2017年3月14日火曜日

海の博物館が鳥羽市営化へ

 鳥羽市浦村町にある 海の博物館 の運営が、公益財団法人 東海水産科学協会から、鳥羽市に移ることが明らかとなりました。
 海の博物館は昭和63年に現在地にオープン。全国で唯一と言われる、海や漁業、漁村をテーマにした専門博物館で、約1万8000平米もの広大な敷地に、収蔵庫や展示棟、体験学習館など8棟の建物があり、約6万点の資料を保有しています。
 資料自体が全国各地の漁村から収集された貴重なものだそうですが、建物群も高名な建築家である内藤廣氏の設計になるもので、集成材を使った大型木造建築である展示棟や、プレキャストコンクリート・ポストテンション組立工法の収蔵庫は、平成5年に日本建築学会賞を、平成10年には建設省(当時)による全国公共建築百選を受賞しています。


 このように特長ある博物館でありながら、経営的には決した楽ではなかったようで、有料入館者数は平成5年度の約5万7千人をピークに減少傾向が続いており、平成27年度は約2万7千人の入館者にとどまり、約1300万円の赤字でした。このため東海水産科学協会は昨年9月に鳥羽市に対し、財政が脆弱で継続が困難になりつつあるとして、約7600万円で市に買い上げるよう要望していたそうです。

 市は現在、市立の博物館や美術館を有していないことや、海の博物館の海女漁に関する研究や普及活動が、先年のユネスコ無形文化遺産登録にも大きく貢献したこと、仮に海の博物館が民間に売却された場合には重要な資料が散逸する恐れがあることなどから市立博物館化する方針が固まり、土地と展示棟など5棟の建物、空調設備の更新費用の合計約8600万円で購入することとなったものとのこと。
 平成29年10月1日から鳥羽市立博物館となる予定ですが、東海水産科学協会は解散せず、引き続き指定管理者として同館を運営管理していく見込みだそうです。

 わしも海の博物館には何度も行ったことがあるし、海女文化のフォーラムにも参加したことがありますが、このような大きなイベントの時以外、人でにぎわっていたことはほとんど見たことがありません。
 観光客がガイドブックで見て立ち寄ってはみたけど、なるほど、こんなところか、みたいな感じで足早に館内を見ていく、という人が多かったような印象があります。
 地方にある民営の博物館は、ここのように専門博物館であることがほとんどです。常設展示の展示替えや企画展を頻繁に行える総合博物館とは異なり、多くの来場者を集めることはなかなかに難しく、したがって財政が厳しく、それゆえにさらに魅力ある企画やイベントが打ち出せない、という負のスパイラルに陥ってしまうケースはよく耳にします。

 鳥羽市がある伊勢志摩地区は、昨年大きなイベントが開催されたことや、ユネスコの文化遺産登録などの出来事もあって全国的に見ても比較的優位性がある観光地と思われがちですが、実は必ずしもそうではなく、グルメだ温泉だといった客層がやはり圧倒的なボリュームゾーンであり、海女文化のような地域性の高いテーマに対して知的好奇心を持つ客層はなかなか確保が難しいようです。
 物見遊山の客はよそに新しい観光施設ができたらそちらに流れてしまうでしょうから、他の観光地との差別化のためにも、文化や教養といった側面からの情報発信がより重要になると思います。

 その意味で海の博物館を鳥羽市が ~決して財政的に豊かとは言えない中で~ 購入するのはやむを得ないことと思いますが、今までの経営能力にやや疑問符が残る東海水産科学協会がこれからも運営しつづけるのが果たしてベストなのかどうかは、有識者も入れ、市民の声も聴いて議論していくべきかもしれません。

■海の博物館  http://www.umihaku.com/

■はんわしの評論家気取り
  伊勢・鳥羽・志摩が世界に誇る海女文化(2011年10月29日)
 

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