2017年4月12日水曜日

非常事態宣言は穏やかでないが

 三重県内で最大の都市である四日市市が、ふるさと納税に関する非常事態を宣言しました。
 定例記者会見で森智広市長が語ったもので、四日市市は平成24年以降、ふるさと納税による寄付を受けるよりも、本来は市に入るはずだった税に対する控除額が上回る「赤字状態」が続いています。
 平成27年も受け入れ額は約940万円にすぎず、赤字幅は1億3000万円にも達していて、森市長は「減収で住民サービスの低下につながるのではないかという大きな危機感を持っている。実態を市民にも認識してもらいたい。」と、非常事態宣言に至った経緯を説明しているそうです。(毎日新聞 4月12日付け)
 一方で、四日市市としても総務省が示すルールの範囲内において、返礼品の中身を見直すほか、新たに四日市ならではのユーモアに富んだ「滞在型の返礼体験」を作ることで、ふるさと納税による寄付の受入をいっそう強化していく姿勢も示しています。


 ふるさと納税のクレイジーともいえる返礼品競争は、すでに社会問題となっており、出身者がふるさとを応援する気持ちで寄付するとか、政策や事業の趣旨に賛同して寄付するといった本来の制度趣旨からは完全に逸脱した状態になっています。
 長崎市などでふるさと納税による実質赤字が巨額に上ったことが問題となっており、これはひいては国民全体でふるさと納税者という名の地域特産品購買者を助けている奇妙なしくみであることを以前このブログでも取り上げました。
 今までこうした赤字は東京23区などの大都市圏で顕著でしたが、長崎市や四日市市のような地方の中核都市でも顕在化してきたのです。特に、通常の地方自治体なら地方税が減収した際に国からその75%相当分を地方交付税で補てんされるところ、四日市市のように工業が盛んで税収が多く、国から地方交付税の交付を受けていないいわゆる「不交付団体」は、そもそも国から補てんを受けることもないので減収の影響が大きいのです。

 このように矛盾だらけのふるさと納税ですが、悩ましいのはそうは言いつつも、地方自治体間で「競争」でき、ある種の優勝劣敗、すなわち工夫や努力をした地方自治体はそれなりのリターンが得られる仕組みであって、一概に全廃すべきとも言えないことです。
 また、返礼品の多くは地域の特産品で自治体が生産者から買い上げているので、市場が小さな過疎地や中山間地の自治体ではこのニーズが新たな公共事業となっており、地域経済における存在感が無視できません。

 こうした中で四日市市の姿勢にせめてもの救いが見られるとしたら、返礼品を「滞在型の体験」で、つまりモノでなくコト、モノでなくモノガタリによって充実させようとしていることかもしれません。
 四日市は四日市ぜんそくという不幸な公害体験があります。しかしこれを市民の英知で克服したことも事実なので、こうした貴重な歴史をわかりやすい体験型の学習ツアーにすれば、これを体験したいと思う人は決して少なくないと思います。四日市市民にとっていつまでも公害やスモッグに触れられるのは愉快ではないかもしれませんが、実際に今でも全国的な四日市のイメージはそうなのですから、せめてそれを逆手にとるしかありません。
 
 そのほかにもお茶の一大産地であるとか、手延べそうめんが有名であるとか、全国でほぼ唯一のナローゲージ鉄道があるなど、四日市は豊かな地域資源があります。四日市ならではの体験や経験を魅力的なパッケージにするのは、そう難しいことだとは思われません。

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