2017年5月13日土曜日

日本の稼ぎの構造が変化

 昨日の日本経済新聞に「日本の稼ぎ 投資が軸」という、わし的には大変注目すべき記事が載っていました。(5月12日付け リンクはこちら
 アベノミクスにより輸出型大企業を中心とした企業業績は向上しており、日本と外国との貿易とか、外国への投資で儲けた額を示す経常収支の黒字額が、平成28年度にはリーマン・ショック前に迫る20兆1990億円にまで回復したことがまず一点。
 もう一つはその経常黒字の中身で、かつては黒字のほとんどを占めていた「貿易黒字」がリーマン以前の4割の水準に落ち込んだ一方で、企業が持つ海外の株式や債券の配当などから得る「所得収支」の黒字額が経常黒字の9割近くを占めたことです。
 日本経済が貿易立国型から投資立国型へ、「稼ぐ構図」を大きく変えていることが非常に顕著なのです。このことは、わしら一般庶民の生活にも徐々に影響を与えるでしょう。


 ここで軽くおさらいです。「経常収支」は次の4つの要素で構成されています。

1)貿易収支・・・・・モノの輸出入の集計(輸出額-輸入額)
2)サービス収支・・・外国人旅行者が日本国内で使ったお金から、日本の海外旅行者が外国で使ったお金を引いた集計
3)所得収支・・・・・企業が海外で投資(工場の建設など)したり、債券に投資して得た収益から、日本国内で外国企業が同じように得た利益や報酬を引いた集計
4)経常移転収支・・・新興国に対する経済援助や国際機関への拠出金など

 日本は高度成長期以来、長らく貿易黒字でしたが、このほとんどを占めていたのが貿易収支の黒字(貿易黒字)でした。
 一方で、2のサービス収支は赤字でした。日本人はおおぜい海外旅行に行きましたが、海外から来る観光客は今よりずっと少なかったからです。
 問題は3の所得収支で、これはコスト競争で新興国に勝てなくなった製造業が、続々と生産拠点を海外に移転するようになってきたことが原因です。
 これは一時「産業の空洞化につながる」などと言われましたが、長期的には人口増加や生活水準向上による市場の拡大が確実な新興国に工場が移るトレンドは止めようがなく ~国内で生産を囲い込もうとしたシャープ亀山工場での液晶テレビ生産は大失敗しました~、 むしろ積極的に海外に資金を投資してビジネスを広げ、そこから稼ぎを得ることが日本企業に定着してきたものと見ることができます。

 同時に日経新聞の記事は、企業が海外から得た稼ぎをそのまま海外に再投資した収益も過去最高の額になっており、所得収支の黒字が国内の雇用や税収に結び付きづらくなっていることを指摘しています。
 日本の企業が海外企業に経営参加したり支配したりするために、株式などを保有する「直接投資」から得る収益は平成28年度は約7兆5千億円と対前年の2倍以上に急増しました。しかし、リーマン・ショック後の急速な円高で、企業はその利益をお金を日本に還流させず ~円高で目減りしてしまうため~、海外で再投資するようになりました。こうした再投資によって得た収益も約4兆円と急増しています。

 もはや成熟社会にステージが変わった日本では、経常収支の中身が成長社会のころと変わっていくのは当然です。迂遠ではありますが、日本の地方も産業構造をサービス業型にして、海外観光客の受け入れと消費の喚起、そして海外への投資を進めていくことが大きな方向性にならざるを得ないでしょう。

 日経の記事とは離れますが、国民所得統計のうえでも経常収支の黒字額は重要です。(黒字自体が重要という意味ではありません。)
 所得、消費、貯蓄という3要素の恒等式で、経常黒字は下記のように位置づけられます。
① 所得 = 支出
② 所得 = 消費 + 貯蓄
③ 支出 = 消費 + 投資 + 経常黒字(純輸出)
 したがって、貯蓄 - 投資 = 経常黒字 となります。
 これは国内で使い切れない資金(過剰貯蓄)が海外に投資されていることを表します。今後高齢化によって貯蓄は減少していくので、経常黒字額が増加すれば、国内の投資額は反比例して減っていくことになります。 

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