2017年4月27日木曜日

打ち切りは困るなあ

 宅配最大手のヤマト運輸が、長時間労働が恒常的な宅配ドライバーの負担を軽減させるため、宅配料金の値上げや取扱時間の短縮などを打ち出していましたが、さらに総取扱量そのものを抑制するため、通信販売会社との配送契約の一部を打ち切る方針を固めたことを朝日新聞が報じました。
 荷物量などに応じて適用される運賃の割引幅が大きく、採算割れしている法人客が契約打ち切りの主な対象ですが、この中には大手の通販会社も含まれており、一部の通販業者にはすでに契約打ち切りの通告を始めているとのこと。
 打ち切られる業者は、佐川急便や日本郵便などに新たに配送を依頼する必要がありますが、人手不足やコスト高などの状況はどこも同じで、仕事を受けてもらえる保証はなく、荷主は悲鳴を上げているそうです。(4月27日付け「ヤマト、一部通販との契約打ち切りへ 採算割れ法人対象」)
 この記事ではニッセンや千趣会などの大手通販業者さえ困窮する状況を伝えていますが、この問題は中小企業、特に地方企業には致命的な打撃になる可能性があります。


 それはいうまでもなく、数年前から政府主導で強力に推し進められてきた地方創生政策、さらにはそれより十年近く前から取り組まれてきた「地域資源活用」や「農商工連携」といった疲弊している地方経済・地域企業を立て直すための支援策の眼目が、地域産品の特産品化と、それらを東京などの大都市圏の消費者に販売するというビジネスモデルだからです。
 従来ならその地域内だけで栽培され消費されてきた農産品とか、ローカルな料理(素材や調理法)をその地域ならではの資源=強みと捉え、それを「商品」へとブラッシュアップして価値のわかる顧客に販売すること。これは地方みずからが新たな付加価値を生み出し、都会から地域へと稼ぎを得る、これ自体は合理的な方法です。

 商品化のためには、マーケティングやブランド化、量産のための生産技術、品質管理手法、さらには人材育成も含めてさまざまな面からの経営努力が必要ですが、この大前提として、そもそも地方の産品を都会の消費者に、安価に、大量に、定時に届ける手段として、ヤマト運輸をはじめとする宅配便業者の存在は絶対不可欠な条件です。全国津々浦々に配達網を持つ宅配業者がある ~特に冷蔵便、冷凍便などのいわゆるコールドチェーンが完備している~ からこそ地方の特産品ビジネスは成り立つのであり、そのインフラである宅配業者、なかんずくガリバーのヤマトが大きく仕組みを見直すことは、必然的に地方で特産品ビジネスを行っている企業や生産者、自治体などにも大きな影響を与えます。

 ヤマトが採算性が低いとして契約の打ち切り、あるいは値上げを迫っている荷主(企業や生産者など)が具体的にどのようなところなのかはおいおい明らかになってくるでしょうが、消費者に求める配送料の値上げは間違いなく避けられないし、最悪の場合、発送量や発送頻度にも影響が出るでしょう。
 
 一方で、特産品ビジネスは国や自治体による支援競争の激化の結果、お茶やお米、ノリやひもの、シイタケやかんきつ類のように、全国どこでも同じようなものが獲れ、作れ、ほとんど差別化要因がない、コモディティ化した産品が溢れています。
 その結果、販売にも補助金が交付されるなど、ビジネスの体力が脆弱な事例が少なからず見られます。こうした事例では宅配料のような固定費の上昇は致命的になる危険性が高くなります。

 勤労者の給与所得の伸び悩みや消費支出の停滞など、すでに終焉ムードがある地方創生ですが、今回の宅配事情の激変により、終焉はさらに近くなるような気がしてなりません。 

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