2017年7月18日火曜日

ほたるいかミュージアムがトホホだった件

 思い立って富山県滑川市にある ほたるいかミュージアム に行ってきました。伊勢市から7時間近くもかかるこの小都市を訪れた理由は、もうかなり前ですが何かのテレビ番組で、大量のホタルイカがミュージアム内の水槽で発光している神秘的な様子を見て印象に残っていたのと、富山の代名詞ともいえる地域資源であるホタルイカを活かした地域振興策が、実際にどれほど功を奏しているのかをこの目で見たかったためです。
 しかし同時に、今や全国各地に雨後のタケノコのように生まれたこの種のご当地博物館やご当地ミュージアムが、現実にどれほど賑わっているものなのか、そのほとんどは閑古鳥が鳴き、ミュージアムを名乗りながら展示物はまがい物のレプリカばかりで実物の迫力には程遠く、ホコリをかぶり、建物もヒビだらけシミだらけの不様な「負の遺産」に堕している例も五万と知っており、まさかそうはなっていないだろうかという不安 ~期待では決してない~ も頭をよぎっていたのは事実です。
 そして、時おり雨もぱらつく蒸し暑い午後、わしが体験したのはやはりというべきか、後者の不安な予感のほうでした。


 滑川市は人口約3万人。県都の富山市からは鉄道(北陸新幹線が開通し、在来のJR北陸本線は「あいの風とやま鉄道」という私鉄になっていました)で15分ほど。駅からほたるいかミュージアムまでも歩いて約15分です。
 滑川駅からは立派な2車線の直線道路が結んでいます。しかし、クルマが時々通るだけで歩行者はまったくいません。


 まるでゴーストタウンのようなこの光景も、わしも含め地方都市の住人にはさして珍しいものではありません。地方はクルマ社会なので、どこに行くにも歩く必要などめったにないのです。
 とぼとぼ歩いて、道の終点が「はまなす公園」です。この一角に、道の駅ウエーブパークなめりかわと、目的地のほたるいかミュージアムがあります。


 巨大な建物でカメラのレンズに収まり切りません。楕円形で凝ったデザインの、いかにもミュージアムという印象です。
 しかし一歩中に入って、この印象は大きく変わります。
 受付に女性が一人いて、ここで入場券を買います。大人ひとり600円。わしは特に何の意識もなく「ここを全部見るのに時間はどれくらいかかりますか?」と聞いてみました。観光客にとっては別におかしな質問ではないと思います。
 ところが受付係はなぜか無言。二呼吸くらい間があって「それは見る人によって違います」と言うのです。もちろん答えになっていません。
 30分くらいはかかりますかねえ、とわしが聞くと、「駆け足ならそれくらいでも見られます。じっくり見たらもっとかかります。」との答え。
 もういいやと思って入館しようとすると、「今はオフシーズンなので水槽にはホタルイカはいませんが、それでもよろしいですか? よろしいですね!」と念を押してきます。
 はい、いいです、と歩を進めたのですが、逆に言えばこの水槽が最大のセールスポイントなのでしょう。ほかにどんな展示があるのかなあ、と思っていると。


 まあ、こうした解説版の展示です。子供向けの生き物図鑑が大きくなったようなイラストと文章。しかし、これはなかなか興味深く、体長わずか数センチのホタルイカが水深200~600mから海面すれすれまでに上昇してくるのは、人間に換算すると5km近くを上り下りしているのと同じで、大変に体力を消耗するものであるということは初めて知りました。
 けれども学術的なのはこのあたりまでで、シアターで映像を流しているというので着席したのですが、トロ箱に水揚げされたホタルイカが重量計に乗せられている「静止画」にナレーションが流れるだけ。映像が何も変わりません。わしは今までいろいろひどい田舎ミュージアムのシアターを見ましたが、間違いなくここのは最悪でした。
 呆れつつ順路に従って下の階へ行くと、今度はクイズコーナーだかゲームコーナーだかよくわからないゾーンになっていました。
 

 イカの胴体みたいなブースがモニターです。ホタルイカのアニメキャラの陽気な声が響き渡っていますが、お客は数人しかいません。
 よくわからないし、わかりたくもないのですが、ほたるいかミュージアムとは名乗っても、ここは博物館とは呼びえないのではないでしょうか。しいて言えば子供向けの体験施設のようなもので、標本とか生態の展示はほとんどなかったように見受けました。やはり一番の売りは巨大水槽を泳ぐホタルイカ(3月~5月下旬)のようで、シーズンオフの7月は特に見るべきものがないのです。
 そのせいかどうか、水槽そのものが工事中(?)。ほたるいかミュージアムに隣接する海洋深層水体験施設も閉館中。わしの事前リサーチが不足していたと言われればそれまでですが、何だかものすごく中途半端な、不完全燃焼な印象しか持てませんでした。端的に言えば、観光客を歓迎する姿勢があまり感じられませんでした。

 外に出ると、今日は夜から花火大会があるとのことで、地元の業者や団体などが露店を出店しており、こちらは賑わっていました。


 しかし、こういう露店ってなぜかフランクフルトとか唐揚げとか、かき氷とかのどこにでもあるものしか売っておらず、地元滑川のソウルフード的なB級グルメでもあるのかと思ったわしは、ちょっとがっかりしたのでした。
 唯一、富山県立滑川高校の海洋科の生徒さんが実習で作ったというサバの味噌煮やベニズワイガニの水煮の缶詰を売っていたので、これだけ記念に購入しました。

 駅まで歩く帰り、つくづく、地域にしかない、ご当地ならではの資源 ~観光資源にしろ、農水産物にしろ、郷土料理にしろ~ の魅力を発信する難しさを考えてしまいました。ミュージアムが有効な情報発信の方法なのは言うを待ちませんが、ネット時代で情報が氾濫する今、20年近く前に建設された施設のコンセプトやコンテンツが陳腐化するのは避けられないことです。
 スタッフも受付係の方のようにルーチンになり、何のためにこのミュージアムがあって、何がここの使命なのかが忘れかけられているように思いました。強調しますが、これは批判ではありません。滑川と同じく三重の地方都市に住むわしも同じような悩みを持っていることを言いたいのです。

 結局、滑川訪問で一番感激したのは、駅近くのショッピングセンター・エールの隣にそびえる滑川市民交流プラザでした。地球防衛軍の秘密基地かと思いました。


 この交流プラザ、1階はサロンと事務所、2階は子ども図書館、3階は会議室や多目的ホール、4階はレストランとトレーニングジム(!)、5階はなんとスーパー銭湯(!!)です。6階は展望台で、ここから見下ろす滑川の街や山並み、そして日本海は絶景です。電車の時間の関係でごくわずかしかおれなかったのが残念でした。よくよく事前調査して、こっちをメインに訪問すべきだったとつくづく後悔しました。
 滑川、おそるべし。

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