2017年8月5日土曜日

Biz版 地方創生会議で感じた3つのこと

 静岡県で開催された Biz版 地方創生会議 に参加してきました。富士市と富士市産業支援センター f-Bizが主催したもので、地域の中小企業や個人事業者を対象に、経営のアドバイスと支援の伴走を行う全国のビジネスサポートセンター ~通称「○○ビズ」と呼ばれる機関~ が一堂に会し、中小企業の支援、ひいては地方創生のために情報やノウハウを共有しようという趣旨で開催されたものです。
 主催者をはじめ、静岡県熱海市、熊本県天草市、長崎県壱岐市、広島県福山市、など全国13の自治体の市長とビズのセンター長が登壇し、ビズを設立した経緯や活動の内容、中小企業支援の成果、そして今後の展望について発表し、その様子を全国から訪れた350名の参加者が見守りました。
 中小企業が地域経済に重要なことは言うを待ちませんし、今までも法律や補助金や融資など数多くの支援策が打ち出されてきました。支援する側も、国や都道府県、市町村などの行政機関とその外郭団体(中小企業基盤整備機構など)、商工会議所や商工会、中小企業団体中央会や商店街振興組合連合会などの団体、さらに政府系金融機関や銀行、信金など多様であり、まさに「中小企業支援業界」ともいうべき様相です。しかしこれほど手厚くても、長期的に見て中小企業数の減少、地域経済の弱体化は止まっていないのです。


 毀誉褒貶あるのは事実ですが、これに一石を投じたのが「ビズ」モデルでしょう。中小企業の抱える数多くの経営課題のうち「売り上げアップ」にのみターゲットを絞り、できるだけカネをかけず、経営者と共に知恵を出して結果を出していくというビズモデルは、結果的に多くの成功例(=売り上げアップ事例)を生み出し、関係者の注目を集めるところとなりました。
 平成20年の富士市のf-Biz設立を皮切りに、現在は上述のように13市町に広がっており、さらに現在いくつかの市で設立への具体的な動きが始まっています。
 各市町長が発表で口々に言ったように、今まで地方における産業振興策の定石だった企業誘致がもはや望めない中、地域にある既存の中小企業、なかんずく個人事業主や家族経営の振興の重要性が再認識されています。また、地域経済の担い手を新陳代謝させる意味で、新たに起業・創業を増やすことも重要課題です。
 
 ともすると従来の産業支援機関は決算書に基づく粗さがし的なアドバイスに陥りがちで、提案も「専門家の派遣」や「補助金の活用」、「認定の取得」など中小企業が求める答えとミスマッチが大きかったと言われます。
 これに対し、ビズはすぐに動ける実用的なアドバイス、経営者と一緒に伴走する支援スタイルで多く成功例を生み出しており、これら13市町は「わが街でも中小企業のためにビズを立ち上げたい」という思いで設立に至ったケースが多いことが報告されました。
 なお、全国47都道府県には経産省の肝いりで「よろず支援拠点」なるビジネスサポートセンターが設けられていますが、これはビズの「亜流」で、この会議に参加しているビズとは全く別のものです。

 各市町長による報告の次は、f-BizやOka-Biz(愛知県岡崎市)、Seki-Biz(岐阜県関市)、Sima-Biz(長崎県新上五島町)、ひむか-Biz(宮崎県日向市)など8つのビズのセンター長による支援事例の発表のパネルディスカッションが開かれました。
 顔ぶれを眺めただけでも、工業都市、農業地域、離島、などさまざまで、人口も都市集積もまったく違います。しかし、報告された事例はみな、ビズによるサポートの3つの原則、つまり、
①企業や商品の持つ強みを生かす
②ターゲットを絞る
③コラボレーションする
によって売上げアップに至ったものであることに気付きます。

 全体で4時間にもわたる長時間の会議でしたが、わしにとって新たな発見や得るところが非常に大きな機会でした。
 すべてはここで書けない ~特に個別のノウハウや、懇親会で聞いた情報など~ し、わしにその能力もないのですが、わしが考えた3つのことを簡単にメモしておきます。

1 地域間の中小企業活性化支援競争
 現時点では全国でわずが20ほどの自治体がかかわっているに過ぎないビズですが、大きな社会変革が起きる前は常にそうであるように、これから各市町村が自前のビズを設立しようという動きは燎原の火のように広がると思います。
 今、ビズを検討しているの市町村は、首長のほかに、産業振興担当職員からのボトムアップの発案や、市町村議会議員からの提案、さらにほかならぬ中小企業経営者からの要望がきっかけとなったケースが多いようです。今すでに商工会議所や商工会といった先行の支援機関があるから、あるいは「よろず支援拠点」のようなナショナルミニマムな支援制度があるからウチの街ではいらない、と言っている間に、どんどん差は開いていくでしょう。もちろんビズ設立だけが唯一の解ではありません。ビズの設立には巨額の予算が必要です。しかし、逆に言えば、ビズに相当するような有効な支援方策を、市町村は自前で真剣に考えないといけない時代にいよいよなってしまったのです。
(ビズは設立形式が多様なことをわしは初めて知ました。Suso-Biz(裾野市)は週1回の営業日ですし、Fuku-Biz(福山市)は周辺の6市2町での広域運営など。今後、それぞれの地方の実情に合わせたモデルが出てくるでしょう。)

2 支援人材の育成
 市町長による会議の席上でも、中小企業支援に一番必要なのは「支援人材である」という見方は一致していました。ビズ流の伴走支援は言うは易く、行うは難しで、商工会議所や商工会、金融機関にも、こうした手法でアドバイスができる人材は不足しています。
 このため、たとえばS-Biz(東京都豊島区)は設立主体である巣鴨信金が、他の金融機関の社員研修を受け入れ、ビズ流の伴走支援のノウハウをOJTしているとのこと。
 これは非常に重要で、今後再編が進むであろう地域金融機関をはじめ、会員減少や運営経費の削減問題を抱える商工会議所、商工会、中小企業団体中央会などにとっても、こうした伴走支援の人材が育成できるかどうか ~もしくは人材確保ができるかどうか~ は将来の死命を決する話だと思います。

3 ビジネスインサイト
 これはわしも関心があったのですが、ビズによる具体的な素晴らしいアドバイスが、いったいどうすれば生まれるのか、言い換えると、ビズのセンター長たちは普段どういった点に着眼しているのか、についても話がでました。小出 f-Biz センター長によると、よくアドバイスのことを「アイデア」とか「ひらめき」とか言われることがあるが、これはまったく違う。つまり、過去の先行ビジネスの有無や成功・失敗の要因分析、現在の市場のニーズや成長性、相談に来た中小企業の強みや資源などをすべて勘案して出てくるアドバイスなのであって、単にその場で思いつきを言っているわけではなく、その程度のアドバイスならビジネスとして成功するはずがない、ということでした。
 わしはまさしく、この種のアドバイスの根本は、洞察、つまり「ビジネスインサイト」と呼ぶべき暗黙知だと思います。(石井淳蔵氏は、ヤマト運輸の故小倉昌男会長がニューヨーク市内の交差点で四つ角それぞれにUPSの郵便車が止まっていたのを見て「宅急便」のサービスを思いついたことを「ビジネスインサイト」の典型としています。)
 ビジネスインサイトはイノベーション(革新)に必要不可欠なものですが、学歴や職歴、資格などとは関係性がありません。普段の情報収集のアンテナの高さに加えて、共感力やコミュニケーション力、モチベーションに深くかかわっており、これまた、くしくも小出氏が言う「ビズのセンター長に求められるのは経歴や資格でなく、伴走能力」という点と平仄が一致することに改めて驚かされたのでした。

■富士市産業支援センター f-Biz    http://f-biz.jp/

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