2017年4月24日月曜日

今度は「知的対流」だそうな

 時事通信社が配信している地方公務員向け業界情報サイト「官庁速報」によれば、国土交通省が今年3月、経済活動が疲弊している「地方」において、地方自治体や商工会議所、大学、金融機関などの多様な主体がアイデアを出し合って地域産業を創出する「知的対流」に関するマニュアルを作成したとのことです。(4月18日付け)
 地域おこしとか地域経済活性化というのは、地方自治体に限らず、国、大学、シンクタンク、商工関係団体などなど多くの当事者にとっては一つの大きな業務、使命であって、その実践手法についてはさまざまな理論が提唱されてきましたし、補助金をはじめとしたさまざまな支援策が講じられてきました。
 わしもその意味ではこうした「地域活性化業界」の末端にいるわけですが、正直言って、今回のこの「知的対流」という言葉は初めて知りました。それまでまったく聞いたこともないし、関係者が語っているをの聞いたこともありませんでした。

 このマニュアルによると「知的対流」とは
・地域発イノベーションを創出するため必要となる、地域の実情に応じて、地方自治体や地域内の事業者、住民、大学、研究機関、金融機関等を中心とする多様な関係主体が連携し、知恵やアイデアを出し合って実際の活動に昇華させる「場」を「知的対流拠点」と呼ぶ。
・こうした「場」は、必ずしも特別に設けるものではなく、既存施設を有効活用や、活
動主体の会合等を通じたネットワークである場合もある。
・しかしこうした「場」のみで、地域発イノベーションが生み出されるわけではなく、①活動主体、②活動主体を繋ぐコーディネート等を行う主体 、③活動空間、④活動を支える交通ネットワークの4つを満たすことで知的対流拠点が形成される。
 というものだそうで、国道交通省という事業官庁が全国各地に造ったさまざまな公共インフラを活用し、公、民、産、学、金の連携で地方創生やまち・ひと・しごと創生を促進しようという考えが根底にあるようです。

 マニュアルは国交省のホームページからダウンロードすることができるので、ぜひそちらをお読みいただきたいのですが、地域の企業(株式会社四万十ドラマ)が核となって関係者を結束させ、限界集落で「稼げる仕組み」を作った高知県四万十町の事例などの成功事例が紹介され、こうした事例の成功の秘訣と、それを各地域で展開する手間の必要なヒントが紹介されるという構成になっています。(リンクはこちら

 しかし、読み進めていくと、内容はかなりスタンダードというか、新味がなく、この業界ではかねてから言われ続け、すでに常識になっていることがトレースされているに過ぎない印象を強く受けます。
 たとえば、「誰がどのように、地域の強みとなる資源と、それらの活用方策を考えるのか」について、このマニュアルは「まずはなぜ今、そのような状況になっているかを考えることが重要」で、「地域外の人材や組織を巻き込み、新たな視点や新たな資源を取り
入れることも有効です」と解説してくれます。何だか当たり前すぎるような・・・
 また「活動主体間の繋がりをつくる際に留意すべきこと」としては、「まずは、課題や危機感を共有したもの同士から始まり、徐々に多様な関係者を巻き込んでいく」こと。そして「こうした繋がりを構築していくためには、場づくりとコーディネート役が必要」と説きます。
 今さら感が満載です。

 そもそも2017年の今、このような初歩的なマニュアルから活動に入らないといけないような地域がもしあるのなら、もうかなり出遅れていると言えるのではないでしょうか。(このマニュアルが取り上げている「農産品の活用」とか「観光資源の活用」など、今や全国津々浦々の地域で取り組まれており、激烈な地域競争が繰り広げられているレッドオーシャンになっています。)
 あるいは、活動の担い手が世代交代したり、よそからやって来た新しいメンバーに交代したので、また一からのスタート用ということなのかもしれません。

 ただ、そう考えても、このマニュアルの作り手の思慮が足りないのは、こうした地域おこし、地域産業活性化の「戦略」だの「マニュアル」だのは、総務省、農水省、経産省、文科省などさまざまな省庁がそれぞれ独自で作っており、いわばバラバラに動いていることに何の関心も払っていないことです。
 地方自治体をはじめ、地域で活動を実践している主体は、農水省からは6次産業化促進による特産品開発や農家民泊などを支援され、総務省からは地域おこし協力隊だの、定住促進だの、ICT活用だのこそが目玉だと言い、経産省も産業クラスターだの、工場立地促進だの、(農水省と同じく)農商工連携だのを進めるべきだと言い、こうした戦略性も一貫性もないバラバラな施策・支援策が集中豪雨のようにドカドカ落ちてくるので、その対応に追われ手一杯になっているケースが実に多いのです。

 国の省庁がやるべきことは、農林水産者、中小企業、通信事業者といったそれぞれの省庁の息がかかった分野を通じて地方にあれこれ振興策を押し付けてくることではなく、各省庁に横串を通し、バラバラな戦略や提言、マニュアルを誰にでもわかるように体系化することです。(おそらく無理でしょうが)

 わしにこれを読み解く能力がないのかもしれませんが、地域おこしの実践者で、今このマニュアルを読み込んで活用しようという人がいるとはあまり思えません。参考にはなりますが。
 マニュアル作成の専門委員会委員のメンバーを見ると、一流の方々がずらりと名を連ねています。だとしたら、もう少し使いでのある、ピンポイントでもいいから実践的で応用可能な内容に作り込めなかったものなのかと、それが残念で仕方がありません。

0 件のコメント: