2010年2月28日日曜日

最近の商工政策に見る「官」への逆流

*商工政策に関心のある方以外は読み飛ばしてください*

 中小企業応援センターの公募がまもなく締め切られます。
 地域力連携拠点事業については、例の「事業仕分け」により、連携拠点に指定された商工会議所や商工会といった団体の、いわば本来の経営指導業務と重複している内容だとして、事業の見直しという結論に至ったわけですが、中小企業応援センター事業は(言葉は悪いですが)、その焼き直しとして経済産業省により再度事業化されたものです。

 しかしその内容は、応援センターに中小企業の経営にまつわる諸問題の専門家をストックし、企業の要請に応じて無料で派遣するというもので、連携拠点事業のスキームと大した違いがありません。
 
 正確には、応援センター事業のほうは、商工会議所などの経営指導員が対応できないような一定の高度・専門的な課題に対して派遣するという要件はかかっています。
 ただ、地方の中小企業にそれほど高度な課題(たとえばM&Aとかのような)がころがっているとは思えませんので、専門家を派遣する応援センター側にとっては、遅かれ早かれ「現実的な」対応が迫られることになるのではないでしょうか。
 さらに大きい問題なのは、応援センターの専門家派遣は無料で企業の費用負担が生じないため、中小企業の支援に関わっている普通の経営コンサルタントや士業による支援サービスの「クラウディングアウト」の心配です。

 国や県、中小企業支援センターなどの「官」が肥大化することで、民間セクターの活動を食いつぶしてしまうという問題は、製造業への研究開発支援や技術開発支援にも共通します。
 先日、三重県発の全固体ポリマーリチウム二次電池の開発成功についてニュースが報じられました。 
 電池がこれからの産業の有望な基盤技術になるのは確実ですが、それにしても、使われた開発費用は約6億円(!)。これは国が負担しているとはいえ、もちろん元々は国民の税金です。

 もし電池が成長産業であり、将来性が有望だというのなら、研究開発になぜ民間の資金(銀行からの融資、投資ファンドなど)を使わなかったのかという疑問が浮かびます。
 現在、銀行はますます企業向けの貸出残高を減少させています。資金は余っているのに、貸し出す先がない(見つけられない)のです。
 したがって、今必要なのは、研究開発に国が巨額の補助金を支出してクラウディングアウトを引き起こすことではなく、民間が投資できるような技術評価や、損失引き当ての制度を作ることです。

 このような官の肥大化が生まれているのは、経済対策で財政規律が緩み、財政支出が増大しているせいもありますが、より根源的な原因は産業支援のスタンスがぐらついているからです。
 県のような地方自治体にとって、商工業の振興は、一つには税収や雇用の確保が目的であり、二つ目には競争上の弱者である中小零細企業の強化育成が目的でした。
 しかし、経済がグローバル化すると、3つ目の目的が、つまり「国際的な産地間競争に勝ち残る」ことが新しく追加されました。

 1つ目が、企業誘致や税制優遇など価値中立的な事業であるとすると、2つ目は協業化や事業高度化支援などによって、弱い企業を強くしていく、潰れないようにしていく方法が中心となります。
 これに対して3つ目は、輸出型製造業など「強い企業をより強くすること」が方法となります。これは、マイケル・ポーターも言うように、日本には強い輸出型産業と、弱い内需型産業が並存しており、輸出で儲けたカネを、内需産業に分配していることで資金が循環しているため、輸出型産業をさらに強くしないと国の経済そのものが成り立たなくなるからです。

 さて、先ほど、「産業支援のスタンスがぐらついている」と書いたのは、ここにつながります。
 官の事業は、強い産業の強化に特化することもできず、弱い産業の支援に特化することもできません。いわば、両方に良い顔をするため(それが政治というものなのでしょうが)、アクセルとブレーキを両方踏んでいる状態です。これが一つ。
 もう一つは、同じ「官」といっても、国と地方、県と市町村によって担うべき役割は異なるということです。近年は、改革派知事が全国的に退潮したこともあってか、地方分権議論が不活発で、県の業務には国の下請けのような業務が、事実上、復活しつつあります。これは、市町村における県や国との関係でも同じかもしれません。

 そして、最も大きな問題は官と民の関係です。経済対策、雇用対策を名目に、企業や民間セクター、その支援者の業務への侵食が逆流のように起こってきています

 はんわし的にも当分もやもやが続きそうです。

2010年2月27日土曜日

興味深い「日・韓」の違い




 昨日は日本中が女子フィギュアに注目していた一日だったと思います。今ひとつ盛り上がりに欠けていたバンクーバー五輪ですが、競技が華やかなのと、浅田真央選手へのメダルの期待が高かったためでしょう。

 話は変わりますが、今週の週刊ダイヤモンド「ソニー、パナソニックVSサムスン ~ソニー、パナソニックはなぜ勝てない?~」という特集でした。
 日本は家電製品大国で、メーカーのブランド名は世界各地に知れ渡っていますが、液晶テレビや携帯電話などを中心とした世界シェアは、もはや決して高くありません。日本メーカーに代わって、多くの電気製品のトップシェアを独占しているのが韓国のメーカー、サムスンです。

 その強さの秘密は、たとえば、
・イ・ゴンヒ会長の徹底したリーダーシップ
・軍隊式の上意下達システム(1年以内だかに新入社員の30%は辞めてしまうほど厳しい)
・年功制が排除された完全な能力給システム(管理職は平社員に比べて年収が2~3倍。役員は10倍!)
・韓国中はもとより、中国やインドなど世界からかき集められる層の厚い研究人材
 などなど。

 良くも悪くも平等意識が強く、ムラ意識が高い日本の企業ではなかなか真似のできないシステムです。 成熟した日本社会では、サムスンのような「モーレツ型社員」を生み出すことはもはや不可能だし、サラリーマン社長が多い日本の大企業では、やはり強烈なリーダーシップ(というか、ほとんど独裁的な権力)を発揮することも難しいでしょう。
 なので、経営のあり方そのものを変え、戦い方を変えていくしかないのです。

 強引ですが、このことは女子フィギュアの戦いからも読み取れます
 浅田選手はトリプルアクセルなど難易度の高い技に果敢に挑戦し、成功させました。これが彼女に体力的、精神的な負担をかけたことが敗因だとの議論もあるようです。

 しかし、中日新聞(2月27日付け)の「戦略に負けた理想」という特集記事にあるように、キムヨナ選手は、元五輪メダリストのコーチ、表現担当の振り付け師、エッジワーク担当の元アイスダンス選手という3人からなる「チーム・キムヨナ」を結成し、練習拠点もカナダに置いて、どうすれば得点を稼げ、メダルが取れるかを徹底的に考えてきた結果である、という議論に、むしろ説得性を感じます。

 モーレツや、独裁的リーダーシップと、したたかな戦略がうまく同居する国。韓国。
 そのことをあらためて考えた、この数日間でした。

2010年2月26日金曜日

日経新聞電子版は高すぎないか?



 はんわしは、日経ネットPLUSをよく読んでいますが、3月末より日経新聞の電子版が創刊されることから、そちらへアカウントを移行するようにとのメールが送られてきました。

 アメリカでは、既存の新聞がどんどん廃刊になっているそうです。ネットで手軽に、しかも無料でニュースが見られるようになったので、紙媒体の役割が減ってきていることが主な理由のようです。

 日本でもこの流れは不可避だと思います。広告費のうち、新聞にかかる広告費をネットの広告費が追い抜いた、というニュースが最近も報道されていました。
 環境の面から考えても、木材が原料の紙新聞を、バイクやクルマで配達することが良くないのは明らかです。キンドルのようなネットブックが普及すれば、電子版の新聞を手軽に持ち出して読むこともできるようになるでしょう。

 しかし、日経電子版の購読料金は、ひと月なんと4000円
 リアルな配達購読でも確か4千数百円のはずなので、これではほとんどメリットがありません。コストは大幅に下がっているはずなのに、なぜ??

 これは、明らかに、既存の新聞販売店との競合を避けるためとしか考えられません。
 まあ、そのことも分からなくはないですが、万事、日本のマスコミはスピード感がないことを実感します。
 日経新聞は、電子版を普及させたいのか、本当はさせたくないのか、その本心が読み取れません。

 同じようなことは、3月15日からスタートするという、在京、在阪の民放ラジオ13局と電通で作る「IPサイマルラジオ協議会」なる団体による、インターネットによるラジオ番組の、放送とネットの同時配信からも感じます。
 東京や大阪のAMやFMのラジオは、なかなか三重県伊勢市で聞くことができません。ラジオファンとしてはありがたいと思ったら、これまた配信地区は首都圏の1都3県と、近畿圏の2府2県のみに限定されるとのこと。
 これでは、実際に現在ラジオの電波が届いている地域よりも狭いくらいです。
 将来に向けた展望とか、戦略が見えないこのやり方は何なのでしょうか。
 
 マスコミは実は行政による許認可や記者クラブ制度に依存しているので、ある意味で役所以上に保守的なところがあるようですが、これって「滅びに至る道」ではないのかなあ・・・。

 

2010年2月25日木曜日

熊野路のSLは遠く・・・



 熊野の木箱職人上古代さんブログにありましたが、熊野市内の公園に置かれていた蒸気機関車が、さきごろ老朽化のため解体撤去されたようです。
 熊野路をSLが走っていたことも、人々の記憶から遠からず消え去ってしまうことでしょう。

 高速道路の延伸など高規格自動車道の建設がすすみ、東紀州の交通の主役は完全に自動車に移り、昨年開通50周年を迎えたJR紀勢本線は脇役、もっと言えば緊急バックアップ手段としての存在に成り果てています。

 JR名松線がそうであったように、紀勢本線(多気駅以北の区間は別として)は風水害でいったん不通にでもなれば、それを奇貨として、JR東海がそのまま力技で、なし崩し的に廃線にしてしまう可能性も少なくありません。
 いくら鉄道ブームとはいえ、乗客が20年前の水準に回復することすら考えられないわけですから、瀬戸際になってオロオロ取り乱さないためにも、現実的な展望を考えておく必要がありそうです。

 これは紀勢本線沿線が田舎だからという意味ではありません。
 人口が減少しており、同時に都市構造が郊外に拡散している多くの日本の地方都市において、バスや鉄道などの公共交通機関の経営は、採算を成り立たせることがほとんど不可能になるからです。
 これは時間の問題であって、紀勢本線はそのリーディングケースとなっているだけのことです。

 全国には、大井川鉄道のように蒸気機関車を運行して集客したり、嵯峨野観光鉄道のように、旧山陰本線の景勝地、保津峡をトロッコ列車で走る観光鉄道として存続したりという例もあるにはあります。
 生活路線としての地位が低下している現時点で、紀勢本線もそのような転換を検討すべき時かもしれません。

2010年2月24日水曜日

小売業は素人でもできるお手軽商売か



 農業への参入が解禁されてから、企業による農業生産への進出が相次いでいます。
 しかし、ビジネス面から見て大きな収益を上げているという成功例は少ないとのことです。
 
 参入した企業の多くは、「製造業やサービス業で導入されているオペレーションやITを導入すれば、農業でも安定した収益が上げられると思っていた。」という感想を抱くようで、天候に左右される、病虫害が発生する、規格が厳しく予想外に歩留まりが悪い、など、要するに農業を「ナメていた」というのが実感に近いのかもしれません。

 これと同じように、世間から誤解され、ある意味でナメられているのが「小売業」です。
 要は、誰かが作ったモノを仕入れ、利益を上乗せして売る。
 ただそれだけの単純な商売で、誰でもできる、という意識は、残念ながら、かなり浸透しているように思えます。
 
 供給が少なかった貧しい時代ならともかく、モノあまりの今、モノさえあれば自動的に売れるという状況では全くありません。 
 農業者にピンからキリがあるように、小売業者もピンキリなのはもちろんですが、成功している小売業者の工夫やスキルは、やはり常人ではなかなかマネができない、非常に優れたものです。たいへんな努力をして、経験も試行錯誤も重ねています。

 昨今、地域の疲弊した産業を活性化させるには、農林水産業者といった生産者自身が、加工や販売を行う、6次産業化を推進しなくてはいけない。というようなスローガンが安易に蔓延していることが気がかりです。
 6次産業化自身は間違っていません。これは必要なことです。

 問題は、門外漢の素人である生産者が、加工などできるのか、販売など本当にできるのか、ということです。
 正確に言えば、素人商売で、プロの商人に互して戦っていけるのか、つまり「競争力」を持ち得るのか、ということです。

 先日来、道の駅奥伊勢おおだいの話を書いていますが、バホmiya氏のコメントにもあるように、これは「大台モデル」とでも言うべき、農林水産業の生産者と、道の駅という加工販売者がうまく連携し、分業しているシステムだからこそ成り立っています。何でもかんでも、生産者が自分でやれば6次産業化するものではありません。

 笑えることに、常に日本の農政をミスリードしている三流官庁の農林水産省が、農業主導型6次産業化整備事業なる税金の無駄づかいを始めようとしています。
 農林水産業者に小金をばら撒き、夢だけ見させて、またぞろ経営が行き詰った加工所や直売所が死屍累々と全国に現れることでしょう。

 それほど、小売業は甘くない!

2010年2月23日火曜日

EC市場の統計調査の環境整備を



 電通が昨年の総広告費を公表しました。
 不景気のあおりを受け、2年連続で総額は減少しているものの、それでも5兆9千億円もの金額です。
 多くの新聞がこのことを取り上げていましたが、媒体別では初めてインターネットが新聞を上回りました。これは非常に画期的なことで、広告媒体の主役が交代しつつあることをあらわしていると思います。(もっとも、第一位はダントツでテレビなのですが。)

 もうひとつ、日経新聞だったかにも、各地で閉店が相次ぐ百貨店業界に比べ、ネット販売は伸びている、みたいな特集記事がありました。小売業においても主役が交代しつつあることを実感させます。

 しかし、あらためて気づいたのですが、ネット市場(Eコマース。以下、ECと表記。)は正確にはどれくらいの規模があって、実際の流通額はどれくらいなのでしょうか。

 スタンダードな方法として、国の省庁が作っている統計を調べてみます。経済産業省では「電子商取引実態調査」なるものを公表(http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/ie_outlook.htm)しています。
 これが最も信頼が置けそうな気がしたので、内容を見てみました。

 しかし、この調査は、対象を建設業や製造業など20業種に限定しているほか、ECの内容にも一定の定義を設けており、調査方法も、調査対象業種のそれぞれについて、前回調査からのEC市場規模の増減率を推定し、それを各業種の前回調査のEC市場規模に乗じて、平成20年における各業種のEC市場規模を推計するという方法です。
 正確を期しているとはいえ、参考的な調査にとどまると思われます。

 一方、民間のシンクタンクもEC関係の調査研究を公表しています。
 例えば野村総研は「2011年までの国内IT主要5市場の分析と規模予測」(http://www.nri.co.jp/news/2006/061221.html)を公表していますが、これを見ると、ネットビジネス市場におけるBtoCは平成19年で4兆4200億円となっています。
 しかし上記の経産省の調査では、同じBtoCが5.3兆円となっていて、一体どちらに信が置けるのか、統計の素人のはんわしは混乱してしまうところがあります。

 広告もそうであり、流通もそうであるように、経済におけるネットの存在感は確実に増しています。
 最大の「成長分野」であるEC分野において、しっかりした統計がないというのは、産業政策上、実に頼りないことのような気がします。

2010年2月21日日曜日

福井県でもプレミア商品券を発行



 2月10日に書いた、大阪府「ぎょうさん買うたろう商品券」が発進!には大変多くのアクセスがあって,、はんわし自身、非常に驚いている状態です。

 今日は、福井県でも10%のプレミアム付きの「ふるさと商品券」を県内の商工会議所・商工会を通じて発行するという情報コメントいただきました。(感謝します。)
 この匿名氏も言われるように、独走の大阪府にとうとう追随者が現れたわけです。

 消費が低迷している今、地方行政の立場からは、まずは地域でおカネを循環させることが急務です。 
 なので、橋下知事が記者会見の場「これだけで大阪経済の底上げはなかなか難しいでしょうが、とにかく経済対策というのはお金を動かすことが経済対策で(後略)」と、はからずも発言したように、税金を原資にした消費喚起策も「経済対策」上、やむを得ないということなのでしょう。そして、短期的には商店の売り上げが向上するなど、何らかの効果はあると思います。

 しかし、容易に想像がつくように、その商品券を使った分の金額だけ、府民は貯金にまわしてしまうこともあるでしょう。プレミアは確かにありがたいものですが、これがあるからつい不要不急のものまで買ってしまうということは考えにくいでしょう。

 福井新聞の報道などによると、福井県は商品券事業のために2億1800万円の予算を計上し、17億500万円分の商品券を発行して、27億円の経済波及効果があると見込んでいるようですが、本当の経済的な効果は誰にも検証できず、結果的に税金を使う妥当性は(長期的)にはわからない、ということなのではないでしょうか。
 福井県の動向に注目です。


 

2010年2月19日金曜日

意外なところで再開した「道」



 オリンピックにはほとんど興味がないはんわしですが、高橋大輔選手の銅メダルの演技には感動しました。

 クラウンのような市松模様の衣装がユニークでしたが、バックに流れていた音楽がフェディリコ・フェリーニ監督のイタリア映画史上の不滅の金字塔「道」の主題曲、ジェルソミーナのテーマだったので合点が行きました。

 この映画は泣けます。
 まだ見ていない人はさっそくレンタルして見てください。
 1954年の映画なので白黒ですが。

 ストーリーに、旅芸人や道化(クラウン)が重要な役割を果たします。高橋選手の振り付けにも、その影響が強く出ていたと感じました。
こんな場面でこの曲を聴くとは意外だったなあ。

 「道」の内容を詳しく紹介したホームページを見つけました。
 しかし、浜村淳なみに超詳しいので、映画を見てから追想するのに使ったほうがいいかもしれません。
 
 道 -La Strada-   http://www.geocities.jp/yurikoariki/lastrada

2010年2月18日木曜日

「武士道」はやめよう



 古畑さんの本を読んでいて感じたことを思い出しました。

 まず前置きになりますが、よくよく考えてみると、「武士」とか「サムライ」という言葉ほど今の日本に誤解されている概念はないような気がします。
 武士とは職業軍人の身分であって、帯刀や武力行使が合法的に許され、同時にその抑止力として自らを律する強い倫理観が求められることになりました。
 これが「武士道」ですが、ご承知の方も多いように、武士道が体系化されたのは太平の世の真っ只中だった江戸時代中期のことであり、実践的な行動哲学というより、動乱の時代ははるか昔となった平穏な日常に流されないための教訓的な色彩が濃いものでした。
 そもそも武士自体、全人口の2%くらいしかいなかったわけですから、武士道が広く日本全国に浸透して、人々を律していた行動哲学であったとか、ましてや日本人のDNAであるとかいうのは歴史的にも間違っています。

 江戸時代であれば、むしろ人々に広まっていたのは、石田梅岩の心学に代表されるような商人道や、二宮尊徳のような農民道ともいうべき哲学でした。忠孝を基本として、勤勉と実利を尊び、和を重んじるという考え方です。
 武士道では、お互いの利害が対立したとき、最終的な決着は武力の対決か自死の、どちらかしかありません。潔いといえばそのとおりですが、持続的な解決方法ではありません。命がいくつあっても足りないからです。
 相手との話し合いの中から妥協点を見出し、譲れるところは譲り、損して得とるという商人道こそ、現実の経済社会を円滑に持続させる行動哲学だったのです。そして、日本の真の伝統はここにあります

 余談ですが、武士道に憧れるのは昔から、現状に満足しないアナーキズムを内包させた若者たちでした。維新の志士の多くは武士階級出身ではないか、武士ではあっても最下層の、その時代では出世栄達が絶対に不可能なレベルの人々でした。武士道を純化した集団であった新選組の近藤や土方が裕福な豪農の出身だったことは非常に示唆に富みます。

 ここで本論に戻ります。
 古畑さんの本「よし、やったろ」の最終章にある商い10ケ条というのを読んでいて、やはり地域に密着して、農作物に学び、大地を読んで勉強されてこられた方の実践論は、武士道ではなく、商人道だった、ということを再認識したのです。
 直接的にはこういう表現ではないですが、たとえば「損して得とる」とか、「三方一両得」のような考え方に、古畑さんは、やはり真実を見たのです。決してシロかクロかを決めるのではありません。ここにこそ強さがあるのです。

 これもまた不思議な話ですが、たとえばNHKの大河ドラマは、ほとんどが武士や貴族が主人公です。商人が主人公というのは呂宋助左衛門を扱った「黄金の日々」くらいだったのではないでしょうか。これは残念なことです。幅広く、奥深い、日本の文化の、ほんの一つの断面しか捉えきっていないからです。原作を書く日本の小説家や脚本家が非力なせいもあるのでしょう。

2010年2月17日水曜日

お客様は「神様」な、理由




 「よし、やったろ」(平成22年 伊勢文化舎)を読みました。

 三重県大台町にある、道の駅奥伊勢おおだいで長年駅長を務めている古畑盛行さんの自叙伝ともいうべきエッセイ集です。
 平成8年、当時の大台町長から、国道42号線沿線に新設する計画が持ち上がった道の駅の店舗設計に関わったことがきっかけで開店準備に1年近く奔走し、オープン後は駅長兼支配人として10年近くたった今現在も、運営の第一線に立っています。

 実は、はんわしは東紀州観光まちづくり公社時代に古畑さんにお目にかかったことがあります。南三重地域活性化事業推進協議会の事業計画を作るための関係者会議でしたが、その時は小声でぼそぼそと話す、気難しそうな人という印象でした。
 ただ、道の駅おおだいのプロデュースと運営に携わり、一定の成功を収めている実績からか、地域振興に関して大変強い信念と哲学を持っている方とお見受けしました。

 この本には、「道の駅おおだいはオープンから実に10年後の平成20年、累積債務を解消して黒字に転換した」とあります。
 ご承知の方も多いと思いますが、この間、旧大台町は旧宮川村と合併して広域化し、道の駅おおだいの運営方針が政治的な争点となったり、高速道路が道の駅を通り越してしまう形で大宮大台ICまで延長開通したり(つまり名古屋方面から南紀に向かう観光客は、道の駅おおだいを素通りしてしまう可能性が高くなった)、といった種々の環境変化が起こっています。これらを克服しての黒字転換が、いかに困難なものかは想像に難くありません。

 くわしくは本書をお読みいただきたいのですが、古畑さんは道の駅の構想が持ち上がった当初から、単なる物産販売施設・休憩施設ではなく、地域の活性化、地域づくりが目的の施設である、と見抜いていました。地域の活性化とは、地域産業の活性化であるという信念を持っていました。

 そこで、地域の農産物や加工品を直接、地域の農家や生産者から仕入れ、道の駅で販売することで、来場者に対しては大台町の地域産品をPRする場として、また、生産者には生産を増やしたり、新商品・新品種の開発や栽培に前向きに取り組むきっかけとなるような場としての「道の駅の事業モデル」を思い立ち、その確立に尽力します。
 これが平成9年ごろの話ですから、相当に先見の明があったと言っていいと思います。なぜなら、この大台モデルとよく似た事業モデルは、今や全国の道の駅でスタンダードな考え方、運営方針になっているからです。

 中でも、最もはんわしが感銘を受けたのは次の言葉です。
 お客様は神様といいますが、商品を買ってくださるから神様ではなく、お客様は商品を通して売り手の気持ちを見たり、感じたりするから神様なのです。
 というものです。

 見えないものが見える神様の前では、売り手の欲はすぐに見抜かれてしまいます。
 と続きます。

 東紀州時代、もっと積極的にお話をうかがっておけばよかったと、今になって残念に思う気づきでした。

■道の駅奥伊勢おおだい http://www.ma.mctv.ne.jp/~okuise-o/

■伊勢文化舎 http://www.isebito.com/

2010年2月16日火曜日

若者の雇用を創造する方法



 岐阜県庁が、財政難の対策として打ち出していた2011年度からの県職員(行政職)の新規採用凍結を撤回しました。以前このブログでも書いたように、新規採用の凍結は弊害が多く、人事の公正さを失い、組織の活力を低くするだけの愚策に過ぎません。
 いろいろ事情はあったのでしょうが、潔く撤回した岐阜県当局には敬意を表したいと思います。

 三重県でも、高校、大学などの卒業がまじかに迫っているものの、就職が決まっていない学生の数が多いことが問題となっています。
 同時に、これら未内定者を対象とした就業促進策や、キャリアアップのための支援、インターンシップなどの対策が次々と予算化され、事業化されています。
 まさに両極端の状況。悪く言えば、内定率の低迷をきっかけとして、ますます行政機能が肥大化しているという皮肉な現象になっています。言うまでもなく、これらの事業費用は、将来若者が働いて納めるはずの税金が返済に充てられることになります。

 若者の雇用を創造するにはどうしたらいいのでしょうか。
 基本的には、今まで大きな雇用の受け皿であった、大量生産型の製造業(工場)や建設業などに代わる産業を作り出すことでしょう。しかしこれには時間がかかります。
 では短期的にどうするか。
 それには、「政策的」に労働者の新陳代謝を進めるしかありません。つまり、勧奨退職や若年定年制を導入し、高齢者に代わる新しい労働力として新卒者が必要不可欠な存在になるように人為的に誘導していくことです。難しいことではありません。

 人類の歴史上、社会の進歩につながるイノベーションを老人が担ったことはかつて一度もありません。若い人材の切磋琢磨、ぶつかりあいからイノベーションは生まれるのです。
 高齢者をいつまでもちやほやし、退場させずいては、世代交代もなく、イノベーションも生まれないし、結局は経済の競争力を失ってしまいます。老人天国の日本において、高齢者は職のない若者に同情はするけれど、決して自分の椅子は空けてくれないのです。これはお互いに不幸なことです。

 こんなひどい世の中で、若者は「草食化」する以外に、どうやって精神のバランスが保てるというのでしょうか?



 

2010年2月15日月曜日

「日本の競争戦略」を読む

 西暦2000年。今から10年前です。

 日本経済はバブル崩壊による低迷からなかなか立ち直ることができていませんでした。政府による公共工事などの大規模な需要喚起政策によっても経済は回復せず、一方で財政赤字は天文学的な数字になっていました。
 アメリカがITや金融などの新しい産業によって、再び世界経済のリーダーに返り咲いたのに対比して、日本の無為無策が「失われた10年」と呼ばれていたちょうどその時期、この本は出版されました。(日本の競争戦略 マイケル・ポーター著 ダイヤモンド社)

 バブル崩壊まで、終身雇用、年功序列、企業別労働組合制度、さらに系列取引やカイゼン(改善)などのキーワードを擁する日本型経営は最強の経営体制と信じられていました。
 しかし、それが凋落し、10年経ってもなお上昇できなかった理由は何か。そして、これからも日本企業は世界をリードしていくことができるのか、これがこの本の問題意識です。

 今まで無謬であったと考えられていた日本型経営や、日本株式会社なるものが、実は多くの矛盾や弱点を内包しており、絶頂期にあった80年代にはすでに危険な萌芽が見られたことを著者は指摘します。
 例えば、日本の製造業は生産性が高く、圧倒的な国際競争力を有している、とされる常識。
 これは、確かに自動車や家電などの分野ではそのとおりですが、日本の製造業全体を見ると、化学、繊維、食品などのように生産性が低い分野が圧倒的に多く、製造業以外の産業、農林水産業、建設業、商業、サービス業など内需型産業ではさらに生産性は低く、ほとんど国際競争力を有していないかったことが明らかにされます。

 労使が協調する日本型経営も、外国からの投資が政府によって制限されており、株主のほとんどが日本国内の機関投資家だったために成り立った現象に過ぎず、資本生産性の観点から見ると欧米企業の足元にも及ばないと指摘されます。

 また、政府が産業政策をリードし、国内企業に対して生産の目標を提示したり、競争を制限することにより企業による効率的な生産が可能になったという日本株式会社も「神話」に過ぎないと切り捨てます。実際には政府が保護しなかった産業や企業のほうが激しい競争に勝ち抜いて、世界で戦える実力を備えることになったからです。

 これらの厳しい指摘が、2000年当時、この本が衝撃を持って日本に受け入れられたゆえんでしょう。おそらく、先進的で開明的な政界、官界、経済界のリーダーは薄々感じていたことが、外国人研究者によって実証的に指摘されたのですから、一種の黒船襲来とみなされたであろう事も想像に難くありません。

 著者は、それでは日本はどうすべきかについていくつか提言もしています。
 要約すると
・日本企業は国際競争をおそれてはいけない
・貿易自由化は日本の企業の国際競争力を向上させる
・世界に通用する大学教育を行なう
・非効率な国内産業分野を近代化する
・真の企業責任を追及する制度を作る
・イノベーションと起業に関する新しいモデルを作る
・国際競争に勝ち抜くための地方分権化、クラスター構築を目指す

 などです。
 この本が出版されてから10年。
 もちろん、競争促進や規制緩和が万能でなく、日本には日本にあったやり方があることも明確になってきました。
 しかし、いまだに輸出型製造業によって稼いだカネを、競争がなく非効率なままの内需型産業や政府・自治体などに費やしている一国ニ制度とも言うべき産業構造を放置していることや、相変わらず「成長戦略」によって国がこれから進むべき産業分野を提唱して民間企業を引っ張るというターゲット型産業政策を求める声が多いなど、この本が指摘した日本の弱点がこの10年間で実は何も変わっていないという事実に暗い気持ちにならざるを得ません。
 

2010年2月14日日曜日

尾鷲まるごとヤーヤ便(2月便)が到着



 昨夜、尾鷲の産直頒布会である「尾鷲まるごとヤーヤ便」が届きました。
年4回の頒布で、代金は2万円。今回が今年度で最後の回となります。
そのせいか、大変豪華でした。
主な内容は、お刺身セット(実際に刺身に切られてトレイに乗せられている。カンパチなど3種盛り)、ブリカマ2切れ、サンマ丸干しなどの干物、漬物、お菓子など12アイテムです。

実は今まで、届いた箱を開けて「あれっ?」と感じることもなくはなかったので、その感想をブログでも書いたりしていました
そのせいではないと思うけれど(逆に、多くの人からそういう感想が寄せられたのかも)、今回は今までにない充実度のように思いました。

尾鷲と聞くと、やはりステレオタイプではあるけれど「海」、「魚」、「ひもの」のイメージが強いので、今回は刺身や天然マグロブロックや、さんま丸干し(通称かんぴんたん)、珍味かつおくん(カツオ君ではない)など魚系の商品が多かったのは正直言って好印象でした。
あと、尾鷲特産の青唐辛子「虎の尾」(ししとうをひょろ長くしたような感じで、辛味が強い)が入っていたのも特色が出ていて良かったと思います。

以前指摘したのは、この尾鷲まるごとヤーヤ便の事業主体である尾鷲観光物産協会の顔が見えないということでした。
全国で成功している地域においては、観光協会といったら、率先して自分が広告塔になるような目立ちたがり屋や個性の強いスタッフの集団というのが定番です。
しかし尾鷲はシャイな地域性のためかエネルギーが内向きで、外へのアピールが不足しています。前回は同封されているお客向けのメッセージにスタッフの顔も名前もなかったのですが、今回はスタッフの集合写真は載っています。これは改善点でしょう。(ただ、やはり署名は「尾鷲観光物産協会会長」とだけあって、その理由がどうしてもワカリマセン。)

実は昨日、三重県内の、ある「産直アンテナショップ」をのぞいて来ました。コンセプトは「地域には農林水産物や加工品など良いものがあるのに、知名度が低く生産量も少ないので、アンテナショップを作り、常設販売することにした」という、今ではもう、ごくありふれたものです。
これで差別化するのは難しそうだなとは思ったのですが、行ってみると案の定、狭い店内には「特産品」と、「手作りパン」だの「手作りアクセサリー」だのが雑然と置かれています。商品説明もPOPもなく、知識のない来場者には特徴も使い方もわかりません。
それを説明するはず店員は高齢者で、はんわしが店舗をうろうろしても声をかけるでもなく、ひたすら別のスタッフと雑談しています。

このような「アンテナショップ」に比べ、商品を直接消費者に届けるというヤーヤ便のコンセプトは数段優れていると思います。
しかし、対面しないゆえに、消費者には同封したチラシや手紙でもって商品の魅力やストーリー(ものがたり)を伝えなくてはいけません。そのための文章力、論理性や正確性、読み手の想像力を書きたてる表現などは相当に高度なものが必要になるはずです。写真やイラストも大きな役割を果たします。
スタッフも露出しなくてはいけません。顔や名前を明確にするのは当然でしょう。頒布会の購入者が、あまりにひものが美味かったのでふらっと尾鷲に行ってみたくなって、観光物産協会のその人を訪ねてきた、くらいの人間関係を構築しなければ「尾鷲ファン」はなかなか増えないのではないでしょうか。

また、これだけインターネットやブログが発達しているのですから、たとえばMixiに(ミエワンブログでもいいけど)尾鷲まるごとヤーヤ便ファンのコミュニティを作るとか、そういうメディアミックス戦略も必要です。今回はこのネット活用は見られませんでした。尾鷲の初春の風物詩である奇祭「ヤーヤ祭り」の様子を練られながらツイッターで書くとか。それくらいやってほしかったですね。

尾鷲まるごとヤーヤ便はいったん今回で終了し、4月から新企画で頒布会員を募集するとのことです。単なる特産品の定期販売にとどまることなく、尾鷲の活性化のためのアイデアが集約したスタイルになることを大いに期待したいと思います。

<平成24年6月23日追記>
「尾鷲まるごとヤーヤ便のCMがYoutubeに!」という記事を2012年6月7日木曜日にアップしました。リンクはこちら

2010年2月12日金曜日

中小企業憲章の策定議論が始まる



 もうかなり忘れ去られている感のある民主党のマニュフェストですが、確かにその中の一つに「中小企業憲章を制定する」というものがありました。

 中小企業の憲章とは、わが国における中小企業の役割や、あるべき姿を明記し、そのために行政や企業、国民が、どのような行動をとるべきかという理念や指針を宣言したものだと考えていいと思います。
 外国ではすでにいくつかの国で制定事例もありますし、日本でも中小企業家同友会などではその制定を提唱し、各地で勉強会などが開かれています。

 民主党のマニュフェストによれば、
 中小企業が活力を持って光り輝き、安定的で健全な国民生活が実現されるような環境を整えることを目的とした中小企業憲章を制定します。その具体的行動指針 として、(1)次世代の人材育成・職業訓練の充実、(2)公正な市場環境の整備と情報公開、(3)中小企業金融の円滑化、(4)技術力の発揮と向 上、(5)中小企業の声に耳を傾ける仕組みづくり、などを定めます。
 とあります。
 
 日本には、現在すでに中小企業基本法という法律がありますが、マニュフェストには「現行の中小企業基本法と異なり、経済産業省・中小企業庁のみならず、文部科学省、総務省、厚生労働省をはじめ政府全体を挙げて、経済政策の中心として中小企業対策に強力に取り組むための基本方針とします。」とも書いてあって、省庁横断的な総合施策を目指しているらしく、この意味では大変画期的なものです。

 さて、本日付けの官庁速報(時事通信社による、地方公務員向けの業界情報配信)によると、
 経済産業省は、民主党がマニフェストに掲げた「中小企業憲章」の策定作業を本格化させた。6人の有識者から成る研究会を設け、3月にかけて関係者からヒアリングを実施。その結果も参考に議論を深め、5月をめどに成案を得たい考えだ。
 とのこと。
 
 研究会には内閣官房知的財産戦略推進事務局と公正取引委員会事務総局、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省、金融庁の担当幹部も参加。3月にかけて行われるヒアリングの対象には中小企業の経営者や支援機関、地銀をはじめとする金融機関、高校などの教育機関、地方自治体、労働組合が想定されている。
 ともあります。

 ヒアリングには地方自治体も含まれるようですが、中小企業の大部分は従業者数が4人以下の小規模零細事業者であり、そのほとんどが地域に密着した事業活動をしている事実があります。そもそも、憲章のような理念制定はともかくとして、実際の政策の立案や実行まで、経済産業省(中小企業庁)という中央官庁が予算も権限も握っている現状は疑問に思われます。

 最近、一服感のある地方分権論議ですが、一般的な中小企業振興策は都道府県レベルで十分対応可能です。研究会を契機として、地方分権を明確にしないと、「大きな政府」の民主党に地方分権の理念がめちゃくちゃに蹂躙されてしまうのではないか、と少々不安もあります。

2010年2月11日木曜日

海空花子は笑える





 今日のグルナイに女性お笑いコンビのアロハが出演していました。
 この、海空花子のネタはけっこう笑えます。

 関西人にとって(伊勢が関西かという点はしばらく措き)、最もキライなのは、と言うか、気色が悪いのは、もともと関西出身でもない人が無理して使っている、アクセントの変な関西弁でしょう。

 NHKの大阪放送局が製作する朝の連続テレビ小説では、ヒロインはほとんどが無名の新人。シンデレラガールで、顔は可愛いけど演技力ゼロ。もちろん、関西が舞台なのにネイティブでもない。したがって演技そのものが稚拙な上に、台詞のアクセントもいちいちヘンなので、はんワシは一気にリアリティを感じなくなってしまい、その場にいたたまれなくなってしまいます。
 むしろ見どころは、ヒロインを必死で支えようとする、脇役の関西地元の俳優さんたち(吉本新喜劇の役者も多い)の頑張りだったりします。職業柄、「東京から来たキャリア官僚のボンボン課長を、年上の関西現地採用の課長補佐たちが一生懸命支えている」みたいな絵すら連想してしまいます。

 大阪は、関西地方では間違いなく2府6県のリーダーですが、関東とは違って、京都、神戸という小姑的なライバルがいます。しかも、東京に対しては異常に大きなコンプレックスがあります。(これは、大阪の人はほとんどが否定しますが、本人が自覚していないからこそコンプレックスなのです。)
 大阪弁は東京へのアンチテーゼであり、自己主張でもある。それを、関東出身のアロハはネタにして、笑い飛ばしているような突き抜け感があります。

 http://www.youtube.com/watch?v=0OZ8-H4zS9s

2010年2月10日水曜日

大阪府「ぎょうさん買うたろう商品券」が発進!



 先日、不遜にも半分おちゃらかしたようなブログを書いた、大阪府発行のプレミアム商品券ですが、ついに2月17日から販売が開始されることになりました。

 おさらいすると、消費者の消費マインドを刺激することにより消費喚起につなげるため、大阪府が府内の小売店舗で使用できるプレミアム商品券(プレミアム15%:大阪府負担5%、商業者負担10%)を発行するというものです。

 大阪府は統一的・戦略的な広告宣伝を実施して事業の一体感を生み出し、大阪全体で地域経済を盛り上げていくものとされています。(以上は、大阪府HPからの援用です。)

 実際の事業は、大阪府から公募を経てJTB西日本が受託しています。受託金額は、プレミアム額も含めて5億1千万円。
 年度末のこの時期に、これだけの補正予算措置をするわけですから、大阪府の意気込みが感じられます。

 最大の問題は、果たしてどれだけの経済波及効果があるかです。
 この商品券は使途や使用範囲が限定され、おつりが出ないなど全額が消費に回るような工夫もされています。瞬間風速的には、府下での小売店販売額は増加することでしょう。
 しかし、これがきっかけとなってデフレ状況が打破できるまで個人の消費が増加し、情況が好転するでしょうか。

 ご承知のように、地方自治体の施策に知的財産権はありませんので、どこかの自治体が始めた、優れた施策や住民受けしそうな施策は、「官庁速報」のような業界誌を経由して、瞬く間に全国の自治体に広まり、パクりまくられます。
 雨後のタケノコのように類似した施策が、(この場合ならプレミアム商品券が)ゾロゾロと出てくるのが通例です。
 しかし、はんわしが知る限り、追随者はいないようです。大阪府が独走です。

 そろそろ、権威あるシンクタンクとか研究者が、定額給付金の効果測定をすべきではないでしょうか。思い出してください。たった1年前のことなのです。2兆円もかかったのです。
 もし商品券のような手法が有効だと検証できたならば、三重県も大阪府に続けばいいのです。誰も検証しないし、研究対象にしないのはなぜなのだろう。


 

2010年2月9日火曜日

結局、ゆうちょ銀行とは何だったのか



 今日は早く帰宅したので、国谷裕子さんがいないNHKのクローズアップ現代を見ることができました。郵政の再国営化が番組のテーマで、特に民営化後、サービスが低下したといわれている金融事業(いわゆる「ゆうちょ銀行」)について、再び国営化されたらどれだけ国民にメリットが生まれるのか、のような内容を放映していました。

 郵政省だったころの国営の郵便貯金の何が問題だったかを思い起こしてみると、郵便貯金は国の信用力をバックに国民から貯金をかき集めることができ、一般の銀行や信用金庫などの民業を大きく圧迫していました。つまり、公正公平な競争でなかったこと。これが一つです。
 そして、より大きな問題は、そうやってかき集めた郵便貯金は、ほぼ全額が国の資金に運用され、公共工事や国の外郭団体の事業につぎ込まれていたことです。通常の銀行融資と異なり、政治的な背景で融資が決定するため、無駄な公共工事や、外郭団体による乱脈経営を結果的に後押しすることになりました。 
 しかも、この融資は事実上、国の債務保証があるので貸し倒れリスクはありません。これも一般の銀行と比較すれば、左うちわの殿様商売だったわけです。
 もちろん、ナショナルミニマムとして、過疎地であっても離党であっても、広くあまねく平等なサービスを行わなくてはならない面もあったわけですが。

 これが小泉改革によって民営化され、効率化されることになりました。当時の国民は、この改革を熱狂的に支持しましたから、その是非は今となってはとやかく言えるものではありません。

 ただ、民営化のメリットの一つに
「郵貯は、せっかく国民からお金を集めているのに、そのお金が一括して国で運用されるため、地域の中小企業の資金として活かされていない。民営化すれば、ゆうちょ銀行自身のリスクで、地域の中小企業にも融資することができるようになる。」
 というものがありました。はんわしは、このことに大きな期待を抱いていました。

 しかし、現実は甘くありません。今まで殿様商売だったゆうちょ銀行には貸し出し審査や債権管理のノウハウがなく、お金はあっても貸す方法がない、貸し出す先を見つけられない、という状況でした。
 結果的に、その状態は改善されることなく、再び国有化されることになってしまったわけです。

 クローズアップ現代では、民主党の副大臣?だかが、「国有化しても、郵貯は地域のためになる使い方をする」みたいなことを言っていました。しかし、現実にノウハウがないのだから、中小企業やベンチャー起業のためのリスクマネーに貸し出すことが不可能なことには変わりありません。
 では、彼の言う「地域のためになる、公のためになる」融資とは何なのでしょうか?

 世界の先進国の中でも群を抜く財政赤字の日本。2010年度予算も、税収より国債収入のほうが大きいという異常な事態が続いています。教科書的に考えれば、金利が大きく上がり、国債の流通価格が暴落してもおかしくない状態です。
 一般銀行による国債買い入れは限界に近づいています。では、どうするのでしょうか。
 郵貯が、次のターゲットなることは間違いありません。国債は国家財政になるのですから、郵貯で国債を買いまくることは、すなわち国民のため、地域のため、そのものです。(これ以上公共性がある運用が、この世に存在するでしょうか!)
 元大蔵省の事務次官OBが、郵貯事業も包括した国営日本郵政の社長になることの意味も、これではっきりするというものです。考えただけで空恐ろしいことです。


 

2010年2月8日月曜日

三重発!コミュニティビジネスの祭典



 今日は業務連絡を。

 来る3月11日(木)、三重県ほかの主催により「三重発!コミュニティビジネスの祭典」が開催されます。

 地域の課題を、地域の住民が主体となり、地域にあるヒト、モノ、カネ、情報といった「資源」を活用し、ビジネスの手法で解決する事業がコミュニティビジネスです。

 今までの日本社会は、経済的な利益を高めることが生活の豊かさを実現するための唯一の方法だと考えられてきました。なんだかんだいっても、カネはいくら持っていても困らない。そんな潜在意識が社会に共通したコンセンサスでした。

 もちろん、そのような風潮へのアンチテーゼも存在はしていましたが、それはあくまで少数の、反主流的な意見に過ぎませんでした。ビジネスとボランティアは両立しないどころか、根本的に相容れないものとされていました。営利セクターと非営利セクターは同じ地域内にあっても、背きあい、ほとんど接点のないものだったのです。

 それが今や、コミュニティビジネスは地域経済の活性化と新たな雇用創出を両立させる可能性を持つものとして注目されています。
 実はこれまでにも多くの方々が、意識的に、あるいは無意識的にコミュニティビジネスを実践していたのです。
 これは「地域課題を解決するためのビジネスだ」と自覚する前に、とにかく精一杯、思い切り地域のために、あるいは自分の夢のために活動していたら、それがコミュニティビジネスと呼ばれていた、という経営者が決して少なくないことからもわかります。

 そんなコミュニティビジネスについて、じっくり味わい、みんなで考え、つながり合う、そんな1日を提供する、それが、(何だか新興宗教チックなネーミングではありますが)「コミュニティビジネスの祭典」なのです。

 コミュニティビジネスに関心を持つ方、あるいは自分の進路について考えている学生の方、若者にもぜひ参加いただけたらと思います。

 内容は、こちらをご覧ください。
 http://www.pref.mie.jp/TOPICS/2010020106.htm

 難を言えば、今回はゲストが食品とかレストラン、地域特産品的な分野に偏ってしまった感があることです。コミュニティビジネス自体は、もちろん、環境、介護福祉、教育、多文化共生など多様な分野で成り立ちうるものですし、三重県内でも多数の実例があります。
 第1回目が成功すれば、第2回目に続くことでしょう。そのためにも、ぜひ多くのご参加をいただきたいのです。

2010年2月7日日曜日

今日のサンプロはためになった



 今日、久しぶりにサンデープロジェクトを観たら、ジャーナリストの財部誠一氏による、農協をテーマにしたリポートをやっていました。

 農協はいまや、金融事業を中心とした巨大コングロマリットとなっており、減反政策など自民党の農政に協力し、長らく個々の農家を統制する組織として作用してきたといわれています。

 しかし、事業や規模を大きくすることでなく、独自の経営路線をとって地域農業を振興した事例として、大分県の下郷農協、高知県の馬路村農協が取り上げられていました。

 馬路村農協では、尾鷲で時々セミナーに参加し、お話を聞いたこともある、馬路村のプロデューサー松崎了三さんもインタビューにちらっと出てきて、ゆずドリンク「ごっくん馬路村」の販売戦略について、都会にはない人と人のつきあいが馬路村にはまだ残っているので、その田舎性を前面に出して商品をアピールすればいいのではないかと気が付いたというお話をされていました。

 下郷農協は、農家から農産物を買い取って、産直通販をする手法。馬路村農協は特産品のゆずの生産、加工、販売を垂直的に一元管理しており、都会の消費者に通販する手法であり、共に農協が、いわばそのまちの「地域商社」になっています。
 地域の産業振興の切り札として地域商社の存在は必須であり、その運営主体の候補として、地域の農家を束ねる農協の存在は大きいと思います。
 これは簡単なようで、実は実行するのが非常に難しいことです。現実に、両農協とも、全国から多くの視察者がありますが、そのほとんどは話には感心するものの、自分の地域で実現した人は少なく、それがビジネスとして成功しているところはほとんどないのが実状のようです。結局は、馬路村農協の東谷組合長がおっしゃっていたように、「一度落ちるところまで落ちて地獄を見ないと、住民はなかなか本気にならない」というのが案外真実なのかもしれません。

 しかし、番組で最も印象に残ったのは、一番最後に財部さんがリポートの総括として言った「現在の日本を取り巻く状況で最も深刻なことはコミュニティが崩壊していることだ。」という趣旨の言葉でした。これは地方自治体で働いているはんわしも大変共感できました。
 地域コミュニティのあり方は、もちろん歴史的な変化もあれば、地域差もあるはずです。しかし、今までは都会であろうと田舎であろうと、ある程度は共通して自明の前提と認識されていたコミュニティ、たとえば近所づきあい、職場、学校、町内会、PTAなどは急速に失われ、回復不可能なほどズタズタになっています。
 「コミュニティの維持・再生」を念頭に置けば、これから自分がどのように課題をとらえ、努力していけば良いのか、一つの方向性に気づかせてもらった気がしました。

 ところで、サンプロは3月の改変期で番組は終了するようです。週刊誌情報では田原総一郎のギャラが高額なことが理由の一つらしいですが、今までもいろいろと興味深いレポートをしていたので、少し残念に思います。4月からの新番組も討論型の報道番組らしいですが。

2010年2月6日土曜日

東紀州プレス&フィルムコミッション



 三重県東紀州地域(三重県南部の尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町及び紀宝町の2市3町からなる地域)は、過疎化や少子高齢化が進行しており、現実的な地域振興策としては「観光業」を地域産業の主力にしていく以外に考えられません。

 しかしそれは、旧来型の物見遊山的な観光業ではありません。それは全国にライバルが多すぎますし、どだい現在の洗練された観光客(消費者)はそのようなものを求めないでしょう。
 東紀州の黒潮、そして深山幽谷が連なり清流が流れる豊かな自然環境や、熊野信仰に由来する独自の文化、風俗。観光客が求めるのは、そのような熊野らしさでしょうし、その「らしさ」を観光サービスとミックスした6次産業として展開していく必要があります。

 その一つの手段として、雑誌やテレビなどに取材してもらい誘客のPRとする方法がありますが、近年注目されてきたのが地元が一体となった映画ロケの誘致、いわゆるフィルムコミッションです。
 
 三重県内ではすでに伊勢志摩フィルムコミッションや、津市のフィルムコミッションである「ロケっ津」などがありますが、東紀州においても、このたび
 東紀州プレス&フィルムコミッションなる活動が立ち上がったようです。

 ■東紀州プレス&フィルムコミッション(東紀州観光まちづくり公社)  http://higashikishu.org/

 最近では、1月2日に日テレ系で放映されたビートたけしの教科書に載らない日本の謎の評判が良かったようです。
 東紀州の魅力が再発見される、このような番組が次々出てくるといいと素直に思います。


(ここからは余談)
 たった今、東紀州は観光を中心とした6次産業に産業構造を転換していくべきと書きました。産業は経済活動ですから、もちろん主役は民間の事業者であるべきです。しかし、東紀州はまた、過疎地、遠隔地として公的な産業振興策が「激注」されてきた地域でもあります。
 道路建設、治山事業などの公共工事と、かつての主力産業であった農林水産業への保護育成政策などです。これらの効果がなかったわけではありませんが、かつての輝きを取り戻すことは難しいのはほぼ地元ですら認めざるを得ない状況になっています。
 そこで、産業構造転換の話になるのですが、問題は、スタートアップの方向性を決めたり、基礎的な環境整備は行政が(フィルムコミッションの例で言えば、三重県と地元5市町の連合運営である東紀州観光まちづくり公社が)担わざるを得ないとしても、それをどの時点で民間にバトンパスするかです。
 公共工事、農林水産業とも、それを「支援する側」の行政のほうが膨大な事業予算と職員を有しており、支援自体が行政の存在意義になっているという、倒錯した現象が生じています。
 観光や産業振興はソフト事業ですが、小規模な事業者や企業が圧倒的に多い東紀州では、何かを行おうとするときの事務局機能、マンパンワーは行政に依存せざるをえない現状があります。
 行政が次々にアイデアを出し、予算をつけて事業化する。
 しかし、なかなか民間に普及していかず、リーダーも育てられない。
 この痛し痒しの問題(しかし実は最も本質的な問題)が残されています。

 この問題については、尾鷲の骨太なブログ Cafe CReAMモノ語り が一石を投じています。


2010年2月5日金曜日

ネコのくしゃみ



 昼休み、JRの線路沿いを歩いていました。
 ノラ猫が2匹、線路の横で昼寝していました。
 このへんは飲み屋が多いので、たぶんその残飯で生活しているのでしょう。

 目があったとたん、左側の白いほうがくしゃみをしました。
 ネコのくしゃみ、初めて聞きました。
 その後、もっのすごく寒そーうな表情をしていたので、思わず撮影。

2010年2月4日木曜日

楽天カンファレンス2010



 名古屋で開催された「楽天新春カンファレンス2010」に行ってきました。
 楽天に出店しているショップオーナーなどを対象にしたセミナーや交流会がメインですが、楽天が2年ほど前から取り組んでいる、地域活性化のためのサイト「まち楽」の説明会など、地方自治体の職員も参加できる内容でした。

 景気の低迷が長引き、特に需要の冷え込みは深刻で、百貨店やGMSが軒並み売り上げを下げている中、一人気を吐いているのがネット販売です。その旗手である楽天が、どのような事業戦略を持っているのかにも関心がありました。

 詳細は差し控えますが、楽天の読みとしては「景況は当分このままの状況が続くが、ネットショップやネットサービスはこれからさらに飛躍的に拡大する」という基調のようでした。スマートフォンの普及や、ソーシャルマーケティングが重要性を増しているなど、Eビジネスを取り巻く環境も激変を続けていますが、それはむしろチャンスなのだそうです。
 そして、これからのボリュームゾーンとして、成長を続ける香港、台湾、タイなどのアジア諸国、なかんずく、中国をマーケットに日本の産品をプロモーションしていくことが明確でした。
 その一環が、中国の検索エンジン大手バイドゥ(百度)との合弁会社設立であり、楽天モール内のショップの翻訳サービスなどに本格的に着手していくようです。

 もう一つは、まち楽の路線をさらに強化し、特に市町村との連携を強化し、地域の特産品や埋もれているアイテムを全国の市場に出していく戦略のようです。今日は中部地方の自治体から多数の参加があり、地域産業振興に燃えるこれらの職員の方々と知り合いに慣れたのは大きな成果でした。

 勉強になったのは岐阜県の取り組みです。
 楽天と包括協定を結び、古田知事自らが先頭に立って県内の物産振興や、楽天トラベルと組んだ観光振興に旗を振っています。ネット活用への先見性とこの機動力は、三重県はとても足元に及ばないと感じました。
(まち楽 岐阜編 → http://event.rakuten.co.jp/area/gifu/tieup/

 今日のカンファレンスのハイライトは、三木谷社長による40分ほどの講演でした。
 日本を代表する経営者ですから、さぞ堂々とした語り口だろうと思っていたら、わりと早口で単調に話をする方でした。
 自著から引用した10の教訓を話されたのですが、「インターネットはモノ、ヒト、カネの流れをすべて変える革命であり、この流れを止めることはできない。大きなネット化、グローバル化の中で自分は何をすべきかを考えなくてはいけない。」という言葉が印象的でした。
 同時に、IT化が不可避だからこそ、顧客とのインターフェイスを温かみのある(三木谷社長の言葉では「有機的な」)サービスにして、他と差別化することが必要だとのことでした。

 このほか、いろいろヒントになる話が聞け、非常にエキサイティングな時間でした。特に最近、個人的にしょーもない非生産的な仕事を、決断できない人々に囲まれながらやらされているので、官と民のリーダーの格差について、絶望的な気分にならざるを得ませんでした。



 

 

2010年2月3日水曜日

中経連「経済再生の目標像とシナリオ」を読む



 社団法人中部経済連合会が「経済再生の目標増とシナリオ」なる政策提言を発表しています。(リンクはこちら http://www.chukeiren.or.jp/

 中経連は、いわば経団連の東海地域版のようなものと考えてよく、中部電力、JR東海、トヨタといったお歴々が重役に並ぶ団体です。
 それだけに、今まで出された各種の提言も「名古屋目線」の「ものづくり偏重」で、それゆえに地元の東海地域以外の地域からはほとんど目にもとめられていない「名古屋のローカル・サロン」というイメージが当たっていると思います。

 そこで、あまり期待もせずにざっと目を通したのですが、これはなかなかよく書けています。(僭越ではありますが。)

 まず、「今回の経済危機の影響と教訓」という現状分析がしっかり行われています。これは、行政の作る構想や計画とは決定的に違うところです。
 言うまでもなく、行政は無責任体制で、先輩たちがやったことは失敗であってもあげつらったり批判はしません。その意味で、東海地域の経済が受けた打撃の原因に「ひ弱な内需」などの定番のほか、「活用し切れていない金融資産」とか、「輸出における仕向け地(注:輸出相手国)と品目構成の偏り」などといった、トヨタ依存への反省めいたものが見られるのは驚きでした。

 ではどうすればいいか。
 提言は、日本全国と中部地域に共通する対策として
・輸出財の構成内容の多様化と輸出先の分散化
・景気に左右されにくい必需性の高い財・サービスの産業育成
・内需の活性化
・アジアを中心とした海外の成長力の活用
・(日本が)巨額な金融資産保有国(であることに)にふさわしい成長モデルを見いだす
 の5つを挙げています。

 また、中部地域に特に求められることとして、「自動車産業依存からの脱却」を掲げ、中部地域の企業が得意とするプロセスイノベーションやプロダクトイノベーションだけでなく、ビジネスモデルや業態転換などにおいてもイノベーションを発揮すべき、などと提言しています。
 ここまでは明確な論理展開で、論点整理には非常に役立ちます。

 問題は、では、具体的にどう対処していくべきかなのですが、ここからはかなり中経連としての「願望」が色濃く出ている感じです。
 中部地域では自動車に続く第2第3の柱となる産業を育成すべきとあるのですが、その候補は、地球環境、省エネ、ナノテク・新素材、航空宇宙、医療、健康長寿、観光、農商工連携など、漠然と広範囲に列記されているだけです。
 常識で考えて、これらの各分野が時代の主力産業の可能性が高いのは誰でもわかることで、この漠然とした中から、どう新産業を創造していくかが核心になるはずですが、これらの絞込み、あるいは優先準付け(いわゆる選択と集中)は誰がどう行うのか定かではありません。
 そもそも、自動車に集中した産業構造が大きな問題なのに、それに代わる産業分野が「これだ!」という予測など、可能なのでしょうか。

 また、新産業を生み出す具体策は、今はやりの「オープンイノベーションの推進」が示されています。しかし、これは言うは易し。実は日本の製造業が最も不得意な分野で、インテルやアップルのようなビジネスとしての大成功例がほとんど生まれていないのが現状です。
 研究開発だけでなく、技術経営と知財活用の三位一体の運用が求められるのですが、これはまだ緒に付いたばかりです。

 この中経連の提言をたたき台に、財界、行政、その他の関係者が広く議論できる土壌が育てばいいと思います。

 


2010年2月2日火曜日

伊勢自動道・紀勢自動車道が無料に!



 本日、前原国土交通相は「高速道路無料化社会実験計画(案)」の実施路線を公表しました。いわゆる高速道路の無料化です。
 昨夏の衆議院選挙では民主党マニュフェストの目玉でしたが、その後迷走し、結局はすべての区間ではなく、比較的交通量が少ない、田舎の路線を無料化するという方針に縮小していました。

 そして今日、37路線50区間が公表されたわけですが、三重県内では
・伊勢自動車道 津~伊勢間
・紀勢自動車道 勢和多気~紀勢大内山
 の区間が無料化されるようです。

 はんわしにとっては正直、非常にありがたい話です。
 というのは、元々クルマではほとんど遠出しないので、高速道路利用の90%が伊勢から津まで、あるいは東紀州に行くときの紀勢大内山までの利用だからです。
 ホント、完璧にタダになりそうです。
 
 しかし、もちろん気がかりな点もあります。
 伊勢IC付近は間違いなく週末ごとに大渋滞し、伊勢神宮への道路(通称、御木本道路や、国道23号線など)は大混雑でしょう。
 実験が6月開始とのことなので、伊勢志摩への観光客が増える夏場、どれだけの影響があるかはまさに「社会実験」そのものになると思います。特に、第二名神の開通以来、東名阪自動車道の亀山~四日市間は渋滞が恒常的になってきており、そちらに影響が飛び火する可能性は高いと思われます。

 もう一つは、既存の公共交通機関への影響です。JR紀勢本線はいよいよ廃線秒読み(?)ではないでしょうか。今でもJR特急南紀の利用者は10年前に比べほぼ半減しており、熊野古道ブームもかげりが見える中、鉄道運送にとって明るい展望が見えにくい状況です。
 また、伊勢湾フェリーのような航路も優位性がさらに失われることになります。昨年の1000円化でも全国のフェリー航路への影響は深刻で、業界は危機感を強めていたところでした。

 ただ、ブレやすい鳩山政権ですから、まだ実施には紆余曲折あるのかもしれませんが。

 ■国土交通省 http://www.mlit.go.jp/report/press/road04_hh_000011.html


<<追記>>
 この記事を書いた直後の3月に、三重県鳥羽市と愛知県伊良湖崎を結ぶ伊勢湾フェリーが9月末で航路を廃止し、会社を清算することが発表されました。
 くわしくはこちらを。

<<追記2>>
 6月28日から、いよいよ無料化社会実験が始まりました。
 これを受けて、北牟婁郡紀北町(紀勢道の終点、紀勢大内山ICから国道42号で約15分)が観光キャンペーンを行っています。ご覧になってみてください。(画像をクリックすると、紀北町観光協会にリンクします)


2010年2月1日月曜日

ブラック・スワンと金閣寺



 「ブラック・スワン」(ナシーム・ニコラス・タレブ著 ダイヤモンド社)の上巻をやっと読み終えました。  

 一昨年の世界同時不況を予言したという話題の本ですが、始めのほうは内容にかろうじてついていけたものの、中盤に差し掛かるとかなり難解で、正直な話、「今まで存在し続けていたとしても、そのことが今後も存在し続ける理由にはまったくならない」という、最大公約数的な理解に落ち着きそうです。


 かなり強引な連想になりますが、三島由紀夫の「金閣寺」にも似たようなフレーズがありました。

 ご承知のようにこの小説は、昭和25年に全焼した鹿苑寺金閣の放火事件をモチーフにしたものです。 
 貧しい禅寺に生まれ、その縁で金閣寺の修行僧となるものの、肉体的な障がいのためもあって屈折した人生を送る主人公は、金閣が炎上するさまにあこがれるようになります。
 金閣を焼かなければならないと放火を決意する理由はこうです。


 「五百五十年のあいだ鏡湖池畔に立ちつづけてきたということが、何の保証にもならぬことを学ぶからだ。われわれの生存がその上に乗っかっている自明の前提が、明日にも崩れるという不安を学ぶからだ。」

 三島は「ブラックスワン」を
倒錯した心情を通じて文学的に表現し、タレブは実証的・学問的に表現したということなのでしょうか。

1月の月間ページビュー ベスト10



2010年1月のページビューベスト10です。

1.「地域力連携拠点事業」が事業仕分けで・・・(09.11.28)
2.伊勢河崎「町家とうふ」に行ってみた(09.12.6)
3.原口ビジョンを斜め読みしてみた(09.12.23)
4.これは奇策だ! 大阪府プレミアム商品券(09.12.25)
5.熊野灘の座礁フェリー 解決は遠い?(09.12.15)
6.鳥羽市のB級グルメ「トバーガー」(09.8.2)
7.近大高専撤退の理由を冷静に考えよう(10.1.16)
8.ローカル路線バス乗り継ぎ 人情ふれあい旅(09.10.5)
9.里創人 熊野倶楽部の昼食(09.9.4)
10.2011年 新聞・テレビ消滅(09.11.29)

 ちなみにページ滞在時間の最長は
事業仕分け反論者の大いなる誤解(09.12.4)でした。