2017年5月26日金曜日

こんな国と競わなければいけないのか

 今日の三重県は、昨年ちょうど今ごろ開催されていたG7主要国首脳会議(いわゆる「伊勢志摩サミット」)の回顧ニュースが喧しい一日でした。
 サミット会場となった志摩市のホテルなどの警備費用に340億円が支出され、三重県が行った道路整備や歓迎イベントなどの費用にはさらに93億円もが支出されたそうで、サミットで首脳たちが話し合った内容よりも、マスコミや県民の関心は三重県にもたらされた経済効果が果たして投資費用に見合っているのかどうかにもっぱら集まっているようです。
 しかし当然ですが、400億円以上もの政府支出は公共工事と同じで、莫大な投資効果をもたらします。これによって伊勢志摩地域が大きく潤ったことに疑う余地はありません。
 一部の報道では、同じ伊勢志摩地域内でも地区によって、あるいは業種によって恩恵に濃淡があったことが批判されていますが、これも謂れのないことで、すべての地域のあらゆる企業、住民に平等な経済効果が生まれることなどあるはずがありません。


 問題は、このサミット効果を今後どう継続していくかですが、これは残念ながら ~当然ながらというべきか~ 1年後に当たる今がまさに回顧のピークであって、おそらく来年には人々から忘れられ、誰の口の端にも上らなくなり、サミット開催地としての観光優位性はまったく失われているでしょう。

 なぜか。
 答えは簡単で、サミット効果はホテルや旅館などの宿泊業者、電車やバスやタクシーなどの運送業者、飲食業者、土産物業者、などなどの、いわゆる観光業界に恩恵が集中しているからです。
 こう書くと前言と矛盾しているように思えるかもしれませんが、最初に書いた恩恵の濃淡とは、あくまでも観光業界内の話です。

 つまり、観光業界に属していない、たとえば建設業とか、製造業とか、介護福祉業とか の産業に従事している人々や、年金で生活している高齢者などは最初っからサミット恩恵の枠外にあって、いわば潤う観光産業からのトリクルダウンで副次的に影響を受ける、という位置づけだったわけです。
(もちろん、中にはオバマ大統領をこの目で見た!とか、ボランティアで外国人と話した!とか、故郷が世界的に注目を集めたことに誇りを感じる!という人も多くいたでしょうが、それと経済効果は別です。)

 観光業は今や政府主導の外国人観光客誘導政策、そして地方創生政策の目玉として全国各地で激烈な競争が繰り広げられています。「1年前にここでサミットがあった」かもしれませんが、交通インフラや観光施設などに多額の投資をしなければ、来年には「2年前にここでサミットがあった」というように過去が積み重なっていくだけで、全国のライバル観光地にあっというまに優位性を奪われてします。

 そこで参考になるのが、つい最近報じられた、北欧の国スウェーデンが国全体を民泊サイトのAirbnb(エアービーアンドビー)に登録した、というニュースです。
 スウェーデンの公式観光機関であるVisit Swedenが行ったもので、スウェーデンでは「自然享受権」という権利が保障されていて、私有地や耕作地でない限りは、誰でも自然に立ち入りることができる制度になっていることから、スウェーデンの全土をAirbnbで検索できるようにし、観光客が湖や森、山の頂、草原などで自由に散歩やサイクリング、キャンプなどを楽しめるようにしたものだそうです。
 もちろん、民泊も認められているわけですから、一般の国民が観光客を自宅に宿泊させることで経済的にも潤うことが期待できるわけです。
 
 しかし、日本にこの発想はありません。日本では、宿泊は旅館やホテル業界が、交通はバスやタクシー業界が、飲み食いは飲食業界がしっかり既得権益を持っていて、シェアリングエコノミーが浸透するのは絶望的です。
 一般住民はあくまでも企業や組合といった経済主体の下に位置付けられ、直接に恩恵を受けられる主役になることは ~たとえばサミットで増加した外国人をわが家に対価を得て泊めたり、自家用車で対価を得て送迎したり、対価を得て個人ガイドをすることなどは~ できないのです。
 わしが思うに、これが伊勢志摩の地域住民が400億円以上の税金が我がまちに投入されても、その時限りは潤っても、長いスパンの経済波及効果を今ひとつ実感できない原因です。

 恐ろしいのは、観光立国を目指すという日本がこれから競争しなくてはならない相手が、たとえばこのスウェーデンのような国であったりすることです。デービッド・アトキンソン氏が言うように、稼げない「おもてなし」では最初から勝負にならないのです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

もやもやしていたものがこれでややすっきりしました。企業でない普通の住民がサミットをきっかけに経済活動出来るチャンスがないと効果は実感できないのですね。地域と観光業界は切断されているのが現状でと思います。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 コメントありがとうございます。
 観光プロモーションとしての役割も間違いではないし、観光業の振興にも役立ったとは思いますが、これで地元が盛り上がったとは言えません。これは地元住民の関わりが「おもてなしボランティア」程度だったためで、もしICTを使ったシェアリングエコノミーの振興という方向性を打ち出していたら開催効果はまったく違ったものになっていたと思います。