2010年12月31日金曜日

Greatest Love Of All

今年もいよいよあと残りわずかになりました。
 この年になると、何か大きな出来事とか、成功したこと、やり遂げたことよりも、自分も含め、周りの人が病気もせず、事故もなく、無事に一年を過ごせたことのありがたさを強く感じるようになります。

 すべての中で最も偉大な愛は、自分への愛だ

 という、この曲のメッセージをかみしめたいと思います。

 自分を愛することは、社会への無関心だとか、広い世界から目をそらした自己完結だということでは決してなく、まずは人間にとって一番大切な第一歩なのですから。



 ホイットニー・ヒューストンの熱唱で大ヒットしましたが、原曲はジョージ・ベンソンによるもので、モハメド・アリ(日本ではアントニオ猪木と異業種格闘戦を行ったヘビー級ボクサーとしてのほうが名が知られていますが、黒人差別と戦い世界チャンピオンとなったこの人の不屈の人生は、学ぶべきものが多くあります。)に捧げた曲だそうです。

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 今年もご愛読いただきありがとうございました。
 よいお年をお迎えください。

2010年12月30日木曜日

産業「空洞化」はすでに完了済みである

 今日、近鉄名古屋線の霞ヶ浦駅近くの踏み切りで起こった事故で亡くなった方のお一人は、中国から働きに来ていた方のようです。(霞ヶ浦駅は、三重県発で日本を代表するコミュニティビジネスである生活バス四日市の発着地であり、はんわしも取材で何回か下車したことがあり、このあたりが案外通行量が多いことはよく知っています。ご冥福をお祈りしたいと思います。)
 先日は亀山市で起こった交通事故でもフィリピン人労働者が多数犠牲になりました。この二つの例から軽々には断じられないかもしれませんが、三重県内の製造業、特に大量生産型、労働集約型の工場現場を支えているのはこのような外国人労働者であり、その存在は無視しえないほど大きなものになっています。
 また、県内でも南勢志摩地域や東紀州地域の重要産業である漁業や水産加工業の現場でも、若手労働者の多数は外国からの研修生などであることを考え合わせると、今流行の「国内産業空洞化論」は現在進行形なのでなく、すでに過去完了形になっていることがわかります。そして、それは日本にとって悪いことでも、マイナスでもありません。「空洞化」というコトバのネガティブなイメージに引きずられてはいけません。

 国内産業空洞化論は、為替相場が円高になると必ず出てくる議論なのですが、これは本質的な原因ではないでしょう。
 経済がグローバル化しているのは、為替や金融のマーケットだけでなく、労働市場においても同じです。賃金をはじめ土地代、光熱水費、公租公課などの生産コストが高い日本では、いくら企業が努力して生産性を向上させても国際競争では圧倒的に不利な状況には変わりがありません。
 当面、国内のコストが下がらないのなら、安い労働力や生産コストを求めて製造業が海外に出て行くのはある意味必然です。
 それと同時に、労働者は高い賃金を求めて移動してくる(時には国境も越えて!)ので、両者の供給と需要が均衡する交点に達するまで、工場は海外に移転し続け、労働力は国内に入り続けることになります。

 繰り返しますが、これは円高だけのせいではありません。今年一年で1割も円相場が上がったということは、海外の用地や設備を一割引で買えることと同じなので、海外進出を考えていた企業にとっては、むしろ今がお買い得なのであり、進出の決断を早めた要素はあったかもしれませんが。

 逆に、もし仮に、今のような経済状況で円安になれば、海外の資本家や経営者は、高い加工技術を持ちながら利益率が低く、株価も低いような日本の製造業企業をどんどんと片っ端から買収してしまうことでしょう。

 以上を考えると、日本の進むべき道は明らかなように思えます。
 製造業は多品種少量生産型のような高付加価値な産業に進化すること。ただしそのような製造業に雇用吸収力はほとんどないので、雇用の創造はサービス業が担うことになり、規制改革による自由化や、イノベーション(ビジネスモデルの革新)、そしてサービス産業に必要な人材育成が産業政策の中心になるべきこと。
 大きな経済成長は望めなくなるので、低成長を前提とした社会システム(政治、行政、財政、社会保障、などなど)に変わらざるを得ないこと。

 気が付くともう2010年も終わろうとしています。10年後の2020年には、いや、ひょっとすると来年あたりにも、産業空洞化論には終止符が打たれるような社会や産業の大変革が始まるのかもしれません。

2010年12月29日水曜日

中小企業応援全国フォーラムで「種まき権兵衛ラーメン」が



 12月25日に書いた中小企業応援センターの記事にコメントをいただいています。真摯なご意見なのであらためて書く機会がないかなーと思っていたところ、ネタを見つけたので。

 12月16日、東京の銀座ブロッサム中央会館において「中小企業応援全国フォーラム」が開催されました。
 残念ながらはんわしは出席していませんが、このフォーラムでは、全国84の中小企業応援センターのうち、6機関を「優秀中小企業支援機関」として選定するとともに、中小企業応援センターのコーディネーターが支援した全国約750事例のうち、5事例を「優秀支援事例」として選定し、中小企業庁長官表彰を行ったとのことです。
 この5つの優秀支援事例の一つが、我が三重県の、三重県商工会連合会中小企業応援センターの支援事例です。

 三重県の商工会連合会は、県内を5つのブロックに分けて単会の連合組織を作っている独特のスタイルですが、このうち東紀州商工会広域連合が中小企業応援センター事業を活用して「種まき権兵衛ラーメン」の商品化(特産品化)を支援しました。

 種まき権兵衛ラーメンの製造元である有限会社モリタは、紀北町内にある製麺業者で、以前から自社ブランドの生ラーメンとやきそば用生めんを製造し、地元のスーパーなどに卸していました。

 しかし、紀北町がある三重県東紀州地域は過疎化・高齢化が進み、生めんといったような日配商品は先行きが不透明な面があります。そこで、世界遺産熊野古道などの観光客をターゲットとした土産物として新たにラーメンを商品化すべく、めんやスープの改良、ネーミング、パッケージなどを新たにして権兵衛ラーメンが生まれました。
 紀北町商工会広域連合(中小企業応援センター)は、商品コンセプトから試作開発、プロモーションまでを伊藤コーディネーターが中心となって強力に支援し、現在、このラーメンは道の駅マンボウ(三重県内で最も集客力の高い道の駅)での人気商品になっています。

 種まき権兵衛ラーメンについては以前もブログに書いたのでこちらをご覧ください。

 さて、この全国フォーラムの状況は、東紀州商工会広域連合のブログ(日々あれこれ)には詳しく書かれています。これは当事者なので、ある意味で当然かと思います。
 しかし、全国フォーラムの主催者である中小企業基盤整備機構のホームページには、12月29日時点で、このフォーラムの記事そのものがありません。

 感心したのですが、北海道経済産業局は、同じように北海道内の応援センターの支援事例が選定対象になったようで、ちゃんとホームページに記事が掲載されています。(こちら
 しかし、中部経済産業局は(やはりというべきか!)ざっと見る限り、ホームページへの掲載もないようです。

 中小企業への支援は、補助金とか低利融資とか、保証とか、そういうものももちろん大事ですが、本質的に重要なのは、情報提供、マッチング(異業種、同業種、産学連携など)、そして企業とともに伴走するハンズオン支援だと思います。
 その意味で、マンパワーこそが決定的なキーなのであり、その活動は基本的に地味な試行錯誤の積み重ねです。(だからこそ、中小企業がリリースした新商品がヒットすることは支援者にとっても何より嬉しいことなのです。)
 このような地味な仕事を、国が中小企業応援センターとして支援する。
 これは大事なことですし、ありがたいことです。

 しかし、同時に、中部経済産業局のようなところにとっては、そんなことはどうでもいいことのようです。(あるいは中小企業基盤整備機構もそうなのでしょうが)
 小規模事業者の支援になど無関心であることは、全国5例の貴重な表彰の一つが自分の管内の応援センターから出ているにもかかわらず、無視されていることからも明らかです(少なくとも、わざわざホームページに掲載してまで顕彰するべき情報ではないと思っているから事実として広報していないわけでしょうし。)
 率直に思いますが、このような人たちと一緒に、本当に中小企業者、なかんずく小規模事業者の支援などできるのでしょうか。(はんわしが誤解していたらもちろん訂正します。)
 解決策ははっきりしています。国の出先機関は解体すること。商工会議所、商工会などは実力をつけ、中小企業や地域からの信頼を得るに足る支援機関になることです。

2010年12月28日火曜日

アップル特需



 今日の日経新聞が、営業赤字と減産が続きまさに瀕死の状態だった液晶パネル各メーカーが「アップル特需」で息を吹き返した、とうまい表現を使って報じています。
 iPhoneやiPadには高精密な液晶パネルが必要で、日立や東芝といったメーカーの持つ技術はのどから手が出るほど欲しいものだそうです。一時はメーカー同士の統廃合も進んでいた事態は、ひとまず回避されることになるようです。

 考えてみれば、3年前、スマートフォンは開発されたばかりでニュースは流れてきていましたが、日本の携帯会社は携帯独自のコンテンツが使えなくなるスマートフォンは日本の消費者のニーズに合わないと判断し、主力商品としての扱いはされませんでした。
 iPhoneも本命だったNTTドコモでなく、ソフトバンクによって日本にもたらされ、スマートフォン競争にドコモが大きく出遅れた原因となりました。
 そして1年前、iPadの登場がニュースになっていましたが、ここでもiPadのようなタブレット型端末と呼ばれる商品は、携帯と小型パソコンの中間にあって使い勝手が悪く、電子書籍も著作権の問題などでコンテンツが充実しておらず普及は厳しいといわれていました。
 しかし、今、確かに爆発的な普及とは行きませんが、iPadは一定の浸透を見せており、日本のメーカーも続々と類似の後発品で参入して来ています。

 あらためて考えるべきなのは、スマートフォンも、タブレット型端末も、決して政府の「成長戦略」によって育成されてきた商品ではないということです。これはアップルの(もっと言えば、スティーブ・ジョブズの)卓越したアイデアと、そして同社のファブレス戦略・・・自社はイノベーティブな商品の開発と設計、プロモーションを行い、工場は持たず、生産はすべて他のメーカーに委託するやり方・・・の勝利であって、純然たる企業努力であるということです。

 グリーンイノベーションだのライフイノベーションだの、政府が特定の産業分野の特定の業種を成長させることなど社会主義国でもない限り不可能ですし、ましてや今のように人材も資金も世界中を動き回っている環境では、ただ日本だけが成長戦略によって世界に対して優位性を保つことなど不可能なのではないでしょうか。
 政治的な意味合いで、成長戦略が必要であるというなら、それは規制改革や税制改革のようにおカネをかけず、知恵を出す方法で行うことが必要でしょう。1100億円もばら撒いて、本当にもくろみどおりことが進むのでしょうか・・・

2010年12月27日月曜日

ゆるきゃらと地域広報戦略



 中日新聞などが、三重県紀北町の観光協会が公募・決定していた紀北町のゆるきゃらの名前をきーほくんと名づけ、先日、町内で開催されたイベントでお披露目されたことを報じています。(12月27日付け リンクはこちら

 ゆるきゃらは、もう百花繚乱どころか千花繚乱くらい、全国各地で噴出し、飽和し、臨界点に達しています。

 ゆるきゃらで全国に打って出るほどのPR効果を目指すことは、圧倒的な差別化要因がなければ(キャラクターが死ぬほど可愛いとか、超有名人がデザインしたとか、全身にダイヤモンドをまとっているとか・・・がなければ)もはや難しいことのように思えます。
 もう、ゆるきゃらなど、地元がやりたいからやっている、何となくバスに乗り遅れたくないという気持ちがある、という以外に合理的な理由はないように思いますが、それはさておき。

 驚くべきことに、紀北町をPRするために作ったというこの、きーほくんなるキャラクターの名前のお披露目も、一部新聞では報道され、一部ブログでは記事になっていますが、紀北町役場のホームページにも、いや、それどころか生みの親であるはずの紀北町観光協会のサイトにも「マスコットキャラクターが決まった」というほかに情報はありません。(イラストは観光協会のサイトから転載しました。)
 記念すべきデビューの場となった三重きいながしま港市のサイトにも、きーほくんは一切、まったく出てこないのです。

 もう繰り返すのもうんざりするのですが、いったい、この戦略性のカケラもない地元PRというのは何なのでしょうか。
 何の意味があって、何を考えて、プレスリリースと、ホームページ戦略を切り離しているのでしょうか?
 いや、そもそも、これらをコラボしてPRの相乗効果を高めようと、一度でも真剣に考えたのでしょうか。
 はんわしには、そのようには全く思えないのですが。

 きーほくんに罪はありません。(アタマのかぶりものもよく見るとマンボウだったりして、なかなかカワイイのですが。)
 しかし、このようないい加減な「情報発信戦略」に紀北町民以外の住民が支払った税金が一円たりとも使われていないことを願うばかりです。

2010年12月26日日曜日

科学は誰のものか?・・・統治からガバナンスへの流れ



 2010年は、後世からは大変な猛暑の年として記憶されることでしょうが、はんわしの個人的な感想で言えば、「科学技術への関心が高まった」・・・事業仕分け、日本が絶対的に優位を保っていると信じられてきた、科学技術を生かした先端的な工業製品(携帯電話端末、薄型テレビ、電気自動車など)の苦戦、ノーベル賞、「はやぶさ」のような華々しい成果など、科学技術への不安と期待が入り混じった・・・一年だったような気がします。
 今年は例年になく、科学技術とは何か、いったい何の役に立つのか、といったテーマの本の出版も多かったような気がします。

 この本 科学は誰のものか 社会の側から問い直す(平川秀幸著 NHK出版生活人新書)もそういった一冊です。

 かつては明るい未来を約束していたはずの科学技術は、今や、遺伝子治療、原子力発電、環境破壊など、その発展によって逆に新たにもたらされることとなってしまった混乱や不安、困難、矛盾が次々と生んでいます。
 著者はこれを「科学なしでは解けないが、科学だけでは解けない問題」とうまく表現します。

 科学者にとって「科学は万能ではない」ことは自明ですが、世の権力は、科学技術はある種の価値中立的な真理として、未知の技術に不安を抱く無知で無学な大衆を上から教え導くという態度を取り続けてきました。 
 しかしもはやこのような「上から目線」によって国民の科学技術への理解を図るのは限界があると著者は主張します。科学技術と社会の関係は「統治からガバナンスへ」変わっていくことが必要だと言うのです。
 「統治」とは権力者、すなわち政府による上からのコントロールであるのに対し、「ガバナンス」とは、政府も社会における多様なセクターの一つであり、このほかに、市民、企業、NPOなどのさまざまなセクターが対等の関係で水平的につながりながら、情報と知恵を共有して物事に対処していくことです。科学技術のガバナンスとして、科学者と市民とのアクセスも、政府や科学者からの一方通行ではなく、コンセンサス会議、市民陪審、シナリオワークショップなどの参加型テクノロジーアセスメントを提案します。
 これは、科学技術についてはもちろん、たとえば、地域産業振興や、中小企業振興など当事者や専門家のみで進められがちな政策分野全般にとって重要なことだと思います。

 ところで、この本の中で、はんわしが最も強い印象を受けたのは、著者が提起する「一人ひとりの心がけで世の中は変わるか?」ということです。

 往々にして、一般市民は、自分たちにとって大切である環境問題や、貧困問題など大きな社会問題の解決について、「この問題は市民一人ひとりが真剣に考え、向かい合っていかなくてはいけない」という安易な結論に流されがちです。
 しかし、本当に一人ひとりが心がけて行動すれば解決するのでしょうか。
 そもそもそんなことが可能なのでしょうか?

 著者の平川さんは、
・科学技術についても、「科学では答えられない問題、答えてはいけない問題」への答えを出すのは「自分たち自身」であるということが、現代の科学の実像であり、自分たちの力がその舵取りにかかわることが必要とされる一番の理由である。

・しかし、その時に問題となるのは、どのようにかかわればいいかと言うこと。何かしたい、何かしなくちゃと思うけれど、何をしたらいいのか、何ができるのか、次の一歩がなかなか踏み出せない。

・医薬品の南北問題や欧州の遺伝仕組み代え作物の例では、状況を変えたのは科学や政治の変化だけでなくそれを促した環境NGOや農家団体、消費者世論と言う市民社会のパワーの台頭があった。

・しかし市民活動と縁の薄い日本人から見ると、どこか手の届かない遠い世界の話のように思える。実際、日本人は何か社会状況を変えるとき「一人ひとりの心がけが大事」という結論を言いやすい。

・ところが、欧米ではそうでなく、一人ひとりのレベルを超えて、地域で、国レベルで、そして国際的に、変化を起こすことを手伝いましょう。という呼びかけがなされる。

 と書きます。
 実例として、元アメリカ副大統領のゴア氏が提唱した「不都合な真実」でも、日本公開版では、日本以外の地域での公開版に含まれていたゴア氏の重要なメッセージの一つが、明らかに、何らかの意図によって削除されていた、という非常に興味深い指摘をします。
 
 詳しくはぜひ本書をお読みください。大変に奥深い思慮を呼び覚ましてくれる一冊です。

2010年12月25日土曜日

やっぱり復活した「中小企業応援センター」の後継事業



 以前このブログでも書いた、先般の事業仕分けによって事業廃止と判定された中小企業応援センター事業(経営力向上・事業承継等先進的支援体制構築事業)ですが、昨日公表された経済産業省の平成23年度当初予算案によると、「中小企業支援ネットワーク強化事業」なる名称の事業としてまたまた復活しています。

 ジョブカード事業をはじめ、事業仕分けでは廃止や縮小判定となった事業が、後に省庁による折衝で復活する事業は続出しており、「中小企業支援ネットワーク強化事業」も概算要求額が39億6千万円と、廃止前の中小企業応援センター事業の予算額40億2千万円と規模的にもほぼ同じという、露骨なゾンビ事業だと言えそうです。

 中小企業応援センター事業についておさらいすると、
1.事業の目的は、
 中小企業の日常的な経営支援に取り組む支援機関等(はんわし注;商工会議所とか商工会などのことを指します)の経営支援能力を補完・強化するため、その後方支援機関として中小企業応援支援センターを整備し、中小企業の高度・専門的な課題に対して、これら支援機関を通じた支援等を行うこと。
2.事業の内容は、
 中小企業の支援についての専門的な知見を有している者をコーディネーターとして中小企業応援センターに配置し、高度・専門的な課題に対応するため、
 (1) 中小企業支援機関への専門家派遣
 (2) ビジネスセミナー・ビジネスマッチングの開催
 (3) その他中小企業からの相談への対応
を行うことです。
 
 現在、中小企業応援センターは全国に84ヶ所設立されており、三重県のように県内に2つの応援センターがある都道府県も多くあります。

 事業仕分けにおいては
・商工会議所において行っている事業との大きな重複が認められる。
・商工会議所、商工会など既に中小企業をサポートする窓口がある。
・全国的にまんべんなく事業を行うことに意義はない。商工会議所、財団(はんわし注;●●県中小企業支援センターといったたぐいの外郭団体のこと)、地方銀行、信用組合に対する支援になっているのではないのか。
 など、しごくもっともな指摘がありました。また、
・もともと地銀、税理士、商工会議所の本業にあたるところで、政府は地域力連携拠点を作れば十分で、専門家の費用は受益者が払うべきである。
 という指摘もありました。
 これは、中小企業応援センターによる「中小企業支援機関への専門家派遣」が無料で行われていることを指しています。(ややこしいのですが、中小企業応援センターは中小企業と直接相対するのでなく、間に商工会議所などを通しているので、専門家の無料派遣も商工会議所などを経由して行うことになっています。)

 このように事業仕分けではほぼ全否定された中小企業応援センターですが、23年度予定の「中小企業支援ネットワーク強化事業」とやらも、事業の内容は、
・中小企業が抱える経営課題への支援体制を強化するため、経済産業局が中心となって専門家を派遣すること等により、中小企業の経営相談に対応する各地域の支援機関の連携の強化、支援能力の向上を図る。
 というものですので、若干の変更点はあるものの、ほぼ前例を踏襲した、つまりは事業仕分けの指摘を軽視ないし無視したスキームと言えるでしょう。さすが官僚主導国家ニッポンです。
 
 ただ、このようなゾンビが現れるのは、たしかに無料の専門家派遣が、経営の厳しい中小企業にとってありがたいものであるという事実があるからです。実際に、応援センターを利用した中小企業や、間に入った商工会議所の経営指導員からは感謝の声を聞きますし、専門家として派遣される側の中小企業診断士や経営コンサルタントからも、中小企業は負担がないので、自分たちの出番が多くなって(つまり、応援センターによってコンサルの仕事が増えて)、ありがたいという声も聞きます。

 しかし、これは中小企業を甘やかすことにならないでしょうか。
 商工会議所は会員企業や地元の企業なら原則無料でサービスが受けられるはずで、経営指導員が高度専門的な相談に対応できるよう資質を高めるのは当然のことです。
 専門家も、タダだから派遣を受けるような中小企業に行って、果たして真剣に話を聞いてもらっているのでしょうか。身銭を切って聞く価値もない、そんな安売り投売りのコンサルタント扱いで本当に満足なのでしょうか?

2010年12月24日金曜日

電動アシスト自転車はなかなか良い



 これが普通なのか、普通でないのかはよくわかりませんが、はんわし、生まれて初めて電動アシスト付き自転車というものに乗りました
 津市内への出張に片道15分ほどの距離を走ったのですが、登り坂も本当にスイスイと走れるのでびっくりしました。

 あと、このトシになると辛くなる、いったん赤信号で停まって、青になったからスタートにグイッと漕ぎ出す、あの最初の一踏みもサクッと軽かったのでありがたかったです。
 今日も津市は風が強くて寒かったのですが、ちょっとしたサイクリング気分でした。

 電動自転車って年配の人が乗るものかと思っていましたが、バッテリーの重量があるせいか、普通の自転車よりはかなりずっしりしているので取り扱いに力が必要です。むしろ中年向きかもしれません。

 職場の自転車はママチャリ型ですが、パパチャリ型のもうちょっとスマートなデザインのものがあったら買ってしまうかも・・・しれない。

 今年はエコカー補助金だのエコカー減税だのが盛んでしたが、冷静に考えれば当然なように、自動車はいくら「エコ」だったとしてもガソリンは消費しますし、排気ガスは出ます。そもそも車を工場で作るのに相当のエネルギーを使っているので、本質的にエコな乗り物であるはずがありません。

 もしもエコカー補助が本当に「エコ」を目的にしているなら(はんわしは地球温暖化も、その犯人がCO2であるという説のどちらにも懐疑的ですが)、大型車でなく軽自動車だけを補助すべきですし、もっと言えば、自動車でなく自転車に補助すべきだったのです。

2010年12月23日木曜日

さかなクンで思い出した尾鷲漁港のアカメ



 今日、天皇陛下が、田沢湖で70年ぶりに生存が確認されたというクニマスのことをコメントされていて、そのお言葉の中に「さかなクンの活躍」なんかが出てきたりして驚いたはんわしでした。(毎日新聞のwebに全文が載っています)

 それに比べるとほぼ100分の一くらいの小さなスケールの話ではありますが、ちょうど一週間前の12月17日に三重県尾鷲市の尾鷲漁港にアカメという魚が水揚げされたことがちょっとしたニュース(ローカルな)になりました。

 アカメは、名前の通り目が赤いことが特長のスズキ目(もく)の大型肉食魚で、体長が1m近くになることもあるそうです。
 主に西日本の太平洋沿岸に生息しており、高知県あたりではよく見つかるそうですが、尾鷲で水揚げされたのは10年ぶりくらいらしく、何しろ三重県で見つかるのは非常に珍しいことだそうです。

 このアカメですが、尾鷲市長であり、尾鷲漁港を毎朝ウオッチして「三日に一魚」というブログを書いている岩田昭人さんが購入したという後日談を中日新聞が報じています。(12月19日付け リンクはこちら

 もちろん、岩田市長のブログにもこのことは書かれています。この写真は三日に一魚から転載させていただきました。

 天皇陛下のお言葉で思い出した小ネタでした。


 

2010年12月22日水曜日

大学で学ぶ意味



 結論から言うと、大学での勉強は社会に出てからも非常に役に立ちます。
 大学で学ぶことは役立たない、という説を唱える人もいますが、その人は自分が学生の頃あまり勉強していなくて、学ぶことの極限というか、ギリギリまで頭を絞って絞って絞りぬいた経験がないので、自分の狭い常識の中で軽々しくそう言っているだけです。学生は真に受けてはいけません。

 もう一つ、学問の限界と勉強という行為の限界を見間違えている人もよくそういう説を唱えています。
 例えば経済学であれば、デフレはいいことか悪いことか、円高はいいことか悪いことか、大規模な財政出動はどうか、経済学者によって意見が正反対に分かれます。
 これは経済学という社会科学の限界であって、答えが出ないから経済学という学問は無意味で、したがって経済学を勉強することも無益だ、と決め付けてはいけません。

 では、大学だけで勉強していて良いか、というと(ややこしいのですが)これはそうではありません。
 研究者になるとか、資格取得や就職だけが目的ならそのような学び方でもいいのでしょうが、知識をより深く身に着けるのは体で覚えること、つまり、体験と学習をセットにすることが有効なのです。
 これは、自転車の乗り方をいくら本で読んでも、何度か転んでバランスをカラダで体得しないと現実には乗れない、と喩えたらいいでしょうか。

 ふた昔前、はんわしが学生の頃には、実体験の方法はアルバイトくらいしかありませんでした。そこで嫌な上司とか、陰気な同僚とか、文句ばっかり言ってくる馬鹿なお客とかをあしらっているうちに社会の厳しさとか、学問の大切さに気づく(トラブルになってはじめて、民法や刑法を勉強しておいてよかった、とよく思った)しかなかったのです。
 ただし、それは能率の悪い実践方法でした。運よく周りにいい大人がいるとか、よほど自分が前向きでしっかりしているかでないと学問と目先のバイト労働が結びつくことは難しかったのです。

 しかし、今は違います。就職氷河期の再来が言われていて、今の学生には同情しますが、学問と社会の結びつき、実践的な体得にとって、今はツールがしっかりと用意され、大学も、世の中も、学生が社会に出ることを応援しているからです。

 その一つは間違いなく、インターンシップです。アルバイトではなく、経営者が学生と伴走してくれ、インターンを全般的にサポートしてくれるチューター(コーディネーター)もいてくれます。
 あとは、学生本人のヤル気だけです。
 お金は社会人になればいつでも稼げるのですから、学べる環境が身近にあり(つまり現役の学生のうちに)、しかも時間はアホほどあり余っているうちに、一度体験してみるは決して悪いことではありません。

 さて、三重県東紀州地域(紀伊半島南東部にある三重県紀北町、尾鷲市、熊野市、御浜町、紀宝町の2市3町の地域)は、過疎化、高齢化が進み、地域の活性化が急務になっています。
 地域の活性化とは、スローガンとか精神論ではなく、住民がその地で豊かに生活し続けるようにできることです。これには経済的な活性化、すなわちカネが稼げる地域にすることが不可欠です。

 では、どうやったら東紀州地域でカネが稼げるようになるのか。
 地域活性化、地域おこし、過疎問題、などなどを勉強している学生は多いことでしょう。
 地域経済、中小企業論を学んでいる学生も多いはずです。
 その知識を応用できる機会があるのです。ここであなたの学びが真価を発揮するのです。社会の役に立つのです。
 それが、岐阜に拠点を置くNPO法人G-netの「東紀州地域留学」です。

 大学で学ぶ意味はなんだろう・・・
 そのように真面目に悩んでいる学生の皆さんにこそ、ぜひご参加いただきたいと思います。

 NPO法人 G-net 東紀州魅力発信地域留学のご案内(リンクはこちら

2010年12月21日火曜日

伊勢神宮の参宮客が過去最大の860万人に



 今年の伊勢神宮の参拝客が12月19日現在で、統計を取り始めた明治29年以降で過去最大の860万人を記録したそうです。

 高速道路の無料化実験が始まった直後の夏頃から、「今年は例年になく参宮客が非常に多い」という感想は関係者からよく耳にしました。早くも秋頃には、今年は過去最大の900万人を越えるのではないか、という報道もされていました。

 パワースポットブームだというのも確かなのでしょうし、若い女性の参宮客が増えている要因はそこにあるのでしょうが、パワースポット自体もブームはすでに数年前からであり、最大の増加原因はやはり伊勢自動車道(津インター以南の区間)の無料化だと考えざるを得ません。

 実際に、外宮と内宮を結んで伊勢市内を縦貫している県道(通称御木本道路)の近くに住んでいるはんわしにとっては、夏以降、土・日・祝日は伊勢西インターから内宮までの約2kmほどの区間の渋滞は恒常的になっていますし、カーナビの発達のせいか細い裏道でも他府県ナンバーの車をよく見かけるようになりました。

 交通渋滞は大きな社会的損失であって、環境にも悪いし、車が進まないドライバーや、家の近くの通行すらままならない地元住民の「イライラの総和」はすさまじい負のエネルギーになると思います。
 しかし、仮に参宮客の増加が土産物代や食事代、宿泊料など地元に経済効果を生むことが何らかの形で実証できれば、これは伊勢にとってたいへんに成功した実験結果なのではないでしょうか。
 その意味でも無料化実験はやりっぱなしでなく、ぜひ何らかの科学的な方法で成果を検証してほしいと思います。

 ところで、高速道路無料化やパワースポットブームは新規の参宮客の開拓だったわけですが、900万人近い参宮客の中にはリピーターも少なからず含まれているでしょう。多数のリピーターが生まれたのはなぜだったのでしょうか。

 それは、もてなしの心とか、細かい接客ノウハウの蓄積が大きな要因だったのではないかという気がします。

 伊勢にはテーマパークとしてのおはらい町、おかげ横丁といった質の高い集客装置があります。しかし、そのほかにも地元の有志が、外宮でのゆかたで千人参りとか、物産展である「伊勢楽市」の定期開催、伊勢市駅前での観光案内ボランティアなど、さまざまなイベントやサービスに次々と取り組んでいます。
 もちろん、これらは完全な無料奉仕というわけでなく、経済的なリターンを期待して取り組むわけですが、それにしても参宮客が全国から押し寄せる古来からの一大観光地であった伊勢の町に、そのようなもてなし精神とか、接客ノウハウが脈々と続いているのは確かなのではないかと思います。非常に地味な取り組みではありますが、このようなものがジワジワとリピーターづくりに貢献した、という気がします。

 このようなノウハウは、観光地としての「強み」そのものですし、これから国内の観光・旅行市場が縮小していく中で、海外からの誘客を目指す意味でも、他の国際的な観光地との差別化をはかっていく意味でも、重要なキーなのではないかと思います。

2010年12月20日月曜日

Twitterを活用したマーケティングセミナー



 はんわしもツイッターのアカウントは一応持っているのですが、フォローするのが大変で、現実には全く使っていません。一時、オバマ大統領もツイートしているということが話題になりましたが、あれは時間の使い方を自分でコントロールできる政治家とか経営者とか自営業者だからできるのであって、サラリーマンのようにデスクに拘束されている人間には普通ムリです。

 というわけで、ツイッター自体に縁が薄いはんわしですが、時々社会現象として垣間見られる、フォローワーによるものすごく早い情報伝達には大きな存在感を感じずにはおれません。これをビジネスに応用するアイデアもさまざまなものが次々と現れています。

 マーケティングはその典型的な一つで、TwitterやFacebookなどのソーシャルネットを活用したマーケティングは最近マスコミにもよく登場します。
 大手企業もテレビや雑誌といった従来のマス広告を減らし、ソーシャルネットに着目したマーケティングに切り替える動きが出ていますが、いうまでもなく、これは広告費といった資本力よりも、アイデアや行動力が強みを発揮できる世界なので、中小企業にとってはむしろチャンスです。

 このたび、財団法人三重県産業支援センターでは、「Twitterを活用したマーケティングセミナー」を実施します。
 同センターの告知によると
“特に三重県内の事業者ではソーシャルネットへの取り組みが早く、全国から注目を集めています。”とのことなので、三重県で開催されることには意義があるのかもしれません。

・対 象  中小企業・小規模事業者の経営者、後継者、管理職等
・開催日時 平成23年1月18日(火) 13:30~16:40
・場 所  津市 三重県総合文化センター 生涯学習棟4F 中研修室
・受講料  無料
・定 員  50名(先着順)
・内 容
 13:30~13:40 開会挨拶
 13:40~14:30 Twitter、Facebookを活用したマーケティング
             (有)ザ・ワン 専務取締役 横地 宣重氏
 14:35~15:25 宿泊、観光業に活かすソーシャルネット
             (有)ビジネスホテルビーエル 代表 佐野 康治氏
 15:35~16:25 ソーシャルネットを活かした地域おこし
             (有)クニツサイクル 代表 林 正佳氏
 16:25~16:40 質疑応答

 講師のプロフィール詳細はこちらを(三重県産業支援センターホームページ

 何だかエキサイティングな感じがします。ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

 もう一つ付けたし。
 行政において政策の決定権を持っている50歳代の幹部職員は、インターネットですら怪しいのに、ブログだのツイッターだのになると完全にちんぷんかんぷんで、これがどれほど革命的なビジネスツールかを理解できていません。重要性を理解させるには、定員50名に限りなく近い、できればそれ以上の多数の参加者が押し寄せてくれることが必要です。
 三重県は、ソフトピアジャパンなどが中心となりスマートフォンのアプリ開発が新産業として勃興している岐阜県などに比べ、ICT産業振興政策が完全に出遅れています。
 その誤りを正し、遅れを挽回するためにもたくさんのICT関係者の御加勢(ご参加)をいただけると幸いです。

2010年12月19日日曜日

年末恒例きいながしま港市



 朝、下り方面の紀勢自動車道がえらく混雑していたので、まさかとは思うけど、これ全部、紀北町に向かっているのじゃないよなぁ、と願いつつ、紀伊長島漁港に到着。
 ここでは昨日から12月28日までの11日間、年末きいながしま港市が開催されています。


 おせち料理などに欠かせない、ブリ、伊勢えび、マグロなどの鮮魚類や、アジ、サバ、サンマ、タチウオなど、さまざまな魚のひもの、東紀州の郷土料理であるサンマ寿司や押し寿司などの露店が所狭しと立ち並んでいます。値段も間違いなく年末大特価であり、かなりお得な買い物ができること請け合いです。
 地元紀伊長島の住人はもちろん、県外からの多くの買い物客が押し寄せていました。


 目玉だったのは、港に入ってきた漁船の水槽から、買い物客の目の前でクレーンで水揚げしたばかりのブリを、その場で即売するというもの。飛ぶように売れていきました。


 もうひとつ、おまけと言うか何と言うかですが、たまたまマンボウが運悪くこの漁船の網にかかってしまったらしく、水槽から引き上げられたマンボウの解体即売会が急遽始まりました。
 威勢のいいお兄ちゃんが出刃でどんどんと捌いていきます。
 いやしくもマンボウは紀北町の魚、町魚なのですが、そのわりに紀北町民はこの愛らしい魚を保護するとかでなく、解体して食ってしまうのです! 


 会場の一角で、紀北町のご当地バーガーであるつみなアジ・バーガーを発見。購入してみました。
 中身はアジ(魚の)のミンチカツで、ハンバーガーでもなく、ミンチカツバーガーでもない、白身魚のあっさりした(と言うか、パサッとした)食感です。決しておいしくないわけではありませんが、これは正直言って好き嫌いが分かれると思います。ご当地バーガーハンターの皆さんには欠かせない一品だと思いますが。


 昨年も同じようなことを書いた気がしますが、紀北町紀伊長島地区で最大の観光スポットである道の駅マンボウには、このきいながしま港市のアナウンスや看板がありません(少なくとも誰もが目に付く場所には)。
 事前に港市の情報を知っていればいいのでしょうが、たまたま国道42号線で紀北町を通りがかった人は、漁港の入り口あたりにノボリとか看板があるなあ、と気づいても、すぐにさっと入って行けるという雰囲気ではありません。会場の紀伊長島漁港も国道42号線から1kmほど市街地に入ったところなので国道から会場が見通せるわけでもなく、何の予備知識もないと、港市って果たしてどんなイベントなのかがわかりません。これはもう少し何とかしたほうがいいのではないでしょうか。

2010年12月18日土曜日

シャープ亀山工場、スマートフォン向け液晶製造ラインを新設

マニアックな内容なので地方行政関係者以外の方は読み飛ばしてください

 各紙が報じていますが、シャープが亀山第1工場に、アップルのiPhone用などの中小型液晶パネルの生産設備を新設するそうです。投資額は1000億円で、その大半はアップル社が出資するとのこと。
 シャープ亀山工場は、平成16年から稼動し、世界の亀山モデル「アクオス」の製造拠点として有名です。
 しかし、液晶パネルの価格低下などにより、昨年にはテレビ用大型液晶パネルの生産設備を中国のメーカーに売却しており、建物だけが未利用で残っている状態だったそうです。その意味では、シャープにとっても、地元三重県、亀山市にとっても干天の慈雨のような吉報であると言えるでしょう。

 アップルはiPoneやiPadなどのヒット商品を連発していますが、自社は工場を持っておらず、生産はすべて他社に委託しているという典型的なファブレスメーカーです。
 毎日新聞も報じるように、シャープはガラパゴスなどの自社商品とバッティングしている立場であり、アップルとはいわば宿敵の関係にあります。しかし、シャープにとっても部材供給先を確保して、液晶パネルの世界シェアを一気に高めることができるという思惑があり、日本製の高品質・高解像度の中小型液晶を求めていたアップルの狙いと一致したようです。
  
 以前にもこのブログで書いていますが、シャープ亀山工場は建設にあたって三重県が90億円の企業誘致補助金を支払ったことでも有名です。(これは当時としては破格の巨額補助金であり、これ以降、全国の道府県の補助金相場が跳ね上がったと言われています。)
 これは、成長潜在性が高く、下請けや素材部門など関連する企業も多いような産業分野の企業を三重県に誘致することで、県内に関連企業の一大集積地を作り上げ、産業を活性化しようという狙いがあったものです。
 シャープに関しては、この戦略によって確かに大きな効果がありました。平成18年12月に三重県が発表した試算では、シャープとその協力企業、関連企業の計40社による総雇用者数は10月時点で約7200人、17年度の県の法人2税収入は60億3千万円であり、対前年比の1.8倍になったとのことです。

 しかし、これには多くの批判的な意見(*)もあり、実際にその後の新興諸国のキャッチアップなどにより、シャープも基幹技術を国内工場内でブラックボックス化するのでなく、海外メーカーも含めたオープンイノベーション路線への転換を余儀なくされていました。さらに、サブプライムローン問題を契機にした世界同時不況によって亀山工場も第1工場を事実上閉鎖を余儀なくされていました。(補助金のうち6億4千万円は県へ返還を決定) 

 このような一連の流れは、国際競争の激しい製造業分野でのマネージメントの難しさを浮き彫りしにしていると強く感じます。軽々に言えることでもありませんが、シャープのように高い技術があれば、行政の補助金などなくても純粋な経済行為として大型投資も発生することは証明されました。
 変化の激しい国際経済の動きを察知し、どの分野の産業がこれから成長するのかを行政が予見して、特定の企業に補助金を出して工場を誘致することが、果たしてグローバル競争に勝ち抜くことにつながるのか、そしてその地域を本当に豊かにすることにつながるのか、その疑問はますます深まっていきます。

(参考)三重県の中小企業政策に関する論点整理
 http://hanwashi.blogspot.com/2009/08/blog-post_29.html

*参考文献
 佐無田 光「三重県・四日市の産業構造と産業政策~企業頂点型地域イノベーションシステムの検証~」金沢大学経済論集, 42: 119-155(PDF

 みずほ総合研究所 みずほリポート2010年10月13日「製造業誘致の地方雇用創出に対する有効性は低下したのか」(PDF

<平成23年6月6日 追記>
 6月2日、シャープは亀山第2工場も大型液晶テレビの生産は止め、スマートフォン用などの小型液晶生産に切り替えると発表しました。
 ■亀山モデルの終わり http://hanwashi.blogspot.com/2011/06/blog-post.html

2010年12月17日金曜日

大阪都とか、中京都とか、その前に



 東京23区、たとえば皇居のある千代田区とか、銀座のある中央区とか、は地方自治法上「特別区」と呼ばれる地方公共団体です。

 太平洋戦争中、物資や人員が欠乏する中で首都の行政を簡素化するために、それまでの東京市は廃止され、東京都となって、その中に特別区が設けられました。
 23区と聞くと、いかにも都会的な印象を受けますが、特別区は全国どこにある「市」よりも、実は不完全で半端な自治体です。区長や区議会議員は区民が直接選挙で選びますが、ごみ収集や消防といった、本来なら市町村が行うべき行政事務の権限はありません。23区内では、これらの業務は東京都が直轄でやっており、その意味では特別区と東京都はセットになっており、東京都以外の、道府県と市町村の関係とははなはだ異なっています。
(ちなみに、横浜市や大阪市、名古屋市などの政令指定都市にも何々区、というのがありますが、これは特別区ではなく、横浜や大阪という「市」が大きすぎるので、区というエリアに分け、区役所という名の出張所を置いているに過ぎません。特別区とは全く別のものです。)

 さて、大阪府の橋下知事や、名古屋市の河村市長が、府県と政令指定都市が並存しているのは無駄な二重行政だとして、大阪府と大阪市を合体した、あるいは愛知県と名古屋市を合体した「大阪都」、「中京都」構想なるものを提唱しています。

 これは、確かにもっともな面があり、図書館、体育館、文化ホール、病院、大学、賃貸住宅などを府県と政令市がそれぞれ別々に持っていることは珍しくないし、道路や公園、河川などの公物管理も別々にやっているのでコストがかさむ部分は確かにあります。
 これを一本化しても、住民にとっては大した変化はないし、経費は削減され、事務が簡素化される可能性はむしろ高いといえます。

 その昔、イギリスの鉄の女サッチャー首相も、英国病といわれた不景気とインフレ、高失業率を解消するのに、国営企業の民営化などと並んで、地方行政機関のリストラを断行しました。イギリスは民主主義の本場で、現状に到るまでに長い歴史的な経緯があったはずですが、破産寸前の国家財政を立て直すためにはやむを得ない措置と考えたのです。

 ひるがえって、今の日本を考えると、当時のイギリスとよく似た部分が生まれています。経済は好転せず、失業率も高く、世の中全体を閉塞感が覆っています。
 公務員は勝ち組で、リストラの心配もなく非効率な仕事で支出を垂れ流し、それを監視すべき主権者である国民やマスコミも、追求の声は少数派で大多数は無気力です。

 このような現状を変えるのに、そして実際問題としては900兆円にも迫ろうという国地方の財政赤字を縮減するためにも、行政のリストラは避けられないのではないかと思います。
 
 政令市は「都」という組織に再編することに可能性の一つがありますが、それでは三重県のように大都市もない、地方の県ではどういう方策があるのでしょうか。
 その一つは、地道ではありますが、わかのわからない外郭団体の原則廃止を断行することだと思います。
 外郭団体というとOBの天下りが問題にされがちですが、現実には現役公務員が多数出向しており、実質的な社内失業者(庁内失業者と言うべきか)の雇用確保と、関連事業の予算確保の隠れ蓑になっているという、より根深く本質的な問題があります。
 民主党政権が公約であった国家公務員の人件費2割削減を実行できなかったように、外郭団体など雇用と賃金が絡む問題は公務員利権そのものであって、アンタッチャブルとして放置されてきました。
 都構想の前に、まずはそれにメスを入れるのが必要かもしれません。

*補足*
 庁内失業者と書きましたが、言うまでもなく、現在外郭団体に出向している公務員個人を非難しているのではありません。職員の適正な勤務評価や能力活用ができず、年功序列、終身雇用を墨守している結果、多くの地方自治体の人事は硬直化しており庁内ミスマッチが生じているという意味です。誤解なきよう。

2010年12月16日木曜日

また条例作るの?



 三重県が、現在、三重県観光振興条例(仮称)の考え方(素案)に対するパブリックコメントを行っています。
 三重県は古来から伊勢神宮への参宮客が全国から押し寄せていたので、必然的に観光業が有力な産業になっていました。
 なので、これをますます発展させ、たくさんの観光客に訪れてもらい、建前は三重県の自然や景観、食を楽しんでもらい、ホンネでは県内でお金をたくさん使ってもらうために、県が旗を振って観光を「振興」することも決して悪いことではないのかもしれません。

 しかし、考えてみれば重要な産業はなにも観光だけではありません。
 日本を支えているのは、外貨を獲得して国と富ませている製造業であり、市民生活に不可欠なエネルギー産業です。運輸業も小売業も、農林水産業も、なければないで困るでしょう。
 観光の振興条例を作る勢いだと、これらの産業にもいちいち振興条例を作れという声が目立ちたがりな人々から出かねないので、個別産業の振興条例が雨後のタケノコのように次々と生まれ、それによって行政の縦割りとセクト主義、それから派生する恐るべき非効率と政策の硬直化が進むことでしょう。

 それはさておき。
 はんわしも公務員の端くれなので、仮に自分が振興条例を作れ、と命令された立場なら、せめてたくさんのパブリックコメントをいただき、「条例を作るにあたって、こんなにたくさんの県民から意見をもらいました。それはつまり世間での議論が活発だった証拠であって、自分は世のため人のためになる立派な仕事をしました!」というエクスキューズが欲しくなります。一つでも多くのコメントが(しかもできれば建設的なコメントが)欲しいというのがうそ偽りのない心境です。

 みなさまももしお時間があれば頭の体操がわりに条例素案を見ていただいてはどうでしょうか。できればコメントもしていただけるとありがたいのではないかと思います。

 はんわしが気づいたのは次のような点ですが、みなさまはどうお考えになるでしょうか。

・そもそも論だが、観光は本当に「振興」しなくてはいけないのか?
 以前このブログに書いた気もしますが、ある町の商店街振興の仕事をしていた時、近くにある観光地にあやかって、地元住民向けの最寄品店や食料品店が多い業態から、観光客向けの土産物店への業態転換を提案したことがあります。しかし「観光業など虚業である」と反発する商店主さんが意外に多かった事実があります。観光など、町が騒がしくなり、軽薄な観光客がゴミを落としていくだけのものではないか、という声にどう応えるのでしょうか。

・観光業を21世紀の成長産業とするなら、それなりの産業政策的アプローチが必要では?
 現在の県の観光政策はプロモーションのみで、観光サービスの高度化や高付加価値化への支援施策は皆無です。海外からの誘客も、この素案では方向性がハッキリしません。これでは後発の観光地にキャッチアップされるのも時間の問題でしょう。

・県境を越えた広域的なプロモーションが必要
 東紀州が典型的ですが、熊野と呼ばれる地域は三重、和歌山、奈良にまたがっており、県境に意味はありません。北勢地域も第二名神や伊勢湾岸道の開通によって、観光客の動線は数年前に比べ激変しています。三重県だけ、とか、伊勢志摩だけ伊賀だけ、という狭いくくりでなく、「伊勢志摩と渥美半島」とか、「伊賀と湖南地域」といった観光客のニーズや実態にあった誘客戦略が必要です。

 

2010年12月15日水曜日

だめだこりゃ



 日曜日、本棚を整理していたら、いかりや長介著「だめだこりゃ」(新潮文庫)が出てきました。

 平成16年5月の11刷ですから購入したのもそのころだったのでしょうが、なぜかまったく記憶がありません。
 ちなみに、いかりやさんはこの年の3月に亡くなっていますので、そのためもあって読んでみようと思って買ったまま本棚で眠っていたのかもしれません。

 はんわしの世代にとって、ドリフターズはまさにスーパースターでした。
 月曜日に学校へ行くと、おとといの土曜日の夜に放映されていた8時だよ全員集合のカトちゃんのギャグを真似している友達が必ずいました。当時は小学生、特に男子はほぼ全員見ていたのではないでしょうか。

 そのように、完全にコメディアン集団というイメージが強いドリフターズですが、いうまでもなく彼らは本来、音楽バンドであり、ハナ肇とクレイジーキャッツのようなコミックバンドの超進化形として純粋なコントだけ、ギャグだけをやる集団に変質したのです。

 昭和41年にビートルズが日本武道館での公演のため来日した時も、ドリフターズは前座として曲を演奏しています。

 いかりや長介さんは、カントリー&ウエスタンのベーシストから出発し、のちにドリフターズに加入。リーダーとしてドリフターズをコミックバンドに方針転換し、8時だよ全員集合の大ヒットによって芸能界の第一線に躍り出ました。晩年は俳優として新たな境地を開きました。

 子供の時は考えも付かなかったことで、中年になった今になって初めて思うことですが、どのような組織であれリーダーとして人の上に立ち、メンバーを引っ張っていくのは大変な気苦労が必要です。

 ましてや、8時だよ全員集合という、多数の観衆の前でライブでコントを演じ、しかもそれを生放送するというハイテンションな番組を16年間も続けるというのは並大抵の努力ではなったはずです。ドリフのコントは、ほとんどのネタをいかりやさんが作り、入念にリハーサルを繰り返して本番に臨んだものでした。

 この本にも、毎週毎週ネタを考えるのがどれほどの苦しみだったかが繰り返し書かれています。思い通りにならない怒りをメンバーやスタッフにぶつけ、叱責している姿はきっと悪鬼の形相であったろう・・・と。

 興味深いのは、ミュージシャンとしてもコメディアンとしても(いかりやさんの表現では)一流ではなかったドリフターズが、練り上げられた話芸を持つ落語家や漫才師と伍していくには、テレビというメディアの特性を生かすことが必要だ、と気が付いたことが重要だったと自己分析している点です。

 落語家の話芸はまさに一つの芸術で完成されたものですが、移り気なテレビの視聴者はいかにすごい芸であってもすぐに飽きてしまいます。

 そのためには、たとえ芸は二流でも常に新鮮なネタを考え、身体を使って画面中を動き回り、飛び跳ねれば、そこにドリフの勝機があると見抜いたのです。いかりやさん自身が書くように、そういったテレビの特性(タレントの消耗が早い特性)に、まだテレビ放送が始まってまもなくの日本では、テレビ局のスタッフ自身も、もちろん芸人も気が付いていなかったのです。

 ドリフが活動を停止し、いかりやさんの活動の中心が俳優業に移ると、今までドリフのメンバーやテレビ局のスタッフに頼られてばかりだった自分が、逆に映画監督や脚本家、先輩の俳優に頼ってもよい立場に変わっていることに気が付きます。

 そして、人に頼れることが、いかに安心できることか、ラクなことかを実感した、という記述も繰り返しこの本に出てきます。キングオブコメディアンの彼にしてもそうなのです。

 ほかにも、終戦直後、米軍キャンプで演奏した話や、ドリフ結成のいきさつ、荒井注、高木ブー、加藤茶といったメンバーの逸話なども豊富に出てきます。
 リーダー論としても、戦後の芸能史としても楽しめる本です。みなさまもぜひご一読を。

2010年12月14日火曜日

起業志望者が増えているらしい



 ここ数日、何人かの商工会議所の経営指導員とお話しする機会がありました。
 その中で「創業塾」の話になり、みなさん異口同音に、この1~2年、体感的には創業希望者が増えているように思う、とおっしゃっていました。
 実際に、以前このブログでも取り上げた三重県北勢商工会広域連合を始め、県内の創業塾事業は非常に盛況のようで、多くはキャンセル待ちが出ていた状況です。

 創業や起業についてはタイムリーな統計が少なく、特に地域別の動向がわかるのは日本政策金融公庫の創業融資統計くらいしかないと思うのですが、それも今はんわしの手元になく、三重県の創業希望者がどれくらい増えており、実際に開業に到った件数はどれくらいか、それがどういう動向なのか、はんわしもよくはわかりません。

 まず真っ先に考えられるのは、景気の低迷と企業の業績不振によって、本来ならバリバリ活躍するはずの中堅社員にも先行き不透明感が強まっており、自分でビジネスを興そうと考える人が増えているのではないか、ということです。
 また、女性についても、一度結婚や出産で正社員を退職すると、同じ条件で、つまり常勤の正規雇用で再雇用されるということは現在の日本では極めて難しく、パートや期限付き雇用しかないのが現状なので、それならいっそのこと自分で起業しよう、と考える方が多いのかもしれません。

 そのような創業希望者を下支えしていたのが、商工会議所や商工会が国の財政支援を受けて行っていた「創業塾」です。
 残念ながら事業仕分けにより創業塾は、運営コストが高いとか、起業者支援は税制面の優遇などのメリットで十分である、などの理由により来年度から廃止となる方向です。
 閉塞した日本の経済状況を打破するのはアントレプレナーシップ(起業家精神) ~小賢しい役人がいくら「緊急経済対策」をバラ撒いても効果はたかが知れています~ であって、起業家精神の裾野を広げていく意味で、創業塾には一定の効果があったと思います。

 反面、全国一律で受講料が5000円であるなど、講座の内容に比べて自己負担が非常に少なく、受講生の本気度が疑わしいケースが散見されたり、主催者である商工会議所、商工会が講座の運営をコンサル会社に丸投げしている例、さらに、せっかく塾によって地域の創業希望者が一堂に会しているのに主催者が受講生の動向を把握しておらず、ネットワーク作りやフォローアップが不十分である、などの問題点が多いことも事実と思います。

 これらを改善して、受講料も適正化(値上げ)し、その上で来年度も意欲の高い商工会議所、商工会によって創業塾事業が継続されることを願いたいと思います。

2010年12月13日月曜日

ベストセラー「みかんのむきかた」って何だ?



 世の中には、いろいろな話があるなあ・・・というおはなし。

 日経トレンディネット(12月8日付け)によると、小学館が11月に出版したあらたしい みかんのむきかたという本が大好評で在庫切れとなっているとのことです。
 みかんの皮アートを趣味とする岡田好弘さんという方が、小学館の編集部に話を持ち込んだのが出版のきっかけとのこと。
 映像を見れば一目瞭然なのですが、球形であるミカンから剥き取った皮で、切り紙のように動物の形を作るというものです。



 これは驚きです。ものすごいアイデアだと思います。
 地域産業活性化の現場では、よくイノベーションの重要性、とか、地域に固有の資源を見直して活用しよう、みたいなかけ声はよくかかるのですが、

 アートに行ってしまう

 というのはスゴくないでしょうか。

 よくわからないのですが、地域に固有の資源ながら、いまひとつブレークしない志摩のあおさとか、菰野町のマコモとか、そんなので折り紙を作っているとかいう酔狂なアーティストはどこかに埋もれていないでしょうか?
 あと、みかんで有名な東紀州でみかんのむきかたコンテストをやってみるとか。

 ■小学館 みかんのむきかた http://www.shogakukan.co.jp/pr/mikan/

2010年12月12日日曜日

あらためて鳥羽港湾センターを訪れてみる



 鳥羽市の鳥羽港湾センターが来年3月で閉鎖されることとなったため、それに先立って「温故知新・ありがとう港湾センター展」なるイベントを開催していると聞いて、のぞいてくることにしました。

 鳥羽港湾センターは、近鉄・JR鳥羽駅から徒歩で5分ほどの佐田浜(さだはま)港と呼ばれるエリアにあり、鳥羽駅と坂手島、答志島、菅島、神島の離島を結ぶ鳥羽市営定期船と、鳥羽湾めぐりの観光遊覧船の発着拠点になっています。


 1970年、大阪万博で湧く関西地方と伊勢志摩を結ぶ近鉄鳥羽線、志摩線が開通し、大阪難波と賢島間に直通特急が走るようになりました。これを機に鳥羽市は一大観光地として大きく飛躍することになりますが、その海の玄関口として同年6月に新築オープンした施設です。

 はんわしも子供の頃、よくここへ遊びに来ていました。オープン間もない、まだ新築と言ってよいほどの頃だったと思います。幼い頃には祖父の日課だった散歩にお供して。小学生時代もは、港湾センターの隣にある鳥羽海上保安部の突堤で魚釣りをしていたという、個人的に思い出深い場所でもあります。
 子供心にも斬新で近未来的なデザインの建物だなー、と感じていましたし、市営定期船や遊覧船のほかに、鳥羽と伊良湖を結ぶ水中翼船や、蒲郡を結ぶホーバークラフトの航路もあって、休みの日などは乗船客でごった返していた記憶があります。

 しかし、報道によれば
「同センターによると、開業から39年間がたって施設が老朽化。さらに市営定期船の利用者数や観光客などの減少から4年前、テナントの大型食堂が撤退し、経営状況が悪化した。」
「さらに、現在入居している市営定期船事務所が近くに建設されるマリンターミナルへ移転を決めるなどしたため、経営再建や施設再構築のめどがたたなくなった。」
 とのことで、
「会社を自主的に解散して市へ土地・建物を移譲し、新たな海の玄関口を構想する鳥羽マリンタウン21整備事業の中で再構築する方向で検討が進んでいる。ただし、関係団体などの交渉が難航すれば自己破産もありうるとしている。」
 ということです。(ブログ「自己破産と民事再生情報」から転載させていただきました。)


 鳥羽といえば、同じく伊良湖との間を結ぶ伊勢湾フェリーが、高速道路無料化などによる業績不振により航路を9月で廃止し、会社を清算する方針だったものが、三重県、愛知県、鳥羽市、田原市による財政支援措置によって航路が存続することが決まったという出来事がありました。

 その時は、関東や静岡方面と伊勢志摩を結ぶルートになっている伊勢湾ファリーがなくなると、観光産業に打撃があるからだろう、くらいに思っていたのですが、鳥羽市は三重県と共に総事業費が183億円にものぼる港湾整備事業であるマリンタウン21計画に取り組んでおり、もし仮に鳥羽の港湾から主要路線である伊勢湾ファリーを失ってしまえば、事業遂行の前提にも大きな狂いが生じてくるために、何としてでも航路を存続させる必要があったのではなかったか、などと今になって勝手に想像してみるのでした。
(伊勢湾フェリーは、マリンタウンが整備される佐田浜港地区ではなく、1kmほど離れた中之郷港地区にあるので、計画には直接の関係はないのかもしれませんが。)


 それにしても、伊賀市役所の存続問題のときもそう感じたのですが、なぜ日本の鉄筋コンクリートのビルは、たった40年で「老朽化」してしまうほどに貧弱なのでしょうか。実際に建物をつぶさに見ると、塩害の影響でもあるのか、古さが目に付くのは確かですが、改装で対応できないものかどうかはよくわかりませんでした。

2010年12月10日金曜日

今が正念場の中小企業ICT化促進



 2008年版中小企業白書にもあるように、中小企業のICT化は大企業に比べて進んでいません。

 ウインドウズ95の登場により、パソコンやインターネットの利用が個人や小規模企業でも本格的に見られるようになってから15年余り。
 今や、電子メールとか、ワープロや表計算ソフト、データベースソフトをビジネスで使うことは常識になっているように考えがちです。
 しかし、たとえばインターネット活用にしても、大企業の普及率が99%以上なのに対し、中小企業は86%ほどにとどまっており、信じがたいことですが14%の中小企業はビジネスの「常識レベル」にすら達していないことになります。

 ICT化は、単に業務プロセスを合理化したり、コストを削減するだけにとどまらず、情報の蓄積と分析によるマーケティングや経営戦略構築、情報の共有化による社内意思決定の高度化や迅速化、など、企業活動の付加価値自体を高めていくことにつながります。
 これから、市場の成熟化 ~単に商圏人口が減少、もしくは少子高齢化するだけでなく、それらの現象が進むにつれて消費の中身が変質していく(=成熟化していく)ことです~ や、競争のグローバル化が進むと、企業にとっていかに付加価値の高いサービスを提供するかがますます重要になります。
 そのために、ICT化をあらためて見直し、導入を図っていく必要があると思います。

 さて、日本政策金融公庫総合研究所が刊行している日本政策金融公庫論集の11月号に、興味深い論文が載っていました。

 ●「クラウド」と「モバイル」による中小企業におけるICT活用促進の可能性(日本政策金融公庫総合研究所主席研究員 竹内 英二) PDFはこちら

 これによると、
・中小企業でICTの利活用が進んでいないのは、資金制約の問題よりも、ICTの知識が乏しいので使いこなせない、あるいはICT投資の効果に疑問をもっているためである。
・リテラシーが低くてもICTを活用でき、ICT投資の費用対効果を高めるという点で、今後期待されるのが「クラウドコンピューティング」と、携帯電話に代表される「モバイル」である。
 とのことで、クラウドとモバイルの活用による、中小企業のICT利活用の成功例がいくつか紹介されています。

 成功例を3つの類型に整理すると、
1 売り上げの増大
   インターネットショップ(EC)、E-マーケットプレイス、携帯電話を使った販促
2 ブランドロイヤルティの形成
   顧客サポート、顧客とのコミュニケーション、インターナルマーケティング
3 コストダウン
   業務の自動化、ムダの削減
 となっており、それぞれ中小企業、特に零細な規模の企業による興味深い取り組み事例、活用事例が紹介されています。経営者の方、産業支援関係者にはぜひご一読をお勧めします。

 論文の結論部分では、中小企業経営者にICTが経営の役に立つことを理解してもらうためには、ベンダーだけではなく、行政など公的な機関が中心になって活用事例を紹介していくことが重要である、とか、セミナーなどにおいてもICTの普及促進などのネーミングでなく、コスト削減をテーマとしたセミナーの中で、ICTが有効なツールであることをアピールする、といったような工夫が必要である、などの提言もあって、はんわし的にも非常に参考になりました。

2010年12月9日木曜日

三重県起業家交流会




 アナウンスです。(残念ながら、はんわしは行けないのですが・・・)

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 三重県のご当地ブログ ミエワン を主催している株式会社アイエリアが、三重県で起業した方、これから起業を目指す方が集まる三重県起業家交流会を開催します。
 三重県各地の商工会議所で開催されている創業塾の卒業生 の方はもちろん、既に起業されてご活躍されている方々、将来的に起業・開業を目指している方などが、交流を通して情報交換や新しいビジネスのキッカケにし ていただくイベントです。

【日時】 12月11日(土)14:00~16:30
【場所】 鈴鹿商工会議所(三重県鈴鹿市飯野寺家町816)
【服装】 自由
【費用】 200円(交流会費用)
【主催】 株式会社アイエリア(三重県委託事業)
【共催】 鈴鹿商工会議所
【後援】 津市商工会議所、桑名商工会議所、四日市商工会議所、北勢商工会広域連合

第1部 基調講演 ~出会うことによって起業は加速する~
      経営コンサルタントとして各地でご活躍中の武田秀一氏を講師に迎え、
      起業に最も必要と言っても過言ではない「出会い」についてお話頂きます。

第2部 プレゼンテーション大会 -希望者による3分プレゼン-
      10名程度を目安に、現在の活動や将来のビジョン等々を、
      2分間のプレゼンという形式で発表していただきます。
      参加を希望される方はお申し込みの際に合わせてご連絡ください。

第3部 名刺大交換会 -名刺持参必須!立食交流会-
     立食形式で約1時間、名刺交換かいを開催します。
     集まった人同士で交流したり、展示されている活動紹介・作品を見たり、
      三重県内で進んでいる様々な起業活動の情報を吸収できます。

その他 三重県起業家・展示ブース
      現在活動している、また準備中の活動紹介・商品展示ができるブースを用意。
      60cm×45cmまでの展示スペースをご希望の方にご提供します。-----------------------------------------------------------------------------------------------

 くわしくはこちらをご覧ください。

 http://www.ai-area.com/kigyoka2010/



2010年12月8日水曜日

地方都市からの強力発信「尾鷲おさかな満喫ツアー」



 尾鷲観光物産協会のブログ「やさほらえ日記」にもあるように、尾鷲市の岩田昭人市長が、観光客を自ら市内の魚にまつわる観光名所を案内する「尾鷲おさかな満喫ツアー」が行われたそうです。
 これは、尾鷲の地域特産品を詰め合わせた頒布会である 尾鷲まるごとヤーヤ便 の購入者を対象にした特別企画で、抽選で選ばれた愛知県や岐阜県からの頒布会員4名が、日本の原風景が残る美しい漁村である須賀利(すがり)町や、世界遺産に認定されている熊野古道の馬越峠(まごせとうげ)、尾鷲の魚市場などを岩田市長の案内で訪問し、尾鷲の自然と魚を満喫したとのことです。

 岩田市長は言うまでもなく、三日に一魚 というブログを、実際にはほぼ毎日のように発信しているアルファブロガーとして有名です。
 尾鷲市長に就任して以来、自ら広告塔となって尾鷲まるごとヤーヤ便のチラシに登場したり、プロモーション活動を行っています。
 はんわしは、正直なところ市政全般についての市長の手腕はよく知りませんが、こと地域産品のセールスに関しては、自らマグロの解体ショーを実演してしまう志摩市の大口市長と並んで、実に立派にリーダーシップを発揮していると思います。

 市町村レベルでは、産業政策(商工政策)は大きく2つの路線があります。
 一つは企業誘致です。一見、設備投資や雇用が増えるため有効な政策に思えますが、製造業自体が新興諸国とのグローバル競争にさらされており、巨額の費用とマンパワーを使って誘致した企業が、いとも簡単に工場を閉鎖したり、海外に移転していくことも珍しくなくなっています。
 もう一つは、いわゆる特産品開発です。地域資源活用、6次産業化、農商工連携など、多くの切り口があり、これも全国レベルの産地間競争状態になっています。
 そこで勝ち抜くには、強力な差別化要因を持つ商品力が必要なのはもちろんですが、地元のバックアップ体制も重要であり、一例として三重県が導入した三重ブランドや、南伊勢町が取り組んでいる南伊勢ブランドのように、県や町や商品を認定し、県や町を上げてプロモーションしていく、という手法もよく取られるようになっています。

 しかし、南伊勢ブランドは、その理想とは裏腹にホームページを見ても実に控えめなPRであり、まるで熱意が伝わってきません。町長も、役場も、顔が見えないのです。
 尾鷲まるごとやーや便も、発足した昨年はそのような消極的な印象があり、実ははんわしはそれが不満で今年から購入をやめました。
 ところが、岩田市長になってから息を吹きかえし、市長自らの顔の見えるプロモーションになっています。これによって尾鷲のファンは確実に増えることでしょう。

 小さな市や町こそ、地域産業振興には知恵と工夫が必要です。
 そのためには、市長や町長の顔が見えるプロモーションが大切だと思います。隠れて出てこない市長さんや町長さんは、いったい何を恥ずかしがっておられるのだろう・・・?


 

2010年12月7日火曜日

高度経済成長は復活できる



 この本を読んで、県庁の大先輩から聞いた話を思い出しました。
 昭和45年頃まで、県庁は職員の数も少なく、仕事もほぼ定時に終わるようなのんびりした職場だった。
 それが、職員数が増え、予算も増え、仕事も忙しくなったのは昭和47年、田中角栄の日本列島改造論が出てきた頃だった、と。

 当時の県庁は、今以上に国の出先機関の色合いが濃かったようですが、このころちょうど、県独自の施策を行うため庁内に企画部門ができました。公害が深刻であったため、環境部門も新設されました。さらに、国の積極財政により道路建設や区画整理などが大々的に行われるようになり、土木部門の予算が毎年何割も増加し、その業務をこなすために土木技師も大幅増員されることになったそうです。

 今から見ると夢物語にしか思えない、県組織のこのような急膨張、つまり「均衡ある国土の発展」という理想こそが、実は日本の高度経済成長を殺した真犯人だというのがこの本「高度経済成長は復活できる」(増田悦佐著 文春新書)の主張です。

 
 経済は投資効率に従って、ある意味で力学的な必然によって動くので、投資はもっとも利益が出る(効率がいい)産業やインフラに投入すべきですし、労働力はもっとも賃金が高く、雇用が不足している場所に集まります。
 太平洋戦争の敗戦で焦土と化した日本は、このようにカネとモノが、大都市部(なかんずく東京)に集中して投資されたことが、奇跡といわれた日本経済の高度成長の、本当の原因だったというのが著者の主張です。

 この集中投資は、戦後の一種の神話である「自民党政権や官僚による産業政策がうまくいった」からではなく、農業から工業へ産業構造が変化する中、農村で余った多くの若い労働力が都会へ移り住み、生産性の高い工業に従事したことが原因です。
 その結果、労働者の給料が増えて消費も増加し、ますます商品が求められ、ますます増産の必要が生じ、ますます農村から都会へヒトが移り、という成長の循環を生んでいました。

 著者によると、これを断ち切ったのが、田中角栄による列島改造論でした。
 田中は、カネもヒトも、会社も、大学も、病院も、もっといえば、華やかな賑わいも、便利で近代的な生活も、大都会ばかりに集中している。これが都会の過密と田舎の過疎の原因であって、人為的にカネ、ヒトを田舎へ分散させ、地域格差を是正することによって国土の均等ある発展が図れる、と考えました。

 ではどう実行するか。
 都会の人は強者だが、田舎の人は弱者である。
 弱者は政治が(国が)救わないといけない。
 
 というテーゼを立てたのです。
 そしてその弱者の論理を政治の中枢に押し上げていきます。

 その代表的なものが道路特別会計です。ガソリンを買えば自動的に課税される打ち出の小槌のような財源によって、全国各地にトンネルを掘り、橋を架け、道路を造りました。
 もう一つが食糧管理会計です。米を農民から政府が買い付けるとき、買い値は高く、消費者への売値は安く設定したため、農家は米を増産して米は余るようになり、しかも食管会計は大赤字になります。
 さらに、投資が全国に分散したため(有名なむつ小川原開発とか、苫小牧東開発のような天文学的な開発投資が各地で行われました。)、本来なら生産効率が高いはずの東京のパフォーマンスが低下し、かといって各地の田舎に作られた巨大港湾や高速道路、飛行場、工業団地などは閑古鳥が鳴いて生産性の向上には寄与せず、結果的に日本の経済成長は昭和50年頃から低迷を始め、高度成長は終焉します。

 問題は深刻です。どうすれば日本はふたたび経済成長できるのでしょうか。
 著者の見解は明快で、「政治によって作られた弱者」を保護する政策はやめ、投資を東京に集中し、都会で働きたい人はどんどん都会に出て行けるよう、価値観も制度も転換すればよいのだ、ということです。投資効率の悪い田舎や、衰退産業へのバラマキは一切やめ、皆が都会に集まって住めばいいのです。

 この著者の言っていることは(田舎の人間にとって見ると)結構ムチャクチャというか、すぐにはハイそうですかとは答えられない気はします。着眼点はあくまで経済成長の復活ですので、田舎には田舎の伝統や文化がある、という視点はあえて無視されています。

 しかし、全く一切のタブーを排して考えると、今のように国が借金して地方に財源を配り続けることはそう長く続きそうにないし、理念や理想はともかくとして、全国均一の住民サービスを、~インフラとか、年金のような社会保障も含めて~ 今後も継続していくことは、将来の子や孫を生まれながらにして借金まみれにするのと同じ行為です。

 著者を批判し、無視することは簡単ですが、日本の停滞がこれだけ長引く中、今までなら禁じ手だと一蹴されていたものでも、一応は考慮に入れ、真剣に考えてみる必要が出てくるのかもしれません。(武器禁輸三原則の見直しなども、同じような時代思潮(トレンド)から生まれてきたもののような気がします。)

2010年12月6日月曜日

せんとくんの経済効果は225億円



 奈良県が、平城遷都1300年祭の上半期の経済効果を公表しました。

 今年1月から9月までの、メイン会場である平城宮跡への観光客数が334万人。
 観光施設や、特別拝観を実施している神社仏閣などへの来場者数は524万人。
 合計850万人あまりの経済効果は、967億円にものぼるとのことです。

 興味深いのは、法体の少年姿でありながら頭部からシカの角が生えている外観があまりに異様であり、「かわいくない」、「癒されない」、「仏教を冒涜している」などと前評判はさんざんだった公式キャラクター「せんとくん」の経済効果です。
 
 メディア露出の状況が、新聞・雑誌等への掲載件数3580件。広告換算額は62億8169万円。

 テレビ放送件数は410件で、放送時間が32時間40分10秒。この広告換算額が162億2190万円であり、合計で何と225億円もの広告効果があったとのことです。

 せんとくんについては、広告効果のほかに関連グッズのライセンス料も48億円あったそうなので、いい意味で予想を大きく裏切る孝行息子に出世した感があります。

 仏教界の一部がせんとくんに対抗してリリースした「まんとくん」は完全に蹴落とされ、今や見る影もありません。今から思えば、これもせんとくんを盛り上げるための出来レースだったのではないかとさえ邪推してしまうほどです。

 公式キャラクターは通称「ゆるきゃら」とも呼ばれ、一説には170億円もの経済効果を生み出したといわれる滋賀県彦根市のひこにゃんがあまりにも有名ですが、県とか市が地域の命運をかけて世に出すゆるきゃらも100億円台の戦いになってきたのでしょうか。

 津市のゴーちゃんは、さて、孝行娘になれるやら、なれないやら。

2010年12月5日日曜日

江姫が住んだという伊勢上野城に行ってみた

 NHK大河ドラマのロケ地が、人気にあやかって地域おこしに取り組むのが例年の恒例行事のようになったのは何年位前からでしょうか?
 おそらく、こういったご当地ブームと期を一にして、ドラマの終了時にその回に登場した舞台やロケ地の簡単な紹介やアクセスガイドが放映されるようになったのは、緒方直人が主演した信長のころからだったような気がするのですが・・・
 今年の大河ドラマ「龍馬伝」も人気が沸騰し、高知や長崎はいつになく多くの観光客を呼び込んだようですが、早くも2011年度の大河ドラマ「江(ごう)~姫たちの戦国~」を当て込んで、津市が動き出しています。
 
 現在の津市の中心街から伊勢湾沿いに約10km北上した場所、現在は津市に合併した旧河芸町(かわげちょう)に、上野という町があります。(三重県には忍者で有名な伊賀にも上野という土地があり、紛らわしいので伊勢上野と呼ばれたりもします。)

 ここは東海道の桑名から伊勢神宮を結ぶ参宮街道沿いにあり、目の前には伊勢湾が広がり、陸海の交通の要所といってよい場所です。こに、大河ドラマの主役となる江姫(ごうひめ)が、幼少期の数年間、住んでいたという記録があるそうです。
 彼女の数奇な運命についてはぜひこちらをご覧いただきたいのですが、生まれてまもなく父親(浅井長政)が敗死。その後、母親(お市の方)に従って三姉妹で、伊勢上野、津、北の庄、と転居し、後に徳川二代将軍となる徳川秀忠と結婚。三代将軍となる徳川家光を生み、栄華のうちに死去、というまさに波乱万丈の生涯です。

 はんわしも、河芸町付近は当然ながら数え切れないほど通っていますが、国道23号線や近鉄名古屋線から良く見える小高い丘が伊勢上野城跡だとは、実は今日まで良く知りませんでした。来年はブームになる可能性もあるので、その前にちょっと押さえておこうというわけで、初めて行ってみることにしたのです。
 

 近鉄だと豊津上野駅(普通列車のみ停車)から徒歩15分ほど。ちょっとしたハイキング気分でサクサクと山道を登っていけます。丘の上はうっそうとした林と竹林になっており、そこを抜けて二の丸、本丸の跡まで来ると、一体はすっかり公園となっており、往時の面影を想像することはまったく困難です。
 天守閣の跡には立派な3階建ての展望台が立っており、眼下に参宮街道の町並みと、伊勢湾が望めます。この日は天気が良かったので、遠く鈴鹿山脈から鳥羽の離島まで、そして対岸の知多半島も良く眺められ、いつまでもここで景色を見ていられるような絶景の場所でした。



 展望台は2階が資料室になっており、城跡のジオラマや古文書などが展示されています。職員の方が二人いて、伊勢上野城のことや、江姫のこと、さらには織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑の人となりを、まるで知り合いか親戚のおじさんのことでも語るように、くわしく、生き生きとガイドしてくれます。無料なので、ぜひ立ち寄りたいポイントです。江姫のゆるキャラであるゴーちゃんのグッズも販売しています。はんわしも、タダで熱心にガイドしてもらったので、手ぶらで帰っては悪いと思い、ゴーちゃんコースター(コップに敷くやつ)を買いました。300円なり。
 

 30分ほど城跡を散策し、説明を聞き、もと来た近鉄の駅のほうへ下っていこうとしたら、林の中に自動小銃やら拳銃を持った怪しい人影が見えました。
 一瞬ドキリとしましたが、どうも中学生くらいの数人がモデルガンでサバイバルゲームをやっているようなのです。

 観光地として売り込もうという津市や津商工会議所の熱意とは別に、実際問題として城跡にはほとんど観光客はいないので、こういうゲームをやるにはぴったりの場所でしょう。意外にもその一人が「こんにちわー」と挨拶してきました。
 「物騒なもんを持っとるなあ」と声をかけたら、「ハイ。でも、安全に気をつけてやっています!」と、これまた礼儀正しくハキハキ答えてくれました。
 戦国の世から400年たった今、2010年。
 何て平和なニッポン。

レッ津ゴー! 津市観光協会 江ゆかりの地をめぐる旅
  http://www.tsukanko.jp/go_special/

<平成23年1月16日追記>
 観光会社が「江姫ゆかりの地」周遊バスの運行を始めました。リンクはこちら

2010年12月3日金曜日

社会的企業 どう育てる?



 今日(12月3日付け)の中日新聞朝刊に、社会的企業どう育てる という記事が載っていました。
 社会的企業とはソーシャルビジネスとも呼ばれ、教育、貧困、国際問題、環境保全などのような社会的な課題を解決するための事業を、ビジネスの手法で行おうとするものです。
 ちなみに、よく似た言葉に「コミュニティビジネス」がありますが、これはソーシャルビジネスとほぼ同義ながら、より身近な地域課題の解決を目指す、身の丈のビジネスという点が若干違います。

 さて、中日新聞の記事は、岐阜県のNPO法人による、廃屋だった宿泊施設を改造して、観光客に田舎暮らしを体験してもらうとともに、地域で若者が暮らせるような就業先を作ることを目的としたビジネスや、東京のフェアトレードで仕入れた宝石などを使ったジュエリー製作会社の事例が紹介されています。

 ここまでであれば、最近ブームになってきているソーシャルビジネスの入門編で終わりなのですが、この記事はソーシャルビジネスを起業した人(起業家)が、開業資金や運転資金に苦労したり、理念に共鳴してビジネスに従事してくれる、実務能力を持った人材が不足していたり、という現場の苦労を伝えている点に新鮮味があります。

 資金面については、いわゆるNPOバンクであるコミュニティ・ユース・バンク・momo(モモ)の融資により、人材不足については社会人ボランティア集団のプロボノの支援により、それぞれ課題を克服し、現在はほぼ順調にビジネスが展開していることが書かれています。

 ソーシャルビジネス、コミュニティビジネスとも、啓発の時期はすでにピークを越えた観があり、実際の起業家や、起業志望者をどうサポートしていくかという問題が課題のステージに入っています。

 この記事が書くように、政府が70億円もの予算を社会的企業の振興につけるのは、確かにありがたいといえばありがたいこと(社会的企業の意義や存在感を政府も軽視できなくなってきたこと)には違いありませんが、このような「産業政策」は、下手をすると結局は行政に依存し、保護してもらわないと成り立たない産業に堕落させてしまう可能性もあります。
 なので、スタートアップの時期はともかく、原則として民間の資金や、民間のノウハウを活用すべきで(つまり、社会的企業だと過保護にするのでなく普通の企業のように)、民間の自律的な支援体制を作り、強化することこそが必要です。

 さて、そのコミュニティ・ユース・バンク・momoが、12月1日から融資申し込みの受付を開始しています。
 「わたしたちの子や孫がこのまちでずっと暮らしていけるように」。そんな想いが込められたわたしたち(市民)のお金を、同じ想いをもつ東海3県の事業に届けていきたいと思います。
 という理念で、融資を希望する事業者を来年1月30日(日)まで公募しています。

 融資額は500万円まで。貸出金利は年2.5%。最長3年の毎月返済で、連帯保証人が必要です。融資に当たっては審査がありますが、そのポイントは
  ・地域性(地域の問題を解決する事業)
  ・市民性(市民参加を促進する事業)
  ・独自性(他に先駆けて挑戦する事業)
  ・継続性(融資実行後も継続する事業)
  ・成長性(人や組織が成長する事業)
  ・発展性(他のモデルとなる事業)
  ・浸透性(人びとの暮らしに浸透する事業)
 という諸点とのこと。

 くわしくは、momoのホームページをご覧ください。

■コミュニティ・ユース・バンク・momo http://www.momobank.net/

2010年12月2日木曜日

Googleダンス?



 三重県熊野市で木箱・折箱の製造販売を行っている上古代折箱店(ここは雑誌「伊勢人」編集部が選んだ三重の隠れブランド25選にも選ばれています)のブログ「熊野の木箱職人」にあったのですが、ヤフーやグーグルといった検索エンジンの上位に表示されていたサイトが、なぜか突然にランクアウトし、全く表示されなくなるか、トップページでなく中層のページが表示されるというアクシデントに見舞われることがあるようです。

 ちなみに、熊野の木箱職人さんの場合は、お店を紹介しているトップページでなく、検索結果にブログしか表示されない状態になってしまいました。

 これは、ネットショップにとって致命的ともいえる大変に怖い状態です。
 幸い現在は回復しているようです。(ヤフーで「木箱」と検索してみてください。)

 この現象をグーグル・ダンス(Google Dance)と呼ぶそうです。
 はんわしも知りませんでした。
グーグルは検索結果を、月末から翌月5日くらいにかけて更新しており、その時期に検索すると検索結果がいつもと違う時があるそうです。つまり、いつもなら5位くらいに来ているサイトが、なぜか50位に表示されるなどのようにです。
 この揺らぎがグーグルダンスと呼ばれるものです。
 そして、これは、純粋にグーグルのサーバーの問題であるため、サイト管理者には手の施しようがなく、元に戻るまでほおっておくしかないという困ったシロモノだそうです。

 三重県産業支援センターの水谷ITコーディネーターによると、「対策の一つとしてGoogleウェブマスタツールを使い、サイトマップ登録をすると少しは効果があるでしょう。」とのこと。All Aboutで解説されているので、興味のある方はぜひお読みください。

 ■間違いだらけの検索エンジン登録 http://allabout.co.jp/gm/gc/296818/2/

 

2010年12月1日水曜日

MIJPからお知らせ



 今日は先々週に、購入の申し込みをしておいたテレビが届いた、という連絡があり、帰宅後トンボ帰りで電器店へ。
 早速部屋に運びこんで組み立てたり、接続したり、エコポイントの申請書を書いていたりするうちに11時近くになってしまいました。

 というわけで、今日もまた業務連絡です。

 NPO法人メイド・イン・ジャパン・プロジェクトの富田事務局長からメーリングリストが届いていました。
 関心がありそうな方に周知して欲しいとのことだったので、地域の産業振興に関心がある方(もちろん工場誘致とかの20世紀的な振興方法ではなく、真に地域と産業のWin-Winの振興を考えている方)は、ぜひお読みください。

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【無料セミナー情報】
12月4日・5日・8日・12日・19日初心者にわかりやすく売れる!
商品開発プロデューサー養成講座!

地域活性化に興味がある方!
ネットワークづくりに興味がある方!
農産物の商品管理とマーケティングに興味のある方!
農業者と知り合いたい方!
商品開発や販路に悩まれている方!
海外へ商品展開したい方!
そして、商品開発のプロデューサー的視点を見につけたい方!
そんな皆様に向けてNPO法人メイド・イン・ジャパン・プロジェクトは農商工連携等人材育成事業採択事業を開催します。農商工連携とは、農業・漁業・林業と商工業がマッチングして新しい商品を開発し売るための国の事業です。

今回のセミナーでは、食品等を含めた商品開発に必要なプロデューサー的視点を得るために学ぶ、考える、実践的なセミナーです。
※プロデューサー的視点とは、商品の開発から、販売、アフターフォローまでを見据えた考え方と定義しています。
※単発での参加も可能です。

この視点のない商品開発は作ったけれども売れないし、売るところもない、ということが起こります。みなさんの周りにもいませんか?作ったけど、売り先がなくてねえ、という人。そんな方にも来ていただきたいセミナーです。
詳しくはこちら!
http://mijp.jp/archives/2139
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 以上です。
 はんわし個人としては、農商工連携は非常に可能性が高いとは思います。
 しかし、以前このブログでも書いたように、正直言って農商工連携でリリースされる商品は全国どこも似たり寄ったりで、全国市場や海外市場でどれだけ独自性をアピールできるかというと非常に心もとないものがあります。
 一言で言えばマーケティングが不足しているからです。

 ものつくりや手仕事の世界において、マーチャンダイジングとかマーケティングの重要性を一貫して提唱しているMIJPだからこそ、この講座は大変期待できるのではないかと思います。

2010年11月30日火曜日

G-netが東紀州ブランチで働くスタッフを募集中



東紀州長期インターンシップ事業の実施主体である、岐阜市のNPO法人G-netがコーディネーターとして働ける常勤スタッフを募集しています。

 今年は例年以上に大学生、高校生などの就職率が低いようです。また、不景気によるリストラも減ってはいません。
 従来なら、これらの人々は摩擦的失業であって、新産業の成長や景気の回復によって新しい雇用先に吸収されるはずだと考えられていました。
 しかし実際にはなかなか雇用は回復しません。
 雇用問題解決の正攻法としては、やはり第一義的には経済成長によることでしょうが、個人の目線で考えれば、回復は一体いつになるのか、自分は就職できるのか、など心配は募ることでしょう。

 そのような中で、一つの考え方としては、いわゆる田舎、条件不利地と考えられていた地域で、住民に新しいサービスを提供するビジネス、あるいは地場産業と呼ばれる農林水産業や、それに付随した食品製造業、水産加工業、製材業、建築業といったビジネスへの就業、あるいは起業することがあります。

 田舎暮らしは決して楽ではありません。しかしそれでも、田舎は魅力があり、ビジネスを開拓する余地もまだ残っています。

 それはそうだけれど、いくら何でもカラダ一つで飛び込むには勇気がいる、という方。
 実は、そういう方がほとんどです。
 そのために長期インターンシップの制度はあります。
 
 田舎で決定的に不足しているのは若者であり、現状をブレークスルーできる意欲を持っている人材です。
 その人材を発掘し、インターンシップ生として共に伴走するのがコーディネーターであり、おそらく東紀州で最も必要とされている職種の一つです。
 広く地域活性化や地域おこしなどに関心がある方、若者の育成に関心がある方、何か面白い仕事はないかと探している方、ぜひご覧になってみてください。

 ■G-net 採用情報のページへ http://www.gifist.net/tabid/66/Default.aspx

2010年11月29日月曜日

二度あることは三度ない・・・ことを願う



 残念なことですが、昨日の三重県亀山市での交通事故 ~出勤途中の外国人労働者を送迎していたマイクロバスに前方不注意のトレーラーが衝突し、6名が死亡、10名が重傷を負った~ は全国ニュースとなってしまいました。
 遠い異国の地で不慮の事故にあった方々は本当にお気の毒です。ご冥福をお祈りします。

 その矢先、今日は、はんわしにも見慣れた(かつての通勤路であった)、紀勢自動車道の三瀬トンネルで大事故が発生しました。
 反対車線に飛び出してきた大型トラックが対向して来た自家用車と衝突。トンネル内で火災となり3名が亡くなったというものです。



 大変悲惨な現場のようです。被害にあった方のご冥福を祈りたいと思います。

 紀勢自動車道に関しては、勢和多気ICから終点の紀勢大内山ICまでの区間は対面通行となっており、上下の二車線を隔てているのは、数メートル置きに立てられているプラスチックかゴム製のオレンジ色のポールに過ぎません。
 対面区間は制限速度が確か時速70kmだったと思いますが、実際には80kmから100kmくらいで走るクルマがほとんどで、スピード違反が恒常的であり、たまに制限速度で走っているクルマがあると、後続車にあおられている始末です。

 根本的な解決は、4車線化して上下を中央分離帯で区切ることでしょうが、もはや日本の今の国力では、実現は数十年先になってしまうでしょうし、永久に実現しないかもしれません。
 それならば、ドライバーに制限速度を守らせるように、自動速度取り締まり機を設置するとか、何らかの方法が必要なのではないでしょうか。
 前々から、対面通行の高速道路なんて危ないなーと思っていたのに、いつの間にか慣れてしまって、どれだけ危険なことなのかの自覚も低下してきていたようです。お互い気を付けたいものです。

 それにしても思いを馳せざるを得ないのは、日本の科学技術は優れているはずなのに、クルマの高速化や燃費向上、安全性能の向上には技術が活かされているものの、クルマのスピードが出ないような装置とか、スピードを落とさざるをえない(しかし揺れたりせず安全に走れる)ような路面の工夫とか、もっと言えばゆっくり走りたくなるような景観づくりとか、そのようなものには技術が投入されないか、そもそもそのような発想がない、ということの不思議さです。

 科学技術(心理学や生理学のような分野も含めて)を「交通安全」といった社会システムにいかに応用していくかは大きな課題だし、それがなかなか進まないところに日本社会の底の浅さを垣間見る思いです。 

2010年11月28日日曜日

経済対策に「減税」は常識なのでは



 河村市長の辞職表明によって混沌としてきた名古屋市政ですが、これによって河村市長がブチ上げていた「市民税の減税」はどうなってしまうのかと密かに心配していました。
 しかし、今日の中日新聞によると、名古屋市長選と同日選挙もうわさされている愛知県知事選挙の候補者の一人が、県税である不動産取得税の減税を公約に掲げるとのことです。

 ごく普通に考えて、景気が悪いのであれば、減税して国民の負担を少なくし、その分を消費に回してもらい、それによって経済を活発化しよう、と考えるのは当たり前のことのような気がします。
 現実にアメリカでは政府による景気対策の主流は「減税」であり、国民の負担を減らすと同時に無駄な政府や地方公共団体の仕事は削減し、スリムで筋肉質な役所にすることです。(ただ、そのスリム化は、地方公共団体などにおいては時として警察官や消防官の削減とか教員の削減などのように、住民サービスに直結する分野まで容赦なく大ナタが振るわれるという、日本では到底考えられないほどに徹底したものですが。)

 しかし、国や地方が国民・住民から税金を徴収し、そのカネを財源に事業を作り、予算をばら撒くというやり方は、それによって、税務署員やあまたの公務員の仕事が必要になり、役所的にとってみれば食い扶持になってけっこうなことですが、減税すれば税務署の仕事も、事業をする役所の仕事も減って、その分人件費も削減され、住民にとっては負担が減るハッピーな話です。

 公務員には身分保障があり、事実上、解雇することができません。しかし、ここで減税と公務員制度改革をセットにすれば、大幅にコストの安い社会を実現することもできるかもしれません。
 愛知県知事選の候補者の例では、現在、県は税金を使って企業誘致活動を行い、工場を建ててくれた企業に補助金を出しています。これは徴収と交付の二重のコストがかかります。これを、不動産取得税を減税する方式にすれば、役所の仕事は増えずコストがかからないまま企業には恩恵がいき、役所は税収が減る分、自らをスリム化する必要があるので無駄(たとえば余剰人員)が削減できるという二重のメリットが生まれる余地があります。

 厳しい経済情勢の今、国はさらに5兆円もの景気対策を行うようですが、これによって財政は間違いなく悪化が進み、しかし、5兆円の対策は本当に効果があるのか(いったい、失われた15年の間に、いくらの景気対策が講じられたのでしょうか。天文学的な金額のはずですが、景気は良くなりません。)は誰にもわからないのです。

 その中で、ようやっと「減税」という正論を唱える候補者が出てきたのは、大げさに言えば時代のダイナミックな変化を予兆させるように思えます。
 もちろんこれは役所と役人だけの問題ではありません。
 何かコトが起こると、何でも政治家や役所に頼み、あれも、これも、それも、全分野区所がやれ、お前たちは公務員だ、公僕じゃないか、と言っていた国民・住民にとっても泰平の眠りを覚ます出来事になるかもしれません。
 理想は高くても、カネがなくてはシステムは動きません。子孫の代に借金を重ねてまで動かし続けるシステムはどこかが少しおかしいのではないか。一度、本当に国民が税金を負担してでも最低限、行うべき公共の仕事とはどんなものがあるのか。何を優先せねばならず、何を後回しにできるのか、そのような成熟した議論が、行政にも国民住民にも求められている気がします。

2010年11月27日土曜日

紅葉を見に、せいわの里まめやと丹生大師へ




 本来、神と仏は別々の存在であるはずです。
 神は天の神(天神)と地の神(地祇)とがあるわけですが、それはもともとは人格を有していない、山とか海とか川とか滝のような地形そのもの、あるいは風や雷や雨といった気象現象であって、自然宗教として成立したものです。
 一方、仏教は、インドから中国、朝鮮を経由して伝来した外来の宗教で、教祖はお釈迦様であるとハッキリしており、人格を持っているし、教義は体系化されています。しかも、宗教としての要素以外に、哲学、医学、建築、音楽、文学などさまざまな知識教養も一体化した、総合的な文明でした。

 いつしかこの二つは合体して神仏習合の考え方が広まり、、日本の神も、仏のように人格を持つと認識されるようになり、寺院の影響から神社が建てられるようになります。さらに「神様は、実はもともとは仏様で、日本に仏教を正しく広めるために神という仮の姿をとっておられるのだ」という本地垂迹説が一般化します。
 外国なら、キリスト教会の中にお稲荷さんがあるとか、イスラム寺院の中に神農皇帝像が建っているとかは絶対にあり得ませんが、日本では神と仏の二つが同じ敷地に並んで祀られていたり、渾然一体となっている(お寺に鳥居があるとか)ことは珍しくありません。

 三重県多気町(旧勢和村)の丹生(にう)にある神宮寺(一般的には「丹生大師」(にうたいし)と呼ばれます)というお寺も、同じ敷地の中に丹生神社という社があり、仏様が神様を守っているという、典型的な神仏習合のお寺&神社です。
 ここは紅葉の名所でもあって、境内は美しく色ずいていました。

丹生大師
丹生大師
丹生神社
 丹生という地名は、水銀(丹)を産出する土地、という意味だそうで、全国各地に見られる地名だそうです。確か吉野にも丹生という有名な神社があります。

 今でこそ、ひなびた田舎町といった風情ですが、かつて奈良の大仏が建立される際にも、大仏を金メッキするために大量の水銀がここから朝廷へ献上されたとのことです。
 丹生を含めた当時の三重県南部地域は伊勢神宮の領地であり、水銀のように大仏建立に神宮が関わっていたことは、東大寺の責任者であった僧の行基が、60人もの僧団を組んで伊勢神宮に参拝した記録が残っていることからもうかがい知れるそうです。

 水銀はメッキに不可欠であったばかりでなく、化粧用のおしろいの原料としても取引されました。そのため丹生は、多くの鉱山労働者や商人が集まる地として空前の繁栄を遂げていました。
 江戸時代になると、技術革新によって水銀はおしろいの原料には使われなくなってしまいました。しかし、その頃から、ヨーロッパより日本に伝染してきた梅毒の治療に薬効があることがわかり、以後は薬の原料として採掘が続き、丹生の繁栄も続くことになります。
 
 丹生大師の壮麗な伽藍も、その頃の財力の繁栄ではないかと思われます。おそらく、スケールから言っても三重県内で一番フォトジェニックなお寺ではないでしょうか。

 今、丹生大師の周辺は、江戸時代に開削された農業用水である立梅(たちばい)用水を公園化したり、地元農家の主婦グループが食文化の伝承を理念に立ち上げたレストラン せいわの里 まめやが人気を博しているなど、地域活性化の一大スポットになっています。


 まめやは、地元産の大豆を使ったお豆腐、あげ、味噌などと、無農薬の朝獲れ野菜をふんだんに使った家庭料理をバイキング形式で提供しています。大人一人1000円ですが、今日もお昼過ぎには15分待ちという混雑ぶりでした。
 まだあと、一週間くらいは紅葉も大丈夫そうです。ぜひ一度、訪問してみてはいかがでしょうか。

■丹生大師  http://www.ma.mctv.ne.jp/~jr2uat/daisi/daisi.htm#1

■せいわの里 まめや  http://www.ma.mctv.ne.jp/~mameya/


2010年11月25日木曜日

ITとICTの違いとは

 先日、商工会と商工会議所の違いをちらっと書いたところ、特に行政関係の方には好評だったようなので、その第2弾。

 ITとICTの違いです。

 これは、「創業」と「起業」の違いの問題とよく似ていて、結論から言えば、要は「どっちでもいい」ということなのでしょう。 
 
 ITは、インフォメーション・テクノロジー。ICTは、インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジーで、コミュニケーションという言葉が入っているかどうかの違いなのですが、ITの代表格であるインターネットは、もともと「双方向性のあるメディア」としてコミュニケーション性が高いことが大きな特徴とされていたのであり、そう考えるとますますどっちでもいいということになります。

 しかし、ITは経済産業省が唱え、ICTは総務省が唱えているという「省益あって国益なし」の小役人同士のいさかいという以上に、別の大きな意味があるのではないかと思うようになりました。

 昨日書いた、松阪商工会広域連合によるネットショップ起業塾での、アイリンクコンサルタントの加藤先生の話にもあったように、中小企業、特に小規模事業者にとって最も身近なIT化の一つであるネットショップは、物販での活用からサービス業での活用へ変わって来ており、そして検索エンジンも、文法重視からコンテンツ重視へと変わってきています。

 物販からサービスへ、というのは、「モノからモノガタリへ」、「モノからコトへ」と言われるように、物質・物体以上の付加価値を求める消費姿勢の変化に対応したものといえます。形がなく、生産と消費が同時だという特質を持つ「サービス」(たとえば、宿泊業、飲食業、学習塾、利用・美容、などなど)の顧客誘引に実はネットが有効です。

 また、SEOも最大の検索サービスであるグーグルが、サイトの提供側から閲覧者(つまり、情報の受け手側)側への重視を進めていることもポイントです。見やすく、早く表示され、しかも閲覧者が求めている情報に正確にたどり着ける工夫が凝らされていることが検索上位に表示されるポイントになっているこのこと。

 その意味では、ややもするとサービスの提供者側、ハード志向だったITという表現よりも、ブログが登場したWeb2.0の時代から、さらに双方向性が重要となってきているという意味で、コミュニケーションを含んだICTのほうがより正確だと思うようになってきた今日この頃です。

<平成23年1月16日追記>
 コメントをいただき、ITとは「インテリジェンス」テクノロジーだと書いていた部分を「インフォメーション」テクノロジーに訂正しました。

2010年11月24日水曜日

あなたの本を作りませんか? 



 松阪市のNPO法人Mブリッジが自費出版サポート事業を始めたことは、以前このブログでも書きましたが、実際に自費出版をするにあたって、どのようなテーマにするかの設定や、話のまとめ方、原稿の書き方などを解説したブックレットを出版しています。

 それで思い出したのですが、はんわしは個人的に、乗り物関係の自費出版物(もしくは限定出版物)を何冊か入手したことはありますが、想い出の矢ノ川峠の会が2009年6月に発行した「想い出の矢ノ川峠」と、勢田川出版が1991年に発行した「伊勢の市電(山田のチンチン電車)」の2冊は愛読書になっています。

 「想い出の矢ノ川峠」は、昭和34年の国鉄紀勢本線開通まで、三重県南部の尾鷲市と熊野市の間を、日本有数の急峻な峠として有名であった矢ノ川峠(やのことうげ)を越えて結んでいた国鉄バス紀南線をつづったものです。




 現在は国道42号線を使って約45分で行くことができますが、当時の矢ノ川峠はヘアピンカーブの連続で尾鷲~熊野に何と2時間45分も要していたとのこと。

 唯一の公共交通機関としてその使命は重大であり、運行にかかわった人々の苦労は相当なものがあったでしょうし、旅客として利用した人々にもさまざまな思い出があったことでしょう。

 この「想い出の矢ノ川峠」は、今も健在な当時の運転手、車掌などのスタッフからの丹念な聞き書きを中心に、現在は廃道となっている旧バス道の現状調査や、バス運行当時の切符、写真、新聞などの記録がまとめられているもので、非常に読み応えがあります。

 もう一冊、「伊勢の市電(山田のチンチン電車)」は、明治36年に敷設され、伊勢市民や多数の参宮客の運送に活躍し、昭和36年に惜しまれつつ廃止された、伊勢市の路面電車(三重交通神都線)の写真、切符などの資料集です。

 こちらの本は、沿線にあった伊勢や二見の名所とか、主要な停留所の、当時の風景と現在の風景を対比した写真が載っているのが特徴です。
 蒸気機関車の時代から大きく変貌した伊勢市駅前の光景(この本に載っている「現在」は平成2年ころなので、平成22年の今、さらにこの本の光景から伊勢のまちは大きく変貌(衰退)しているのですが。)や、家が一軒も建っていない見渡す限り田んぼの二見町の光景とかが非常に興味深いものです。

 インターネットの全盛で、自費出版などのニーズは低下しそうな気もしますが、やはり紙の本は読みやすいし、モノとして手元に残るので、一定の根強いニーズはこれからも残っていくものと思います。
 功なり名を遂げた人の自叙伝や、市井で誠実に過ごした人の回想記などは、地域文化の点からも価値があるものでしょう。

 しかし、はんわしが思うのは、そのようなニーズを持つ昭和世代の方々は、ちょうどカメラとか8ミリカメラが一般家庭に普及し、「画像」文化が一般化した高度成長期を生きてきた人々でもあるということです。

 画像や映像は、非常に情報量が多く資料的な価値が多いものです。しかし実は、同時代の人でなくては、これが何の画像なのか(町の景色にしろ、お祭りやイベントのような習俗にしろ、あまりに変化が早くて)説明がなくては価値がわからなくなってしまう資料という性格も持っています。

 その意味で、きっとアルバムに張られ、押入れにでも眠っているであろう貴重な写真や8ミリフィルムを、自費出版本で丹念に解説するというのは、新しい自家製本としてビジネスモデルにならないでしょうか?

2010年11月23日火曜日

松阪商工会連合会のネットショップ起業塾に行ってみた



 松阪商工会広域連合の主催によるネットショップ起業塾にオブザーバー参加してきました。
 このネットショップ起業塾は、昨年度も受講希望者が殺到して多数のキャンセル待ちが出た人気講座ですが、今年も定員を約20名オーバーしたとのこと。
 熱気がこもる会場にいると、厳しい経済状況の中、積極的な理由にしろ消極的な理由にしろ、起業や創業を目指している方が松阪にはこれほどいるのかと、あらためて認識させられます。

 講師はこれも昨年度に続いて、静岡市にあるアイリンクコンサルタントの加藤先生です。
 加藤先生の話はいつもエキサイティングな内容なのですが、今回は特にネットショップ界では、ヤフーがマイクロソフトの傘下に入ったこと、さらにそのヤフーとグーグルが検索技術を共有するという2つの大きな地殻変動が起こっています。
 今後の検索エンジン対策にどのような影響が生まれるのか、また、その対策はどのようにすればよいのかというテーマでのお話となり、大変に内容が濃いものでした。

 ポイントはいろいろあるのですが、日本では一般ユーザーが使う検索エンジンとして圧倒的なシェアを誇っていたヤフーの地位は相対的に低下し、今後のSEOはグーグル対策が中心になるべきことが説明されました。
 加藤先生によると、グーグルは「高齢でガンコな大学教授」のようなサーチエンジンだとのこと。ヤフーがビジネスエクスプレスのような検索順位を上げる有料サービスを持っていたのに対し、グーグルは検索アルゴリズムも自分の原理原則を守るという基本姿勢が強く、カネで左右されません。しかも、タバコとか酒類のようにグーグルが好きではない(有害だと思っている?)分野は、そもそも検索エンジン連動広告すらも行っていないなど、独特の価値観があるそうです。


 しかしそのことは、グーグルが検索上位にするためにサイトのどんな面を重視しているかさえ把握すれば、小規模事業者や創業間もない事業者であっても大手に互していける可能性があるということです。

 詳細は書けませんが、アイリンクコンサルタントの分析によれば、静的なサイトの有無、画像情報の重視、閲覧者を混乱させず必要な情報へ導く内容となっているか、のようなポイントが重視されるとのこと。一言でいうと、HTMLの時代は、サイトの文法が正確で論理的に構築されているかどうかに重点があったものが、文法の形式よりも、そのサイトで実際に何が伝えられているか(そしてそれを閲覧者に正確に伝える努力がされているか)に重点が置かれるという「閲覧者重視」「コンテンツ重視」になってきているとのことです。

 これは今までのSEOの常識を大きく覆す内容です。

 この対策として、パンくずリストやグローバルナビゲーションの設置は必須。また、サイト内で美しい画像をすばやく表示することがSEO上有効となるため、撮影術やデータ圧縮方法も大きなポイント。さらには言語もHTML→XML→CMSと進化している中で、ブログを活用する方法などを中心に、丸一日、講義していただきました。

 正直、一年前のネットショップ起業塾の時の内容とはまったく違っていて驚きでした。SEOも日進月歩。ヤフーからグーグルへの主役交代によって、ネットショップも新たな勝ち組と負け組みがはっきりしてくることでしょう。

 役所のようなところに閉じこもっていると、そもそも中小企業にとってのSEOの重要性の認知が低い上に、SEOをテーマとしたセミナーは確かに過去からいろいろなところで実施されているので、何も新味がないテーマだと誤解されがちです。しかし、それはまったくの間違いです。自分のような立場の者が、無知な役所関係の人間を説得し、中小企業のネット活用やSEOに必要な施策を進めていくことは、天から与えられた使命なのかもしれません・・・
 加藤先生、ならびに松阪商工会広域連合には本当に感謝の一日でした。

2010年11月21日日曜日

女の願いを一つだけ叶えてくれるという鳥羽の石神さんに行ってみた



 はんわしは鳥羽出身なので、鳥羽市街地からクルマで約30分くらいかかる鳥羽市南部の漁村、相差(おおさつ)地区に、海水浴とかに行ったことは1~2回ありました。
 鳥羽市南部はリアス式海岸になっていて、入り組んだ海岸線と背後に迫った急峻な山地の間、入り江の奥地のほんのわずかな平野部に形成された集落がいくつか点在しているのですが、その中でも最も大きな集落が相差地区です。

 ここは志摩地域独特の漁法である海女さんの本場であり、昔に比べて激減したとはいえ、今でも海女さんによるアワビ漁などが盛んなようです。
 今では美しい海岸の風景と、新鮮な海の幸を活かした旅館・民宿街となっており、最近は海女さんこそがこの町の地域資源ということで、実際の海女さんたちと語らいながら食事ができる海女小屋が作られたりして、地域固有の漁村文化にも触れられるまちづくりを目指しているように見受けます。

 そしてこれもごく最近だと思うのですが、相差の町の高台にある、女性の願い一つだけ叶えてくれるという「石神さん」なる祠が全国的な注目を集め、多くの参詣者がつめかける現象が起こっているそうです。
 おそらく、カラダを張ってキツイ潜水漁に従事している海女さんの文化と密接な関連があるのでしょう。そんな女性の神様に、おっさんのはんわしがお参りするのもどうかとは思いましたが、噂の真偽を確かめるために、好天の今日、石神さんを訪れてみました。


 石神さんは、相差の町の中心地(?)であるJAとか駐在所がある一帯から、狭い坂道を山側に入った神明神社の境内にあります。神明神社とは、伊勢神宮の天照大神をお祀りしたもので、日本中どこにでもある、いわばありふれた神社。
 おそらく、ブームになる前の石神さんは、土着の地祇として神明神社の境内にひっそり祀られていたものと思われます。


 しかし、日曜日の午後、駐車場(15台くらい停められる)はすでに満車。境内には、ほとんどが女性グループやカップルの参詣者で、数十人が石神さんに殺到しています。
 女性たちは、みゃーみゃー、でんがなまんがな、とかしましいので、名古屋や大阪からも多数おみえになっているようです。


 社務所では、石神さんの祭神である玉依姫命(たまよりひめのみこと。ワタツミノカミの娘で、確か神武天皇の母親だか先祖だったはず)のお守りを頒布(800円)していましたが、横で見ていると、次から次から女性の参詣者がやってきて、まさに「飛ぶように」売れて行きます。
 係の方にお話を聞くと、4月にTBSの番組で女性のパワースポットとして石神さんが取り上げられ、その直後から参詣者が増え始め、現在は週末ごとに奉賛会の皆さんが奉仕して、お守りの頒布や駐車場の整理などをされているとのことでした。


 小さな祠ながら、これ自体は新しく造り代えられたもののようで、真新しい感じがします。
 あまりに女性が多いので、なんだか男性は入りずらい雰囲気があり、奥さんとか恋人とかが願いごとをせっせと紙に書いている間、男性は手持ち無沙汰そうに鳥居の手前でぶらぶらしている、みたいな光景が展開されていました。

 しかし、意を決して祠に近づくと。

 依代と思われる注連縄が掛けられた岩が賽銭箱と祠の間にちょこん、とあって、手を伸ばせば撫で回すことができます。なんと畏れ多いことでしょうか。
 おそらく数え切れないほどの悩める女性に撫で回されたためか、岩の先端部はつやつやと光っており、信仰心の強さと、その裏返しとしての人間の業の深さをのぞかされた思いでした。

 石神さん自身は、今のこの混雑ぶりを、どのように思し召しているのでしょうか。
 ともあれ、はるばるこの地まで足を運んで祈りをささげた女性たちの大願が成就せんことを願わずにはおれないのでした。
 帰りの相差から見る太平洋は、はるかに水平線が見え、たくさんの船が行き交う、静かで明るい海でした。

 ■鳥羽観光情報サイト 石神さん 
   http://www.city.toba.mie.jp/kanko/miru/jinjya/14-shinmei.htm

2010年11月20日土曜日

本当の「顧客」は、実はこっちが思っているのと違ったりして



 NHKの人気番組 週刊こどもニュース が、今年12月19日の放送をもって終了するそうです。
 時事問題やスポーツなどをわかりやすく解説するというコンセプトで、平成6年(16年も前!)にスタートしましたが、実際には視聴者の多くは子どもではなく、むしろ高齢者に支持されていたそうです。

 一部の報道によると、それまでの土曜日の夕方の放映時間が今年から日曜日の朝に移ったため、裏番組のアニメや特撮ヒーロー番組に子どもの視聴者を奪われてしまったことも一因ではないかということです。

 このような、提供者側が「顧客」と想定しているターゲットと、実際にその商品やサービスを利用している顧客の層が異なっている、というケースは、子どもニュースに限ったことではなく、私たちの身の周りでも少なくないようです。

 家族連れを想定しているが、単身者が多い。
 女性客を想定しているが、男性も多い。
 クルマでの来場を想定しているが、駅から歩いてくる人も多い。

 このような実態は、もし感度の高い人ならお客の様子や話す内容からカンを働かせて気づく可能性もあるでしょう。しかし、やはりアンケートとか、あらためてお客さんにキチンと聞いてみるとか、顧客データベースを一晩じっくり読み込んでみるとかの実態把握は不可欠でしょう。そのうえで、もし想定と実態とのミスマッチがあれば、その原因や対策を考えれば良いわけで。
 このような努力は決して無駄にはならないはずです。


 

2010年11月19日金曜日

JA三重南紀がみかんをタイへ輸出!



 三重県御浜町(みはまちょう)は、東紀州と呼ばれる三重県南部にあって、熊野灘と山々にはさまれた温暖な地。「年中みかんがとれる町」をキャッチフレーズにするほど、みかん栽培が盛んです。
 しかし、ここも過疎化・少子高齢化の荒波からは逃れることができず、昭和35年ごろには1万2千人いた人口も、今では9700人あまりに減少しており、目下の行政課題は隣接する熊野市との合併問題であるという状況です。

 御浜町は、失礼な言い方かもしれませんが、あまり産業振興に熱心でない(誤解を恐れずに言えば)町でなのではないか、と思っていました。
 みかん農業があまりにも大きな地場産業なので、町役場の産業政策も「みかん」の一本足打法と言ってよく、JA三重南紀とタッグを組んで、南紀みかんの栽培の支援とか、消費者向けのPRは一生懸命やるのだけれど、南紀みかんは、たとえばお隣の和歌山県の有田みかんとかに比べてもブランド力が強いとは言えず、生果以外のジュースや加工品といった関連商品の層も薄いと言わざるを得ません。
 はんわしの知る限り御浜町内では、唯一、すぎもと農園が青みかんジュースとか、みかんのチンピエキスを活用した化粧品や育毛剤、洗顔石鹸などをシリーズ化している取り組みがあるだけで、あとは本当に、みかんとみかんジュース以外に特産品がない、という印象でした。

 しかし、しかし、ここへきて一大ニュースが飛び込んできました。

 中日新聞(11月19日付け)によると
・御浜町のJA三重南紀で18日、タイへ輸出する早生(わせ)温州ミカンの初めての出荷作業があった。試験輸出の今季は、この日に箱詰めした約2トンを現地の高級百貨店で販売する。
・JAは、ミカンの国内需要の低迷を受け、海外に販路を見いだそうと、約2年前からタイへの輸出を計画。輸入の許可を得るため、畑にトラップを仕掛けて害虫が発生していないことを証明したり、植物検疫官の査察を受けたりして、準備を進めてきた。
・この日も、タイから検疫官が選果場を訪れ、実際に輸出されるミカンの傷や腐敗を細かく検品。箱詰めされたミカンはコンテナで輸送され、入国検査を経て、来月5日ごろには販売が始まる。
・経済成長が進むタイでのターゲットは、味や品質に加えて、食品の安心安全を求める富裕層。JAの山本理事長は「ようやく輸出にこぎ着けられた。品質には自信があるので、来年以降、徐々に輸出量を拡大していきたい」と話した。
 とのこと。

 すでに青森リンゴや宮崎のマンゴー、山形のサクランボなどは、海外の富裕層向けに輸出されており、現地の価格では相当高価となるものの、日本の農産物は品質が高く、しかも安全性が高いとの評価を得ており、一定規模のビジネスになっていると聞きます。

 南紀みかんも、タイ現地では1kgあたり1200円から1500円と、日本の5~6倍の価格となるようです。また、温州みかんは皮が薄いので輸送中の品質管理も大変だと思うのですが、日本と違って好況に沸いているタイの富裕層向けに売り込めば、きっと可能性は開けてくるような気がします。
 後継者不足など課題も多い日本の農業ですが、要は、農業が儲かる産業となり、働いた見返りに十分なリターンがあれば農業を継いだり、新たに農家になろうと考える人も増えてくるはずです。
 資本主義社会である以上、この「自立システム」こそが基本なのであって、いくら規制し、保護しても、農業はいっこうに強くなりませんでした。

 その意味でも、このJA三重南紀のこの取り組みの、成功を祈らずにはおられません。


大きな地図で見る


 

2010年11月18日木曜日

三重県のホームページネタ2題



 三重県庁が「三重の食」応援ブログなるものを始めました。
 三重県は山あり海あり、食材もさまざまなものがあります。三重の風土に根ざしている食の魅力を、県内の農水商工団体(農協、漁協、商工会等)や行政(県・市・町)の職員などがライターとなって、ブログで情報発信するというものです。
 楽天が、まち楽という、地方自治体とタイアップした地域の食や観光の情報発信を行っていますが、それの悪く言えば二番煎じのようなスタイルです。


 たとえば、三重県熊野市でしか栽培されていない香酸かんきつである「新姫」(にいひめ)も紹介されていたりします。
 新姫はヘスペリジンという抗アレルギー作用がある成分などが多く含まれており、生食(ミカン酢とか香り付け)のほか加工食品分野でも将来性が期待されているミカンです。
 しかし栽培量が少なく、地元熊野市以外ではほとんど購入することはできず、その意味で「特産品化」が極めて難しいとも考えられる、微妙な位置づけにある農産物です。
 三重の食ブログには、今年の生果はすでに販売終了(!)しており、搾汁やドリンクのみが入手可能であることも正確に書かれており、これはこれで好感が持てる記述です。

 つまり、この種の情報発信によくある、能書きは色々書いてあるが、一番肝心な「で、値段はいくらで、どこに行けば買えるのか?」をはぐらかしているというスタイルとは一線を画しています。
 ただし、食のPRという性格上、特定の生産者や事業者の情報を掲載せざるを得ないので、その点の客観性・正確性の担保と、県庁ホームページで「宣伝」されることの公平性などが問題になってくるかもしれません。(話題になることは、それはそれでいいことだと思いますが。)

 ■三重の食 応援ブログ  http://www.pref.mie.jp/CHISANM/HP/mienosyoku/index.htm

 次に、三重県商工会議所連合会が始めた「商工会議所がおすすめする観光ルートMAP」です。
 三重県内の12の商工会議所が、商工会議所ならではの視点から、一般には知られていないオススメルートを紹介するというもの。


 はんわしもいくつかのコースを見てみましたが、ルートや見どころが丁寧に書かれていて、知られざる名所に足を伸ばしてみようか、という気になります。
 特に、今、若い女性の間で絶大な人気を誇っている鳥羽市相差(おおさつ)地区の「ここにお参りすると女性の願いを一つだけ叶えてくれる」という石神さん散策コース(鳥羽商工会議所)とか、
 来年のNHK大河ドラマの主人公となる、江(ごう)姫が少女時代を過ごしたという伝説が残る、伊勢上野城(伊賀上野ではない)周辺の散策コース(津商工会議所)
 なんかは、ちょっと注目です。

 ■三重県商工会議所連合会  http://miepfcci.pro.tok2.com/

2010年11月17日水曜日

商工会・商工会議所の本来業務って?



 11月15日に行われた事業仕分け第三弾において、やはりと言うべきか、中小企業応援センター事業(中小企業経営支援体制連携強化事業)は、「廃止」という結論になりました。
 中小企業応援センターは、平成21年度に同じく事業仕分けで廃止妥当とされた地域力連携拠点事業(経営力向上・事業承継等支援体制構築事業)をほぼ引き継いだもので、仕分け人が指摘するように、看板の掛け替えと批判されても仕方がないものでした。
 事業の内容も、中小企業の経営課題のうち商工会や商工会議所では対応できないような高度専門的な内容に対応する拠点であるとされ、既存の商工会議所等に屋上屋を架すようなものでした。
 この仕分け結果は極めて妥当な内容であり、地域の中小企業を支援するスキームを、国(中小企業庁)がしゃしゃり出てきて莫大な費用を使って構築する必要はなく、この財源を地方自治体への交付金にし、地方自身が地域の実情に応じた支援体制・連携体制を作ればいいことだと思います。

 事業仕分けの評価コメントにも、「(中小企業応援センター事業は)商工会・商工会議所等の本来業務である。」というものがありました。
 商工会議所や商工会(商工団体と称されます)も、これをきっかけにして高度な課題にも対応できる、自ら考え行動する団体に強化できるチャンスであるという意見があるようで、これは本当に頼もしい限りです。
 しかし、問題なのは、中小企業の課題解決が、イコール商工団体の本来業務と言い切れるかどうかです。

 一つには、商工会と商工会議所は基本的に別物だという事実があります。
 それぞれの根拠法令を見ても、
 商工会は、主として町村における商工業の総合的な改善発達を図る等のための組織として設けられているもの(商工会法第1条)で、行うべき事業は「商工業に関し、相談に応じ、又は指導を行うこと。」「商工業に関する情報又は資料を収集し、及び提供すること。 」など10項目が挙げられています。

 一方の商工会議所は、その地区内における商工業の総合的な改善発達を図り、兼ねて社会一般の福祉の増進に資することを目的とする(商工会議所法第6条)とされており、商工会とは微妙に異なります。
 行うべき事業も、まず最初に「商工会議所としての意見を公表し、これを国会、行政庁等に具申し、又は建議すること。 」が掲げられています。つまり、企業の指導育成より、地元経済界の意見集約が重視されていると言えます。
 このほか「行政庁等の諮問に応じて、答申すること。 」、「商工業に関する調査研究を行うこと。 」と続き、商工会法では一番最初に来ていた相談・指導業務は何と13番目に掲げられています。
 おそらく、商工会議所は一定規模の企業が多く経済活動が活発な都市部での活動が想定されているためか、個別の中小企業への指導は(やっていないわけでは決してありませんが、建前上は)優先順位が低いのです。
 なので、仕分け人が言う商工会・商工会議所の本来業務は、一律に決まるのでなく、少しく吟味が必要です。

 もう一つは、残念ですが、商工会議所、商工会とも、会員数、運営費といった規模の違いが大きく、もっとはっきり言えば能力差が大きく、A市の商工会議所は対応できる相談も、B市の会議所では対応できない、という事例があることです。これは、中小企業応援センターがやっていたような、事業承継、ものづくりの高度化支援などの分野になってくると特に顕著です。

 繰り返しますが、はんわしは中小企業応援センターの廃止はやむを得ないと思います。しかし仕分け人の言うように、では既存の商工団体がすぐに明日から取って代われるか、というと、これは相当のバラツキが出てくるだろうとは思います。

 ■屋上屋を架す? 中小企業応援センター

2010年11月16日火曜日

佐渡市は観光振興に議員視察を受け入れている



 地域振興の取り組みが盛り上がり、成果も生まれてきている三重県東紀州。
 ここでの観光・交流の集客増加に、行政関係者の視察を積極的に受け入れてはどうかという提案を、以前このブログでもしたことがあります。(2010年8月10日付け「紀北町 増えるI・Uターン事業者」

 これとほぼ同じようなコンセプトを、いち早く積極的に実現した市が現れました。残念ながら三重県ではなく、新潟県佐渡市です。
 地方公務員向けの業界紙である時事通信社の「官庁速報」によると

・佐渡市は、地方議員の行政視察の受け入れに力を入れている。全国のすべての市・特別区に案内状を送付。地方議員の情報発信力を活用し、低迷する島内観光の起爆剤としたい考え。

・案内状には、トキと共生する島づくりや海洋深層水を活用した漁業、廃食油再生燃料化事業など市の取り組みに関する資料を添付。これまでに十数件の問い合わせがあったという。

・全国的に行政視察が減る傾向にある中、同市への視察は年間40自治体程度を維持。トキの野生復帰事業に合わせた環境への取り組みや、過疎化に伴う空き家対策事業などが、他の自治体から注目されていることが要因とみられる。

 とのこと。

 佐渡市議会事務局は「今後、新たな事業が始まった場合は資料を送るなどして、年間50自治体の受け入れを目標に取り組んでいきたい」と話しているとのことです。(2010年11月16日付け)

 これは非常にいい着眼点だと思います。
 モノを作ったり、サービスを提供している以上、商品やサービスを誰でもいいから一人でも多くの消費者に提供したいと考えるのは当然でしょう。
 しかし、どんなお客でもいい、買ってくれるなら誰でもいい、というのは結局、焦点が定まらず、誰にも受け入れられないということと裏腹になってしまうことには本当に注意が必要です。

 誰に売りたいのか、自分の顧客となるのは誰か、については、年齢、性別、家族構成、住んでいる場所、職業、年収、住んでいる家の状況、などまで一つ一つ細かく、具体的に絞り込んで設定していくほうが、結果的に売り込み方が明確になり、攻めやすくなります。

 東紀州は自然は豊かで景勝地も多く、熊野古道という世界遺産もあります。鮮魚、ひもの、みかんなど食べ物はおいしく、特産品・名産品も多くあります。
 しかし、客観的に見て、それが北海道や沖縄や、信州といった観光地に対応できるほどの魅力があるか、北陸や九州など食のブランド地と比較して優位にあるかというと、残念ながらそうではありません
 
 だからこそ、自分たちの売り(強み)の再確認と、それを誰に売っていけばいいのか、をセグメントする必要があるのです。

 自然 + 食や特産品 + 地域振興の取り組みと成果

 この3つの和が、他地域と差別化できる東紀州の強みになると思うのですが。

■新潟県佐渡市議会ホームページ 
  http://sougo.city.sado.niigata.jp/gikai/gyouseisisatu/gyouseisisatu.jsp