2017年7月30日日曜日

今さらながら、おぼろタオル

 先日、とある県外のショッピングセンターに立ち寄ったら、日用品売り場にこんな表示がありました。
 愛媛県今治市は日本最大のタオルの産地であり、高機能タオルやデザイン性の高いタオルを次々と開発しているのはそのとおりですが、「国産タオル発祥の地」というのは正確ではありません。(まあ、誰もそんなことにこだわりはしないでしょうが)
 定説では、明治初頭に舶来の文物としてタオル(浴巾)が日本にも広まり、明治20年頃に大阪の泉州地区で国産タオルの工業生産が始まりました。
 タオル製造に将来性を見出した企業家は各地に現れ、明治の後半になると、木綿産地であった今治や三重県の伊勢湾岸地域でも工業生産が行われるようになります。
 しかしその後、時代の波によって国内のタオル業界は淘汰が進むことになります。かつて三重が大阪に次ぐ ~つまり今治を凌ぐ~ 一大産地であった事実は忘れられ、今では津市で操業している おぼろタオル が孤塁を守っている状況です。


 もちろんわしも三重県民、そして産業振興行政に関わっているはしくれなので、三重県でかつてタオルなど繊維産業が盛んだったことは知っていましたし、おぼろタオルも名前は知っていました。ただ、実際に使ったことはありませんでした。
 それは、ケチくさい話ですが、やはりおぼろタオルは通常のタオル ~そのほとんどは中国などからの輸入品~ に比べて2倍以上する価格の高さです。国産タオルの品質が高いことはわかっていますが、正直言ってタオルは成熟した商品であり、どんなメーカーのどんなタオルであっても品質に大きな差がない、つまり「コモディティ化」した商品であるとわしは思っていました。

 ところが最近、ふとしたことからおぼろタオルを購入したところ、これがあまりに具合がいいので、すっかりファンになってしまいました。暑さに弱いわしは、夏場大汗をかくので吸水性が良いタオルはありがたいのですが、近ごろは年のせいか肌触りとか柔らかさについても安物のタオルには不満を感じる時があって、ちょうどそのタイミングでおぼろタオルとの出会いがあったのです。


 たまたま買ったおぼろタオルがなかなか良かったので、休みの日におぼろタオルの工場内にある直売ショップに行って購入したのがこの写真の商品です。左のシマシマのがタオルマフラー、真ん中が特にしなやかで肌触りが良い「百年の極(きわみ)」というハイエンドのタオル、右のピンクのが高吸水性のふわふわタオルというものです。この3つで4000円くらいしたので、やっぱり高いことは高いです。

 「百年の極」はおぼろタオルが明治41年(1908年)に創業した、百年企業であることに由来しているようです。
 そもそもなぜ「おぼろ」タオルという会社名なのか?ですが、創業者の森田庄三郎が、タオルの上糸は着色せず地糸だけを染色することで、霞がかかった(つまり、おぼろ)風合いとなるタオル製造法を発明し、「おぼろ染めタオル」としてヒット商品となったことにルーツがあるようです。
 その2年後の明治43年にはガーゼタオルの量産化に日本で初めて成功。当時のことなのでガーゼタオルの「腰巻き」や「足袋」などの商品を次々リリースし、この分野でのトップメーカーとなったのでした。
 ちなみに、森田庄三郎は元々の職業が肖像画家だったそうで、タオル製造業への転身は非常に大きなチャレンジだったのでしょう。明治の日本はこんなダイナミズムに溢れていたのかもしれません。

 今でも、おぼろタオルの製品は、通常タオルに比べて使用される糸が細く、しかも密度が粗い独特の織り方のため、生地が薄く、吸水性とともに、速乾性も高いという特長があるそうです。これは使ってみて確かにわしも実感します。

 三重県民だから三重県のメーカーのものを買えという「地産地消」は、ともすると合理的な消費性向を制限し、経済の循環を縮小均衡に陥らせる面があります。しかし、もう一度地元の商品を見直してみると、良いこともある、ということを再認識したのでした。

■明治生まれのタオル おぼろタオル株式会社  http://www.oboro-towel.co.jp/

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