2017年7月23日日曜日

神戸市が日本初のSIB導入へ

 ロイターによると、神戸市が日本国内で初となるソーシャルインパクトボンド(SIB)を衛生行政の分野で導入することになったそうです。
 神戸市と社会的投資推進財団、DPPヘルスパートナーズ、三井住友銀行、SMBC信託銀行の5者が取り組むもので、糖尿病性腎症等の患者のうち人工透析が必要となるリスクが高い人を対象に、受診勧奨及び保健指導を実施し重症化を予防する事業を行います。
 具体的には神戸市内に住む糖尿病性腎症の患者100人に対し、委託を受けた民間企業が食事療法などの保健指導を実施して3年間の経過を観察するもの。糖尿病性腎症は重症化して人工透析が必要になると医療費が飛躍的に増えてしまうそうです。そこで、透析が必要になる前の段階で食い止め、医療費の抑制や健康寿命の延伸につなげることがこの事業の狙いだとのこと。
 事業費は2426万円必要ですが、財団や銀行が出資するほか、富裕層の個人投資家からも資金を募って原資とします。


 SIBとは貧困や医療、教育といった社会的な課題をビジネス手法で解決する事業の資金調達手段の一つです。神戸市のような行政機関が、SIBで資金調達して施策を行い、これによって成果が出た場合には、それによって抑制できた費用の一部を出資した財団や投資家に配当するというものです。
 このケースなら糖尿病性腎症の患者に対して保健指導を実施した結果、生活習慣の改善や重症化の予防が実現できれば、それによって抑制できた医療費(何も対策を講じず重症化した場合に、必要となったであろう医療費)の一部を投資家(や出資機関)に配当することになります。もしも保健指導の効果がなければ配当は減ることとなり、最低保証額以上に神戸市の行政負担は生じません。

 ロイターの記事によれば、出資機関の一つである社会的投資推進財団の青柳代表理事は、
医療費が約40兆円という中で、今回のような取り組みができると大きな財政的メリットが出る。公的コストの削減につながりやすい分野をさらに見定めていきたい
 と述べたとのことで、これは人口の高齢化によって将来にわたって避けられない、医療費など社会保障費の抑制への一つの提案になることでしょう。

 SIBについては、以前このブログでも紹介しました。(はんわしの評論家気取り「SIB自治体職員向けセミナー」2017年1月30日
 現状として、地方自治体では新たな資金調達方法としてようやくクラウドファンディングが普及してきたぐらいのところで、SIBのようなインパクト投資と呼ばれる資金調達方法はまだほとんど知られていません。
 これは「ふるさと納税」のような官製の資金調達が地方自治体では盛んであることもあるでしょうが、SIBの前提となる「行政施策の費用対効果の厳密な算定化」が、算定方法も含めてほとんど進んでいないためもあります。
 三重県も含め、多くの地方自治体は財政状況がひっ迫しています。イベントや「振興行政」はいくらでも削減可能ですが、社会保障や公共インフラの維持管理はやめるわけにはいかないので、費用対効果の厳密な算出を行い、民間による投資可能な案件はSIBを導入していくことも不可避でしょう。

■ロイター 医療費抑制へ官民連携、神戸市が国内初の「インパクト投資」始動(2017年 7月20日)

■神戸市 記者発表資料 日本初「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」神戸市、社会的投資推進財団、DPPヘルスパートナーズ、三井住友銀行、SMBC信託銀行が導入~「糖尿病性腎症等の重症化予防SIB」で人工透析への移行を予防~(平成29年7月20日)

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