2016年12月9日金曜日

なぜ法律家は沈黙しているのか

 記憶がもう定かではないのですが、A・トフラーの「富の未来」に、この世の中で進歩が最も遅いものは何か、みたいな問いかけがありました。
 進歩が一番早いのは言うまでもなく科学技術であり、次いでベンチャービジネスとか、現代芸術とか、金融工学などが続き、一般の人々の意識とて進歩(変化というべきか)は決して早くはないのですが、それらよりも政治システムとか教育システムはさらに遅く、最も遅れてしまうのは司法である、みたいな内容だったと思います。(違ったらごめん。)
  これはたいへん当を得ていると思います。
 ポケモンGOをしながらの自動車運転で起こった死亡事故が各地で波紋を呼んでいます。事故を起こした愚かな犯人は厳罰に処されるべきとしても、不思議なのはこれほど重大な事故が頻発しているのに ~こうした「ながら操作」は現在のセンシング技術でもって十分に防止できるはずです~ これを放置しているゲーム提供者(ナイアンテック)がまったく法的な責任を問われないことであり、この点について、法学者や弁護士からもほとんど問題提起がなく、世間の関心も高くないのもたいへん奇妙な現象といえないでしょうか。

2016年12月8日木曜日

ますます感度が鈍っていく件

 先日の日経MJに、この時期恒例の「2016年ヒット商品番付」が掲載されました。

 東の横綱は「ポケモンGO」
 対する西の横綱は「君の名は。」
 いずれも社会現象とさえいえるような大ヒットになっており、大関以下の番付についても、まあ順当と言うべきか、少なくともユーキャンの流行語大賞ほどに国民を混乱に陥れることがない、常識的な内容かと思いました。(ちなみに、番付外の「流行語賞」はゲス不倫。「残念賞」はSMAPです。)
 東西の、横綱から前頭14枚目までの合計38の名前のうち、わし自身、どれくらいよく知っているか、あるいは関わっているかということが、わしなりの情報感度というか流行感度だと思っているのですが、2016年についても全然知らないものがありました。
 昔なら、知らないにしても名前くらいは聞いたことがあるとかのレベルは保っていたのですが、今はダメです。全然知らないのです。
 年寄りはこうやって騙されるようになってしまうのでしょう。

2016年12月6日火曜日

アジアに見捨てられつつあるニッポン

【読感】 ルポ ニッポン絶望工場 出井康弘著 講談社+α新書

 農業は成長産業であるとか、漁業の再生なくして地方の再生はない、などといった意見を最近よく耳にしますが、これら第一次産業の現場には日本人の若者は従事しておらず、その少なくない部分が外国人労働者によって支えられています。
 地方創生の有識者だのカリスマだのという人の話を聞く機会がわしにも時々ありますが、こうした地方の産業の現場に、外国人労働者、つまりは実習生や研修生、あるいは留学生が大挙して従事していることについて、現状の位置づけや課題、そして将来の在り方をきちんと説明してくれた人に、今までただの一人もお目にかかったことがありません。悲しいことに、こういった外国人は一般国民どころか、偉い人の目からも「見えない」存在なのです。
 この本のタイトル「ニッポン絶望工場」とは、かつてルポライターの鎌田慧氏がトヨタの季節工として自動車工場での労働を体験し、その過酷さと、それでもこの仕事を選ばねば生きられない人々の生きざまを生々しく描いたルポルタージュの名著から由来していることは間違いないでしょう。
 それから40年近くを経て、その頃の東北や九州、沖縄の若者たちに代わって、今度はアジアからやってきた若者が日本社会からひどく搾取されている実態を明らかにしたのがこの本です。

2016年12月5日月曜日

あのりふぐの丸勢水産が自己破産へ

 JC-netによると三重県志摩市の活魚問屋である(株)丸勢水産が10月、津地裁伊勢支部において破産手続きの開始決定を受けました。
 志摩市安乗(あのり)地区で水揚げされるトラフグは、地域ブランドを冠せられ「あのりふぐ」として珍重されていますが、このあのりふぐのブランド化と、首都圏などへの流通やプロモーションを牽引する存在だったのがこの丸勢水産でした。
 平成23年頃には三重県内や東京にもふぐ料理店や志摩の特産品の物販店を出店し、たいへん上り調子の勢いのよさを感じましたが、この1~2年の間にお店は次々と閉店していました。
 あのりふぐも、松阪牛や伊勢海老に続く三重県特産の高級グルメ食材として注目が集まり、伊勢志摩のグルメ情報や観光情報を扱う雑誌、新聞、テレビ、ネットなど、あらゆるメディアによく露出しており、押しも押されもせぬ定番食材になった感はありました。
 しかし思い出してみると、あれほど三重県の美食が喧伝されたG7主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、メニューに採用されたという話題も出ず、なぜかまったく存在感が失われていました。そのころにはすでに経営が厳しい状態になっていたのかもしれません。
 

2016年12月4日日曜日

滋賀VS京都は傍から見ている限り面白い

 わしが知る限り、二つの都道府県の県庁所在地間が最も接近しているのは、京都市と滋賀県大津市です。地理的にも隣りどうしなので、JRなら10分、車でも30分くらいで簡単に行き来できます。
 「近江」という地名は、京の都から一番近い「海」であることに由来しているように、古代から琵琶湖の存在は京の繁栄と一体化しており、その関係の古さ、近さ、深さ、ゆえに滋賀県民には京都に対するいわく言い難い複合観念があることが知られています。
 この問題を斬新なアイデアで漫画化した作品が人気を集めているとのことです。
 滋賀県在住の漫画家 さかなこうじ氏が、ネットの漫画サイト「くらげバンチ」で公開を始めている 三成さんは京都を許さない ―琵琶湖ノ水ヲ止メヨ― がそれです。(12月3日付け 京都新聞)
 一介の小姓から豊臣秀吉に召し抱えられ、その片腕となって出世の道を驀進し、最後は関ヶ原の戦いで徳川家康に敗れ命を奪われた石田三成。
 その三成が、どういうわけか現代に蘇って滋賀県庁に入庁し、「打倒京都」のために秘策を練る、という物語です。

2016年12月2日金曜日

ビッグマックというイノベーション

 マイケル・デリガッティ氏が亡くなりました。
 98歳。大往生というべきでしょう。

 ただ、ありていに言って、わしは昨日までこの人物のことを全く知りませんでした。マクドナルドのビッグマックは学生のころから ~年に1~2回にしか過ぎませんが~ もう何十年も食べ続けてきているわけですが、ビッグマックを考案した人がマイケル・デリガッティその人であったことは、彼が死去したというニュースが世界を駆け回ったことでわしも初めて知ったわけなのです。
 そもそも「ビッグマック」を考えたのが誰かどころか、考え出した人がいたという当たり前のことにすら、思いを馳せたことはありませんでした。
 ペンシルバニア州でマクドナルドのフランチャイズ店を経営していたデリガッティ氏が、より大きく、インパクトがある商品を開発しようと、ビーフパティ(ハンバーグ)2枚を、バンズ(パン)3枚でサンドしたビッグマックを考案したのは1965年のこと。実際に販売を始めたのはその2年後でしたが、瞬く間に全米で大ヒット商品になりました。
 それまでマクドナルドのメニューは、ハンバーガー、ポテト、ドリンクだけの非常にシンプルなものでしたが、ビッグマックの成功によって商品の多様化戦略が進むことになりました。

2016年12月1日木曜日

何が来るかわからないお魚通販「うみまかせ」

 三重県尾鷲市にある 合同会社き・よ・り が行っている鮮魚のネット通販 うみまかせ が人気を集めているそうです。
 尾鷲は言わずと知れた魚のまちです。
 熊野灘に面しているのは、非常に複雑に入り組んだリアス式海岸であり、その入り江、入り江にいくつもの漁村集落が点在しています。
 かつて、漁だけが生活の糧であった時代、漁場に近いそうした入り江に人々が暮らすことは圧倒的にアドバンテージがありました。
 しかし、時代が変わり、仕事も、世の中も大きく変化すると、都市機能や人口は平地にある中心地に集中するようになり、リアス式ゆえに細く曲がりくねった道路でしか結ばれなかったこうした村々は次第に活力を失い、人口も減少していくようになります。
 き・よ・りがある尾鷲市早田(はいだ)地区も、典型的にその軌跡を辿ってきた集落の一つです。
 そこで、まちの再活性化のために地区の有志たちが「漁師塾」など、さまざまな町おこしを仕掛けるようになり、途中からは「地域おこし協力隊」の若者も参加して実現した、その一つがこの合同会社き・よ・りであり、うみまかせであったとのことです。