2017年2月9日木曜日

業務改善助成金は「使える」か

 わしの仕事場に、最近異常に松木安太郎サンの顔のドアップが氾濫しています。厚生労働省による中小企業を対象にした支援制度「業務改善助成金」のPRキャラクターになっているようで、やたらポスターやチラシが貼りまくられているのです。さいわい、真冬なので暑苦しくありません。
 「業務改善助成金」とは、安倍内閣が提唱する一億総活躍社会を実現するための措置だそうで、中小企業の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための支援制度とのこと。
 具体的には、中小企業が生産性を向上させるための設備投資やサービスの利用などを行い、それによって事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合には、その設備投資などにかかった費用の一部を国が助成するという内容です。
 生産性向上、事業場内最低賃金といった難しい言葉が並びますが、これを簡単に説明するとこうなります。


 生産性とは労働生産性とも呼ばれ、企業が事業活動で生み出す付加価値(利益)を従業員の労働時間で割ったものです。生産性は業種や企業の規模などで大きく違いますが、日本と海外をざっくり比較すると、日本企業の生産性は低く、アメリカやヨーロッパの生産性は高い傾向があります。
 多くの人が懸命に働いても高い価値を生み出せないということは、日本全体の経済成長を目指すうえで大きな足かせとなります。このため、日本の企業も生産性を上げ、国際競争に打ち勝たなくてはならず、さらにはこれから日本の労働人口は減少していくので、労働力不足の環境でも企業が生き残っていけるようにしなくてはいけません。

 次に最低賃金ですが、賃金労働者は最低賃金法によって賃金の最低額が決まっています。県によって違いますが三重県では時給795円です。
 これまた安倍内閣ですが、輸出型大企業などが大いに潤っている「アベノミクス」の恩恵を中小企業にも拡大するため、最低賃金についても全国加重平均が1000円になるよう引き上げていくことを目指しているのです。
 賃金を引き上げるには、企業が原資となる利益を出さなくてはならず、そのためには先ほどの生産性の向上に取り組まなければならない、という理屈となります。

 そこで、中小企業が
1)事業場内最低賃金を一定の金額以上引き上げることと、生産性向上に向けた設備投資などを行う内容の事業実施計画を策定し、
2)実際にその事業実施計画に基づき、引き上げ後の賃金を従業員に支払い、設備投資も実行する
 の2つを行った場合に、事業内最低賃金の引き上げ額に応じて、50万円から200万円の助成金をその中小企業に交付するのが「業務改善助成金」です。

 では、生産性向上のための設備投資とはどんなものか、なのですが、厚労省が示している事例は
・調剤薬局が、患者に処方するにあたって過去の薬剤服用歴を確認するが、患者情報が紙媒体だったので、確認に時間がかかっていたところ、助成金を活用して電子薬歴管理システムを導入 → 確認時間の短縮により生産性が向上。従業員の最低賃金を50円引き上げ。
・毎週本社で営業会議を開いていたが、営業所からは往復3時間の距離があり営業機会が損失していた。そこで、助成金を活用してウェブ会議システムを導入 → 移動時間の短縮で生産性が向上。従業員の最低賃金を40円引き上げ。
・飲食業だが接客の業務マニュアルがなく、接客の質の均一化ができておらず、店長の新人教育時間も長期化していた。そこで、助成金を活用して専門家に業務フローの見直しを依頼して実施 → 業務効率改善により生産性が向上。従業員の最低賃金を40円引き上げ、正社員の昇給も実施。
 といったようなものです。(事例集はこちら

 中小企業、特に従業員が少ない小規模な企業は、ICT化やマニュアルの作成などになかなか踏み切れず、人力で対応したり時間外勤務でカバーしたりといったケースは少なくないと思われます。
 こうした業務改善のためにこの助成金は使用できるので、経営者の方は一度内容を検討しても損はないように感じます。

 ただ、こうした助成金は国がタダでお金をくれる「うまい話」なので、トレードオフとして書類の作成など事務作業は非常に煩雑です。こうした事務仕事の負担増加は補助金や助成金の落とし穴なので、使った経験がある経営者の仲間や、税理士、社労士、取引銀行の担当者などに相談してみるのがいいかもしれません。
 各都道府県ごとに相談センターも設けられていますが、ここも省庁の縄張りで、商工会議所や商工会でなく、三重県なら三重県経営者協会が充てられています。中小企業にはあまりなじみがないところなので、相談センターに相談する前に ~変な話ですが~ やはり心やすい相手に相談してみるのがいいかもしれません。

■厚生労働省 業務改善助成金 http://www.mhlw.go.jp/gyomukaizen/index.html
 

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