2017年4月8日土曜日

知りたいのはそこではなくて

 内閣府の地方創生推進事務局が、稼げるまちづくり取組み事例集「地域のチャレンジ100」を公表しました。昨年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略2016改訂版」に基づいて、地方の平均所得の向上を図る観点から、全国の地方都市での「稼げるまちづくり」の有望事例を100事例まとめたものです。
 稼げるまちづくりとは、内閣府によれば、ハコモノ整備などに偏重せず、これを活用するソフト施策と一体となって、地域の「稼ぐ力」や「地域価値」の向上を図り、まちに賑わいと活力を生み出し、民間投資の喚起や所得・雇用の増加につなげる事業活動のことです。具体的なイメージとしては、
1)空き店舗活用といった「まちづくり」と一体となって、民間の主体的な創業・起業や事業拡大等のチャレンジが生まれるなど、収益力を高め、多様な民間投資を喚起する取組が広く展開・連鎖していくもの
2)少子高齢化など地域における社会的課題を解決し、地域住民の生活の質の向上等を図る活動が、経済的な利益を生む取組として民間投資を喚起したり、まちの価値向上につながるもの
 が挙げられています。


 わしの解釈では、1は市町村や商工団体などが主体となって商店街の空き店舗をチャレンジショップなどに改装し、起業志望者を入居させることで実際の創業や開業につなげ、それが呼び水となって商店街に店が増え、お客も増えるようなイメージ。2はいわゆるコミュニティビジネスのイメージかと思います。

 内閣府は同時に、稼げるまちづくりは「地域資源を最大限に活用する地域の総合的な戦略・ビジョンの下で、地域の状況についての現状分析を踏まえつつ戦略を策定・実行し、PDCAサイクルを確立して勧めていくこと」が重要としています。これは理屈としては誠にもっともで、総合的なビジョンも現状に沿った戦略も、PDCAもない事業などまちづくりにせよ何にせよおよそあり得ない気さえするのですが、言い換えると行政主導のまちづくりは、今まで行き当たりばったりのものが多かったことは認めざるを得ないということかと思います。

 それはさておき、非常にありがたいことにネットで手軽に見ることができるこの有望事例集。わしも早速、内容を見てみました。
 一見して感じたのは、成功例としてはすでに非常に有名で、関係者では知らない人はないと思われるような、滋賀県長浜市の「黒壁」や、三重県伊勢市の「おはらい町」といった事例が入っている一方、熊本市の「観光客拡大やMICE誘致による震災復興の加速」といった現在進行形の事例もあるなど、時間的な評価軸が一定していないことです。

 そしてさらに混乱するのは、「稼げるまち」とあるのだから、掲載事例は、その取り組みによって実際にどれくらい定量的な経済効果が生まれたのか、つまり、税収の増加とか、人口の増加とか、支援対象事業者の売り上げが何パーセント増加したのかといった具体的な数字が書かれているのかと思ったら、そうではなくて、いわゆるアウトプット指標~来場者が何人あった、何人が起業・創業した、観光客数が何パーセント増加した~ の記載しかないものがほとんどであることです。

 わしはどちらかといえば、こうした事例集のようなものを作る立場の人間です。なのでアウトプット指標でなくアウトカム指標を作ることがどれだけ難しいか、すなわち
「何人来場したかでなく、その来場者が平均でいくら消費(購買)したか」
とか、
「何人が起業したかでなく、そのビジネスの収益や雇用がどう増えたのか」
とか、
「観客が何%増えたではなく、それによって地元の消費がどれだけ伸びたのか」
といったような、内容に突っ込んだ、コトの後もフォローを続けることがいかに困難かはよくわかっているつもりです。

 しかし、「稼げるまちづくり」は皆が大変大事な考え方であることがぼんやりとはわかっても、では実際、どれだけ具体的に稼いでいるのか、そしてその稼ぎは地域の持続や再生に必要十分か、といった生々しい問題が明らかにならないと、やはりその対策もぼんやりしたものにとどまってしまいます。

 この意味では、せっかくの事例集ですが、やや期待外れでした。
 このブログには時々書いていますが、例えば地方の大学がCOC+事業(知の拠点事業)の採択を文科省から競って受け、研究成果や学生パワーを地域に有効活用する大きな動きがあります。ところが、わしが思うに、地域で非常に不足していることの一つは、行政が行う補助金やモデル事業といった活性化支援策が有効だったのか無効だったのか、無効だったとすればその原因は何か、という「評価」のノウハウです。
 アンパイヤがおらず全員がプレーヤーになろうとするので、結局は誰も客観的な成果がわからないのです。内閣府はこのことがわかっていてこのような事例集を作ったのでしょうが、わしら実務家がよその取り組みにおいて知りたいのはそこではないのです。 

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