2017年7月29日土曜日

営利ツアーという都市伝説

 国土交通省観光庁は、地方自治体が主催・運営する、営利目的ではない子ども向けのキャンプツアーなどの催行について、旅行業法の規制の対象としないという判断を示し、7月28日に各都道府県に通知しました。
 旅行業者の規制法である旅行業法は、報酬を得たうえで不特定多数を対象にツアーを行う事業、つまり旅行業を行うには観光庁長官への「登録」が必要としています。この登録を行うためには、有資格者(旅行業務取扱管理者)の配置や、営業保証金の供託などが必要とされており、地方自治体が自ら旅行業の登録を受けることは事実上不可能でした。また、観光庁の通達では「国、地方公共団体、公的団体又は非営利団体が実施する事業であったとしても、報酬を得てツアーの催行など行うのであれば、旅行業の登録が必要である。」とされています(旅行業法施行要領)。
 自治体のツアーで問題になるのは、多くのケースでは参加者から負担金を徴収する ~ツアー費用の全額を公費で賄えることはまれで、負担金で一部を足しにするため。また、負担金を課すことで冷やかしの申込者を排除できるため。~ というパターンが多いため、こうした場合に負担金が「報酬」に該当するかどうかが不明確だったことです。

 そこで、ほとんどの自治体は安全側に、つまり自らに責が及ばぬように解釈し、直接ツアーを催行する場合は完全無料で行うか、一部でも負担金を取る場合は旅行業者に対価を払って委託しなくてはいけない、という解釈を行っていたのです。

 もっとも、政策法務に携わる自治体職員の間では、これはあまりにも消極的な解釈であり、ツアー費用や資料代などの一部に充当する、利益配分を目的にしない費用徴収は旅行業法上の「報酬」には当たらず、またそもそもこうした不定期なツアーの催行は旅行「業」には該当しないので費用を徴収しても問題はないという理解は一般的だったと思います。これが旅行業法違反に当たるなどは都市伝説だと思われていたのです。
 しかし、何かにつけて国による法解釈を尊重し、マスコミ報道や外部からのクレームを何よりも避けたいのが本音の現場にとっては、安全側に傾倒し、萎縮せざるを得ませんでした。わしはこの苦しい立場もよく理解できます。

 この問題が大きく注目されたのは、東日本大震災で全国の自治体やNPOが災害復興ボランティアを被災地に派遣するのに催行したボランティア・バスツアーのケースです。
 多くのツアーでは、主催者が上記のような理由で負担金を徴収していましたが、これが旅行業法に違反しているという指摘が相次ぎ、観光庁は平成28年5月に「ボランティアツアーの実施は主催者が旅行業法の登録を受けるか、通達(旅行業法施行要領)に基づいて実施するように」という通知を出し、このことも自治体はボランティアツアーを催行できない、という解釈に拍車をかけていたと言えます。
 そして今年、学校の夏休みを迎えて、子供向けのキャンプツアーなどが旅行業法違反の恐れありとして、中止したり業者に委託せざるをえなくなったケースが全国で相次いでいると報じられていました。

 このように全国で混乱が生じていることから、観光庁は冒頭の通知を発することとなったようです。
 これによると
1)都道府県や市町村が自治体の全域から参加者を募集する子ども向けのサマーキャンプなど、自治体が企画、運営を行う営利目的ではないツアーは、安全管理責任者の配置や損害保険に加入するなどの要件を満たせば実施を認める。
2)NPO法人などが行う被災地へのボランティアツアーについても、参加者名簿を提出するなど一定の条件を満たせば特例として実施を認める。
 とのことです。

 NHKニュースWEBによると、この通知について記者会見した石井国土交通大臣は
「旅行業法の解釈が必ずしも明確でなかった。法律の取り扱いを明確にすることで、さみしい思いをする子どもたちがこれ以上出ないようにしたい」
 と述べたそうで、これはまあ政治家さんのいかにも言いそうなことでともかくとして、
 主務官庁である観光庁観光産業課の参事官が、キャンプツアーの中止が相次ぐのは旅行業法の存在に無知な地方自治体側に問題があるというニュアンスで、
「自治体が法律の趣旨を認知していないとは思ってもいなかった。」
 などと語っているのは、わしには??としか思えません。
 地方の現場、地方自治体やNPOの実情を観光庁はもっと虚心坦懐に学ぶべきでしょう。この種の、国と地方、民間の三者の間での空回りは、きっと旅行業法の解釈に関することにとどまらないはずです。

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