2017年7月20日木曜日

金沢ひとり勝ち説は本当か(下)

(承前) 金沢ひとり勝ち説は本当か(上)

 午後6時過ぎに晩メシのためお寿司屋に入りました。近江町市場近辺の観光客向けの派手な造作ではなく、おそらく地元客相手のごく地味なカウンターだけのお店です。
 10貫で1200円くらいでした。写真が下手で恐縮ですが、たいへん美味しかったです。
 大将とのやり取りの中で、わしが10年ぶりに金沢に来て、駅や近江町が全く変わっていたこと、観光客が多く、しかも外国人が非常に多いのに驚いたこと、などを話し、「これはやっぱり新幹線の効果ですかねえ?」と聞くと、大将とわしの隣のお客の中年男性は即座に首肯し、まったくそうなんです。しかも、新幹線でこんなに賑わっているのは金沢だけで富山はあんまりなんですよ。金沢のひとり勝ちなんですよ、と奥ゆかしく、しかしきっぱりと言い放ったのです。


 彼らの話によると
・金沢は元々観光都市ではあったが、バブル崩壊以降、観光は低迷し、この対策が急務で、官民が一体になってハード整備やプロモーションを行ってきた。
・能登空港が開港した時に一つのピークが来た。しかし、決定打となったのはやはり昨年の北陸新幹線開通である。
・やや落ち着いてきたが開通直後の混雑ぶりはすごかった。外国人は数年前から増加傾向だったが急激に増えたのは一昨年~昨年あたり。
・そのため、空き家だったのが飲み屋や土産物屋になり、アパートの家賃や駐車場代も値上がりが激しい。市民にとっては痛し痒しである。
・本当は金沢だけに観光客が集中するのはよろしいことではなく、能登や白山や、富山や黒部にも行ってほしいが、やはり金沢は魅力的なのでしばらくひとり勝ちは止まりそうもない。
・こまったことだなあ、アッハッハ。
 というような内容でした。実際は約1時間、同じ話がぐるぐる回っていたのですが。

 この後2軒目に行きました。その時はもう食べられなくて軽く呑んだだけですが、やっぱり店主もお客も同じような話をしていました。外国人はSNSで調べて来るので、大学生のボランティア(?)に頼んで英訳したメニューを作ったそうです。外国人とは片言でも意外とコミュニケーションはできるものだ、というのが2軒目の結論でした。この時もやはり「金沢ひとり勝ち説」で、行政や観光協会がわりとよく取り組んでいるという評価でした。

 わしが思ったのは、金沢の土産物は確かにものすごく種類が多く、商品開発が盛んだということです。これぐらい豊富なのは京都ぐらいではないでしょうか。お菓子でも何でも、何百種類もあるのです。
 近江町もカニシーズン以外は大混雑はなかったと思うのですが、今や夏シーズンは「岩ガキ」がブランド品として確立しており、あちこちで見かけました。これも陰で商品開発の努力があったものと推測されます。


 さらに、B級グルメも伊勢志摩よりはるかに豊富です。金沢カレー、金沢ラーメン、そして「ハントンライス」なる金沢独特の洋食も「秘密のケンミンSHOW」なんかで取り上げられたことがきっかけとなって、観光地の飲食店でもよく見かけました。


 観光産業こそが21世紀の地方を支える重要な産業であることはコンセンサスと言っていいでしょう。交通インフラ、宿泊地や観光地の整備、人材の育成、サービスの高度化・国際化、などなどの積み重ねが地域間競争の死命を決することもまた、多くの関係者の共通認識です。金沢のこの賑わいはわしにとって非常に興味深いもので、もっと原因とか要因をウオッチしていく必要があると痛感しました。

 もう一つ感じたのは、全国的に有名な地域活性化の仕掛け人は、各地で引っ張りだこで、こういう人たちにプロデュースしてもらったとしても、優位性は長続きしないということです。
 三重県でも超有名な辻口シェフ。県内各地で地元食材を使ったお菓子などをプロデュースしてくれていますが、ここ金沢にもまったく同じコンセプトの辻口プロデュースの商品がありました。
 

 写真もおんなじです。下の写真は、近鉄名古屋駅の特急ホームにある辻口シェフ監修の伊勢志摩のお菓子ですが、ポーズが同じです。


 これは無理もないことで、地方からの要望に誠実に応え、商品という結果をしっかり出してくれる辻口さんのような達人はたいへん重宝な存在です。しかし、こうした人はあちこちで活躍しているので、伊勢茶だの伊勢海老だののお菓子も辻口シェフ監修だからといって圧倒的な競争力を持つとは限らないのです。要するに、地域活性化に特効薬はないのです。
 地域間が激しい観光誘客競争状態であること、そして、伊勢志摩といえども必ずしも優位にあるのではない ~ましてや、伊賀とか東紀州も~ ことが再認識できた金沢の旅でした。

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