2017年3月28日火曜日

地方創生の目的は何だった?

 中部経済新聞に「決め手欠く地方創生 止まらぬ東京一極集中」という記事が載っていました。(3月27日付け)
 安倍政権が政府主導の目玉事業として地方創生や「まち・ひと・しごと創生」などを平成26年度から掲げて2年半。首相官邸内にまち・ひと・しごと創生本部を立ち上げ、まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定や、地方自治体に向けた地方創生推進交付金の創設、東京から地方へ本社移転した企業への減税制度創設、地元企業へ就職した学生への奨学金返還制度を設けた地方自治体への財政支援、などなど多くの支援措置を講じてきたわけですが、総務省の「平成28年住民基本台帳人口移動報告」によると、首都圏の転入超過(つまり、地方からの人口流出)は伸び率には頭打ち感があるもののトレンドとしてはほとんど変わっていません。
 中部経済新聞は、東京一極集中の是正を掲げる国や、人口増加などを掲げる地方ともに、対策に決め手を欠いている状況であり、一極集中は東京オリンピック・パラリンピックに向けてさらに加速することも予想されると報じています。

 記事の中では、いくつかの自治体や国の取り組みが紹介されています。
・日本有数の豪雪地帯の山形県尾花沢市は、進学や就職で転出した若者の多くは戻って来ず、人口が減少の一途。市は婚活支援やウインタースポーツなどで若者の移住促進に取り組むが実績はわずかで、重労働である雪かきに堪えられず転出する高齢者も現れている。
・山林がほとんどの島根県美郷町も人口流出に悩む。地域おこし協力隊員として一時的に若者はやって来るが任期後に定住する人は少数。来春にはJRも廃止されるため人口減に拍車がかかると関係者は心配する。
・国(経済産業省)が作った、東京から本社機能を移転した企業の減税制度は28年末時点でわずか12社。国が範を示すと打ち出した中央省庁の地方移転も、文化庁が京都に移転することが決まっただけ。
 現場の最前線で努力する自治体や国の職員にはわしも敬意を表しますが、地方の衰退は今に始まった話でなく、過疎対策、離島対策、中山間地域対策、農村振興、などは昭和の時代から対策のための法律が作られ、公共工事や補助金、税制特例等が講じられてきました。
 それにもかかわらず現状に至っているのですから、わずか数年の取り組み、しかも経済の力学に反する対策が、すぐに実を結ぶはずはありません。

 しかもこの種の行政施策は、多くの関係者や有識者の意見を聞いて目標設定や戦略作りが行われるため総花的なのは避けられず、さまざまな目標が ~時には相矛盾するような目標が~ 設定されており、結局本当の目的は何だったのか、言い換えれば、行政がインプットすることで生み出されるアウトプットは何なのかが明確にされないまま検証もされず、とにかく予算が付いた分だけ機関車のように事業が続けられることが起こりがちです。
 こうした中で、万人が納得する最大公約数的な地方創生の目的は人口の増加(人口減少の鈍化)ですが、この記事によると、多くの自治体関係者が口をそろえるのは「進学をきっかけとした若者の流出」が深刻であるということです。

 これは確かに地方の現場では定説と言ってよく、都会に出た若者がUターンできるような仕事づくりが必要だ、だから国や自治体は企業に補助金を出して設備投資を促したり、若者の職業能力開発を支援すべきだ、という理屈になっていきます。

 しかしその一方で、少なくとも数字の上では日本の労働市場は失業率が低下しており、有効求人倍率は1を超えています。企業の多くは人手不足が極めて深刻で、地方であっても人手の確保に苦労しているという経営者の声をよく聞きます。つまり、若者のUターン促進のため仕事を作ろう、という掛け声とは逆で、地方では仕事が余っているのです。

厚生労働省三重労働局「労働市場月報」(平成29年1月)より

 問題なのは、進学した若者が高等教育機関で修めるような知識が活用できるホワイトカラー、サービス業といった職種が少ないことです。これは地方が地場産業である農林水産業や建設業をいくら振興したとしても、工場を誘致したとしても、雇用ミスマッチはまったく解消されないでしょう。
 この「産業振興の方向性」が間違っていないかは重要です。農林水産業をやりたい若者は一定数はきっといるでしょうが多数派にはなりえません。地方の産業構造をサービス産業主体に変えないといけないのです。
 

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