2017年3月27日月曜日

未知マーケティングは本命か

 開けるまで何が出るかわからない、あえて中身を隠して売る手法が、書籍やレンタルDVD、さらには航空券にまで広まっているそうです。ネットであらゆる情報が入手できる今、消費者は予定調和的なモノやコトには響かない傾向が強くなっており、このように「未知」を売る市場が急成長しているというのです。
 このことを報じている日経MJは、「わずかな手がかりをもとにワクワクしながら選ぶ体験が購買を二重三重に後押ししている」というこういった手法を 未知マーケティング と名付けたと宣言しています。(3月24日付け)
 しかし、昔からデパートの初売りなんかで売られている「福袋」はこれとおんなじコンセプトではないのかしらん、などとわしは思ってしまいます。誰もがこの方法を真似して成功できるとは思えず、すでに今時点で消費者の厚い信頼を得ているマーチャンダイジングが前提になるような気はしますが、未知マーケティングは果たして本命になりうるのでしょうか。


 この種の話で、もっとも有名なのは北海道・砂川市にある「いわた書店」の成功例ではないかと思います。わしは実際に行ったことも買ったこともないのであくまでも聞いた話ですが、いわた書店は地方都市の商店街にある町の本屋さん。大型書店チェーンの進出やネット通販の普及によって今や典型的な構造不況業種になっています。
 ここが注目されたのは、読書は好きだが忙しくて本屋に行けないとか、いつも同じようなジャンルの本ばかり読んでしまい新しい出会いがない、などの悩みを持つお客が、最近読んだ本とその簡単な感想(○、△、×の三択)と代金1万円を店主の岩田さんに送ると、書店からその人にお薦めの本を一万円分、勝手に選んで送ってくるという「一万円選書」というサービスを始めたことです。
 これは本好きにはよくわかる話で、読書に精通した人が勧めてくれる本のほうが自分の先入観や趣向に関わらず新しい作者やジャンルとの意外な出会いにつながるでしょう。
 この一万円選書は大好評となって多くのマスコミに取り上げられました。全国の読書家から注文が殺到する事態となり、現在は年数回、抽選に当たったお客しかサービスを受けることができないほどだそうです。
 確かにこれは「未知マーケティング」だと思います。しかし、店主の岩田さんによるチョイスが評判のベースになることは明らかで、これは岩田さん自身の豊富な読書量と造詣によるものです。これがない書店主には、真似することは絶対にできません。

 日経MJにはほかにもTSUTAYAのタイトルなしDVDレンタルや、日本航空の行き先ランダム航空券「どこかにマイル」などが紹介されていますが、これも本業がしっかりしているうえでの派生サービスなのがポイントです。こうしたレンタルや思い付き旅行を楽しんだお客が、次回から本命の、というか本来のサービスもどんどん利用してくれるよう、誘導方法をしっかり確立させておかなくてはならないでしょう。

 しかし、記事の中で紹介されている
「ピンとくる、こないという感覚で判断して購入を決める」
 という感覚消費が、博報堂生活総合研究所の「生活定点調査」においても顕著に増加しているという事態は重要です。
 実際に消費者動向がこうなのですから、本業がしっかりしており、スタッフの選択眼・審美眼に自信がある企業ほど、未知マーケティングでヒットする可能性も高くなるからです。


 MJは未知マーケティングの広がりの原因は「情報疲れ」だとしています。これはわしも全く同感です。
 このブログでは何度も取り上げているように、今まさにブームであり、全国の地方自治体が競争に血道を上げている「地方創生」ですが、これがまさに消費者の情報疲れを加速させている典型例に思えてならないからです。
 全国のどの県も、どの市町村も、自分たちの街こそが最高だとせっせとPRしています。しかし日本は ~非常にありがたいことに~ 全国どこでも自然は豊かで、景色は美しく、農林水産物は新鮮で美味です。
 きれいな水がはぐくんだお米、お酒。寒暖の差が激しいゆえにおいしいお茶。目の前が豊かな漁場であるために豊富なとれたての魚介。
 自治体や生産者は盛んにそれをアピールしますが、聞いているお客にとってはどの地方のどの商品も似たりよったりで、それが差別化要因になっていないのです。そして、こうした「地方の過当競争と共倒れ状況」はますます悪化してきています。

 こうした中では、未知マーケティングも新たな可能性を開く一手段にはなりえることでしょう。ただし、繰り返しますが、このサービスが成り立つには提供する側の卓越した知識と審美眼、そして確信が必要です。地方にある、こうした粒より、えりすぐりの事業者や生産者にのみこの手法は可能なものでしょう。 

0 件のコメント: