真理や人生の意味を探求しようとした宗教人たちの営みには、今更ながら感服せざるを得ませんでした。こうした先達を持つ日本は、素晴らしい国だと思います。

■真言律宗総本山 西大寺   http://saidaiji.or.jp/

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