2017年7月11日火曜日

誰もネットに書かないのは、なぜ?

 地方公務員向けの業界情報サイトである時事通信社の「官庁速報」に、静岡県磐田市が、平成28年度から始めた「魅力産業サポート事業」なるものの成果に関する記事が載っていました。
 官庁速報の中の「施策それから」というシリーズもので、スタート時には大々的に報じられ、熱心にPRもされる地方自治体の施策が、その1年後、2年後にどうなっているか、実際に成果を生んでいるのか、などを追跡取材している内容です。
 で、この記事によると「魅力産業サポート事業」とは
 磐田市役所の職員が市内の中小企業を訪問してニーズを調査し、課題の解決に向けて、商工会議所・商工会、金融機関、県の支援拠点、日本貿易振興機構(ジェトロ)などの関係機関と連携して徹底的な支援を行う取り組み
 「磐田版おせっかいモデル」と名付けられ、予算ゼロで「お金を掛けずに知恵を尽くす」点がポイント
 だそうです。
 昨年度は約800社を企業訪問したとのことで、実際に市内のばねメーカーが、ばねの特性を生かしたキーホルダーなどを新開発して販売を始めるといった、この事業による成果も着実に上がっていると官庁速報は報じています。


 「磐田版おせっかいモデル」という名前は、藤沢久美氏が提唱している「川崎モデル」(はんわし注:神奈川県川崎市役所が外郭団体の川崎市産業振興財団と連携し、市内の中小企業を一緒に訪問して課題やニーズを聞き出し、一緒に解決策に取り組むという支援スタイル)からヒントを得たものであることは言うを待たないでしょう。
 藤沢さんは川崎モデルは「おせっかいモデル」であり、中小企業が困り果てたうえ相談に来るのを待つのではなく、何か手助けすることはないか押しかけていくことに本質があると説明しているからです。(川崎モデルについては、以前このブログで取り上げました。リンクはこちら

 こうしたモデルにはもちろん大きな利点があります。
 中小企業、特に家族経営のような小規模企業は日々の仕事が忙しく、経営上の課題があってもわざわざどこかに相談に行くようなことは、暇もないし心理的な抵抗もあってほとんど行われません。なので、行政から出かけていくのはそういった小さなニーズを拾うことができます。
 さらに、中小企業の経営支援は、上述のように、商工会議所や商工会、中小企業団体中央会、金融機関、信用保証協会、国の支援機関(中小機構やポリテクセンターなど)、県の支援機関、ジェトロ、などなどたくさんあって、一つの「業界」を作っています。
 しかし、支援対象や支援方策、事業規模、得意分野などもさまざまで、帯に短くタスキに長いバラバラな支援策の集合体のような状態です。これを交通整理する役割があれば、適切な支援策を適切なタイミングで戦略的に投入することができるでしょう。それを磐田市役所が担っているということなのかもしれません。

 実際、こうしたいろいろな支援機関が現にあるにもかかわらず、市役所が新たにこういったコーディネーター役を買って出なくてはならないこと自体が、現在の我が国の中小企業支援施策の機能不全を示しています。
 支援ツールはたくさんある。支援人材もたくさんいる。しかし、それを個別具体的な企業の困り事に、適切に投入していく方法は各地方地方によってケースバイケースで手探りなのが現状なのです。
 逆に言えば、こうしたコーディネート機能をきちんと発揮できるかどうかが地方自治体、特に市町村レベルでの商工政策の競争軸になってきているのです。

 さて、このように官庁速報では肯定的に報じられている「魅力産業サポート事業」(磐田版おせっかいモデル)ですが、それでは本当に、ホントに、中小企業から見た評価はどうなのでしょうか。
 実は、これがよくわかりませんでした。
 わしがこの手の話でまず試してみるのは、キーワード検索です。磐田市魅力産業サポート事業とか磐田版おせっかいモデルとかで検索して、中小企業がホームページやブログで「これは役に立った」などとどれくらい取り上げているかが一つの物差しになるのです。
 が、しかし、残念ながら、わしはこうしたキーワードで、中小企業が自社のサイトなどで取り上げている例をまったく見つけられませんでした。そもそもヒット数自体がごく少なく、どれも磐田市役所関連のものばかりです。
 果たして肝心かなめの市内の企業は、どう評価しているのか、そもそも市がこんなことをしているのを知っているのかが、まったく計り知れないのでした。

■はんわしの評論家気取り
 【読感】なぜ川崎モデルは成功したのか?(2015年3月27日)
 

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