2017年8月6日日曜日

「ジリ貧からドカ貧」にならないために

 現代から何百年も昔のこと。王様が贅を凝らした宮殿やお城を新築するにあたって、人民に臨時的に費用を賦課したり、戦争を始めるので人民を兵隊や人夫に駆り出すか、戦費を徴収することがしばしば行われました。王様のまったくの気まぐれで課される巨額の負担に耐えかねた人民たち、特に貿易や金融で資産を持つようになったブルジョアジー(市民階級)たちが立ち上がって起こしたのが市民革命であり、その最大の要求は「人民への課税は王様が勝手に決めるのでなく、市民の代表が参加する議会で決めた法律に従うべきだ。」ということでした。
 ただ、現代の統治や行政の現場においては、すべての費用を税金で賄うことはできません。受益者がはっきりしている時は負担金(公立学校の学費や公立病院の医療費など)を取るし、道路の建設など将来にわたって皆が使えるものの建設費は公債(10年くらいかかって返す借金)で賄っています。
 しかし、こうした特別な事情がない限り、行政の執行に必要な費用はやはり税金で賄うべきが原則であって、税金を取るのが難しいから負担金や借金や寄付金をどんどん増やしていけば、それに伴っていろいろな歪みが生じるでしょう。極論すれば、行政官たちが法律による税の枠組みの外で勝手に金策するようになり、収拾がつかなくなるのです。


 こんなことを考えたのは、先日の伊勢新聞に、三重県議会の代表議員8人が三重県知事に対して今後の県政運営に対する申入れ書を提出したという記事が載っていたからです。
 三重県はここ数年で財政運営の厳しさが増しており、その健全化、つまり財政再建が県政で最大の政治課題になっています。
 記事によると、
・申し入れ書は、財政難に陥る中での予算編成について「希望ある将来を創るために必要な予算が十分に確保されたとは言えない」と指摘。
・一般会計に企業会計から55億円を繰り入れた平成28年度当初予算や、職員給与の削減で賄った29年度当初予算について「問題の根本的解決にはつながらず、財政の持続的改善にはほど遠い」と指摘。「予算措置に頼らない新たな発想で施策の展開に努めてほしい」と求めた。
 とのことです。
 一方で議員らは
・「将来に希望を抱ける攻めの取り組みを進めてほしい」とし、インフラ整備やスポーツによる地域づくりを求めた。
・議員の一人は「財政を取り巻く状況は厳しくなっているが、県民が将来に希望を抱き、夢を持てる取り組みを進めてほしい」と求めた。
 ということだそうで、要するに非常に難しい要求をしていることになります。

■伊勢新聞の記事はこちら
  予算に頼らない施策を 三重県議会、県政運営に申し入れ書(2017-08-05)
■三重県の財政状況についてはこちら
  三重県財政の健全化に向けた集中取組 ~持続可能な行財政運営に向けて~
                               (平成29年6月)

 議会が求めるような、予算措置に頼らない施策展開をするには2つの方法が思いつきます。

方法その1
 県職員のマンパワー活用により、事業費(予算)を使わず、県民や企業、団体とのコラボと、ソーシャルキャピタルを最大限に生かし、知恵と工夫で行政に取り組んでいく。

方法その2
 予算(税)に頼らないで担当職員自身が金策する。「霞が関詣で」をして国から助成金や交付金を獲得する。企業や団体を回って、あるいはクラウドファンディングで県民から寄付金を募る。利用者からの負担金は値上げする。

 これは両方とも可能ですが、次の問題点もあります。

問題その1
 財源不足をマンパワーで穴埋めするにはモーレツに働かないといけない。もしくは生産性を劇的に向上させないといけない。そもそもの前提として、県職員に知恵や工夫がないと成り立たないので必然的に少数精鋭となり、数少ない有能な職員が燃え尽きてしまう。

問題その2
 北川県政で縮小した国へのロビイングが復活する。資金集め能力が、その事業が実施できるかどうか、そして県職員の能力評価の基準になり、関係者や関係業界に対する寄付金供出への圧力が高まる。寄付や負担を求められる側の不満は、いつか臨界点に達する。

 問題点その1は、予算案を審議する議会の側も認識の改革が必要です。議員は事業の重要性を予算額の多寡のみで判断しがちなので、インフラの維持管理や社会福祉といった継続性が大事な事業は軽視されがちでした。目先の流行や目新しさ、サンクコストにこだわらない、各事業の中身に関するゼロベースでのフラットな議論と評価が必要です。

 問題点その2は、すでにその萌芽が出ています。いろいろな企業や団体の方に訪問のアポを取ろうとすると「また寄付(の依頼)ですか?」と言われることが実に多くなったのです。県の財政当局が、行財政改革を断行する姿勢を見せ、かつ短期的に目に見えた改革成果を上げないと、こうした不満・不信はマグマのように溜っていくでしょう。 

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