2017年7月13日木曜日

三重の休眠酒造会社が北海道で再生

 今日は小ネタ。こんなこともあったんだ、と最近わしが知ったことのメモです。
 北海道は札幌から、北東に約180km離れた人口4000人足らずの上川町という町に、今年の春、新しい日本酒の酒蔵が誕生しました。上川大雪酒造株式会社という新会社が営む「緑丘蔵(りょっきゅうぐら)」がそれです。
 蔵の面積は83坪で、これは酒蔵として小規模だそうですが、仕込み作業は社員のほかに上川町の役場と町民有志による 酒蔵支えTaI(さかぐらささえたい) というボランティア組織を作って手伝っており、原料となる米もすべて上川町の近隣で収穫された彗星・吟風・北雫という北海道産米を使っているという、地域に根差した「地方創生蔵」であることが売りになっているそうです。
 もう一つの大きな特徴は、この上川大雪酒造の酒造場は、日本酒の製造を中止し事実上休眠会社となっていた三重県四日市市の酒造会社(株式会社ナカムラ)を北海道にゆかりのあるレストラン運営会社が買収し、ナカムラの醸造所を主務官庁である税務署の許可を取って上川町に移転するという手続きによって設立されたということです。
 なぜこんなややこしい手続きを取る必要があったのでしょうか。

 日経新聞などによると、上川大雪酒造のこの手法は、酒税法上の「酒類製造場移転許可」という手続きです。これまでも酒蔵は災害などのために近くの別の場所に移転するケースはあったものの、国税庁の管轄をまたいで(四日市税務署→旭川東税務署)移転する事例は過去になかったそうです。
 なぜこうした異例の手続きになったかというと、酒類製造業を起業しようとする際に必要な酒税法第7条による、酒類の製造免許新規付与の条件が非常に厳しく、ここ近年の国内の日本酒の出荷量減少に伴う需給調整により、国税庁から新規免許を取るのは事実上不可能となっているからです。(三重の休眠酒蔵、北海道移転 レストランと連携し観光資源に 2016/12/14)
 
 アゴラ 言論プラットフォームの山田肇氏の記事「酒蔵と地域創生と岩盤規制」によると、日本酒製造の新規免許を取るためには「製造免許を受けた後一年間にその酒造場で製造しようとする見込数量が60キロリットルあること」が条件です。
 山田さんによると、この60キロリットルとはとてつもない膨大な生産量でまったく非現実的です。47都道府県中、日本酒の生産量が第24位の滋賀県の1酒造場当たりの年間製造量は59キロリットルで、新規免許の許可基準には足りていません。三重県(第34位)も35キロリットルあまりです。全国の約半数の都府県では、今すでにある酒造場の生産量は新規許可基準の60キロリットルを下回っているのです。これから起業しようとする事業者がいきなり生産できるような量ではないのです。
 このため上川大雪酒造も荒唐無稽な許可基準しか設けられていない新規免許を得るのでなく、既存の許可の製造場所を「移転」するというやり方を取ったのだろうと推測されるそうです。

 山田さんは
せっかくの地域創生が岩盤規制で制約されるのは気の毒だ。地ビールが話題になって久しいが、国酒での地域創生にも取り組めるように規制を緩和すべきである。
 と結んでいますが、その通りでしょう。
 日本酒業界は衰退する一方ですが、これは新規参入が制限され、業界の中で競争が起きないからです。地方自治体も「乾杯条例」のような意味のない支援策でなく、競争促進によって地方創生を進めるべきです。

■上川大雪酒造 http://kamikawa-taisetsu.co.jp/

■はんわしの評論家気取り 乾杯条例に意味はない(2013年12月29日)

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