2017年3月15日水曜日

素人経営者が増えないと地域は活性化しない

 日本人と外国人を比較する時、よく何事につけて日本人は「道」を究めることが特徴だと言われます。
 利益を得る行為に過ぎない「商売」を、三方良しのような商人道の実践に高める。
 武人たちの命のやり取りから、生や死の作法である「武士道」という哲学に高める。
 所詮は趣味や道楽に過ぎないお茶や生け花、俳諧なども、これを通して作者の生き方を追求する「道」に見立てる。
 これにはもちろんすばらしい面があり、こうした強い上昇志向というか、一つ一つの些事であっても、必ず大きな目標とか目的につながっているので万事をおろそかにしない几帳面さが、日本人や日本文化の強さであることは間違いありません。
 しかしその反面、何かことに関わる時は、真剣に全身全霊で取り組むべきであって、まずやってみよう、ダメならすぐやめたらいい、という姿勢で物事に関わろうとするのは、中途半端な、腰が引けた、不真面目な姿勢であるという常識はたいへんに根強いものがあります。


 その例は、たとえばサラリーマンが市議会議員に立候補したいと考えたような場合に容易に想像できます。もし落選しても今の会社で働けられるならリスクが小さいから、まずは挑戦してみよう、という候補者に対して、平均的な有権者は冷たい見方をするでしょう。政治を志す以上は勤めは辞めて、不退転の決意で立候補しない限り、有権者の支持は得られないし、政治家としても決して大成しないという声は一定の説得性があります。

 これはビジネスの世界も同じように見えます。
 起業したり創業するのは、すべての私心を捨てて顧客に向き合うべきで、「お試し創業」だの「週末起業」だのは、言葉としては聞かれますが世間は冷ややかで、こんな起業家にまず絶対に銀行はお金を貸さないし、問屋さんは品物を卸してくれません。
 家を抵当に入れ、家族や友人を連帯保証人にするくらいの決意でないと商人道は極められないというのが、わしが属しているような、いわゆる産業支援の業界にあっても、多くの関係者の見解ではないかと思います。

 前置きが長くなりました。
 ここ数年、観光業界を揺るがしてきた民泊問題がここへ来て決着しそうです。
 政府は民泊の設置を届け出制にして、営業日数も年180日以内とする骨子の法律(住宅宿泊事業法)を制定する見通しになったのです。この営業日数については、地方自治体が独自の条例を定めることで、さらに削減を義務付けることもできます。
 すでにメジャーな観光地になっている市町村では、既存のホテルや旅館の業者を保護するために条例を制定するケースが多く現れることは確実と見られており、外国人観光客の急増で宿泊施設が慢性的に不足している大都市圏を中心に、民泊の解禁は実質的に骨抜きになるとも報じられています。

 これも、既存の宿泊業者から見れば、「旅館道」や「ホテル道」を究めようとしない「素人」や「素人同然」の不動産屋がこの世界に入ってくる、おこがましく、宿泊客に対する冒涜、道を究めようと精進している既存のプロへの挑戦とみなされるからでしょう。
 
 現在、労働市場においては性別や、障がいの有無などに関わりなく働くことができる多様性(ダイバーシティ)が注目されています。こうした人々とも垣根なく働ける会社や組織こそが結局は労働生産性が高く、多くの利益を生み出すことも明らかになってきています。
 これと次元はやや違いますが、経営者とか事業主にも、「道を究めない」、「愛好家でもよい」といった多様性を認めないと、意外と今の経営者像は硬直化していて、それがますます単一化し、結果的に大きな社会環境の変化に対応できなくなってしまうのではないでしょうか。
 これを経営者のダイバーシティと呼ぶとニュアンスが違ってしまい、わしもうまい表現が見当たらないのですが、とりあえず素人が趣味や副業や小遣い稼ぎでビジネスを始めてもよく、それを審判するのは消費者(顧客)である、という社会にしていかないと、世界の潮流であるシェア経済からますます日本は遅れていくでしょう。

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