2009年7月31日金曜日

事業承継支援の必要性

 最近、伊勢市内で何軒かのガソリンスタンドがほぼ同時期に閉鎖されました。これらのスタンドは、ある一つの石油販売会社が経営していたもので、おそらく経営が行き詰まったことによる決断だと思います。ガソリンスタンド特有のけばけばしい看板や広告はそのままで、周囲をぐるりとフェンスで囲まれ外部からの侵入者を遮っている光景は、ある意味シュールであり、経営破綻という厳しい現実を目の当たりにする思いです。

 各種の統計では、製造業を中心に企業業績に回復の兆しが見られ、景気も底打ちだと言われているようですが、同時に消費者物価はマイナス傾向が続いており、市場の末端まで回復感が浸透するのはまだまだ先なのではないかという気がします。
 その間、体力のない企業は退場を余儀なくされ、重要な雇用の場であり、生活サービスを供給する場でもある企業という経済活動の拠点が失われてしまうのは、その地域にとっても大きな損失であり、住民の生活の質の低下につながることになってしまいます。

 平成11年に中小企業基本法が改正され、それまでの「弱者である中小企業と強者である大企業の間の格差是正」が主な目的であった中小企業基本法は、中小企業の多様性や機動性を認め、その活力が地域経済を活性化させるという現状認識に変わりました。その一つの具現化が、ベンチャー支援であり、創業支援です。
(従来の基本法は「わが国の中小企業は零細すぎ、しかも数が多すぎので、協同化を進めることで過小過多を解消して大企業との格差を是正しよう。」という基本理念があったので、いっそう過多を助長することになる創業の支援には事実上関心が示されていませんでした。これが大きく転換したのです。)
 この創業支援は一定の効果を生んだとは思いますが、日本社会の安定志向があって、未だに先進諸国に比べても新たに創業する率(開業率)は5%前後と低く、敗戦から高度成長前期にかけて創業した自営業者の高齢化が進んでいることもあって、廃業する率が開業率を大きく上回っている現状です。農業を見てもわかるように、新規参入を制限している産業、新規参入が少ない産業は活力を失い、衰退していきます。その意味では、低い開業率は日本経済を支える商工業がまさに危機を迎えていると見ても誤りではないと思います。

 したがって、創業支援は引き続きその重要性を失ってはいません。しかしながら、仮に何らかの事情で廃業せざるを得ないにしても、収益性の高い部門は低収益の部門と切り離して譲渡できるようにするなど、「事業を承継」して、たとえ経営者は代わっても、その地域に企業がとどまって事業活動し続けるように支援することもますます重要になってくるのではないでしょうか。

 経済産業省などでは数年前から事業承継の重要性に着目し、セミナー開催や相談業務などを行っており、昨年度からは全国に事業承継支援センターを設立し、経営者からの相談に応じています。三重県でも四日市商工会議所と三重県商工会連合会(津市)に事業承継支援センターが設けられていますが、県内全域をくまなくカバーするにはもう少し対策が必要です。
 ちょうど今が、平成22年度に向けての新規事業のアイデア出しの時期なのですが、県庁も2つのセンターと絡んで、事業承継の相談の敷居を低くし、早い時期から後継者への代替わりにしろ、M&Aにしろ、事業承継について早めの対策が打てるような仕組みができないものかと考えているところです。

2009年7月30日木曜日

東紀州の企業訪問

 昨日、今日と、企業訪問で東紀州に行っていました。スケジュールの都合もあり4社しか回れなかったのですが、業種、業態ともさまざまで、自社の業況についてのほかに、熊野市、尾鷲市の経済情勢などについても広くお話をおうかがいできました。

 特に尾鷲市は、厚生労働省三重労働局が毎月集計しているハローワーク別の有効求人倍率調査において、平成22年2月から県下の9ハローワーク中で堂々の第一位を連続で占めているという事態になっています。今回はそのことも経営者に直接お聞きしてみました。

 すると、最大公約数として、以下のような点にまとめられるように思いました。

その1 もともと尾鷲の景況は低空飛行なのでこれ以上悪くならなかった
 林業や水産業など一般的に「地場産業」などと呼ばれてる産業は完全に衰退基調であり、他には景気の影響を受けにくい食品製造業などが中心であり、外需型の製造業がなかったため、結果的に世界同時不況の荒波をまともにかぶらなかった。

その2 高規格道路の建設需要が下支えしている
 平成25年度の全通を目指し、紀勢自動車道(高速道路)と高規格道路(国道42号熊野尾鷲道路)の建設工事が行われており、建設業者を中心として、何らかの形で地域産業に好影響を与えている。ただし、道路完成後にカタストロフィが来るかも?

その3 高速道路のETC割引が観光需要を下支えしている
 ゴールデンウィーク、7月の3連休などで特に顕著。東紀州出身者の家族旅行や帰省も例年に比べて多く、観光、宿泊、土産品購入などの需要が生まれた。

 これらを見ると、政府の景気対策も一定の効果は上げているようです。もっとも、あくまでも「これ以上悪くならない」という下げ止まり効果であり、需要が一服したらどうなるのか、怖いものはあります
 ただ、今回訪問した経営者は、新たな需要を見越した新分野進出や設備投資などに取り組んでいるところが多く、厳しい話も多く聞こえる中で、いささかの明るさというか、救いを感じたのも事実です。
 ぜひとも経営者の皆様のご努力に期待したいと思います。

 話は変わって、休憩時間を利用して三重県立熊野古道センターに15分ほど立ち寄ってきました。雨が上がり、雲の切れ間から天狗倉山(てんぐらさん)と便石山(びんしやま)の双峰が望め、眼下に尾鷲湾が広がる絶好の景色でした。




 展示棟では、JR紀勢本線全通50周年を記念した特別展示が実施されていました。
 特筆すべきなのは、鉄道の開通と同時に廃止された国鉄バス、いわゆる矢ノ川峠(やのことうげ)越えのバスのエンブレム(蒸気機関車の動輪をあしらった旧国鉄のシンボルマーク)と、これも今なおJRバスに受け継がれている旧国鉄バスのシンボルであるツバメマークのエンブレムの実物が展示してあったことです。
 国鉄バスについては、想い出の矢ノ川峠の会が刊行した「想い出の矢ノ川」という冊子に詳しい解説があります。(真ん中の写真が表紙です。)
 全国の鉄道愛好家の諸氏にぜひとも強くお奨めしたい有意義な展示でした。

 

2009年7月28日火曜日

尾鷲で最大のニュースは


 新しく岩田新市長が誕生したことよりも、23日に国道42号線沿いにマクドナルドができたことらしいです。
 ウチの職場にも尾鷲出身の人がいるのですが、週末に帰省したらドライブスルーにクルマの行列ができていたと言っていました。
 尾鷲の人は新しいもの好きだからなあ・・・とはその人の評ですが、はんわしはこれに加えて、(おそらく)サービスの質や水準が平均的な尾鷲市内の飲食店に比べて高いからではないかと思います。価格が安いこともそうですし、常連と一見を差別しないとか、店員がいらっしゃいませとちゃんと言うとか、すぐにアイテムが出てくるとか。おそらく店が新しくて心地よいこともあるでしょう。

 注意すべきなのは、このように「民間投資」が地域経済の起爆剤となり、新しい需要を開拓していくというのはごく普通のことであるということです。
 何だか、地域おこしとか、中核となる観光施設・土産物施設を建設しようなどという場合、すぐに道の駅のような半公共的な施設の建設を行政に要望する向きも多いようですが、それは決してスタンダードな考え方でなく、たとえばマクドのようにフランチャイズのシステムを活用する方法であっても、民間が目利きをきかせ、知恵を出し、カネを出し、積極的に投資することで地域経済はうまく循環するということです。
 当たり前のことですが、今一度、この原則を再認識すべきだと思います。

 しかし・・・なぜかマクドナルドのウェブサイトの「店舗検索」には尾鷲店が出てこない。まさか・・・


 

2009年7月27日月曜日

ネットショップ起業塾

 松阪商工会広域連合が、「ネットショップ起業塾」を開催します。
 これからネットショップを創業したい方はもちろん、すでにリアルショップを持っており、これからECを展開したいと考えておられる方も参加可能だそうです。


 ECコンサルタントの第一人者、静岡市のアイリンク・コンサルタントの加藤忠宏氏が初日と二日目の講師を務めるほか、実際のECオーナーによる体験談や、経営コンサルタントによるビジネスプラン作成のアドバイスもあります。
 松阪商工会広域連合のヒット企画ではないでしょうか。ぜひ受講をお奨めします。

 リンク 松阪商工会広域連合

2009年7月26日日曜日

明和町の‘あざふるさと’に行ってみた

 松阪商工会広域連合が、三重県明和町の三重県立斎宮(さいくう)歴史博物館近くにオープンさせた、特産品販売施設「あざふるさと」に行ってきました。


  
 松阪地区の商工会エリア(松阪市の旧飯高町、旧飯南町エリア、明和町、多気町、大紀町)の特産品が一同に展示販売されています。お茶とか、ひじきのような乾物、ジャムなどが多いように思いました。あと、大内山乳業のアイスクリームもあって、ここで休憩がてら食べることもできます
 ちなみにはんわしは季節柄、水出し緑茶のティーバッグを買いました。

 斎宮歴史博物館にお越しの際は、ぜひ一度のぞいて見てはいかがでしょうか。
 場所は大駐車場の奥。ちょっと人目につきにくいポジションなのが残念です。以前から空き家同然の販売スペースがあったのはご記憶の方も多いと思いますが、そこがリニューアルオープンしたイメージです。

● 「あざふるさと」のブログ あざふるさと奮戦記
 
● 三重県立斎宮歴史博物館

振興とは? 活性化とは?

 今日は尾鷲市長選挙の投票日です。はんわしはもう尾鷲市民ではないので、単なるウォッチャーとして新聞報道に接しているだけですが、選挙の争点として4人すべての候補が「地域の活性化」や「地域産業振興」を(表現はさまざまですが)力説されているのが興味深いところです。

 尾鷲市に限らず、「地方」では、行政も政治家も、そして住民も、「地域の活性化」「地場産業の振興」をよく唱えますが、これらの争点は、高度成長が終わりにさしかかり、全国的に過疎化が問題となった昭和40年代後半から、誰も彼もが一貫して唱え続けていることです。
 現代の社会問題は構造的に複雑で、一朝一夕に解決するものはむしろ少ないのはよく理解できるとしても、これだけ成果のなかった「掛け声」も珍しいのではないかと思います。

 その理由は、実ははっきりしています。
 地域が目指すべき「活性化」とか「振興」の定義づけが、当事者によって意味がバラバラでベクトルが集約されなかったということです。これ以外に原因はありません。

 地域の活性化とは何でしょうか。人口の減少が問題なら、よその地域からの移住や外国からの移民を増やせばよい。真剣にその方向で検討すればよいのです。
 しかし、自分たちのコミュニティに「よそ者」が入ってくることは住民自身が心の中で実は歓迎していない。旧来の秩序を乱されることは極端に嫌う。

 本当なら自分の子供たちに戻ってきてほしいが、産業がなく、働く場所がないので戻ってこられない、という話もよく聞きます。工場を誘致してくるなどこのご時勢、日本のほとんどの「地方」では夢物語なので、唯一現実的な方策は自分たちでビジネスを「起業」することしかありません。しかし、その意欲はありません。ノウハウも学びません。
 
 三重県でも職員が人事異動により、いわばルーチンとして一定期間、過疎地で地域振興に従事させられるのですが、いくら意欲に燃えて赴任しても、活性化や振興という言葉だけが踊って、住民自身も本音では真剣に考えていない姿を見、燃え尽きて帰任していく、ということが繰り返されています。

 地域振興はもちろん大事。
 活性化も大事。

 しかし、地域振興とは何か、活性化とはどう変化することなのかが大多数の住民のハラに落ちなければ、またまた看板の架け替えに終わる可能性はきわめて大きいのではないでしょうか。

 以下は余談です。
 紀南新聞のウェブサイトに、「三重の食と農の活力向上目指す 条例制定に向け説明会」という記事が載っています。(7月24日付け)
 笑ってしまうのは、この説明会での三重県庁担当者の説明が、まさに味噌もクソも一緒にした「活性化論」であるということです。むしろ会場で参加者から出たという「(農家が)儲からないから後継者がいない」などの疑問のほうがよほど的を射ています。
 解決の核心は、いきなり個別の具体論に入ることでなく、今までのボロボロだった農政の反省であり、その上で新たにベクトルを集約化することだからです。

 財政状況がますます厳しさを増し、今まで何の役にも立たず「ノー政」と揶揄されてきた農林水産行政は存在意義そのものが問われるようになってきています。成果もなく当然に淘汰されるべき政策の予算と人員(農業技師と呼ばれる県庁内の職能集団)は、ここで何とか巻き返さなければ自分たちの地位が危ないので、いわば「起死回生」を狙って条例を制定しようなどと画策していることには十分な注意が必要です。